熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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繰り返される悪夢 ヒビだらけの結晶

ユキは悪夢を見ていた。暗闇の中、キュアスノーになったユキは地面に叩きつけられると体中に痛みが走る。

 

「はぁ……はぁ……ッ」

 

スノーが痛みを押し殺して立ち上がる中、その周囲を見るとそこには同じように変身して戦っていたであろうサンライズ、スカイ、プリズムも同じように傷だらけで倒れていた。

 

「ランボーグ」

 

目の前にいるのは空中に浮かび、胴体が長く伸びた巨大なランボーグ。スノー達はこのランボーグ相手に挑むものの、一方的にやられてしまっていた。

 

「皆が倒れてるんだから……私がやらないと……私が、私が!」

 

スノーはランボーグへと必死に立ち向かう中、ランボーグからの拳が迫ると二つの拳は激突する。だが、パワーの差は歴然なのかスノーはすぐに押し負けて撃墜。

 

「あ……ううっ……」

 

スノーは痛みで体が動かしにくい中でも必死に立とうとする。そんな時だった。ランボーグはスノーへと突進するとスノーはどうにかそれを受け止めようとする。

 

「止めなきゃ……ッ、ああっ!?」

 

スノーはなす術なく近くの建物の壁に激突して変身解除。ユキの姿となると周囲に発生した砂埃を吸ってむせてしまう。

 

「ゲホッ、ゲホッ……ッ!?そんな……変身が」

 

ユキの顔は絶望色に染まっており、ランボーグはそんなユキを見て鋭く眼光を光らせる。

 

「……う、ううっ……」

 

ユキは他の三人が倒れている今、自分が戦わないといけないとどうにかもう一度変身しようとペンを手にした。……しかし、ユキにはペンを握る力さえも無いのかそのペンを落としてしまう。

 

「ランボーグ!」

 

そんな中、ランボーグは壁にめり込んだ状態のユキを無視すると下にいるスカイ達に視線を向けた。

 

「え……嘘、だよね?」

 

ユキが嫌な予感がしてスカイ達の方を向くとランボーグは傷だらけのスカイとプリズムを捕まえてしまう。

 

「止め……て、お願い、お願い!」

 

ユキが必死に懇願する。自分の力では誰も守れないし、誰の力にもなれない。そう思い知らされるのが嫌で必死に止めるように言う。

 

「ランボーグ!」

 

その瞬間、ランボーグから放たれた強力なエネルギー光線に巻き込まれたスカイとプリズムは爆散すると跡形も無くなってしまっていた。

 

「あ……ああっ……」

 

ユキの顔は青ざめており、目の前で起きてしまった光景から目を逸らしたかった。しかし、何故か呪われたかのように頭が動かない。まるで目を逸らすなと言わんばかりに動けないのだ。

 

「……嫌だ……嫌だ……」

 

それからランボーグは戦いに巻き込まれたであろうあげはやヨヨ、更にはいないはずのソラやましろの家族も消し去ってしまうと最後にターゲットにしたサンライズを捕まえた。ここにいないエルは恐らくカバトン辺りに連れ去られてしまったのだろう。

 

「もう私から……これ以上大切な人達を取らないで……私を一人にしないで……」

 

ユキは怖かった。自分の周りから大切だと思える人達が誰一人としていなくなるのは。幼い頃にも似たような状況にユキは陥ったのだが、その時立ち直れたのは最後に残ってくれたソラがずっと味方でいてくれたからだ。

 

今回の場合はその最後の一人……サンライズことアサヒさえもユキから奪われようとしている。

 

「お願い、一人なんて嫌!こんな心細い思い……二度としたくない!」

 

ユキは必死に動こうともがく。今自分が建物の壁に拘束されてる事など構わず抜け出して助けるべく走ろうとする。

 

「ユキ……ごめん……」

 

サンライズからの弱々しいその声を聞いた直後。サンライズもランボーグによってユキとは別の建物の壁に押し付けられる形で叩きつけられ、そのまま消滅してしまった。

 

「……嫌……嫌……」

 

ユキの視界が真っ暗闇に包まれていく。全ての心の支えが折られて、目の前に残ったのは誰も自分を受け入れてくれないような冷たい目線だけ。ユキはそんな状況下で……耐えられるはずが無かった。

 

「嫌ぁああああっ!」

 

その瞬間、ユキは目を覚ますと布団から飛び起きる。周りはまだ暗い夜だった。時刻は未だ深夜。しかし、体は既に汗でベタベタ。ユキはそんな中で青い顔をして唇がカラカラに乾いている。

 

「……何で、ここ最近こんな夢ばかりなの……」

 

