熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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エンジェリーの叫び 絶望に立ち向かう光達

かけるとヒョウのピンチに姿を現したキュアルーセントムーン、キュアライトピラーの二人。それを見たネオボトムが取り憑いたオートマターのエンジェリーはその意識を一時的に取り戻すと涙を溢れさせた。

 

「リュウセイ様によって脳内に記録されたデータと一致……やはりあなたが、リュウセイ様の妹……ルナ様ですよね?」

 

「どうして、私の兄を……」

 

「私は元々、リュウセイ様によってルナ様を助けるために作られた存在なんです。ずっと会えず、私の体もボロボロで。お会いできる事を半分諦めていたのに……やっと、やっと会えたんですね」

 

「ぬう……傀儡の分際で、この私の支配から逃れられると思うなよ?」

 

するとエンジェリーの意識はまた無理矢理抑え込まれようとする。だが、エンジェリーの本来の意識は必死に抵抗した。

 

「ルナ様、どうか私ごとネオボトムを倒してください。私の事は助けなくて大丈夫です……。どうか、私がこれ以上罪を犯す前に!」

 

するとエンジェリーは残された気力でネオボトムの動きを無理矢理強制停止させつつ自分から分離不可な状態にして拘束。それによって逃げる術を無くさせた。

 

「がっ!?馬鹿な、こんなオンボロ人形め……」

 

「リュウセイ様は私が悪用されないように非常時の緊急拘束システムも用意してたんです。ルナ様、お願いです。今のうちに奴を!」

 

「ルーセントムーン、やるわよ。このチャンスを逃すわけにはいかない」

 

ライトピラーはこれ以上ネオボトムを暴れさせないようにするために最大出力の浄化技を構える。そんな中、ルーセントムーンの動きは止まったままだった。

 

「……何をしてるの!ルーセントムーン、私達二人分の力なら確実にエンジェリーごとネオボトムを……」

 

「……できない」

 

「「!!」」

 

「私を助けようとして、兄さんがどんな思いでエンジェリーを作ったのか……それを破壊だなんてできません!」

 

「何言ってるのよ!あなたがするべきなのはここにいる今を生きるプリキュア達を残すためにエンジェリーを壊す事よ!甘い考えは……」

 

「それでも、それでも兄さんの思いを……何より私を救うために作られた物をこんな、こんな形で壊すなんて……」

 

ルーセントムーンは未だに決心が付かなかった。エンジェリーを破壊する事への躊躇がどうしても生まれてしまう。やはりどれだけ時間が経っても、例えスカイトーンの中に宿った魂だけになったとしてもルーセントムーンは、ルナは元々の優しい少女から何も変わっていなかった。

 

「ッ……」

 

ライトピラーはそんなルーセントムーンを見て悔しそうにする。……こうなったのは自分達のせいでもあると。かつてプリキュアに覚醒した当時。先代のプリキュア達も一人を除いて中学〜高校生ぐらいの年齢の子供だった。それから時が経ち、キュアルーセントムーン……ルナを除く四人は大人に成長して心も大人へと至ることができた。ただ、ルナだけは洗脳の影響で精神は幼い子供のままだったのだ。つまり、彼女の心の成長は三百年前の洗脳されたタイミングで完全にストップしてしまったのである。

 

だからこそ他の先代プリキュアと比べると大事な場面で兄への情が残るという甘さが出てしまっていた。

 

「ククク……しっかりとオンボロ人形の記憶にあるぞ。……ルナ、お前のような優しい小娘の心構えでは私を破壊なんてできないとな。ぬん!」

 

その瞬間、ネオボトムが目を赤黒く光らせると別空間に存在するラスボス集五人の力を更に増大させた。

 

「ッ!?何を……」

 

「私の眷属の力を増幅させた。プリキュアを葬り、空間を繋げろとな」

 

