熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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バッタモンダーの秘策発動 絶望に堕とされるスカイ

突如としてヒーローのようなマントが展開したランボーグ。そして、その姿にキュアスカイは……ソラは。見覚えがあった。いや、あり過ぎたのだ。

 

「嘘です……そんなはずは……」

 

スカイが絶望した顔になった直後。ランボーグはいきなり構えを取る。そして、その構え方に既視感を感じた直後だった。

 

「ッ!?」

 

スカイはいきなり頬の横に何かが通り過ぎるような感覚を感じると彼女の後ろの地面が爆発。慌てて振り向くとそこには斬撃で地面が一部抉られていた。

 

「速っ!?あんな攻撃どうやって躱すの!?」

 

「それよりも、あの光速の剣技……間違いありません!」

 

「光の斬撃……。アレを使える人は私の知る限りではただ一人だけ……ですが、本当にそうなんですか……?」

 

スカイは次々と出てきてしまう彼女の予想を裏付ける証拠にどうしても納得できなかった……いや、したくなかった。納得してしまえば、目の前に広がる残酷な現実に目を向けないといけなくなってしまうのだから。

 

だが、バッタモンダーはスカイが事実を知ったと確信して改めて彼女を絶望の中に叩き落とすために残酷な宣言をする。

 

「そう……そうだよキュアスカイ!君の思っている事は間違ってなんか無い。だって……あの中にいるのは……」

 

ランボーグの中。その巨大な体の中に囚われている人間。それこそが他の誰でも無く、スカイランドで行方不明になってしまったソラのヒーロー。

 

「君の大切なシャララ隊長その人なんだよ!!」

 

「シャララ隊長……嘘です!だとしたら何で……何でランボーグに……」

 

スカイはアンダーグエナジーによってランボーグ化するのは基本的に生きている生物では無く、無機物のみであると思い込む事で目の前の事実から目を逸らそうとした。しかし、彼女も何度か例外がある事を知っていた。……知っていて見て見ぬフリを通そうとしたのだ。

 

「いや……アンダーグエナジーはその気になれば人間にだって注ぎ込める。カバトンだってそれでパワーアップしてましたし」

 

「でも、アイツの場合はアンダーグ帝国の住人でしょ?普通の人間にアンダーグエナジーって入れられるの?」

 

「おいおい、君達。身近にいる二人の例外を忘れたなんて言わせないぞ?」

 

バッタモンダーはウィングとバタフライの話を聞いて補足説明を入れる。そして、それを聞いた二人も察してしまった。身近にいる二人の例外。その言葉の意味を。

 

「そういえば……アサヒさん!!」

 

「確かひかる君も前にランボーグに!!」

 

「あ、ああ……。らんこさんも……アンダーグエナジーを注がれたって言ってました……」

 

「んぁ?そのらんこって奴は知らないが。兎に角お前達もわかっただろう?アンダーグエナジーを人間に注いでも問題無いって。つまり、シャララ隊長にアンダーグエナジーを入れる事だって可能なんだよ!」

 

バッタモンダーはスカイ達の否定の意見を全て論破してしまうと改めて目の前にいるランボーグに視線を飛ばす。そのランボーグは既に剣を構えており、いつでも攻撃が可能だった。

 

「それにしてもキュアスカイ。君、酷い事をするよねぇ?ランボーグへの攻撃は全部隊長へのダメージになるって言うのにさ?」

 

「あ……あぁ……」

 

スカイの胸の中には知らなかった事とは言え、尊敬するシャララ隊長に対して本気の拳を振るってしまった事による罪悪感や彼女がランボーグ化して自らに刃を向けた事による絶望感。様々な負の感情が湧き上がるとスカイを押し潰そうとしてくる。そして、完全に戦意喪失してしまったスカイを見てバッタモンダーは笑みを浮かべるとランボーグへと指示を出す。

 

「さぁランボーグ……いや、シャララボーグ。行けぇ!」

 

バッタモンダーは無抵抗なスカイをランボーグ……もといシャララボーグに痛めつけさせるべく指を鳴らして攻撃を指示。それを受けたシャララボーグは手にした巨大な剣をスカイへと突きつける。

 

「あ……あ……」

 

絶望の底に落とされてしまうキュアスカイ。そして、彼女の脳裏にはスカイランドに一度戻った際に幼い頃以来の再会を果たしたシャララ隊長との時間が思い出される。

 

“大きくなったな、ソラ”

 

“君とこうして再び出会えたのはこのジュエルの導きなのかもしれない”

 

その後にはスカイランドが超巨大ランボーグに襲われた際の隊長とのやり取り、そして……彼女がソラの前から消える直前。ボロボロになった彼女が力無く空から落ちていく瞬間に残した最後の言葉もフラッシュバック。

 

“ソラ……ヒーローの出番だ”

 

スカイがシャララ隊長との時間を思い出す間にもシャララボーグは構えを取りつつ彼女を倒そうとする。そして、スカイは逃げる事すらできずに呆然としてしまうとシャララボーグは容赦無く剣を地面に突き刺す形で振り下ろした。

 

「ランボーグ!」

 