ユキは自身の手を見るとそれは震えていた。目の前で大切な人達を消されてしまう夢を見るのはこれで何度目だろうか。見始めたのはましろがプリキュアとして覚醒したあの日から。日付は何日も経過しているが、目を閉じればこの夢ばかりが脳内再生されるのだ。

 

「……ねぇ、キュアブリザード!何か知らない?」

 

ユキは焦ったようにスカイトーンに問いかける。キュアブリザードなら何かこうなった理由がわかるかもしれないと質問したのだ。しかし、ブリザードからの返事は無い。

 

「何で、何で答えてくれないの……」

 

ブリザードにも無視されて弱りきったユキ。ひとまず寝て疲れを癒そうとまた寝転ぶ。どうか今度は良い夢を見れるように……。そう願いながら。

 

しかし、残酷にもその夢は繰り返される。しかもこの夢の厄介な点は途中で起きる事ができないのだ。その長さは毎回違うものの、ユキは最終的に大切な人全てを失ってようやく目覚める事になる。そんな終わらない悪夢地獄にユキはうなされつつ必死に耐えるのだった。

 

翌朝の早朝、ソラがいつも通りに早起きしてランニングに行こうとする。そんな時、玄関にユキの靴が無い事に気がついた。

 

「ッ、ユキさんの靴が無い!?まさかまた!!」

 

ソラはまたユキが一人で飛び出しては無茶なトレーニングをしに行ったと考えると慌てて過去をランニングしつつ追いかける。

 

「(あれだけダメだって言ったのに……何で。このままじゃ、このままじゃ……私がここ最近見ているあの夢みたいに……)」

 

ソラは内心でそう思いつつ必死にユキを探す。加えて、ソラの顔も何かあったのか、普段より疲れたような物になっている状態だった。しかし、どれだけ走ってもユキの姿は見当たらない。

 

「(そんな……ユキさん!)」

 

ソラはこれ以上はましろ達に話すべきだと考えて家に戻るとソラの心配が杞憂であったのか、ユキの靴がしっかりと置いてあった。

 

「良かった……ユキさんが無事で……」

 

ソラが安心した直後、虹ヶ丘家の居間からは慌てたましろの声が聞こえてくる。

 

「待って!?ユキちゃん、パン!」

 

「え?きゃあっ!?」

 

その瞬間、“ボン”という大きな音が聞こえると同時にユキからの悲鳴が響く。ソラがそれを聞いて何事かとそこに向かうと焦げ臭い匂いがキッチンに漂っており、エプロン姿のユキが焦った顔つきをしていた。

 

「あ……ああっ……」

 

ユキは“やってしまった”と言わんばかりの顔つきで真っ黒に焦げて朝食のパンを見ており、更に見渡してみると黄味が崩れた目玉焼きや少し変な匂いがする野菜炒めやソーセージ。味噌汁も見た目上は問題無いが、この様子だと味噌の入れ過ぎ等のやらかしをしたのだろう。ユキの前には散々な朝食ができていた。

 

「ユキ……ちゃん?」

 

「はうぅ……ご、ごめんなさい……」

 

ましろに言われたユキは慌てて土下座をすると頭を擦り付けて謝る。そんな彼女にましろも流石にそこまでやらせるつもりで言ってないのか慌てた。

 

「ユキちゃん、頭を上げてって。誰にだって失敗はあるから……ね?」

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

ソラが唖然とするとそこに後から出てランニングから帰ってきたアサヒも到着。とにかくその場の二人に事情を聞く事になった。

 

「えっと、これは……」

 

「ユキちゃん、今日の朝ご飯は私一人で作るって言い出して。心配だから私が隣にいたんだけど……」

 

ユキはましろに側にいてもらった状態で料理をしたのだが、それでも調味料の入れ間違えや焼き加減で失敗。焦りまくった所に目玉焼きの黄身崩しで追い討ちされてからパンを焦がしてオーバーキルと言った流れだった。

 

「その……実はユキさん、料理が苦手で。私の家にいた時もママの手伝いをしながら料理を少しずつ勉強して。スカイランドの料理だったら少しは作れるようになったんですけど……」

 

ただ、こちらの世界の料理はスカイランドのそれとは異なっていた。なので初めて扱う器具とかもあり、ユキは焦ってしまったのだ。その結果がこの惨状である。

 

「そうだったんだな」

 

「ユキちゃん、これからは私達が手伝うから……ね?」

 

そんな中、ユキはその場の話が全く耳に入っておらず。そして、心の中で自分を責め続けていた。戦いだけでなく日常生活でさえ足を引っ張るなんてあってはならないのだと自分に言い聞かせていたのである。

 