そのタイミングでラスボス軍団と戦うプリキュア達は更にパワーアップしたラスボス達を相手に絶望感を抱いていた。シャドーはフルパワーを更に超えた限界突破の状態となり、フェンネルはマリちゃんのスペシャルデリシャストーン同士の共鳴を無効化すると自らのスペシャルデリシャストーンを取り込んで巨大な黒猫の姿へと変化。バトラー、ネオキングビョーゲンは巨大化し、蛇遣い座は数多の蛇を召喚する。

 

「ひろがる!シャドールナエクリプス!」

 

「はあっ!」

 

「消えろ!」

 

「ふん!」

 

「失せなさい」

 

五人のラスボスはプリキュアへと強力な攻撃を放つとプリキュア達は連戦による酷い疲れと深い傷を負って変身解除。動けなくなってしまう。

 

すると変身解除して倒れ伏したプリキュアのメンバー達を一瞥したラスボス五人は空間に干渉すると全ての空間が接続。これによってネオボトムがいる空間も含めて壁が消えると一つの大きな空間となった。

 

「ッ!!そんな……皆!」

 

「ここまでなの……?私達が揃っても、たった一人の敵に完敗なの?」

 

プリキュア達は倒れ、ただの生身の人間に戻ってしまうと痛みで全員が動けない。そして、自分の甘い判断がこの事態を引き起こした事を見たルーセントムーンは顔を青ざめさせる。

 

「私のせいで……また……皆さんが……。私が、私が弱かったせいで……」

 

「しっかりしなさいよ。あなたがそんなのでどうするの!」

 

ライトピラーがそう言ってルーセントムーンを何とか立ち直らせようとするが、ルーセントムーンはパニック状態になってしまう。そのため、ライトピラーの叱咤激励も届いていない。

 

「ルナ様……あぐうっ!?」

 

更にエンジェリーも完全にネオボトムに抑え込まれてしまうとネオボトムは五人のラスボスから増大した力の一部を吸収。そのままネオボトムは巨大化すると漆黒の巨人へと変化。エンジェリーはその胸の辺りに憑依前の元の姿で気を失った状態のまま拘束されていた。

 

「エンジェリーさん……」

 

「……仕方ない。今のルーセントムーンは使い物にならないわ……バーニングサン、ブリザード。今私があなた達のようになるには早すぎるけど……」

 

ライトピラーが体のエネルギーを増幅させると自身の中に眠っていた力の全てを込めた技を使おうとする。

 

「……待ってください」

 

「ユキ姉!?」

 

すると何とか痛みに耐えながら立ち上がったユキがそんなライトピラーの行動を見て声をかけた。

 

「それをしたらライトピラーはどうなるんですか?」

 

「……多分今のバーニングサンやブリザードと同じ状態になるわ」

 

「それじゃあ……ユキ姉はプリキュアになれなくなるって事?」

 

「……いや、それだけじゃない。多分、俺とヒョウちゃんも変身できなくなる」

 

かけるがそう言うとライトピラーは俯く。この反応を見るにかけるの予想は当たっているという事だろう。

 

「恐らくだけど、俺やヒョウちゃんの変身もルーセントムーン、ライトピラーの二人分の力が揃わないと変身できない。だからライトピラーが力を失ったら……」

 

「ええ。あなた達二人も変身できなくなるわ」

 

「そんなのダメだろ……。ライトピラー」

 

そこにアサヒも傷を押しながら立ち上がるとライトピラーのこの行動を諌めた。

 

「ライトピラー、あなたが俺達を叱ってくれなきゃ……俺達はこれから先戦えないんだよ」

 

「……私だってこれから成長していくあなた達を見届けたい。でも、この場を切り抜けるにはこうするしか……」

 

「……諦めるなよ」

 

するとかけるがライトピラーへと詰め寄ると声を荒げる。それは普段の温厚な彼からは考えつかないような声色だった。それと同時に俯いていたライトピラーを次々と立ち上がるプリキュアのメンバー達は強い目で見つめる。

 

「あなただって知ってるだろ?バーニングサンやブリザード……他の先代プリキュアがどんな想いであなた達二人に託したのかを。それを放棄するのか!」

 

