ましろが絵本を描くようになってから数日。その間、ましろはユキ達に支えられながら絵本の製作を進めていく。
「ましろちゃん。ここは……」
「あっ、確かにそうですね!ありがとうございます、かけるさん」
「かける君、さっすが〜!」
「かけりゅ!さしゅが〜!」
時にはかけるやあげはが保育士の専門学生として子供が読みやすいようにアドバイスをしてましろに足りない部分を補填していく。
「ツバサ君、もう少しヒョウちゃんに寄ってくれる?」
「こ、こうですか?」
「つ、ツバサ……まだ寄るの!?」
「で、でも仕方ないですよ!ましろさん!何でこんなに寄せるんですか!」
今現在、ツバサとヒョウは木に止まる小鳥の絵を描くためにツバサとヒョウが隣り合わせで体を寄せ合っている。そのせいで体と体が密着して二人はお互いを愛し合う夫婦のようにも見えた。
「折角仲良しな所を描くんだから中途半端なのは勿体無いと思うし……ね?」
「だからってこれはやり過ぎですよー!」
「うぅ……」
二人共恥ずかしさから顔が真っ赤であり、どうにか我慢している状態だった。そんな二人をユキは微笑ましい顔で見ている状態である。
「二人共、顔硬いよ。ましろちゃんのためにも笑って笑って」
「ユキ姉!?そんな事言われてもこの状態じゃ無理だって!」
時にはこのようにツバサやヒョウに被写体になって貰いつつ絵を仕上げていく。
「ましろさん、ここに置いておきますね」
「無茶だけはするなよ」
時には勉強後の夜の時間で製作作業をしつつ、アサヒやソラ達に頑張りを労うためのお菓子や紅茶を届けてもらいながら期限に間に合うように作業を進めていく。
このようにして絵本は仕上がっていくと提出期限当日の昼過ぎ……15時に絵本自体は完成する事になるのだった。
「できた……って、もうこんな時間!?急がなきゃだよ!」
ましろが急いで紙袋に絵本の原稿を入れると完成を待ち侘びていたユキ達と共に提出場所である市役所へと移動していく。そんな中、ヒューストムは建設現場の鉄骨の上に立っているとそんなユキ達を見つけた。
「……あ?アレはプリキュアか。随分と慌てているが……何故だ?」
ヒューストムがその原因が何なのかを探ろうとすると先頭にいるましろが紙袋を大切そうに手にしているのを見て笑みを浮かべる。
「ふふっ。なるほどなぁ。要するに、アレをどこかに届けたいって所か」
ヒューストムが下衆な笑みを浮かべる中、一同はそんな彼の気配に気が付かずに先へと進み続ける。すると歩行者用の横断歩道が赤に変わってしまったため、その歩みは止まってしまった。
「ッ……こんな時にタイミング悪いな」
「そんな事言っても仕方ないでしょ」
「ましろさん、締め切りは何時なんですか?」
「午後の5時までに市役所に出さなきゃで……」
それからエルも含めた九人が近くの交差点の反対側の建物に付いている電光掲示板を見るとそこには15時32分と書かれている。街の中にまで出て来れている所から、市役所までの距離はそこまで遠く無い。このまま行けば16時過ぎぐらいには無事に辿り着けるだろう。
「まだ時間はあるし、焦らずに行こ」
「……ッ、ユキさん」
「うん……そう簡単には行かないみたい」
するとユキとソラは何かの異変を周囲の空気の僅かな変化から感じ取ると一同の前を丁度トラックが通過する。その直後、反対側の歩行者用の歩行路にはヒューストムが邪悪な笑みと共に立っていた。
「なっ……ヒューストム!」
「何でこんなタイミングで」
「ふふっ。その封筒、随分と大事な物っぽさそうだけど……」
「アンタには関係無い物でしょ!」
「あははっ。確かに俺に直接的な関係は無いよ?……でもさ。俺は優しいからな。何かのアクシデントに巻き込まれてその封筒を失ってしまわないかね?」
ヒューストムの煽るような物言いにアサヒは苛立ったのか、ヒューストムへと強めに答えを返す。
「そのアクシデントを起こそうとしてるのは何処の誰だよ!というか、こんな時にまで来るとかお前は暇人か!」
「ふん。暇人ねぇ。生憎様で俺も完全な暇人って訳じゃないんだ」
「そういえば、バッタモンダーがいないけど」
あげはがそう言う中、ユキ達も同じ事を感じていた。普段ならこういうタイミングで現れそうなヒューストムの能力をかなり単純な力の無い小悪党方向へと特化させた男、バッタモンダーがいないのはあまりにも不自然だからである。
「ああ。安心しろ。今日はバッタモンダー無しだ。アイツはアイツで色々やってるからね」
