熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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熱中するましろ 追い込まれたバッタの頼み

ユキ達はましろが虹ヶ丘家に帰った後、エル、らんこ、そして男の子との砂場遊びが終わるまで見届けてから家に戻った。

 

また、バイトを終えたあげはや図書館で絵本を描くときのコツが記された本を借りてきたかけるも戻ってきている。しかし、未だにましろは部屋から出てこなかった。

 

「えっ!?じゃあ昼間からずっと絵本作ってるの!?」

 

「ええ」

 

「俺が図書館に本を借りるために行った時はまだそこまでやる気を出してなかったよね?」

 

あげはとかけるは知らない間にましろが本気で絵本を描く事に挑戦しているという事実を聞いて驚いていた。

 

「私達もましろさんが家に帰ってからここに戻ってくるまでの事は知らないけど、でも一つの事に集中して取り組んでいるって感じはするのよね」

 

ヒョウがそう言うとあげはもかけるもましろがそれだけ絵本作りにのめり込んでいる事実を聞いて関心していた。

 

「あんなましろさんは初めて見るわ」

 

「……だとしたら、それはらんこちゃんのお陰だな。あの子が描くためのヒントを出してくれたようなものだし」

 

「そうだね!……向こうの世界のらんこちゃんと一緒で、色々と助けられてばかりだよ」

 

そんな風に話す中、ツバサが抱えているエルはソラの方を向いていた。彼女の顔つきは少し暗そうに見えたのである。

 

「……しょーら」

 

「は、はい!エルちゃん、何でしょうか?」

 

「げんきだして」

 

「ッ……」

 

そのタイミングでやかんのお湯が沸騰したのか、音が鳴り響くとそれを止めにかけるが動く。その後をあげはが追い、二人はある準備を始めた。するとソラは小さく呟く。

 

「ましろさん……無理しているのではないのかなって」

 

「……俺はましろを信じてるよ。ましろの事は小さい頃からずっと見てきてる。それこそ親の都合で離れざるを得なかったあげは姉よりも。あの時の目は……少なくとも、無理したときの思い詰めた目じゃなかった」

 

「ですが……私はましろさんに我儘を言ってしまったんですよ?」

 

そんな中、ソラの方へとかけるがトレーを持ってきていた。そこに乗っていたのは先程まで沸かしていたお湯を使った紅茶とそれに足すためのミルクや砂糖。それに近くにはクッキーがあった。

 

「はい、ソラさん。ましろさんが心配なら、一度様子を見てきたら?」

 

「かけるさん……って、あれ?このクッキーって……」

 

そこにあったのは普通のクッキーでは無く、ましろが好きなラベンだるまちゃんを現したクッキーだった。

 

「あはは、見よう見まねだけど、作ってみちゃった。流石にましろんみたいな精度は出せなかったけどね」

 

どうやらこのクッキーはあげは作らしい。彼女がこれを作る関係でかけるは負担を減らすためにそのサポートをした形となる。

 

「あげはさんも……。ありがとうございます。私、行ってきます」

 

それからソラがトレーを持って移動する中、ツバサがかけるへとコッソリと問いかけた。

 

「そういえば、かけるさんってあげはさんのサポートを結構しますよね」

 

「そう感じる?」

 

「まぁ、ボク達は皆そう思ってますよ」

 

「……皆はスカイランドに行ってたからあまり知らないかもだけど、俺はその間に色々と助けられちゃってさ。その恩返しがしたいっていうか。少しでもあげはさんのやりたい事を助けられたらなって思うだけ」

 

ツバサは二人の間に何があったのかはわからないが、それなりにかけるがあげはに恩を持ってるという事は理解。だからこそあげはがやりたいと思った事を自分は手伝うべきだと信じていた。それが、かけるにとってのあげはへの恩返しになると。

 

「かけるさんも大変ですね」

 

「ううん。俺は結構楽しいよ。あげはさんの事を手伝えて、頼りにされるのは」

 

そんなかけるの話を聞いて自分もヒョウのために何かしたら彼女は喜ぶのだろうか。彼は反射的にそう考えるのであった。

 

それはさておき、ましろの部屋に向かったソラは彼女の部屋のドアをノックする。

 

「ましろさん!お茶を持ってきました!」

 

しかし、部屋から聞こえるはずのましろの返事は無い。そのため、ソラは一言断りを入れてから入る事に。

 

「は、入りますよ?」

 

それからソラはドアを開けると恐る恐る入っていく。それから彼女はましろが座っている彼女の机の空きスペースにそっとトレーを置いた。

 

「そーっと……」

 

