熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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ヨヨの畑と畑を育ててくれた者

畑に到着したユキ達一同。早速ヨヨが栽培している畑の様子を見てみたのだが……。

 

「……嘘……だろ?」

 

「「「ふわぁあっ!」」」

 

アサヒはその様子を見て絶句するとユキ、ソラ、ましろの三人は目の前に広がる光景に感嘆を漏らしていた。というのも、今年始めたばかりの畑と思えない程に広い敷地に数多くの野菜ができている状態だったのである。

 

「待って待って、私もこれは想定外だったんだけど……」

 

「うん。今年から初めてこれって。しかも一人で育て切るって……。ヨヨさん凄すぎでしょ!?」

 

ヒョウが唖然とした顔つきになる中であげはもビックリした様子だった。そんな中、ヨヨが微笑むとある事実を口にする。

 

「ふふっ。確かに、今年から始めたばかりというのは本当の事よ。……でも、幾ら私でもここまでを一人で全部は無理だわ」

 

それを聞いてかけるを除いた全員が滑る。ではどうやってやったのか。ヨヨは指を指すとその先に一人の女性が畑仕事の服装でいた。

 

「あっ、皆さん!お久しぶりです!」

 

「え!?あなたは……エンジェリーさん!?」

 

何とそこにいたのはスカイランドに行ったはずの元・ドリームホテルをたった一人で経営していたエンジェリーである。彼女は元々オートマターという事で機械だったが、今はもう一人の女性として元気に生きている。

 

更によく見ると奥の方で何人か作業する影もおり、エンジェリーが促すと彼等もやってきて真っ先にヒョウへと声をかけた。

 

「ヒョウお嬢様!」

 

「お久しぶりです!」

 

「あなた達は確か、前にスカイランドに行った時に家にいた……」

 

ヒョウに声をかけた人間。彼等をヒョウは知っていた。それもそのはず、ヒョウが前にスカイランドを訪問した際に実家に戻って見知った顔だった。恐らく、ほぼ全員プニバード族の者だろう。

 

「ヨヨさん、これってどういう事ですか!?」

 

「実はね、前にスカイランドのトンネルを繋いだ後に偶にスカイランドに戻っていてね。その時私が畑をする事を偶々ヒョウさんのご両親に伝える事ができたのよ」

 

〜回想〜

 

時間を少し遡る。スカイランドで王様や王妃様が呪いにかかってしまってから数日後の事。ヨヨは特効薬にするためにキラキラエナジーを集める事を提案してから改めてそれが効くという確証を得るために症状を見に行っていた。

 

「ヨヨ先生。お久しぶりです」

 

「ご無沙汰しておりましたか?」

 

そのタイミングでヨヨは丁度今後について話し合うためにプニバードの村から呼ばれていたヒョウの両親に出会う事になる。ちなみにヒョウの両親は幼い頃、ヨヨを教師として色々と指導を受けていたらしい。

 

ただ二人はヨヨの教えを受けて卒業し、成功を収める間に自分達はできる側の人間として調子に乗ると少しずつ傲慢になってしまったのだとか。その結果がヒョウへの虐待にも近い待遇だったようだ。

 

「あなた達も久しぶりね。……その感じだとヒョウさんとの確執も取れたみたいで良かったわ」

 

「ええ、その節はご迷惑をおかけしました」

 

「親として私達は最低だと戻ってきたあの子を見て自覚しました……」

 

二人がそう言う中、ヨヨは先生としてもう一度二人を指導し直すために普段より少し厳しそうな口調で二人を叱るように言った。

 

「……私に昔、色々と教わった身としてわかると思うけど改めて伝えるわ。……失われた時間はそう簡単に戻らないのよ。二人共、今回の事でよくわかったでしょう?」

 

「「はい……。重々思い知ってます」」

 

「そう。じゃあ、この話はもうお終いにするわ。……折り入って二人にお願いがあるの」

 

それからヨヨからの頼みとあればとヒョウの両親がヨヨの畑を手伝うための人手を度々派遣するようになったらしい。そこにやりたい事が見つかってなかったエンジェリーもお試しで来てみた所、楽しみながらやれてるのだとか。

 

〜現在〜

 

