熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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絵本の読み聞かせ 朝ランニングの新メンバー

ホテルでの出来事が終わってから一週間が経った週末。この日の朝、虹ヶ丘家にいたのはましろただ一人であった。そんな彼女は一人ティーカップに紅茶を注いでおり、それを口に注ぐ。

 

「……何だか、久々に静かなだなぁ」

 

ましろがしみじみそう言う。実際、ユキ、ソラ、エルの三人が空から降ってきたあの日以降。虹ヶ丘家は大所帯となって賑やかな雰囲気が絶えなかった。

 

「ソラちゃん、ユキちゃん、アサヒは朝のランニングだし。ツバサ君は飛行機の観察。ヒョウちゃんは裏山に行って鳥さんとお話し中であげはちゃんは今日からPretty_Holicでバイトに行ったし。かけるさんも街にある図書館でバイト中。お婆ちゃんは乗馬クラブ」

 

それからましろはコトリとティーカップを置くと周りの皆がやりたい事をやっている現状に憧れていた。

 

「ふふっ。皆張り切ってるなぁ」

 

「ましお〜」

 

するとそこにやってきたのは絵本を抱えて歩くのにもすっかり慣れてきたエルであった。

 

「あ、絵本だね!一緒に読もうか」

 

「えるぅ!」

 

ましろはエルの要望に応えるべく彼女の隣に座って読み聞かせをする事に。それから本を読み終えると締めの文を読む。

 

「“というわけで、二人は幸せに暮らしました。めでたしめでたし〜”はい、お終いだね」

 

「はい!」

 

するとエルはどこから取り出したのか二冊目の本を差し出した。ましろはそんなエルからのリクエストを受け入れると次の話を読み始める。

 

「こっちも読むんだね」

 

ただ、そこからましろにとって軽めの地獄が始まった。と言うのも、エルがましろが読み終わる度に次々と絵本を出してくるのだ。その数はあっという間に十冊を超えてしまう。ただ、それでもエルからの要望は止まらない。

 

「はい!」

 

「うえっ!?もう十冊は読んだよ?」

 

「よんで〜」

 

「そっか……良〜し、こうなったら何冊でも読んじゃうよ!」

 

「えるぅ!ましお、だいしゅき!」

 

それからもましろによるエルへの絵本の読み聞かせ会が続く事になる。同時刻、少し前から外でランニングをしていたユキ、ソラ、アサヒの三人……その隣に何故かひかるもいて四人は今、ソラシド市が見れる高台の上にいた。

 

「はあっ……はあっ……お前ら……いつもこんなに走るのか!?」

 

ひかるは割と疲れた様子で息を整えている。ただ、ソラ、ユキ、アサヒの三人はまだまだ平気そうな様子だった。

 

「まぁ、普段はこれよりも少しペースは早いかな」

 

「嘘だろ……そりゃあどうりで前のスポーツテストで抜かれたわけだよ」

 

ひかるは決して体力が無い方ではない。むしろ、机の上で勉強をするよりは体を動かす運動の方が得意なレベルだ。このランニングに参加をお願いしたのはひかるなのだが、その彼も多少なら着いていけると思っていた。

 

「……虹ヶ丘、お前がこれをやるようになったのって……」

 

「ああ。プリキュアとしてユキ達に負けないようにするためだよ。定期的にましろも参加してる」

 

「マジか……」

 

「でも、急にどうして参加したいって言ったの?」

 

ユキからの問いにひかるは懐に入れて持ち歩いていたミラージュペンと自分のスカイトーンを取り出す。

 

「「「ええっ!?それって……」」」

 

「ああ。あの時失っていたミラージュペンをこの前やっと取り返せてさ。俺もプリキュアになれるようになったんだ」

 

ひかるの言葉にユキ達三人は唖然としていた。何しろ前にこちらの世界で無くしたはずのミラージュペンを何故向こうの世界で手に入れられるのかがわからないのである。

 