「……ルーセントムーンがあの調子なのよ?だったら私が頑張らなきゃって思うじゃない!!……仕方ないでしょ。……私だって、私だって……本当は怖いのよ。でも、私達はあなた達の先輩。弱い気持ちなんて殺して強くあらないとダメじゃない!じゃなきゃ、じゃなきゃ先輩として情けないでしょ!」

 

「……え?」

 

その姿を見てヒョウは目を見開く。その気持ちの持ち方。自分の弱い部分を包み隠して周りには毅然とした強い態度で望むその姿を見て彼女は自分に近い何かを彼女から感じた。

 

「ライトピラーが、泣いてる……」

 

「ライトピラーは多分ヒョウと同じなんです。周りの環境が強くて理想のプリキュアの先輩としての姿を無理矢理作り出して……本当は、ライトピラーも一人の少女だったって事だと思います」

 

「もう、素直じゃない所もヒョウちゃんそっくりじゃない」

 

「ちょっ!?ツバサ!?あげはさんまで……」

 

ライトピラーのついでに同じ比較対象にされているヒョウは恥ずかしさのあまり顔を赤く染める。するとソラやましろ、周りにいるプリキュアのメンバー達もクスリと笑うと笑顔の輪が広がっていく。

 

「えるぅ!みんな、えがぁお!」

 

エルがそう言うとヒョウはライトピラーの幻影へと手を差し伸べ、かけるはまだ心が立ち直れていないルーセントムーンの前に立つ。

 

「ライトピラー。……どうやら私とあなたは似た者同士みたいね。……これも運命の導き?って奴なのかもしれないけどさ。私はどんなあなたでも尊敬してみせるわ」

 

「ッ……」

 

「……ルーセントムーン……ルナさん」

 

かけるの声を聞いたルーセントムーンは思わず顔を上げると目を見開く。そこにいたのは自分の兄であるリュウセイの姿であった。

 

「兄……さん?」

 

しかし、それはすぐに消えるとかけるの顔に戻る。かけるが纏っていたその雰囲気は混乱している彼女なら思わず見間違える程にそっくりに見え、ルーセントムーンはそんなかけるを見てやっと正気を取り戻す。

 

「かけるさん。私、また……」

 

「ルナさんはどうしたいんですか?」

 

「私は、エンジェリーを助けたい。兄さんが私を助けてようとしてくれたみたいに……今度は私がエンジェリーを助けたい」

 

「じゃあ、まずは前を向いてください。俺はルーセントムーンとしてのあなたを尊敬しています」

 

「どうして?私は、他の四人と比べて未熟で……。どこまで行っても頼りない先代なんですよ?」

 

ルーセントムーンはこんな心の弱く、情けをかけてはいけない敵の前で大きな隙を作ってしまった自分を悔やんでも悔やみきれない気持ちになっていた。

 

「……俺は自分をあなたを救うために今ここにいる存在だと思ってます」

 

「それって……どういう?」

 

「俺の予想ですけど、ルーセントムーンのお兄さん。リュウセイさんは、俺という存在にルーセントムーンの魂を宿すためにスカイランドからいなくなろうとしたんじゃないのかなって」

 

「……ッ!?どうしてそんな事を……」

 

「推測でしか無いのが悔しいですけど、俺がリュウセイさんの立場に立っていて。もし何らかの理由で遠い未来……ルーセントムーンが、ルナさんが俺の体に憑依してシャドーとして闇堕ちして暴れる事を事前に知っていたとしたら……。迷わずスカイランドからいなくなったと思うからです」

 

かけるは前日の夜にルーセントムーンから過去の話をされた際に自分の中に流れる遠い遠い血筋がリュウセイに繋がっていると何となくわかっていた。リュウセイはきっと自分という存在を遥か先の未来に作る事でルーセントムーンの魂を受け止められる受け皿として彼女を自分の体に結びつけ、それと連動してバーニングサン、ブリザードの力を継ぐ者と協力する事で妹を救おうとしたのだろうと。

 