「(このままじゃ……また皆の足手纏い……それじゃあダメなのに……私がしっかりしないとなのに)」

 

「ユキちゃん?大丈夫?」

 

ましろは呼びかけても返事をしないユキへともう一度話しかける。ユキはその声がようやく届くとましろ達の話を無視してしまったと思い至って慌てて返事を返した。

 

「ッ……は、はい!」

 

「また無茶とかしようとしてない?私達がいるんだから少しは頼って……」

 

「ひっ!?ごめんなさい!ごめんなさい!次は失敗しません!だから、だからお願い……一人にしないで……」

 

「え!?」

 

急にユキが正気に戻ったかと思ったらいきなり自分のやらかしについて謝罪。加えて何故か一人になってしまうのを過度に怖がり出した。

 

「待てよユキ」

 

「ッ、アサヒ君も……気に入らないなら私がアサヒ君の分も……」

 

「取り敢えず落ち着けって。誰もユキを責めてなんか無いし、見捨てたりなんてしないから」

 

「ほ、ほんと……?私に嫌気が差して知らない間に捨てるとかしないよね……」

 

ユキの声色は恐怖に怯え切っており、それはまるである意味周りの三人の事を信じていないようにも見えてしまう。

 

「大丈夫だって。というか、急にどうしたんだよ。この前はいきなり無茶なトレーニング繰り返してぶっ倒れるし……今度は捨てられるのが嫌って……」

 

「ッ、ごめんなさい!……私なんかが変に騒いで……」

 

ユキはそんな事まで言い出すと完全に錯乱状態に陥ってしまっていた。そんな彼女にソラはそっと手を取る。

 

「ユキさん……あの時の事を思い出したんですよね……。大丈夫です、私はちゃんとここにいますよ」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

ユキは錯乱した挙げ句、発作のような過呼吸状態に陥っていたが、ソラの手を握ると少しずつ落ち着いたのかどうにか正気を取り戻す。

 

「ソラちゃん……ごめんね。ありがと」

 

それからユキは助けてくれたソラへと感謝の言葉と謝罪を口にした。そんな当のソラも不安そうな目をユキに向ける。

 

「ソラちゃん?」

 

「いえ、大丈夫です。……少し、私の方で考えの整理をしてただけなので」

 

「う、うん。……それと、ましろちゃん。アサヒ君……その、ごめんなさい」

 

ユキはまた自分のせいで二人に迷惑をかけたと謝罪。それから落ち込んだような様子で食卓についた。

 

「はぁ……」

 

この時点でアサヒは嫌な予感がするとそっとましろへと小声で話しかける。それは今目の前にいる二人の事だ。

 

「ましろ、多分これ……二人共不味いかも」

 

「えっ?ソラちゃんも?」

 

「……ああ。下手したら二人がバラバラになる危険もある」

 

「そんな、私達はどうしたら……」

 

「ひとまず様子を見るけど、それぞれ個別で話を聞いた方が良いかも」

 

アサヒのその言葉にましろは頷く。ひとまずユキとソラは精神状態が危険だと判断した彼はそれぞれで二人のフォローをするべきだと考えるのだった。

 

それから一同はご飯を食べ終わるとまたいつものようにエルにミルクを飲ませる。

 

「そうだ。皆に後で話しがあるから片付けが終わってから私の部屋に来てちょうだい」

 

「「「「え?」」」」

 

四人は口を合わせて疑問符を浮かべる。それからましろはヨヨに近づいて他の三人に聞こえないようにしつつ質問した。

 

「えっと、それって今すぐじゃないとダメ?」

 

「可能なら早い方が良いわ。ユキさんやソラさんの事が心配なのはわかるけど……できれば私の話を先にしたいの」

 

ヨヨはアサヒとましろの思考をちゃんと理解しており、二人がスカイランド組の二人へのフォロー前に話をしたいと言い出す。

 

「……わかったよ。アサヒ」

 

「ああ。じゃあ後でだな」

 

そんな中、ユキは未だに落ち込んだままでボーッとした顔で淡々と片付けをしていた。ソラの方もいつもより明らかに口数が少ない。そんな二人をエルは不安そうに見つめる。

 

「えるぅ……」

 

「……大丈夫だ。きっと二人なら大丈夫」

 

アサヒは不安がるエルへとそう言い聞かせた。ここでエルに不安を伝播させて泣いてしまうと話をするどころでは無くなってしまうためだ。それから四人は片付けが終わったという事で早速ヨヨの部屋へと移動。

 

それから四人はましろがエルを預かる形でミラーパッドを手にしたヨヨと向き合う。全員が揃ったというわけでヨヨは早速話を始めるのだった。




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