「お前、ミラージュペンをどうやって見つけたんだよ。あの時確かに無くなってただろ?」

 

「俺も最初、無くした場所にあるのかなと思ってたんだけど向こうの世界に行った時にキメラングの野郎が盗んでいたってわかってな」

 

ひかるがそう言うと確かにキメラングなら目的のための手段を選ばなさそうという事でその場の全員が納得。

 

「ひかる君、でしたらここで変身ってできますか?」

 

「?わかった。やってみる」

 

それからひかるが手にしたミラージュペンを変化させるために構えると前に変身した時のように意識する。

 

「ひろがるチェンジ!」

 

そう言ってひかるがスカイミラージュのボタンを押した……つもりが、そもそもミラージュペンが変化しておらず。何も起きなかった。

 

「あれ!?何で!?確かにあの時変身できたはずなのに……」

 

ひかるがかなり慌てふためていているとその様子を見て三人は困惑する。今までプリキュアに変身可能な力を持った状態でそもそも変身すらできなかったという事例は存在しない。

 

ひかるの言動を見るに嘘を吐いたという事は考えにくいだろう。現に変身するためのアイテムであるミラージュペン、スカイトーンは揃っているわけだ。

 

「なぁ、ひかる」

 

「ッ、虹ヶ丘。これはその……」

 

「安心しろ、俺達はひかるが嘘を吐いたなんて思ってないから。それでさ。お前が変身したプリキュアって何色だった?」

 

「色?俺のプリキュアは黄色でキュアトールって言うんだ」

 

その言葉を聞いて三人は更に困惑する。何しろひかるが握っているスカイトーンのカラーリングは緑でしかもらんこの使っているスカイトーンとペアルックなのだ。

 

「ひかる君、ひかる君がスカイトーンってその色……緑のまま変身したの?」

 

「あれ?確か変身した時は黄色の雷マークになっていたはずだけど……」

 

実はひかるが変身する際のみバンクの中でスカイトーンもしっかりと変化している。これによってキュアトールへと変身しているのだ。

 

「という事はこちらの世界では変身不可能という事でしょうか」

 

「えっ!?」

 

「確かに、それなら向こうで変身できてこっちでは変身できない事の説明が付くかも」

 

理由は未だにわからない。それでも、ひかるがこちらの世界では変身する事ができないという変身上の制約ができているというのは確かだろう。

 

「ま、まぁ変身できないという件で話が大脱線したけど……本題は俺がプリキュアに変身できるようになって、向こう限定?だけど戦えるようになったからその……脚を引っ張らないようにするために頑張らないとって」

 

その言葉を聞いてユキとアサヒは彼の気持ちに納得がいく中、ソラは俯くと震え始めた。

 

「あれ?ソラさん……どうしたんだ?」

 

「か……か……かーっこ良いじゃないですか!」

 

「へ?」

 

「ヒーローとしてチームを組む仲間のために今自分にできる最善を尽くす。ひかるさんはもう立派なヒーローですよ!」

 

ソラが興奮したようにそう言うとユキやアサヒも頷く。ひかるにそれだけの覚悟があるのなら鍛える理由として十分すぎる。二人はひかると向き合うとソラに賛同した。

 

「ひかる、お前の気持ちはよくわかった。だったら俺達と一緒にこれから頑張ろう」

 

「え……良いのか?」

 

「ひかる君はらんこちゃんや向こうのソラちゃん達のために頑張るって事でしょ?……むしろ私達はその気持ちに応えたい。だから私達は全力でひかる君を助けるよ」

 

「ソラさん、虹ヶ丘、ユキさん……。ああ、これかららんこさん達の力になるために……俺を強くしてくれ」

 

それからユキ達三人はひかるも朝のランニング仲間に加えるとこの日のランニングは折り返しに入る事になる。

 

その少し後、裏山にいたヒョウは人間態の状態で友達の鳥達を数匹肩に止めた状態で一人山道を歩いて戻ってくる途中だった。

 

