熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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スカイランドの古い伝説 謎の白い少年

ヨヨの部屋の中、そこでヨヨと向き合ったユキ達四人とエル。全員が揃った所でヨヨは早速話を始める。丁度そのタイミングで虹ヶ丘家の玄関口付近のアーチの上ではオレンジと白の小さな鳥が日向ぼっこをしていた。

 

ただ、鳥達は話とは関係無いので置いておこう。ヨヨが話し始めたそれはスカイランドに古くから存在する伝説だった。

 

「そもそもプリキュアとは何なのかしら?古い本を調べてわかった事があるの。聞いて」

 

「あ、もしかして、スカイランドにもプリキュアが……」

 

「ええ、存在していたわ」

 

「そうなんですね」

 

アサヒがそう言ったのを見つつ早速ヨヨは四人へと話を始める。同時にミラーパッドを操作するとそこにスカイランド語で文字が描かれたとある絵が映し出される。

 

それは時間にして数百年前。遥か大昔の事であった。平和な日々が続いていたスカイランド。そんなある日……それは嵐の夜の事。突如として闇の世界の魔物達がスカイランドに姿を現すと侵攻を開始したのだ。

 

「ッ、スカイランドに現れた闇の魔物」

 

「それってランボーグなのかな……」

 

ましろが呟く中でヨヨは話を続ける。スカイランドの人々は最初その魔物達を何とか食い止めようと交戦した。しかし、スカイランドの兵士達では魔物達相手では力不足過ぎる。戦力差も明らかで絶望的な戦いを強いられたスカイランド。空は暗くなり、絶望的な状況に陥った上に街を追われて悲しみに暮れる人々。そんな時、スカイランドの姫が祈った。

 

「“ヒーローが現れて、青い空と皆の笑顔を取り戻してくれますように……と”」

 

そんな姫の祈りが空に捧げられるとその祈りに応えるように五人の勇敢な戦士達が現れた。その名はプリキュア。五人のプリキュア達は闇の魔物達を圧倒し、闇を打ち払った。プリキュア達の活躍でスカイランドの空に光が戻ったという事である。

 

「以上、これはスカイランドでもとうの昔に忘れ去られた古い古い伝説よ」

 

「伝説の戦士……五人のプリキュア!」

 

「える?」

 

ましろは話が終わると武者震いのように体を震わせるとエルへと興奮したような顔つきで話しかける。

 

「エルちゃん、もう安心だよ!伝説のヒーローが味方だよ!」

 

「えるぅ!」

 

「そっか!エルちゃんの不思議な力ってスカイランドのプリンセスパワーだったんだね!」

 

ましろは興奮のあまりエルを抱いたままその場でクルクルと回転する。それは二人揃って目を回しそうなスピードでアサヒはそんな二人に苦笑い。ふと彼はヨヨへとある事を思って話しかける。

 

「あれ?待ってください。プリキュアって五人いるんですよね?その中の一人の特徴って赤い姿をしていたりしますか?」

 

アサヒが自分がプリキュアになった際に起きた出来事。夢の中に出てきた先代のプリキュアの事からある事実に思い至るとその事についてヨヨへと質問をする。

 

「姿までは細く記録は無いけど、確かに一人は赤い衣装に炎を操っていたわね」

 

「という事はやっぱり……」

 

アサヒはその人物に心当たりがあった。それは自らに力を授けたプリキュア……キュアバーニングサンの事である。

 

「アサヒ君?」

 

「……実は、俺……夢の中だけどそのプリキュアに会ったんだ。そして、そのプリキュアから力を授かる形でプリキュアになった」

 

「そうだったんだね!」

 

「アサヒ君が先代から力を授かったと考えるとユキさんも……」

 

「えぇ、ユキさんと同じように氷の力を操る白い姿のプリキュアもいたわ」

 

ソラはユキも同じように他の四人の中の一人が力を授けた事でプリキュアになったと予想し、ヨヨがその予想を肯定。実際、その通りであるために何も間違ってない。ただ、ユキはその話を聞いて余計に気不味そうな顔つきをしていた。

 

「そんなに凄い人の力を引き継いだのが私……そんなの、今の自分じゃ……まだ荷が重過ぎるよ」

 

ユキはその話を聞いて余計に今の自分ではその椅子に相応しく無いと自信を無くしてしまう。そんなユキの不安な様子を見たソラはヨヨへと問いかける。

 

「ヨヨさん、この世界とスカイランドを繋ぐトンネルはいつ開いてもらえるんでしょうか?」

 

ソラからの質問にヨヨは僅かに言いづらそうな顔つきで答えを返す。それはソラにとっては芳しく無い物だった。

 

「……もう少しだけ、時間を頂戴。簡単な作業ではないの。百種類以上の素材を繊細な手順で組み合わせてそれから……」

 

ヨヨの言葉にソラはそんな余裕なんて無いと言わんばかりに焦った顔つきでヨヨに向かって叫ぶ。

 

「カバトンは簡単にトンネルを開いたじゃないですか!」

 

