熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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飛行する敵 上昇気流を制す戦い

楽しい昼のお弁当の時間に突如として現れたヒューストム。そんな彼は笑みを浮かべるとまた前と同様にその手にはアンダーグエナジーが凝縮されたボールを持っていた。

 

「そのボールを持ってるって事は……」

 

「ああ。勿論バッタモンダーの奴から預かってきた。今日もアイツは諸事情でお休みだからなぁ」

 

ヒューストムはそう言って笑みを浮かべると、取り込ませる対象をすぐに探し出す。

 

「お、今回はアレに入れるのが面白そうだな。ならまずは……行け!アンダーグエナジー!」

 

ヒューストムの言葉と共にバッタモンダーから預かった分のアンダーグエナジーをツバサの作った鷲の模型へと取り込ませる。そして、その姿がランボーグに変わりかけた瞬間だった。

 

「更に追加だ!混ざれ!アンダーグエナジー!」

 

そこに上乗せする形でヒューストムが自分の分のアンダーグエナジーを召喚。それがツバサが鳥の模型を制作する際に彼を手伝ったヒョウの作った別の鷲の模型を取り込む。そのままアンダーグエナジーとヒョウ制作の鷲の模型は先に作っておいたランボーグへとなりかけたアンダーグエナジーと混ざり合う。

 

「まさか、あれって……」

 

「キョーボーグ!」

 

その姿は焦げ茶色と赤茶色のツートンカラーの巨大な翼。脚には猛禽類の鋭い鉤爪。頭部には二つの鷲の頭が存在し、それぞれにモヒカンが生えている。

 

「アイツ、よりにもよって少年やヒョウちゃんが作った鳥さんを!」

 

「……まさか、アレって双頭の鷲!?」

 

「そうとうのワシ……って何ですか?」

 

かけるが驚きの声を上げる中、ソラは全くもって意味がわからずに困惑する。

 

「かつて中世のヨーロッパ辺りの国が定めた国章という紋章。要するに国を代表するマークみたいな物だな。そしてそれこそがこのキョーボーグのモチーフである双頭の鷲ってやつだ。まぁ、詳しい事は知らないが俺も少しはこの世界の知識を学んでいるって事だな」

 

そんな風にヒューストムが知識を見せびらかす。この様子だと双頭の鷲のビジュアルがカッコ良いと感じたのか、それをイメージしたキョーボーグを作ってみたかったらしい。尚、それをやろうとする辺り彼の厨二病のような気質が垣間見える。するとヒューストムの話を聞いたツバサは反論した。

 

「知識は自分の力を誇示するための道具じゃない!自分や周りの人達を助けるための物ですよ!」

 

「ツバサ……」

 

そんなツバサの反論にヒョウは頷く。一方のヒューストムはそんなツバサの言葉を受けて笑みを浮かべた。

 

「あははっ。だったら同じ鳥としての格の違いをキョーボーグが見せてやる。それと、今回は俺もやらせてもらうぞ。はあっ!」

 

するとヒューストムが電撃を纏ったような風のオーラを発生。その力が周囲に駆け巡る。それはさながら人間の体に嵐の力を纏っているかのようだった。

 

「雨の中で使う嵐の能力。……中々粋な計らいだろう?」

 

「カッコ付けちゃってるし……」

 

「とにかく、お前なんかにお弁当を邪魔されてたまるか!」

 

「皆、行きましょう!」

 

それから八人が同時にプリキュアやそれに準ずる戦士達へと変身するためにアイテムを使用。その姿を変えていく。

 

「「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!」」」」」」

 

「ひろがるチェンジ!ウィング!」

 

「「デュアルファンタジーパワー!」」

 

「夜空を照らし!」

 

「希望へ導け!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜空にひろがる煌めく幻想!キュアオーロラ!」

 

「日暮れにひろがる輝く月!キュアムーンライズ!」

 

「夜空を照らす満月の輝き!アポロンムーン!」

 

