熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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分断されてしまうプリキュア 刺客達の張った狡猾な罠

ユキ達はそれぞれの内心で複雑に気持ちが交差する中、あげはの提案通りに美味しい物を食べて気分をアゲにするべく買い物に出かけた。そして、目的地であるソラシドスーパーにまで到着。

 

そこでひかると合流したユキ達はスーパーの中で買い物を済ませると出てきた。

 

「餃子!それはこちらの世界が生み出した究極のグルメ!」

 

「確かに餃子は美味しいから良いけど、まさかツバサは餃子が大好きだったなんて……」

 

今回、元気を出すための料理として選択したのはツバサの希望で餃子という事らしい。

 

「ヒョウがツバサの好みを知らなかったなんてなぁ……」

 

アサヒはヒョウを揶揄うような視線を向けるとヒョウは思わず顔を赤くするとアサヒの脚をいつも通り蹴ろうとする。

 

「なっ!?アサヒ、少しはそういう弄りも遠慮しなさいよ!」

 

「おっと、悪いな。そう簡単に何度も同じ手を喰らってたまるかって」

 

それに対してアサヒは余裕そうな顔つきのままヒョウからの脛蹴りの刑を回避してしまう。普段ならこういう時にいつもヒョウからの反撃が命中しているのでひかるは驚いたような顔を見せた。

 

「おお、珍しくアサヒがヒョウからの反撃を躱したな」

.

「へっ、悪いな。俺だって馬鹿じゃ無いんだ。この女のワンパターン攻撃に何度も捕まってたまるかって」

 

ひかるはその反応を聞いて少し違和感を覚える。だが、アサヒの様子が少し変なのはここ最近学校でも同じようなので特に気にしなかった。

 

「それはそうとごめんね、ひかる君。急に呼んじゃって」

 

ましろが急に呼び出してしまった事についてひかるへと謝ると彼もそんなに気にしていない様子なのか、平然とした顔で返す。

 

「ああ、それなら平気平気。むしろ俺もちょっと気分アゲたい所だったからな。らんこさん達を助けるためにも、腹ごしらえは大事だし!」

 

ひかるもひかるでこの前アサヒに言われてしまっていた事。つまり、並行世界でキメラング相手に大敗を喫してしまった事が記憶に新しい。そのため、少しでも気分がアガる事をして気持ちを持ち直そうという算段である。

 

「そっか。ひかる君も大変なんだよね……」

 

そんな風にましろが話しているとやはり暗い空気感が出てしまう。そんな様子を見たためあげはがそれを吹き飛ばすように声をかけた。

 

「まぁまぁ!今はそんな暗い話は無しだよ!それに今日食べる餃子は味も良いけど、皆で大きなお皿を囲んでワイワイ食べるのが最高に楽しいよね!」

 

「あげはさんの言う通り、幸せひしひしって所だよ」

 

「そうだ、エルちゃんが好きなチーズ餃子とかも作らない?」

 

あげはの言葉に便乗するようにかけるも付け加えると暗いムードを避けようとする。その言葉を聞いてましろやひかるも二人が暗いムードにしないようにするために買い物を提案したのだと感じた。

 

「そ、そうだね!エルちゃん。チーズ餃子大好きだもんね!」

 

「ちーずぅ!すきすき!」

 

「やっぱりこっちのエルちゃんも言葉上手になったんじゃないか?」

 

ひかるは言葉を上手く話せるようになりつつあるエルへとそんな風に質問を問いかける。ひかるはこちらの世界でも向こうの世界でもエルの成長に関われてない所があった。何しろ、彼だけは住んでいる家が根本的に違うためにエルを身近で見る事ができず。

 

加えて、ユキ達の起こすイベントにも向こうの世界のらんこの起こすイベントにもなかなか関わる事ができないためにエルの成長に関しては飛び飛びになっている事が多いのだ。

 

「そっか、ひかる君はあまりエルちゃんと話すタイミングが無いから……」

 

「あはは、そうですよね……。実はエルちゃんもどんどん成長してて……あれ?」

 

そんな感じで話題が進もうとしていた時だった。ソラの視線の先。距離はそこそこあったものの、ある人物が映ったのである。

 

「ッ!?」

 

そこにいた人物は青を基調とした軍服のような物に身を包み、薄紫色の長い髪をハーフアップにした女性であった。加えて腰には剣を差し、背中からはヒーローのようなマントも羽織っている。ソラが知る限り、その特徴をしている人物は一人だけだった。

 

ソラはその姿を見て思わず手にしていた買い物袋を落としてしまうと、胸の高鳴りを感じ始める。そして、ソラは思わずその人物の名を口にした。

 

「ソラちゃん……?」

 

「シャララ隊長!!」

 

『えっ!?』

 

一同が声を揃えて驚くとその間にソラはいてもたってもいられなかったのか、彼女を追いかけるためにその場から駆け出してしまう。

 

「ソラちゃん!?」

 