ソラは珍しくヨヨ相手に怒鳴ってしまう。その直後、ソラは焦りから自分がヨヨ相手にとんでもない事を言ってしまったと自覚。慌てて我に帰ると謝罪する事になる。

 

「ッ!!ごめんなさい!」

 

ソラはその場に居づらくなったのか、部屋から出て行ってしまう。その場に残された三人。その中でユキもコッソリその場から出て行こうとした。

 

「ユキ!待って!」

 

「ひっ!?」

 

そんなユキに気づいたアサヒが声をかけるとユキは怯え切っている状態になっているのか震えている。それからユキは恐る恐るアサヒの方を向く。

 

「何でそんなに怖がってるんだよ」

 

「ち、違……」

 

「そんなに、そんなに俺達の事を信じてくれてないのか?」

 

「ふぇっ!?そんなつもりじゃ……」

 

ユキは申し訳なさそうな顔つきをすると俯いてしまう。アサヒはユキから目線を逸らされた事にやはり自分はユキに完全に信用されてないのだと感じてしまう。

 

「なぁ、どうしてそんなに俺達を頼るのが嫌なんだよ。この前のオーバートレーニングだって、自分の弱さで悩んでるって一言も相談してくれなかったし。今回だってそう。急に不安そうな顔になったと思ったら慣れない事やって失敗して怯えて……」

 

ユキはそんな風にアサヒから言われて心の中がグチャグチャになっていく。このままでは頼ってくれない事が不満で怒られる。そう思ったユキはまた頭を下げようとした。

 

「ッ、ごめんなさ……」

 

「ほら、またすぐそうやって謝って……。どうして俺達に嫌われるのを過度に恐れてるんだよ」

 

アサヒはユキの手を掴もうとする。その瞬間、ユキは咄嗟に防衛反応をしたのかアサヒの手を弾いてしまった。

 

「嫌っ!」

 

「えっ……」

 

「はっ……ご、ごめんなさい!」

 

ユキは動揺すると青ざめた顔をしてその場から逃げるように去って行ってしまう。そんな彼女をましろとアサヒは見送るしか無かった。

 

「アサヒ……」

 

「ッ、ちょっと今のは……強引過ぎたかも」

 

アサヒはもっとユキ相手にちゃんと向き合うべきだったと後悔する。ユキがあんなに近寄るのを嫌がってたのに余計に怖がらせてしまったとアサヒは感じたのだ。

 

「アサヒ、ユキちゃんの事は一回私に任せてもらっても良いかな?」

 

「ああ、悪い……。俺は一回部屋に戻ってからソラの様子を見てくる。頭……冷やさないとソラの事も責めちゃいそうだし」

 

アサヒはユキ相手に強く接したために彼女のメンタルを余計に悪化させたという事でまずは気持ちを落ち着けるべく部屋に移動。その場にはましろと彼女が抱いたエル。そうしてヨヨが残った。

 

「……皆揃って優しい子達ね」

 

「うぇ?」

 

ましろはヨヨの言葉に困惑。ただ、今はそんな事よりもユキのフォローを第一にやらないといけないと感じて彼女の部屋に行く。それから扉をノックした。

 

「ユキちゃん……いる?」

 

ましろが優しくユキへと呼びかける。しかし、部屋からは何の反応も無い。それからましろは更に続けた。

 

「あ、あのね。アサヒも悪気があったわけじゃ無いんだよ?ユキちゃんの事が心配で……」

 

「わかってるよ……そんな事」

 

「え?」

 

そんな時、扉の向こうからは啜り泣くような弱々しいユキの声が返ってくる。彼女の声色は酷く後悔していた。

 

「……こうなったのは私が弱いせいなの。心も、体も、何もかも。皆は何一つ悪く無い……。皆が私に悪意を持ってない事くらい私にもわかる……。でも、ダメなの……私が弱いから……ちょっとの事で過剰反応しちゃうの。ソラちゃんだってきっとそれで悩んでる」

 

ユキは酷く落ち込んだ様子だった。それからましろはどうにかユキを励まそうとする。

 

「あのね、ユキちゃ……」

 

「良いよ、無理に私の事をフォローしなくたって。私に良い所なんて何一つ無いんだから……。少しだけ一人にさせて。今誰かと話して……上手く話せる気がしないの」

 

「そっか……。じゃあ、また後でゆっくり話そ。その時は、ちゃんと私達に向き合ってほしいな」

 

ユキの言葉にましろは何も言えなくなってしまう。加えてましろは今のユキには時間が必要なのだと感じると最後に一言言い残してから部屋の前を去った。それと同時にまたユキは扉を背にしてうずくまるとまた啜り泣く。

 

「うん……ごめんね、ごめんね……」

 

ユキが一人泣いてしまった後。アサヒも部屋の中でようやく気持ちを落ち着けさせると溜め息を吐いていた。

 

「はぁ……。ユキの気持ちをもっとちゃんと考えないとダメだったのに、何だよあんな強引に。アイツは人一倍繊細で傷つきやすいってわかってたはずだろ……何で俺はあんな接し方をしてしまったんだ……」

 