ソラはましろが集中しつつ絵本の制作をしているのを見て自分が心配したような無理はしてないと判断。邪魔をしないようにそっと部屋から立ち去ろうとした。

 

「……ありがとう、ソラちゃん!」

 

「ふぇっ!?は、はい!」

 

ソラはいきなりましろにお礼を言われつつ呼び止められて慌てて驚きながら振り向くと彼女は絵本を描く作業に没頭しながらも、彼女は楽しそうに絵本を描いていた。

 

「なんかね、凄っごく楽しいの!」

 

「……ッ!……はい!」

 

ソラはそんなましろの様子に一安心の気持ちになるともうましろの事を心配しなくて大丈夫だと判断。そのまま部屋を出て行くことになる。

 

同時刻。ソラシド市の街を見下ろせる高台にて。バッタモンダーが一人、苛立ちを溜めているのか脚をトントンと揺すっていた。

 

「何でだ……何でこの俺がここまで失敗ばかりするんだ。……もうあの切り札を切るべきか?……いや、それをやったとして今のこっちの戦力じゃ、確実に勝てるなんて保証なんて無い。相手は八人だぞ」

 

バッタモンダーにはどうやら奥の手という物があるらしいのだが、それを使った所で彼女の精神は踏み潰せても他のプリキュアからの総攻撃を受けた上で切り札を上手く処理されてしまったら今度こそ勝ち目ゼロだ。

 

「クソッ。カバトンが任務をやっていた時から思ってたが、相手の人数が多すぎるんだよ」

 

そんな中だった。バッタモンダーの後ろから風が吹くと一人の男が出てくる。……ヒューストムだ。

 

「クソバッタ。俺をこんなタイミングで呼び出して何の用だ?まさかまたくだらない愚痴を言うためにここに呼んだわけじゃないよな?」

 

ヒューストムはバッタモンダーをギロリと睨みつける。彼は正直、この頼り無さすぎる相方に嫌気が差していた。負けてもそれは自分が本気を出さないからだと言い張って自分の弱さから目を逸らすこの男が、ヒューストムは気に入らなかったのだ。

 

「……なぁ、ヒューストム」

 

「何だよ?変な事言い出したらお前をぶちのめすぞ?俺は少しばかり気が立ってるんだ」

 

ヒューストムとしては残り一ヶ月でプリキュアを仕留めてエルを奪い取らなければ後は無いと言われている身。可能ならこんな所で余計な時間を使いたく無いのだ。

 

「もう一度ハッキリ言って欲しい。……俺は、アイツらに単独で勝てそうか?」

 

「あ?無理だつってるだろ?そもそも、お前が単独で行っても呼び出したランボーグ瞬殺されて終わりだ。それでお前はまた言い訳を繰り返すんだろ?」

 

その言葉を聞いたバッタモンダーは悔しそうに唇を噛み締める。ヒューストムはそんな彼を見て舌打ちするとさっさと背を向けた。

 

「何を聞くかと思えばそんなクソみたいな事か。……これ以上は時間の無駄だ。じゃあな」

 

「……待ってくれ!」

 

バッタモンダーに呼び止められてヒューストムは止まる。次の瞬間、彼の姿がブレるとバッタモンダーは胸ぐらを掴まれていた。

 

「あ?お前良い加減にしろよ?いつまでお前は時間の無駄遣いができると思ってんだ?もう俺には後が無くなってきてるんだよ。勿論お前もな?わかったら俺の時間を無意味に取るんじゃ……」

 

「……頼みがある」

 

バッタモンダーの顔つきはヒューストムが今まで見た事無い程に真剣な物である。彼の一言を聞いてヒューストムは彼が話しやすいように手を離した。

 

「言っておくがお前の無意味な作戦にはもう……」

 

「作戦じゃない。……頼む、俺を……強くして欲しい」

 

「……理由ぐらいは聞いてやる。話してみろ」

 

それからバッタモンダーはヒューストムへと腹を割って己の過去を話していく。

 

「……なるほどな。お前は元々アンダーグ帝国では力の無い落ちこぼれだった。だからこそ力では無く頭を活かして自分の存在価値を見出そうとしたと」

 

「ああ。だが、もう今のプリキュア相手には俺がどれだけ使える策を用意しても勝てる気がしない。……頼む、これは嫌々だったとしてもここまで一緒に戦ってくれたお前にしか頼めないんだ」

 

恐らく、ヒューストムはそれを聞いて少し考え込む。恐らくバッタモンダーはアンダーグ帝国では肩身の狭い思いをしてきている。加えて、今の自分達の上司や主君には見放されていると来た。そうなると必然的に頼れるのはここまで一緒に仕事をしてきた自分しかいない。