「毎日ずっとってわけじゃ無いけど私がスカイランドに行った時にこことスカイランドを直接繋げる場所を作っておいたからここもいつでもスカイランドからお手伝いが来れるようになったのよ」

 

「俺はヨヨさんからエンジェリーさん達が来てることをそれとなく聞いてたけど、ここまでになってるとは思ってなくてビックリだったよ」

 

かけるがそう言うと彼だけ他の面々と比べて反応が少し薄めだった理由も納得ができた。そんな中でヒョウは拳を握り締める。

 

「お父さん……お母さん……。今まで頼まれてもそんな事するような人じゃ無かったのに……」

 

するとそこにヨヨが優しく肩を持つと微笑みかけた。それからヨヨが優しい口調で話す。ヒョウの両親はヨヨと話をした時に相当申し訳なさそうにしていたらしい。

 

ヒョウとしてはまだやっぱり苦手意識はあるものの、ヨヨの言う事なので本当に反省した姿を見せたのだと考えると少しだけ気持ちは軽くなった。

 

「とりしゃん!」

 

するとキョロキョロと周りを見渡していたエルがある物を見つけて指差す。そこにあったのは畑の近くに建てられた竿からぶら下がってる猛禽類の鷲をモチーフにした模型があった。

 

「あの鳥さんはね、他の鳥さんが野菜を食べてしまわないように畑を見守っているの」

 

「あっ、だから鳥を食べる肉食の鳥をモチーフにした模型なのか」

 

アサヒは鳥は鳥でも猛禽類をモチーフにした理由に納得がいく。加えてソラが補足するように話した。

 

「こちらの世界の鳥さんは私達とお話しできませんからね」

 

そんな風に話しているとツバサが模型に既視感を覚えたのか、声を上げる。

 

「そういえば、あの模型って確か……」

 

「うん。前にツバサと私で作った模型だよね」

 

それはツバサとヒョウ(男装時)が二人で空を飛ぶ仕組みを解明するために作っていた模型だった。ただ、その時に二人揃って夢中になったせいか必要数を遥かに上回る模型の数を作ってしまっていたのだ。

 

「ええ。ツバサさんとヒョウさんが作りすぎて要らなくなった模型を使わせてもらったのよ」

 

「畑に使うって言ってくれたらもっとちゃんと作ったのに……」

 

「ふふっ、十分凄いわよ。おかげで野菜がちゃんと育ってくれたわ」

 

ヨヨの言う通り二人が作った模型は割と精巧であり、鳥への威圧感もしっかり出ていた。流石に人間が見たら作り物とわかるものの、鳥が見たら捕食者が近くにいると思って中々近寄れなかったはずである。

 

「そういえば、ヒョウちゃんも作ったって事だよね?凄くカッコ良くできてるね!」

 

「ヒョウちゃん、前に保育園の壁画アートに参加した時も絵が普通に上手かったし」

 

ましろやあげはに褒められたヒョウは僅かに気恥ずかしかったものの、褒められて嬉しさがあった。

 

「で、でもツバサ君に比べたら……」

 

「褒められたんだからそのくらい素直になれって。ユキもそうだけどお前も謙遜し過ぎだっての」

 

アサヒにそう言われてユキは苦笑い。ヒョウも小さく頷いた。この時に赤くなり過ぎてアサヒに揶揄われ、ヒョウが顔を赤くしながらいつも通りアサヒの脛を蹴る事になる所までがセットだ。

 

「あ、そういえば気になったんだけど……鳥がいなかったら虫はどうするんだ?確か野菜の葉っぱを食べちゃう虫もいたはず……」

 

かけるは少しその点を不安にしていた。ここ最近は農薬とかもあって虫に対する抵抗力は強くなったものの、薬品という事は種類によっては体に害が出ないとは限らない。加えて、鳥が近づかないという事は虫を捕食してくれる者がいない事になる。

 

「え?それってプニバードの皆さんじゃどうにかできないんですか?」

 

「は?アサヒ、アンタ嫌味でそれ言ってんの?」

 

ヒョウは先程アサヒが自分に蹴られたためにアサヒが嫌味として言ってるように捉えた。

 

「いや、何で嫌味になるんだよ」

 

「あのね、アサヒ君……。スカイランドにいる普通の鳥さんは兎も角なんだけど……。プニバード族に限って、虫はあんまり食べないの……」

 