「夜空を彩る幻想の奇跡!アルテミスオーロラ!」

 

「「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」」

 

「聖なる世界を汚す者よ!」

 

「光の裁きを今下さん!」

 

八人の戦士達の変身が完了すると降り立つ。今回のアポロンとアルテミスはムーンライズ、オーロラの姿をイメージしたスタイルであり、プリキュアのメイン担当はウィングだ。

 

「なら早速行かせてもらおうか!」

 

すると早速ヒューストムが指鉄砲を構えると周囲に風の弾丸が生成。それを撃つようにして射撃を放つ。

 

「ッ!」

 

「はあっ!」

 

すかさずオーロラとバタフライが盾を展開。ヒューストムからの弾丸を全て防ぐ。

 

「おいおい、後ろに守るべき人達を残した状態でまともに戦えるとか思ってねーよな?」

 

ヒューストムはそう言って煽る。今は彼の言う通り、八人の後ろには非戦闘員のエルやヨヨ、エンジェリー達がいるのだ。ヒューストムはいつも通りの卑劣な戦法でプリキュア達を翻弄する。

 

「ああもう!アイツやっぱり性格悪い!」

 

「こうなったら俺がヨヨさん達を避難させる」

 

「だったら私も!」

 

「アポロン、アルテミス、お願いします!」

 

ひとまずヨヨ達を避難させるべくアポロンやアルテミスがカバーへと動き、これで人数は六人。更にヒューストムが踏み込むとスカイの元へと一気に移動した。

 

「ッ!はあっ!」

 

二人の拳がぶつかり合う中、ヒューストムが僅かに舌打ちする。彼の中では今ので不意打ちした挙げ句、スカイを吹っ飛ばせるつもりだった。

 

「チッ……お前、強くなってるな?」

 

「当たり前です!それに、あなたのそのスピード感には慣れてきた所ですから!」

 

どうやらスカイは単純な身体能力でヒューストムの速度に対応したらしい。これまでずっとヒューストムのスピードに翻弄され続けてきたプリキュア達。だが、逆にヒューストムのスピードに翻弄され続けてきたお陰で彼のスピードに体が慣れてきたようなのだ。

 

「だったら、キョーボーグ!」

 

「キョーボーグ!」

 

するとキョーボーグが羽を模したエネルギー弾を上空から雨のように降らせる。

 

「させるか!」

 

そこにムーンライズが目標を追尾する弾丸で着弾前に全て相殺。入れ替わるようにプリズムが気弾を放つ。

 

「たあっ!」

 

「キョー!」

 

だが、キョーボーグの機動力を前に攻撃は回避されてしまう。空を自由に飛ぶキョーボーグ相手にただ闇雲に攻めただけでは攻撃を全て回避されてしまうのがオチだ。

 

「流石ウィングやアルテミスの作った鳥さん。中々素早いね」

 

「いやぁ、それ程でも……」

 

「ウィング、照れてる場合かな……」

 

「っと、すみません!」

 

バタフライに褒められて照れたウィングにオーロラにツッコミを入れる。そんな中でスカイが後ろに押し戻された。

 

「やはり、ヒューストムの相手は一筋縄では行きませんね」

 

「ふっ、俺にばかり気を取られて良いのかな?」

 

ヒューストムが笑みを浮かべるとキョーボーグが隙ありとばかりに上からまた羽のエネルギー弾を飛ばしてくる。プリキュア達はそれを回避するものの、このままでは地上のヒューストムと上空のキョーボーグ。幾ら人数で有利を取っても二箇所からの同時攻撃を相手にするのは少し厳しい。

 

「……だったら、私がヒューストムを相手します」

 

「スカイだけの負担にはしない。俺も行く」

 

「だったら私も……ムーンライズが行くなら私も行った方が……」

 

オーロラの言葉にムーンライズは首を横に振る。オーロラは何故自分が行くのを拒否するのか気になって質問を返す。

 

「ムーンライズ、どうして?」

 