その際に発生した衝撃波がスカイを容赦無く襲うと彼女はそれによって成す術無く吹き飛ばされ、声を上げる事すらできずに地面に何度かバウンドしてグッタリとしてしまう。

 

「「スカイ!?」」

 

バッタモンダーと向かい合っていたせいで助けに動けなかったウィングとバタフライはスカイへと声を上げるが、やはり彼女は倒れたままだ。

 

今までキュアスカイが立ち上がってこれたのは彼女の中にあるヒーローとしての原点。シャララ隊長の姿があったからだ。彼女が自分を守ってくれたあの日の光景があったからこそスカイは……ソラはどれだけやられても折れずに立ち上がれたのである。しかし、そのシャララ隊長は自分の行動を否定するかのようにシャララボーグとして容赦無く刃を向けてきた。

 

今のスカイにはそのヒーローとしての信念を支える原動力が奪われるどころか、自分の信念を否定しようとしてきてさえいる。そのため、ソラの心はシャララボーグの手によって完全に折り砕かれてしまっていた。

 

「ランボーグ!」

 

そして、スカイはシャララ隊長相手に戦えないとしてもシャララ隊長が変貌したシャララボーグの方は容赦無くスカイを襲う。

 

「さ〜て、このままだとキュアスカイはやられちゃうねぇ〜。しかもさっきはわざと攻撃を急所から外した事をわからないお前らじゃ無いだろ?」

 

バッタモンダーの言う通り、先程の攻撃はランボーグがスカイの心を折り砕くためにわざと彼女に当たらないようにしつつその体に大ダメージを与える事を目的に攻撃しただけに過ぎない。

 

そして、今のキュアスカイにシャララボーグ相手に立ち向かう力が無い事は誰もが理解できるだろう。つまりこのまま行けば、スカイは絶望した心のままシャララボーグに痛ぶられるのは誰の目にも明らか。そう考えると今すぐにでも彼女をフォローしないといけない。

 

「スカイ!」

 

「おっと、この僕がいる事を忘れるなよ?」

 

ウィングはスカイへと向かおうとするが、バッタモンダーは強化された身体能力を持ってして一瞬で距離を詰めるとウィングへと回し蹴りを放つ。

 

「くうっ!?」

 

ウィングは咄嗟に防御を間に合わせたものの、結果的に後ろに押し戻されたためにスカイを助ける事はできなかった。ウィングはそれを受けて悔しそうな顔をする。

 

「さぁ、シャララボーグ。そろそろキュアスカイの戦う力を奪え。今のままでも十分だが、変身解除させる程度に痛めつけろ」

 

バッタモンダーはこのままやってもキュアスカイに戦う力が残ってないのはわかっていたが、それでも万が一……万が一ここからキュアスカイに立ち上がられると厄介な事になりかねない。そのためこのタイミングで彼女の戦う力……プリキュアの力を奪おうと考えたのだ。

 

「どうしましょう……助けに行きたいですけど、バッタモンダーが邪魔で……」

 

「……だったら!」

 

ウィングがどうすべきか迷う中でバタフライは咄嗟に何かを思いついたのか、無謀にもバッタモンダーへと一人で突撃する。

 

「バタフライ!?」

 

「はぁああっ!」

 

「ふふっ、でも助けるにはそうするしか無いよなぁ!」

 

ウィングは無謀な突撃をしたバタフライを見て驚きの声を上げる中でバッタモンダーは彼女を見下すように邪悪な笑みを浮かべた。今の状況からスカイを助けるにはどちらにせよこの男を突破しないといけない。それが見えてるからこそバッタモンダーも余裕を持って対応しに来る。

 

「だだだっ!」

 

「無駄無駄。そんな単調な攻撃なんて当たらないよ!」

 

バタフライはバッタモンダー相手に拳のラッシュを放つが、彼にはまだまだ余裕がある様子でその攻撃を簡単に防御、受け流していく。

 

「はあっ!」

 

バタフライは拳のラッシュでバッタモンダーの意識を上に向けてからすかさず足払いをかけようとする。しかし、バッタモンダーはそれさえも見切ってジャンプしつつ回避。

 

「遅いなぁ」

 

「くっ、まだだよ!」

 

バタフライは必死に喰らいつくものの、バッタモンダーはまだ反撃すらしていない。しかもシャララボーグはそうこうしている間にゆっくりと、確実に倒れているスカイの元に歩んでいく。

 

「おやおやどうしたのかなぁ。君、前に僕に対して言ったよねぇ。負け惜しみを言うのはカッコ悪いとか、一人じゃプリキュアに勝てないだとか。その僕相手に手も足も出てない今の君の方がカッコ悪いけどねぇ!」

 

「調子に乗ってる所悪いけど、私はカッコ悪いって言われたからってアンタみたいに怒る程短気じゃないよ!」

 

バタフライからの強がりを見たバッタモンダーは自分よりも弱い彼女の相手にして余裕が生まれたのか、先程から反撃を一切せずに弄ぶ方向にシフトし始めた。バタフライは体力こそ消耗しているものの、体への傷は一向に増えてないのが良い証拠である。

