熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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不安高まる現状 ひと匙の希望

ユキとアサヒの二人が学校で大喧嘩してしまってから数日経った土曜日。その間、二人の間には一度も会話が無かった。ユキはどうにか話すキッカケを掴もうとしたが、アサヒに歯向かった事に罪悪感を持っていた彼女は結局話しかける事ができず。

 

ユキの意見が合っているとソラ達は言ってくれたが、それでもアサヒへと話しかける恐怖は色濃く残ってしまっていたのだ。

 

「ユキちゃん……」

 

「ましろちゃん、どうしたの?」

 

「……えっと、ユキちゃん。ここ最近大丈夫かなって」

 

ユキはそれを聞いて俯く。それは今の心境が大丈夫では無いという彼女の答えを示していた。

 

「ごめんね……心配ばかりかけさせて」

 

「ううん……私達は大丈夫だよ。アサヒ、あれから何回か私やソラちゃんが話したんだけどね。……まるで言うことを聞いてくれなくて」

 

ましろはそう言いつつ困ったような顔を見せる。このままではアサヒは自分の非を認めてくれないだろうし、ユキとの恋人関係を解消するという線も出てきてしまう。

 

そしてそうなればユキの心はまた酷く落ち込んでしまうだろう。いや、今のユキにとって大きな心の支えだったはずのアサヒがいなくなるなんて事態になったら下手すると彼女はもう立ち直れないかもしれない。

 

「……もう一度、私が話したらアサヒ君は納得してくれるかな」

 

「いえ、それはきっと難しいでしょう」

 

ユキは最後の望みを賭けようとアサヒへと説得しに行こうとするが、それをソラは止めてしまう。

 

「ソラちゃんまで」

 

「……実は、私……今のアサヒ君はちょっと変に感じているんです。普段ならもっと早く自分の過ちに気がつくんですけど、あの日から数日。その間ずっと自分の正しさを信じて疑わなくて。ちょっと不気味と言いますか」

 

ソラの言う事が本当であればアサヒの中に何か異常が起きてる可能性が高い。そうなると今のユキでは説得が困難だろう。それどころか、今以上に関係が悪化するリスクも出てしまう。それだけは何としてでも避けたい所だ。

 

「とにかく、今は様子を見る事。それが私達にできる事です」

 

「う、うん……」

 

ユキはそう小さく頷く。今はアサヒとは無理には話さずに、彼の様子を少しずつ観察するべき。その意見にユキは納得した形になるのだった。

 

「ちょっと良いかしら?」

 

するとそのタイミングでヨヨがやってくるとユキ達三人はキョトンとする。彼女はそれから用件を話した。

 

「今さっき、スカイランドから通信がかかってきたわ。あげはさんとかけるさんが先に対応してくれているけど、あなた達も来て頂戴」

 

「わかったよ、お婆ちゃん」

 

「あっ、でもツバサ君達は……」

 

「……王様や王妃様の話はエルちゃんの前ではできる限りしない方が良いわ。だから、二人には後で伝えましょう」

 

ヨヨはスカイランドからの連絡は恐らく王様と王妃様からの内容であると予想しており、その話題をエルの前でまたしてしまうと泣き出してそれどころでは無くなる危険がある。そのため、一旦エル抜きで話をするために彼女の相手をしているツバサとヒョウは敢えて呼ばない事にした。

 

「わかりました。ツバサ君達には後で話の内容を使える形にしよう」

 

「そうですね!」

 

そのまま三人はヨヨと共に話をするために移動。同時刻、虹ヶ丘家の庭ではそのツバサとヒョウのプニバード組がエルと共に遊んでいた。

 

ただ、何故かツバサがランボーグ役をやらされている状態でヒョウがエルと共にそのツバサに立ち向かおうとしている。

 

「ら、ランボーグ!」

 

「ひりょがる!ばたふらいぷりぇす!」

 

「ぐ、ぐあああ……」

 

エルがバタフライの浄化技であるバタフライプレスを口にして足で地団駄を踏むようにトントンと地面を踏みつけるとツバサは苦しそうな声を上げる。

 

「めぇーっ!ちゅばさ!」

 

「えっ!?」

 

「ツバサ、あなたは今ランボーグなんだからそんな声出したらダメでしょ!」

 

「あっ……すみません」

 

まさかのツバサは苦しむ声を出す演技でダメ出しされるとしょんぼりしてしまい、気を取り直して戦いは続行。エルは更に技を出す。

 