「……オーロラは気弾でキョーボーグに対応してほしいからだ。アイツは厄介なことに空から攻撃してくる。それを考えたら飛び道具持ちをこれ以上ヒューストムに向けるのは良いとは言えない」

 

空からの一方的な攻撃が厄介な事は前に戦ったUFOランボーグが証明している。それに、キョーボーグというランボーグよりも上位種として出された時点でそれ以上に厄介なのは明らかだろう。

 

「作戦会議は終わった?じゃあ、そろそろやるよ」

 

ヒューストムが攻撃しようと手を翳そうとした瞬間。ムーンライズはすかさず気弾を発射。ヒューストムは不意を突かれる形で防御姿勢を取るとそれがぶつかって爆発。

 

「「はあっ!」」

 

そのタイミングでスカイとムーンライズが同時に飛び出すと二人がかりでヒューストムを抑えに行くのだった。

 

「チッ、仕方ない。だったらお前達二人からしっかり潰してやる!」

 

そんな中、上空にいるキョーボーグは一気に急降下してくると両足の鋭い爪での攻撃を仕掛ける。

 

「うわっ!?」

 

「ッ、アレに捕まったらきっとひとたまりも無いよ!」

 

キョーボーグの爪は遠目から見てもその鋭さがハッキリとわかる程度には強力だ。そのため、まともに相手をするのは得とは言えない。

 

「キョーボーグ!」

 

更にキョーボーグがもう一度急降下してくるとオーロラがまたバリアを展開……が、その威力の凄まじさにたった一撃でヒビ割れてしまう。幸いにもすぐにまた上昇したので耐えきれたものの、その恐ろしさは目に見えてわかる。

 

「ッ、このまま上から攻撃されるままは不利だよ!」

 

「多分バタフライの盾でも止められないだろうし……」

 

このままでは圧倒的不利。加えてプリズムの気弾は警戒されてすぐに回避されてしまう。

 

「あ、そうだ!こんな時は!」

 

バタフライはそう言うと自らのアイテムであるミックスパレットを召喚。そして、スカイトーンを装填して筆で色を選択する。

 

「二つの色を一つに!ホワイト!ブルー!温度の力、サゲてこ!」

 

バタフライがミックスパレットの能力を発動。筆を掲げるとそのエネルギーがキョーボーグに向けて放たれる。

 

「キョ!?」

 

キョーボーグはプリズムやオーロラの気弾は警戒してもバタフライの方は無警戒だったのか、光をまともに受ける。するとキョーボーグの体が突如として凍りついたかのように動きが鈍った。

 

「ミックスパレットにはこんな力もあるんですか!?」

 

「まだまだ見せてない力もあるよ!」

 

「というか、普段あげはさんってアゲ〜ばかりだからその逆のサゲ〜をモチーフにした力もあるってなんか意外……」

 

何にせよ、これでキョーボーグの動きは止まって落下を開始。翼も閉じてしまっているので飛ぶために羽ばたく事もできなかった。

 

「今なら!ヒーローガール!プリズムショット!」

 

そのタイミングでプリズムは巨大な気弾を放つとそれが飛んでいき、キョーボーグに見事命中。

 

「このまま押し切れば!」

 

プリズムの入れた攻撃をキッカケに反撃を始めるためにまずはキョーボーグへと向かってオーロラが跳び上がる。

 

「はああっ!」

 

しかし、これに関してはキョーボーグの動き出しが間に合うとどうにか固まっていた翼を広げ、それと同時にいきなりキョーボーグの体が上に移動して回避してしまう。

 

「嘘!?何で……」

 

ただ、この時のキョーボーグの動きは妙だった。何しろ、体が凍りついて少なくとも翼は動かせないはずなのに急に上へと上昇したのだから。

 

「上昇気流だ……。キョーボーグはきっと、空に向かって流れている空気の流れに乗ったんです!」

 

つまり、あの場面でキョーボーグの下から上へと向かう上昇気流が流れた事で間一髪、上へと向かう事ができたらしい。

 