ソラは目の前に姿を現したシャララへと追いつき、声をかけようと割と早いペースで走ってしまう。ユキ達はそんなソラを見て追いかけようとした時だった。

 

「あれ!?アサヒ君は!?」

 

それとタイミングを同じくして。先程から話していないと思っていたアサヒがいつの間にかいなくなってしまっていた。そのため、アサヒの彼女であるユキは彼がまた変な事に巻き込まれたのではと考える。

 

「は!?あの馬鹿……」

 

「ッ、不味いな……」

 

ひかるがいきなりいなくなってしまったアサヒに苛立つ中、かけるは今の現状が危険だと感じ取る。恐らくこれはシャララ隊長を餌にソラを。そして、それに気を取られた瞬間にアサヒがいなくなる事でユキを。

 

相手がターゲットにしている二人をそれぞれ分断した上で引き摺り出すための相手の狙いではないのか……。どうしてもそう思えてならなかった。

 

「ッ……アサヒ君!」

 

かけるが対処を考えている間にユキはアサヒを探して闇雲に走り出してしまう。

 

「ユキ姉!?」

 

「アサヒ君を探してくる!見つけたら連絡するから!」

 

「ちょっとユキ姉!?待って!」

 

ユキはアサヒがいきなりいなくなってしまった事にいてもたってもいられなかったのか。慌てて駆け出すとあっという間に走って行ってしまう。ヒョウは止めようとしたが、ユキの耳にその声は届かず。完全に置いて行かれてしまう。

 

「そんな……」

 

ユキは焦ってしまっていた。ここ最近、アサヒが変な行動ばかりを取っている。ユキへの当たりが強くなったり、気性が荒くなってしまったり。大好きなはずのユキが嫌がるような事だってして。ユキは心身共に傷ついていた。

 

だからこそユキもそれに釣られるように精神が不安定化しており、こういう予想外の出来事が起きた際に冷静でいられなくなってしまったのだ。更に不味い点として、ユキはアサヒのこの変化の原因は自分のせいだと気負っている節もあった。そのためアサヒを自分がどうにかするという責任に余計に強く追われてしまったのだ。

 

「ああもう!ユキさんまで……」

 

「かける君、どうしよう……」

 

あげはもこの状況に焦ったような声色であり、年長者であるあげはの動揺がましろ達にも伝わっているようにも見えた。このままでは全員がバラバラに捜索しに行きかねない。そう思ったかけるは手を叩く。

 

「皆、落ち着いて!」

 

その言葉を聞いてましろ達はビクリと体を震わせるとかけるの方に注目する。そして、かけるはあくまで冷静に。落ち着いた声色で全員を励ますように呼びかける。

 

「ソラちゃんとユキちゃん、あとアサヒ君か。これから三人を探すよ」

 

「わかってるけど早く行かないと……」

 

「そうですよ!」

 

ツバサとヒョウの二人はユキの方はアサヒに釣り出されている状況が特に危険度が高いとわかっているために焦ったような声色だった。ただ、あくまでかけるは冷静に対応する。

 

「ツバサ君、ヒョウちゃん。確かに二人が混乱するのはわかる。でも、こう言う時だからこそまずは落ち着く事。そうしないと皆がバラバラに捜索してたら余計に状況が悪化しちゃうからね」

 

「「あっ……」」

 

かけるからの言葉に二人はハッとすると我を取り戻したかのように二人はやっと落ち着くとましろやあげは、ひかるも動揺していた気持ちを抑えた。

 

「かけるさん、すみません」

 

「うん、私達も動揺しちゃって……」

 

「そういう反省も後回しだよ。ひとまず、エルちゃんを除いたメンバーで三人チームで分けるから」

 

それからかけるの手によって素早くチーム分けされた結果。ソラが行ってしまった方向にツバサ、あげは、ひかるのチーム。ユキが行ってしまった方向にましろ、かける、ヒョウのチームとなる。

 

かけるの想定として、アサヒのここ最近の危険な言動から察するに彼が動いたということは裏でヒューストムかバッタモンダーが動いていると予想。加えて、シャララ隊長によるソラを釣り上げる行動も恐らく二人の内のどちらかの仕業。

 

そう考えると二人がそれぞれの裏で動いているという事になり、今回の件は前にヒューストムが話していた総力戦に直結する可能性が高い。そのため二人揃ってないと変身できないヒョウ、かけるは一緒にし、尚且つ二人では使えない浄化技要員としてましろも加えた三人にしたのである。

 

「多分だけどそれぞれが釣り出された先にヒューストムかバッタモンダー……場合によってはもう一人のアサヒ君も相手になると思った方が良い。皆、気をつけてね」

 

「うん、かける君も気をつけて……」

 

こうして、ましろ達プリキュアチームはそれぞれで分かれると早速行動を開始する事に。

 

同時刻、シャララ隊長を追いかけて一人で先行してしまったソラは彼女に追いつこうと必死に追いかける。しかし、どれだけ早く走ってもシャララ隊長の位置はある程度遠い距離を常に維持しているように見えた。

 