「じゃあ、次は一緒にウィングアタック行こっか」

 

「える!」

 

「えっ!?」

 

ツバサは思わず自分の技でやられるオチになるのかと唖然とするが、エルが了承したのでもう止められない。ヒョウがエルを抱き上げると一緒に言うことにした。

 

「行くよ〜。せーのっ!」

 

「「ひろがる(ひりょがる)ウィングアタック(うぃんぐあたっく)!」」

 

ヒョウがキュアウィングのようにエルに空を飛んでいるような感覚を与えるために軽めにフワーッとエルを抱えながらツバサへと向かっていくような動きにするとヒョウがツバサへと目線を送る。

 

「スミキッタァ〜……」

 

ツバサはヒョウからの目線にちゃんとランボーグが浄化された時の台詞を言うことに。

 

「えるぅ!」

 

「エルちゃん凄い!流石プリンセス!」

 

「えっへん!」

 

エルが誇らしいような顔をする中、ランボーグ役を押し付けられてしまったツバサはコッソリとヒョウへと抗議する。

 

「ちょっと、ヒョウ。何でボクがこんな役回りなんですか……」

 

「別に良いじゃん。エルちゃんの騎士なんでしょ?エルちゃんのためにやられるのなら本望じゃん」

 

「もう……次はヒョウがランボーグ役やってくださいよ……?」

 

「仕方ないわね……」

 

ツバサは次回はヒョウがランボーグ役をやるという言質を取る事でどうにか納得するとこれ以上は追求しない事にした。

 

それはさておき、エルが喜んで嬉しそうに微笑むのを見届けたツバサはふとある事を考えるとヒョウへと質問する。

 

「それで、ヒョウは……良いんですか?」

 

「何が?」

 

「ユキさんの事です。あんなに落ち込んだユキさんは……初めてここに来た時以来ですよ」

 

「そうね……。本当なら私が助けられた恩をユキ姉に返したいわ。……けど、私じゃ……きっとその場凌ぎにしかならない。前までのユキ姉がそうだったでしょ?ユキ姉を元気にするなら、きっと根本的な悪い所を全部取り除かないとダメなのよ」

 

ヒョウはそう悔しそうに呟く。本来ならユキは自分の力で彼女を慰めたい。しかしそれではきっといつか何かしらの形で再発する。それはユキがプリキュアに変身してから少し後、アサヒに完全に救われるまでの間に精神が安定したり不安定になったりという形で証明されてしまっていた。

 

「根本的な悪い所……あのアサヒさんの態度ですね?」

 

「えぇ」

 

「でも、あのアサヒさん。少し引っかかってる所があるんですよね」

 

ツバサの言葉にヒョウは疑問符を抱く。それから彼女はツバサに詰め寄って問いかけた。

 

「ツバサ、それってどういう事?」

 

「えぇ。あんなにもユキさんの事を好きで、大切にしていたアサヒさんがいきなりこんな乱暴な事ばかりしますかね……?どちからと言うと、別の誰かの悪意を感じると言いますか。それこそ、やってる事の感覚はカゲロウの方が近いような……」

 

「あっ……!!もしかしてそういう事!?」

 

ヒョウはツバサからの指摘にようやく答えに辿り着いた。今回のアサヒの豹変の件。やっている犯人はカゲロウであるという事に。しかも、あくまでアサヒの人格をそのままにしたまま乗っ取っているため余計にタチが悪い。これではアサヒその人がユキを傷つけているという印象を彼女に与えてしまうからだ。

 

「ユキ姉に伝えないと……」

 

「待ってください」

 

ヒョウは慌ててユキにこの事を話そうとする。しかし、それをツバサは彼女の手を掴む形で止めると首を横に振った。

 

「ッ、ツバサ。どうして……」

 

「今すぐは多分ダメです。仮に伝えてもきっとユキさんの苦手意識は消えません」

 

「そんな……」

 

ユキの脳裏には一度アサヒが自分に危害を加える人間だと植え付けられてしまっている。そのため、仮に犯人がカゲロウだと伝えてもこの前畑での戦闘で起きてしまったアサヒが変身したキュアムーンライズの暴走の件がある以上はユキの警戒心が消える事は無い。

 

「じゃあどうするのよ……。ユキ姉がアサヒの本心は絶対に安全って意識しないと……」

 