「……確かにあの時、キョーボーグに近づいたら下から風が吹いてた」

 

「だったら、ウィングも同じ事ができるんじゃない?」

 

「私も短時間限定なら浮くことができるよ!」

 

「でしたら一緒に行きましょう!」

 

オーロラとウィングは空へと跳び上がると上昇気流の力を借りて一気にキョーボーグとの距離を詰めていく。

 

「キョーボーグ!」

 

するとキョーボーグがまた翼をはためかせるとまた羽による攻撃を仕掛けた。

 

「うわっ!?」

 

「任せて!」

 

そのタイミングででオーロラがウィングのカバーに入るとバリアで攻撃を防御。しかし、即興で張ったせいかバリアが壊されてしまうとオーロラは攻撃を受けて撃墜されてしまう。

 

「きゃあっ!?」

 

「オーロラ!」

 

「私の事を気にしたらダメ!」

 

オーロラはダメージを受けながらもキョーボーグに隙を作った。その瞬間をウィングは見逃さない。

 

「オーロラのためにも!流れを変えます!ひろがる!ウィングアタック!」

 

そのままウィングは夕日をバックにオレンジ色の光を纏って突進。するとキョーボーグの目が光ると同時にいきなりその体が二体に分離。ウィングアタックを回避してしまう。

 

「えっ!?」

 

「あんな事できるの!?」

 

これはバッタモンダー、ヒューストムのアンダーグエナジーが混ざってできたキョーボーグだからこそできた芸当である。

 

「「ランボーグ!」」

 

二体に分離した影響でパワーダウンしてランボーグとなったものの、すかさずランボーグが二体同時での翼による攻撃を放つとウィングもそれをまともに喰らって堕ちてしまう。

 

「うわあっ!」

 

「ッ!」

 

そのタイミングだった。そこに一つの影が飛んでくると落下するウィングを受け止めて着地。そこにいたのは避難誘導を終えたアルテミスである。

 

「お待たせ!」

 

「アルテミス!」

 

「あれ、アポロンの方は?」

 

「アポロンはヒューストムの方に行ってる!」

 

アルテミスの視線の先には三人を相手にするヒューストムがいた。そのため、彼は別行動である。

 

「何にせよここから反撃だね!」

 

そんな中、ウィングはアルテミスに抱えられながらランボーグ二体の更に上。雨雲が広がる空を見ていた。

 

「ウィング?」

 

「アルテミス、降ろしてもらって良いですか?」

 

「え?あっ、うん」

 

アルテミスに降ろしてもらったウィングはバタフライの方を向くと声をかけた。

 

「バタフライ、あの雲に向かってさっきのサゲる力を!」

 

「ランボーグ達じゃなくてあの雲に?よくわかんないけど、オッケー……」

 

「させねぇよ!」

 

その瞬間だった。いきなりバタフライの死角から電撃を纏った拳を背中へと叩きつけられる。

 

「ッ、がはあっ!?」

 

あまりの一瞬の出来事に一同が困惑する中、バタフライはあまりの痛みに崩れ落ちてしまう。

 

「バタフライ!?」

 

「ヒューストム、何で……」

 

「何でって、アイツら三人相手に隙を作ったからに決まってんだろ」

 

するとそのタイミングでムーンライズ、スカイ、アポロンが追いつく。どうやらヒューストムは戦いながら話を聞いていたのかバタフライをターゲットにするために三人相手に一瞬の隙を作ってすかさずバタフライへと不意打ちを決めてしまったのだ。

 

そして、彼女もいきなり走った体への痛みのせいで手にしていたミックスパレットを落としてしまう。

 

「さて、これでどうしようもできなくなったなぁ。混ざれ、アンダークエナジー」

 

ヒューストムの言葉と共に分離していたランボーグ二体がまた混ざってキョーボーグ化。アポロンやアルテミスの参加で有利になるはずの戦況がまた一転。大きな不利を背負ってしまうのだった。




また次回もお楽しみに。
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