「(……どうして、どうしてこんなに追いつけないんですか!?)」

 

ソラは曲がり角を何度も曲がりつつ移動するシャララに困惑。更に言えば、ある程度距離が縮んだはずなのに曲がり角を曲がった直後にはその位置がまた遠くなっているように見えたのだ。

 

「(ッ……やっぱり。でも、シャララ隊長ならきっと……声さえ届けばきっと応えてくれるはず!)」

 

だが、少し考えればおかしな話だ。常人ではあり得ない移動速度に加え、どれだけ声をかけても返事どころか振り返らないシャララ隊長。ソラにだって嫌な予感がしたが、それを上回る程にシャララの事を信じたい気持ちが強かった。

 

そのためどれだけ怪しい動きをされてもシャララを信じて走り続けたのである。それから何度も角を曲がり、建物の下側に作られたトンネルを潜って住宅地の中を進んだ先。とある工事現場にまで彼女は到着した。

 

ただ、まだ工事自体はそこまで進んで無いのか資材は置かれていたものの骨組みまではされておらず。強いていうなら作業員が入るためのプレハブや簡易トイレと言った最低限の物しか無かった。

 

「………」

 

「シャララ隊長!」

 

ソラはやっと彼女が止まってくれたために安堵の顔つきを浮かべると再度声を上げる。更に、彼女の温もりを感じようと近づこうとした時だった。

 

「無事だったんですね!」

 

「………」

 

「えっ……」

 

突如としてシャララは無言で腰に差していた剣を抜き放つとソラへと振り下ろそうとする。勿論ソラは急な事で対処が間に合わない。そのため剣が無抵抗のソラへと振り下ろされてしまう……。

 

「……ッ!?」

 

ソラはそれに備えて思わず防御姿勢を取るが、剣が当たる事による衝撃が来る事は無かった。その直後にシャララの姿はいきなり黒い霧となって露散。つまり消えてしまう。

 

「えっ……シャララ……隊長?これはどういう……」

 

ソラの顔は困惑し切っていた。シャララ隊長に会えたと思って信じて追いかけてきた彼女はいきなり自分に斬りかかられた事に混乱。そのまま斬られてしまうと覚悟を決めたと思ったら今度はそのシャララ隊長が消え、彼女が最初から偽物だったと来た。

 

シャララ隊長が尊敬する憧れの人であるソラにとって、これは到底受け入れ難い事態である。

 

「手品さ」

 

するといきなり上の方から声が聞こえてソラがその方を向くとその視線の先にいたのは二本だけ十字架のように組まれた鉄骨の上に余裕の顔つきで座っているバッタモンダーであった。

 

「手品……?」

 

「久しぶりだね。キュアスカイ。どうやら僕の作った仕掛けに驚きを隠せてないようだけど」

 

「バッタモンダー……。暫く見ないと思ったら、これはどういう事ですか!」

 

「ふふっ、君にとっては残念だけど、さっきのシャララ隊長はアンダーグエナジーでちょいちょいって作った幻だよ」

 

バッタモンダーはそう言いつつ、ソラへと先程まで見せていたシャララが偽物であると改めて宣告する。

 

「ま、本物だったら今頃君は真っ二つにされてただろうけどね?」

 

「ッ……どうして。何でこんなに意地悪するんですか……。何が楽しいんですか!」

 

ソラは何故バッタモンダーがこんな事をするのか意味がわからない様子だった。だが、彼にとってはソラをこうやって貶める事に大きな意味がある。

 

「楽しいよ?……マジ楽しい!」

 

バッタモンダーはソラを嘲笑うかのように声を上げる。それはまるで彼女へと恨みをぶつけているようにも見えたため、ソラはその事も追求した。

 

「私に……何の恨みが……」

 

「あるね!……少なくともこっちは大アリだ!」

 

バッタモンダーはソラからの問いに対し、話を最後まで聞く事すら無く反論。その声色は憎悪に満ちており、彼の怒りが伝わってくるのだった。

 

同時刻。アサヒの事を追いかけていたユキは彼を完全に見失ってしまうと落ち込んだような顔つきになる。

 

「はぁ……はぁ……。そんな、アサヒ君……」

 

ユキがアサヒを見失ってしまった事に気持ちが落ち込んでしまう中、彼女は周りを見渡すといつの間にか人気の少ない廃棄された工場に似た場所に来てしまっていた。

 

「そうだ……このままじゃ、皆に心配をかけちゃう。早く連絡を……」

 

ユキがそう言った瞬間。突如としてどこからともかく風の刃が飛んできた。

 

「ッ!」

 

ユキが慌ててそれを回避すると飛んできた先を見る。そこにはヒューストムが工場の屋上からユキの姿を見下ろしていた。

 

「ッ!?ヒューストム……」

 

「よぉ、キュアスノー……。いや、今の姿はユキ・ハレワタールだったな」

 

ユキは完全に孤立した所を狙われてしまったと考えると目の前にいるヒューストムをどうにかする方法を考える事になる。




また次回もお楽しみに。
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