 

「おいおい、そんな動きじゃ名前の通り僕の体にたかる虫程度にしか思えないよ?」

 

「その虫を舐めてかかるからアンタは今まで負けてきたんじゃない?」

 

「へぇ。まだそんな調子に乗った事が言えるんだ。そろそろ君とのお遊びも終わりにしてあげよう」

 

バッタモンダーは良い加減バタフライの相手をするのも面倒に思えてきたのか、彼女を倒す事を考え始めてしまう。それを見たウィングは危機感を覚えた。

 

「ッ、不味い……このままじゃ……バタフライが……早く助けに……ッ!?」

 

ウィングが単独で突撃して負けそうになっているバタフライの元に良い加減加勢しに行こうとするとバタフライは攻撃のモーションで回し蹴りをする際にほんの一瞬だけウィングの方を振り向くと彼に目線を送った。そのため、ウィングは目を見開く。

 

「あっ、そうか!」

 

ウィングはそんなバタフライの視線を受けて何かに勘付いたのかすぐさま動く。そんな彼の動く先はバッタモンダーのいる方向とは別だった。そして、バッタモンダーもウィングが動き出した事にようやく気がつく。

 

「うん?君を行かせるとで……」

 

「おっと、生憎通行止めだよ!」

 

その瞬間、バタフライがバリアを生成するとバッタモンダーの周囲を取り囲む。これにより、彼は上にしか行けなくなった。

 

「なっ、だが上がガラ空……」

 

「その真上もこれで塞ぐ!ひろがる!バタフライプレス!」

 

「のはあっ!?」

 

バッタモンダーはバタフライのバリアに四方を取り囲まれてしまった挙句、空いた上側から無慈悲な盾による押し潰し攻撃を喰らうと完全に動きが止まった。

 

「ぐ、クソ……まさかお前ら。最初から!」

 

「気がつくのが遅過ぎだよ!」

 

バッタモンダーはここまでやられてようやく二人の狙いに気がつく。しかし、対応するにはもう遅い。既にウィングが無防備な状態で攻撃を受けそうになったスカイの元に直行していた。

 

「ランボーグ!」

 

「はぁああっ!」

 

ウィングは自慢のスピードで一気にスカイを助けに行くと丁度ランボーグが剣を振り上げた所であり、そのまま剣が振り下ろされる寸前。ウィングがスカイの元に到達すると彼女を横から抱き抱える形で救い出す。

 

「ナイスウィング!」

 

「ぐぬぬ、キュアスカイを助けられたか。だが、今の彼女は戦力として機能しない。ここは邪魔者二人を始末してその様をスカイに見せつけてやるべきか」

 

バッタモンダーはスカイを助けられたために作戦を変更。目の前にいるウィング、バタフライを潰す事でスカイことソラに更なる絶望を与える方が良いと判断した。

 

「ウィング、スカイを安全な所に!」

 

「はい!」

 

ウィングは急いでスカイを工事現場の入り口付近にまで避難させるとそこには隠れていたエルもおり、彼女が心配そうにスカイを見つめている。

 

「すかい……」

 

「プリンセス、今のスカイは落ち込んでいます。なので、側にいてあげて欲しいです。お願いしても良いですか?」

 

「える、そばにいる!」

 

ウィングはエルにスカイを任せるとすぐにバタフライの元に戻っていく。そして、バッタモンダー、シャララボーグと二対二の構図になった。

 

「意外ね。ウィングが戻るまで待っててくれて」

 

「ふん。どうせすぐに戻ってくるってわかってたからな。いきなり不意打ちで介入されるよりはマシだと思ったんだよ」

 

「なるほど、理には適ってますね」

 

ここまでの戦いでプリキュア側が一度流れを取ると一気に逆転してランボーグを倒すパターンが多い事はバッタモンダーも経験済み。なので、途中で不意打ちされて自分達の流れを失うよりは最初からお互いに援軍が無い状態でやり合うべきと考えていた。

 

「多分この様子だと……」

 

「うん。私達の方に加勢が無いとわかってる感じだよね」

 

「ユキさん達もまだ来ませんし、やはりヒューストムとも連携してるでしょう」

 

「だったら、私達でどうにか倒すよ」

 

「はい!」

 

こうして、バッタモンダーとシャララボーグ相手にウィングとバタフライは援軍が見込めない二対二の戦闘を強いられてしまう。果たして、彼女達に勝ち目はあるのだろうか……。

 

そして、ウィングによって安全な場所に退避したスカイは絶望のままに小さく呟きを溢す。

 

「……う……ううっ……助けて……ユキさん……ましろさん」

 

スカイはバッタモンダーの作戦にハマってしまったせいで心を折り砕かれている状態。更にシャララボーグに痛めつけられて体も痛みが走ってしまっていた。その心身共にボロボロな彼女は泣きながらこの場にいない親友達に縋るように声を上げる。

 

だが、幾ら彼女達の名前を呼んだところでこの場にいない二人は応えてくれない。こうして、スカイは絶望の闇の中を彷徨ってしまうのだった。




また次回もお楽しみに。
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