「……ルーセントムーンは暴走していたあの時も俺の命に支障が出ないように自分の命を犠牲にしようとしていたの、知ってるんですから。そうやって他人のためを想って、真っ直ぐに行動しようと思う所。俺は尊敬しています。だから、尊敬している先代プリキュアとして……俺達と一緒に戦ってください」

 

かけるの目は真っ直ぐにルーセントムーンを見つめており、そんな彼の真っ直ぐな姿にあげはは目を見開く。

 

「……もう、かける君のそういう所が私は……※※*1だよ」

 

あげはが誰にも聞こえない小声でそう言う中、かけるに真っ直ぐに見つめられたルーセントムーンは彼の言葉を飲み込むと一度深呼吸。そして、その目は彼女が先代としての覚悟ができた顔だった。

 

「はい。皆さんにはお見苦しい所を見せてしまいました。……私は先代プリキュアとして、あなた達を微力ながらサポートします。……ライトピラー。散々迷惑をかけてごめんなさい。……私と、皆さんと一緒に戦ってください」

 

ルーセントムーンが頭を下げてライトピラーへと頼み込む。ライトピラーはそんなルーセントムーンを見ると溜め息を吐いて頭を小突く。

 

「覚悟、決めるのが遅い。……それと私の方こそまだまだ未熟者だし、お互い様。だからこれ以上私や今は眠ってる二人の間とも貸し借りとか無し。……改めて、一緒に戦うわよ」

 

ルーセントムーンが頭を上げるとライトピラーは手を横に差し出す。それをルーセントムーンが繋ぐと二人のエネルギーが光となって周囲に放出。それがプリキュアのメンバー達に注がれていく。

 

「ッ!?尽きていたはずの力が……」

 

「キラキラしててキラやばーな感じ!」

 

「うん。私達、生きてるって感じ!」

 

「これならまだ戦える!」

 

「私達でエンジェリーさんの笑顔を取り戻そう!」

 

すると今までのやり取りを見ていたネオボトムが苛立ったような声を上げてプリキュアを見据えた。

 

「チッ……仲間割れかと思って見てやったが、とんでもない的外れな結果に終わらせるとはな。……だが、この空間が私達有利に働く事を忘れたのか?」

 

ネオボトムは完全に空間を支配し、プリキュア達の絶望とかの負の感情を使ってプリキュア達を捩じ伏せる気満々である。

 

「確かに今はそうだね。……でも、私達は最後まで諦めるつもりは無いよ!」

 

「ああ。先代の二人がやっと俺達と本当の意味で戦う覚悟を決めてくれたんだ。だから、俺達は何度でも立ち上がる」

 

「馬鹿が……その考えこそが無駄だと……む!?」

 

その瞬間、ネオボトムの心がドクンと高鳴るとその体から力が抜け始める。それと同時に空間の機構が捻じ曲がりつつあった。その証拠にラスボス達の力がネオボトムが力を吸収した後の状態よりも更に弱まりつつある。

 

「何故だ……何故私の力や眷属の力が」

 

「……私は、支配なんてされません……リュウセイ様の、妹、ルナ様の笑顔を見るまでは!」

 

それは僅かに残されていたエンジェリーの意思が空間に接続。それと同時にルーセントムーン、ライトピラーの力が干渉するとエンジェリーの機能を拡張。ネオボトムの力によって変えられていた機構を根底からひっくり返しているのだ。これにより、またこの空間にいる人々の正の感情によって空間が作用するように。

 

「くそっ……だったらもう一度お前達に絶望を味わせるまで!!」

 

ネオボトムが力を解放すると凄まじいオーラを放出する。その風が駆け抜ける中、プリキュア達は妖精組やローズマリーの応援の元で戦う力を取り戻す。

 

「皆さん。行きましょう……。ここからはヒーロー達の出番です!」

 

それと同時に27人の少年少女達は光と共に再び戦うための姿、プリキュアへと変身する事になるのであった。

*1
あげはが二文字で何を言ったかはご想像にお任せします。




また次回もお楽しみに。
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