その言葉を聞いてアサヒは凍りつく。そもそもこの世界の常識として山に住む鳥は基本的に虫を食べる事を大前提としていた。勿論、こちらの世界において魚や肉を主で食べる鳥もいる。

 

ただ、プニバード族は魚や肉を食べるような中〜大型の鳥では無い。なので虫をあまり食べないという発想が無かったのだ。

 

「嘘だぁ!?何で……?え?」

 

「ボク達プニバード族は大昔に人間に変身できる力を手に入れましたからね」

 

「その影響なのか、味覚とかはかなり人間寄りに傾いてしまってるの。だからこっちの世界の鳥みたいに虫を好んで食べる習性は無いのよ」

 

アサヒはそう言われてよくよく思い出してみると確かにツバサやヒョウが虫を食べる瞬間は見ていない。むしろ、自分達と同じように人間のご飯を食べていた。

 

「ごめんヒョウ……。そんなつもりじゃなくて」

 

「わかったのなら良いのよ。私も気が立っちゃってたし……」

 

その後、事実を知ったアサヒと怒ってしまったヒョウはお互いに謝る形となり話題は再び害虫の話に戻る。

 

「でも、だとしたら虫の対策はどうしてるんだろ」

 

「ああ、それでしたら丁度今害虫駆除のエキスパートが来てくれましたよ」

 

「え?」

 

そんな中、一同が唖然とすると何かの羽音が聞こえてきた。それがいきなりソラの真上から飛んでくる形で出てきたのでビックリしてしまう。

 

「うわっ!?な、何ですか?」

 

「あれって確か……」

 

そこに飛んできたのは一匹の蜂であった。蜂は驚いたソラに見向きもせずに近くにあったキャベツの方に向かうとそこに取り付いていた青虫を捕らえてあっという間に肉団子にしてしまった。

 

「多分この模様。蜂さん……だよね?」

 

「うん。でも俺達がよくニュースとかで見てるミツバチとか、あと人間を襲うから注意してみたいな事を言われるスズメバチとはサイズが違うけど……」

 

その蜂のサイズ的にはそのミツバチとスズメバチの中間くらいであり、先程見た感じだと脚をダランと垂らしながらフワフワと飛ぶのが特徴的だった。

 

「この蜂はアシナガバチって言うんです。ミツバチは主に蜜や花粉を主食とするんですけど、アシナガバチはこうやって青虫とかを主で捕まえるんです。スズメバチも同じように肉食ではあるんですけど、決定的な違いは攻撃性がとても低くて私達が何かしら刺激を与えなければ向こうから手を出す事は殆ど無いんです」

 

そう言ってエンジェリーは解説する。それを聞いて頷く一同。加えて補足するとアシナガバチは攻撃性が低いのと、その活動範囲内にある青虫を軒並み撃滅してくれるので野菜を育てる農家的に見たらむしろ益虫扱いされる事も多い。

 

勿論、人間から攻撃したり巣へと不用意に近づいて敵対されたら容赦なく攻撃されるので注意は必要だが。

 

「そういえばあの蜂が捕まえた虫はどうするんだろ」

 

「あれは巣に持ち帰って幼虫の餌にするのよ。大人の蜂が持ち帰った肉団子を食べて幼虫達は育っていくの」

 

要するに蜂達も生きるために図らずとも野菜を守ってくれている事になる。蜂達からしてみたら野菜を守ると言うよりは自分達が生きるために狩りをしている形なのだ。

 

「畑の範囲がこれだけ広いとアシナガバチさんも沢山の青虫を狩れるって事で複数の巣から来てくれてるみたいで。向こうからも生きるための良い場所として好意的に見られてるんじゃないんですかね?」

 

「あはは。となると収穫中に敵対だけはしないように注意しないとだな……」

 

野菜を収穫する際に蜂に気が付かずにうっかり刺激して敵対されるとまず間違いなく危険な目に遭うのでそこは注意する事になるのだった。

 

「プリンセス、あの蜂さんを見たら無闇に手を出したらダメですからね」

 

「える!めっ!」

 

「では、ツバサ君の鳥さんやあの蜂さん達が守ってくれたお野菜を収穫しましょう!」

 