 

「……今からアイツらレベルに一ヶ月でなるのは多分無理だぞ?」

 

ヒューストムも実力を知り尽くしている自分がトレーニングして強くなるのと力の使い方さえまともにできないような人間を他人視点から強くするのではまるで訳が違うと理解していた。

 

「煩せぇよ。俺だって……俺だって本当は……必要とされたいんだ。わかってる。自分にその才能が無いことくらい。一度逃げてしまった自分にはそんな事できないってよ」

 

バッタモンダーの声色は弱々しかった。ヒューストムにとってそんな彼の事を見るのは初めてだ。何しろ、自分がアンダーグ帝国に入って以降。こんな風に弱っているバッタモンダーを見た事が無かったのだから。

 

「お前も苦労してきた側だったとはな」

 

それからヒューストムは少し考えるとバッタモンダーの方を真剣な顔つきで見据えた。

 

「……バッタモンダー」

 

「何だよ」

 

「そんな事を言ったって俺はお前の事を見直すつもりは無いし、今もお前の事を見下している」

 

「やっぱりお前はハッキリ物を言うな」

 

「……もし俺やアイツらに自分の存在価値を見直して欲しいと思うのなら……死ぬ気で着いてきて強くなれ。次に逃げたらその瞬間見捨てるからな?」

 

ヒューストムは遠回しで棘のある言い方だったが、バッタモンダーを強くするためのコーチになる事を受け入れた。

 

「ヒューストム……お前」

 

「ただし。今のお前が中途半端な強さでプリキュアの前に出られたらこっちも困る。だから、暫く出撃は控えろ。俺の想定する最終決戦には間に合わせてやる。その時にお前の切り札と一緒に奴等に見せてやれ」

 

こうして、バッタモンダーはヒューストムの指導の元で鍛えられる事になった。ヒューストムはそれからバッタモンダーを抱えると彼の修行場所として相応しい場所を探すべく竜巻を纏って夜の空へと飛び立つ事になる。

 

〜おまけ〜

 

この日から数日が経過したある日の放課後ぐらいの時間帯。ソラシド保育園をツバサ、ヒョウ、あげは、かけるの四人がとある差し入れを持って訪れていた。

 

「こんにちは」

 

「あっ、あげはせんせいたちだ!」

 

園児達が自分達を訪問してくれた四人へと嬉しそうに駆け寄っていく。ちなみにエルはヨヨに任せている状態であった。

 

「皆、今日は差し入れとしてアップルパイを持ってきたよー!」

 

その言葉を聞いた園児達は歓喜の顔を浮かべる。一応この事は事前に保育園側にちゃんと通達してあるために問題は無い。それから例の如く園児達が一列に並ぶ中、アップルパイを一切れずつ園児達に渡していく。

 

「あげはせんせい、かけるせんせい……こんにちは」

 

最後に来たのは園児らんこであった。彼女は少し気恥ずかしそうな顔つきで二人に話しかける。らんこの態度はツバサやヒョウと比べると歳の差が大きいという事でまだ少し恥ずかしさがあるのだろう。とはいえ前は全く話せなかったのに対して、今回はちゃんと二人の顔を見て話せている。それだけらんこが成長したという事だろう。

 

「らんこちゃん、何が欲しいの?」

 

「ッ……」

 

その言葉はかつて保育園での初実習をした際も二人から問われた言葉だった。前はそれに対する返事をちゃんと言うことができずに騒動へと発展した。だが、今は違う。らんこはもうあの時のらんこじゃ無い。

 

「その……アップルパイをください」

 

「ふふっ。……ちゃんと言えたね!」

 

「はい、どうぞ!」

 

らんこはアップルパイを受け取るとそのサイズが他の子よりも多少大きいのを見て首を傾げた。

 

「せんせい、なんでわたしのだけ?」

 

「……エルちゃんの面倒を見てくれたお礼だよ」

 

「それと、この前のアップルパイの分。まだらんこちゃんに食べてもらってなかったからさ」

 

その言葉を聞いたらんこは嬉しそうにアップルパイを頬張ると幸せそうに微笑む。そんな顔を見てツバサやヒョウはとても微笑ましい物を見ていた。

 

「本当に幸せそうですね。らんこさん」

 

「うん。向こうの世界のらんこさんにそっくりだよ」

 

「はむっ……きゅ、きゅうじゅうごてん!」

 

「95点?」

 

「わたしね、たべたアップルパイにてんすうをつけてるんだ!」

 

その様子を見て四人は顔を見合わせるとクスリと笑い始める。世界が違ってもここまで二人は似るものになるのだと、一同はそう感じる事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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