その言葉を聞くとヒューストムの性格からして、信憑性は薄いが今は余計な横槍を入れそうなバッタモンダーがいないとの事なので多少ここの突破難易度が下がったと認知する。
「だったらアンタをさっさと倒してここを通るだけよ!」
「ああ、そうそう。勘違いしないで欲しい点があった。……ここにいないのはバッタモンダー本人だけだ。これは、ちゃんと預かってるからよ」
そう言ってヒューストムが出したのはバッタモンダーが予め出しておき、エネルギーボールとして預かっていたアンダーグエナジーだった。
「じゃあ、早速始めよう。来い!アンダーグエナジー!」
ヒューストムが指を鳴らすと自身の分のアンダーグエナジーを呼び出す。それは近くにあった歩行者用の信号機に吸い込まれるとランボーグへとその姿を変化させる。
「更に行くぞ!行け!アンダーグエナジー!」
続け様にアンダーグエナジーを近くに停車してある車にも取り込ませる。これにより、ヒューストムは二体のランボーグを使役する形となった。
「「ランボーグ!」」
「こんな時にランボーグが二体も……」
「本当に嫌な奴!」
「行こう!」
ユキ達プリキュア組がスカイミラージュを、かけるとヒョウはツインチェンジライトをそれぞれ使用するとその姿を変えて行く。
「「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!」」」」」」
「ひろがるチェンジ!ムーンライズ!」
「「デュアルファンタジーパワー!」」
「光り輝け!大地に!」
「舞い踊れ!空に!」
八人の姿がプリキュアや戦士の姿へと変化すると次々と名乗りを上げていく。
「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」
「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」
「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」
「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」
「夜空にひろがる煌めく幻想!キュアオーロラ!」
「日暮れにひろがる輝く月!キュアムーンライズ!」
「青空を照らす太陽の輝き!アポロンサン!」
「青空を彩る静かな粉雪!アルテミススノー!」
「「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」」
「聖なる世界を汚す者よ!」
「光の裁きを今下さん!」
こうして、八人揃った上での初めてのチーム名乗りをした一同。今回のメイン担当はムーンライズだ。尚、前にホテルでやった際は他のプリキュア達もいたので厳密にこのチームのみでの八人同時変身は初となる。
「ふん。こうして対峙してみると壮観だなぁ」
「随分と余裕そうだな」
「まぁな」
余裕他そうな顔をするヒューストムとムーンライズの間でやり取りがある中、一人だけ非戦闘員のエルはその手にプリズムから渡された原稿を持っている。原稿を持ったままだとまともに戦えないので当然の選択だ。
「なら、さっさとやれ。ランボーグ!」
「「ランボーグ!」」
すると早速二体のランボーグが向かってくる。そんな中、まずはアポロンとアルテミスが手を翳すと炎と氷の大きめなエネルギー弾が生成。放たれる。
「「はあっ!」」
その攻撃は先に前に出てきた車のランボーグが真正面から受け止めるとそのまま突っ切って突撃してきた。
「ッ!効いてないわね」
「だったら!」
真っ直ぐにこちらに向かってくるランボーグを見てオーロラは両手を翳すとバリアを生成。それに合わせるようにバタフライが盾を重ねる。
「バタフライ、ありがとう!」
「今がチャンス!」
そのタイミングでアポロンが飛び出すと車のランボーグを殴り飛ばす。この攻撃で車のランボーグは一気に押し戻されるとムーンライズが前に出た。
「皆、コイツは俺とオーロラに任せてくれ!」
「私達も手伝うわ!アポロン!」
「ああ。スカイ達はあっちの方を頼む!」
「わかりました!気をつけてください!」
この少しの接触でムーンライズ、オーロラ、アポロン、アルテミスの四人は車のランボーグ。スカイ、プリズム、ウィング、バタフライの四人が信号機ランボーグを担当する事になった。
「こっちも来ますよ!」