「ねぇ、あなた達も子孫を残すためにつがいのパートナーを探すと思うんだけどその時の決め手とかってある?」

 

「ピィ?」

 

「ピピピッ!ピピッ!」

 

「……相手と自分が合うかどうか?」

 

「ピピッ!」

 

ヒョウが話しているのは雌の鳥達で雌は沢山の雄達からアピールを受けるのだが、最終的には一匹の雄とパートナーになっている。その時の相手の決め方を問いかけていた。

 

「まぁ、あなた達は雄鳥達から引く手数多だものね。……相手との相性……か」

 

ヒョウはツバサと自分が合うかどうかを照らし合わせてみた。すると浮かんできたのは自分が強く言いすぎてツバサを困らせてしまう姿である。

 

「……そうやって考えた事は無かったかも。私、ツバサの事が好きで……愛したいって思えるけど、今のままだとツバサには多分沢山気を使わせちゃうよね」

 

「ピピピッ!」

 

「そんな事気にしたらダメ?……あなたが好きだと思えるのならその子を大切にするべきだよ……ね。うん、ありがと。……また相談するかもだけど良い?」

 

ヒョウの言葉に鳥達は了解したとばかりに声を返す。そして、虹ヶ丘家の前に来たためにヒョウは鳥達と別れて家へと入った。

 

「ただいま……ってあれ?」

 

「える?ひょーお!」

 

ヒョウが家に入ると違和感を覚える。それはエルがヒョウの声を聞いて出迎えるのはわかるが、同じく家にいるはずのましろからの返事が無いのだ。

 

「エルちゃん、ましろさんがどこにいるかわかる?」

 

「ましお?……こっち!」

 

それからエルに連れられたヒョウがましろの元に行くとそこには疲れたのかグッタリとしたましろがカーペットのある床の上で寝そべっていた。

 

「ましろさん!?」

 

「あ、ヒョウちゃん……お帰り」

 

「ましろさん、声がガラガラじゃない!ちょっと待ってて!」

 

ヒョウが慌てて手を洗ってからましろへと水を差し出す事になる。それから数時間後。場面は街中へと移動した。そこにはバイトに出ていたあげは、かけるを除く全員が揃っている。

 

「ええっ!?そんなにも絵本を読み聞かせたんですか!?」

 

「最初帰った時はびっくりしたわ。声は今よりもガラガラだったし」

 

「あはは、最終的に二十冊以上は読んだからね」

 

しかもこの様子を見ると特に水分補給のための休憩とかも取らなかったらしい。その状態で二十冊以上も本を読めば当然こうなるだろう。

 

「ましろ、そういう時は少しぐらい待ってて貰えば良かっただろ」

 

「うん、でもエルちゃんの頼みだし断りきれなくて」

 

「ましろさんは優しいですね!」

 

「ましお〜、やさし〜な!」

 

そんな風に話す中、そこにバイトを終えたのかかけるがやってくるとユキ達を見つけて声をかけた。

 

「皆お待たせ!」

 

「あっ、かけるさん!」

 

「待たせちゃってごめんね」

 

「いえ、それは大丈夫ですよ。でも、どうしてバイトを?」

 

ツバサからの問いにかけるは落ち着いてからその問いに対する答えを話す。

 

「単純な理由。俺もあげはさんも虹ヶ丘家にお世話になってるし、この人数を養うためのお金をヨヨさんやましろさんの両親だけに負担させるのは良く無いって思ってさ。あげはさんと話し合って二人共バイトをする事にしたんだ」

 

既に二人は高校を卒業して大学生であるため、バイトをして働く行為は認められている。そのために二人は生活費を少しでも負担するために頑張って働いているのだ。

 

「でも、無理だけはしないでくださいよ」

 

「ああ、それは大丈夫。……もしヤバかったらちゃんとブレーキは踏むから」

 

その辺りは分別が付けられるとかけるはそう言って一同を安心させるとこれで全員が揃ったのであげはのいるPretty_Holicのお店の中に入る事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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