アサヒはユキはもう立ち直れないかもしれない。少なくとも自分の言葉では。そう考えてしまうくらいにアサヒは自分が彼女を追い込んでしまったと考えてしまう。

 

「ユキになんて言って謝ろう。……でも、今のユキじゃ俺が謝っても余計に自分のせいだって言って拗らせそうだしな……」

 

そんな時だった。突如としてアサヒは自分の部屋の窓の方から音が鳴ったのを聞き取る。

 

「……あれ?何で窓から音が……」

 

アサヒがどうして窓が開いたのかと疑問を浮かべつつその方を向く。そこにいたのは部屋の窓枠の辺りに一人の少年が立っていた。虹ヶ丘家の窓はそれなりに大きい。下手したらユキ達中学生組でも窓が開いていれば通り抜けられそうなくらいの物だ。

 

そのため、それよりも小柄な少年は窓枠に立っても頭をぶつような事態は無かった。その少年は髪はショートヘアで髪色はユキと同じで白色。背丈は小学校高学年くらいなのか、ユキ達よりも一回り幼い。瞳が薄い緑色で顔つきは美少年と思えるように整っていた。そのため、本当にユキの弟と言っても差し支えない程の雰囲気を漂わせている。

 

そんな中性的な容姿の少年が声を荒げると怒ったようにアサヒへと詰め寄って行った。

 

「……虹ヶ丘アサヒ。お前……俺の恩人をよくも……」

 

アサヒは何故この少年が目の前に来てこんなにも怒っているのか、その理由がまるでわからない。それどころか、彼の恩人といきなり言われただけでその恩人が誰かも思い浮かばないのだ。

 

「君は……誰?というか君の恩人?どういう事?」

 

「はぁ?お前、自分の言動のせいで泣かせたくせにしらばっくれるのかよ!」

 

少年の怒りは収まらず増すばかりでアサヒの思考は混乱する一方だ。どうにか少年に言い返そうとする。

 

「君こそ誰だよ。俺はここの住人だけど、君とここで会ったのは初めてだろ?」

 

「ああ、そうだよ?面と向かって会うのは初めてさ。ただ、俺の事をお前になんか名乗る義理は無い。ユキ姉の隣に居座っておきながら……よくもあんな風に泣かせて……恥を知れよ!」

 

少年がアサヒへと次から次へとキツい口調で責め立てて行く。どうやら彼はユキと知り合いらしいが、当のアサヒは初対面の……しかも歳下にいきなり説教されて混乱するばかりだ。

 

「待てよ。ユキの知り合いか何だか知らないけどさ、ここは俺……というかましろやヨヨさんの家だぞ!?勝手に他人の家に勝手にあがって……お前こそ常識を知れよこの野郎!」

 

「はぁ!?ユキ姉をあんなに傷つけておいてそんな事が言えんのかよ!」

 

流石のアサヒも少年相手にここまで責められれば徐々に苛立ちも募ってしまう。そのまま怒りをアサヒは少年へとぶつけ返す。

 

「ユキ姉ユキ姉って、ユキに弟なんていないはずだぞ!お前何なんだよ!」

 

「そういうお前こそポッと出のくせにユキ姉の側にベタベタと。お前なんかがいるからユキ姉は悲しい想いをするんだ!」

 

アサヒが怒りをぶつける中、少年は自分よりも歳上であるアサヒ相手でも一歩も退こうとしない。そんな時、流石に騒がしくし過ぎたのかましろが部屋に入ってくる。

 

「ちょっとアサヒ!何騒いでるの!落ち着くって話だったんじゃないの?」

 

アサヒはその音に気がついて振り向くとましろにひとまず自分が騒いでいた理由を弁明し、非は少年にあると言い出す。

 

「ましろ、違うんだ。聞いてくれ!今そこに知らない少年が勝手に家に侵入してきて、俺の悪口を……」

 

「え?そんな子……いないけど」

 

「そんなわけ……はぁ!?」

 

アサヒがましろの言葉を聞いて慌てて振り返るとそこには誰もおらず。少年はましろにまで姿を見られるのは不味いと踏んだのか逃げてしまったのだ。

 

「あの野郎、アレだけ煽っておいて逃げんのか!」

 

アサヒが少年を探すべく慌てて外を見るものの、近くの虹ヶ丘家の屋根に白い小さな鳥が一羽いる程度で先程の少年くらいのサイズの怪しい人影などどこにも見えなかった。

 

「アイツ……ましろに勘違いされたじゃねーか」

 

「アサヒ、どうしてあんなに興奮してたかはわからないけど今は……」

 

「ああ、悪い。ソラの事だな」

 

これ以上は少年の事を考えるだけ時間の無駄だとアサヒは考えると切り替えて部屋へと戻って行く。そんな彼へと向けられた窓の近くからボソッと先程の少年の声が聞こえてくる。

 

「チッ……。アサヒの奴、これ以上ユキ姉を傷つけたらタダじゃおかないからな」

 

その声が聞こえた直後、窓の外の虹ヶ丘家の屋根にオレンジの鳥が焦ったようにちょこちょこと歩いてくると白い鳥へと近寄る事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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