ウィングが声を上げるとそこには走っているために車ランボーグよりも後からやってきた信号機ランボーグが迫る。
「はぁあっ!」
それを迎撃するのはスカイだ。彼女はやってきた信号機ランボーグと正面から拳を激突させていく。
「信号は人を守るための物……乱暴なんて許されません!」
スカイが渾身のアッパーで信号機ランボーグを真上に吹き飛ばすとそのタイミングで既に上空へと回り込んでいたウィングがダブルスレッジハンマーを叩き込む。
「はあっ!」
そのまま信号機ランボーグが地上に向かって吹き飛ばされるのとほぼ同じタイミングにて。
「ランボーグ!」
ランボーグは物凄いスピードで目の前にいるオーロラを轢き潰そうとする。しかし、彼女に激突した瞬間。その姿は薄く溶けて消えてしまう。
「ラン!?」
「氷雪拳……雪ノ型!」
オーロラは幻影を見せる雪ノ型でランボーグの攻撃を肩透かしに終わらせると同時にランボーグのタイヤがツルリと滑る。それはオーロラが氷雪拳で溶ける瞬間に彼女の本体が車ランボーグの進行方向の地面を凍らせると車ランボーグはタイヤがスリップしてドリフト回転する羽目に遭う。
「ララララン!?」
「隙だらけなのよ!」
車ランボーグはそのタイミングでアルテミスからのドロップキックををぶつけられると耐えきれずに飛ばされてしまう。
また、それと同時に信号機ランボーグの方は落下のタイミングに合わせて地上で構えていたプリズムからの跳び回し蹴りを喰らって地面に体を強打してしまう。
「グウウ……」
また、その近くには車ランボーグもムーンライズに投げられて叩きつけられる。
「バタフライ、秒で一気に決めるよ!」
「オッケー!」
そのタイミングに合わせるようにバタフライが跳び上がると自身の真下に強大な蝶型の盾を召喚。それに合わせるように地上からはムーンライズが構える。
これはバタフライ→ムーンライズの個人浄化技の二段構えで決めるつもりのようだ。
「ひろがる!バタフライプレス!」
「ひろがる!ムーンライズドリーム!」
バタフライが盾を蹴り込むように急降下し、ムーンライズが両手に高めたエネルギーを放とうとした瞬間。ヒューストムが笑みを浮かべるとそれを見たアポロンは違和感を感じ取る。
「(どういう事だ?幾ら何でもアッサリ過ぎ……ッ!)」
アポロンはここまでアッサリとランボーグが押された状況ができたという事とヒューストムが何故か今回に限って戦闘への積極参加をしないという点。そして敵のランボーグの素体の特性からその意図に気がつくと声を上げた。
「二人共待って!これは……罠だ!」
「遅せぇよ」
ヒューストムが指を鳴らすと倒れていた信号機ランボーグの体にある歩行者用信号機が青から赤に変化。これによりいきなり敵味方問わず、その場にいる全員の動きが止まった。勿論、ムーンライズとバタフライの技も例外無くである。
「えっ!?ちょっ、何で……体、動かせないんですけど」
「ボク達もです!体が全く動かなくて……」
「ッ、これでトドメって時に……」
「あれ?でも、ランボーグも止まって……」
その瞬間赤信号が青に変化すると信号機ランボーグはその間に動ける状態になったのか、さっさとその場から離脱して逃げてしまう。
「ラン!」
それに加えて車のランボーグも態勢を立て直したのか、体を自発的にドリフト回転させるとそれによって発生した竜巻がムーンライズのエネルギー波を受け流すように方向を変えさせる。
「なっ!?」
しかもそれが飛んだ先には技の発動直後な上に空中で身動きが取れないバタフライがおり、彼女に技が命中してしまう。
「きゃあっ!?」
バタフライがムーンライズの技を同士討ちするように仕向けられて撃墜される中、動揺するムーンライズも信号機ランボーグから放たれたエネルギービームを喰らって吹っ飛ばされてしまう。
「がっ!?」
「ムーンライズ!バタフライ!」
「なるほど、ヒューストムが直接来ない理由はこれですね」
「うん。あの赤信号を受けると敵味方問わずに全ての物の動きが止まるみたい」
ヒューストムが参加しないのはこれによる恩恵が皆無……それどころか、彼の強みが一部失われてしまうからだろう。
「ククク……さて、このランボーグをどう攻略するか。見せてもらおうか」
ヒューストムはランボーグの影響で自分が戦闘をできない分、今回は敵の観察とデータ収集に自身のリソースを割くらしい。そして、オーロラ達はこの状況を打開するために奮起する事になるのだった。
また次回もお楽しみに。