『おーっ!』

 

一同はソラの声に賛同する形で畑にできた野菜の収穫に気合いを入れる事になるのだった。

 

 

 

〜おまけ 賢い可愛いユキーチカ〜

 

時間を数日前にまで遡る。ひかるを畑での作業に誘ったその日の昼休み。ユキはひかるにある事を言われて顔を真っ赤にしつつ恥ずかしがっていた。

 

「む、無理無理!そんな台詞なんて恥ずかしいよ!大体、私そんなに可愛く無いし、賢くも無いよ!」

 

そんな風に否定するユキ。事の発端はひかるがふとしたタイミングで見つけた高校生達が学園でアイドル活動をするアニメにいたとあるキャラの声質がユキに似ているという事で彼女へとそのキャラの台詞を一回言ってみてほしいと頼み込んでいたのだ。

 

「ひかる、ユキの事をあまり困らせんなよ」

 

「まぁまぁ、一回サンプルの声聴かせるから」

 

「ったく、そんなに何を言わせた……え?」

 

アサヒがひかるにそのアニメの台詞をサンプルとしてアサヒに聴かせるとアサヒの目の色が一変。ユキは嫌な予感を感じた。

 

「あ、アサヒ君?」

 

「ユキ……頼む、言ってくれ」

 

「アサヒ君!?何言っちゃってるの!?」

 

そんな中、ソラやましろが来るとましろはユキが乗り気じゃないのに言わせるのはあまり良くないと注意する。

 

「もう、アサヒにひかる君。ユキちゃんが嫌がってるでしょ」

 

「ましろ、俺も本当は不本意なんだけどな……。アレを聞いちゃった以上ユキに言ってもらいたくなったんだ」

 

「何を吹き込まれたの、アサヒ……」

 

「そうですよ。ユキさんが嫌がってるならめっ!です……」

 

「だったらまずサンプルだけ聴いてくれ。反対するならそれから言ってほしいかな」

 

ひかるはそう言ってソラとましろにもその言葉を聴かせる。それを聞いた途端、二人も一瞬だけ凍りつく。

 

「凄い……この声、ユキさんに凄く似てますね!」

 

「確かにこれは言わせたくなるのも納得……かも」

 

「ソラちゃん!?ましろちゃんまで!?」

 

ユキは周りの人達が完全にひかるの意見に傾いてしまうと自分を助けてくれないと諭してしまう。

 

「ユキさん。頼む!一回、一回だけで良いから!」

 

「で、でも○リーチカは権利的にダメでしょ?どうすれば……」

 

「だったら……」

 

それからアサヒに権利的に言ったらダメな所のアレンジを聞くとユキは少し躊躇しつつ頷いた。

 

「う、うん……それなら……やってみる」

 

ユキがコクリと頷くと一度セミロングの髪型を偶々持っていたヘアゴムを使ってポニーテールにしてから深呼吸。それから意を決するとそのキャラの決め台詞(オマージュver)を言う事になった。

 

「か、賢い!可愛い!……ゆ、ユキーチカ!……は、ハラショー……」

 

最後のハラショーに至っては恥ずかしさのあまり顔真っ赤で俯くと細々としたような声だった。ただ、ハラショーの時のポーズはしっかり再現してくれたためにひかるは拍手する。

 

「お見事、素晴らしい!」

 

「ユキ。凄い良かったぞ!」

 

男子二人組が興奮する中、ソラやましろは苦笑い。そんな中、ユキはあまりの恥ずかしさにこれ以上はこの場にいられないとばかりにその場から逃走してしまう。

 

「ユキチカ、お家に帰るぅううっ!」

 

ご丁寧にもポンコツの方のオマージュもしてくれたひかるは歓喜したものの、アサヒやソラは慌ててユキを追って宥める事になり、その後ましろが流石にやり過ぎだとひかるの方へと説教が入った事でひかるはそのタイミングから昼休みが終わるまでの間、ずっと正座させられる事になるのだった。

 

また、アサヒも悪ノリしてしまった側という事で家に帰ってからひかると同じ目に遭ったという。

 

それ以降、滅多な事がない限りアニメとかでどれだけユキと似たような声質の人がいたからと言ってユキが嫌がるような台詞は言わせないようにするという取り決めがされる事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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