「……まずは相談です。きっとこの件はボク達単独での解決は厳しいですし、頼れるあげはさんやかけるさんを頼りましょう」

 

「オッケー。……ひとまず、ユキ姉に近いソラさんやましろさんには後から相談するって事にするのは?」

 

「そうですね。ましろさんは兎も角、ソラさんはきっと聞かれたら隠しきれないでしょうし」

 

こうして、プニバード組の二人の方では密かにユキを助けるための動きを開始する事になる。

 

「ちゅばさ、ひょーお」

 

「「あっ!」」

 

尚、二人は話に夢中になり過ぎてエルの相手をするのを忘れてしまうと彼女の機嫌をちょっぴり損ねてしまったのは完全な余談である。

 

同時刻。虹ヶ丘家の中ではユキ、ソラ、ましろが合流し、あげは、かける、ヨヨの六人でミラーパッドの方での話をする事になった。

 

「……そうですか。王様と王妃様は眠ったまま……」

 

『ああ。お変わりないと言えば、その通りだが……』

 

通信の相手はアリリ副隊長である。隊長であるシャララが不在であるため、隊長代理として彼が護衛隊の指揮を担っていた。

 

そして、眠っている王様も王妃様は数ヶ月経った今も二人だけ時が止まったかのように眠り続けている。容体は悪化してないのがせめてもの救いだが、それでも予断を許さない状況というのは変わらない。

 

『民も兵も希望は捨ててない……だが、やはりここまで長期化するとその心配は膨らむばかりだ』

 

やはり国王と王妃という国にとって重要なツートップがいないため、これから先の未来に不安が起きてしまうというのは無理の無い事だろう。エルがこちらの世界に来たのと同時にアンダーグ帝国がスカイランドを狙って来なくなったため、今の所はギリギリ持ち堪えている形である。

 

『それで、キラキラポーション……でしたか。眠りの呪いを解く薬。あとどのくらいで?』

 

アリリはスカイランドの王様達を救う希望であるキラキラポーションを催促するが、まだそれを完成できるだけのキラキラエナジーは残念ながら溜まっていない。

 

「プリキュアの皆が、一生懸命キラキラエナジーを集めてくれてはいます。……しかし、まだまだ量が足りません」

 

キラキラエナジーの不足によるポーションの開発の遅れは未だにどうにもできず。このまま普通にキラキラエナジーを集めても時間はかかる一方だろう。アリリはまだ時間がかかるという結論を聞いてスカイランドの不安をどうにかする手を考える。そんな時だった。

 

『ふーむ……』

 

『ソラ!』

 

『こら、話し中だぞ!』

 

「ベリィベリーさん!」

 

いきなりミラーパッドの画面に割って入ってきたベリィベリー。アリリは大事な話の最中に入ってくるなと言わんばかりにベリィベリーを退けようとする。そこにもう一人、声が聞こえてきた。

 

『副隊長。私の方からもお願いします。……あの事は、しっかり報告しないといけません』

 

「その声……ペギンさんですか?」

 

ユキも聞き覚えのある声に少しだけ明るい声色になるとその声の主……ペギンも姿を現す。

 

『やれやれ……。わかった』

 

アリリはこれ以上止めても二人は無理矢理入ってくると考えると渋々二人が会話に参加するのを許した。そのため、ペギンとベリィベリーの二人がミラーパッドの画面内に入ると話しをする。

 

『ソラ、お前に知らせておきたい事があって!』

 

「ベリィベリーさん?その知らせたい事というのは……」

 

『……少し前からなんだけど、行方不明になってしまったシャララ隊長の新しい情報が浮上してきたわ』

 

「隊長の……新しい情報」

 

その言葉に一同は歓喜の顔つきを見せる。ここまで暗いニュースばかりのため、少しでも明るいニュースがあるというのは大きなモチベーションになってくれるだろう。

 

「それじゃあ、内容についての説明をお願いします」

 

かけるがそう頼むとベリィベリーとペギンは話をする。それは夜中での事。スカイランドで日が落ちて夜になった後に街中を歩いていると、度々シャララ隊長と会う事ができるらしい。

 

『シャララ隊長と街中で会う件数も少しずつ増えてはいる。この前も私が直接目で確認した』

 

「ペギンさんが……」

 

「うん!ペギンさんが見てくれたのなら、きっと……」

 

「ッ……隊長、無事だったんですね……」

 

ユキやましろはそのニュースに希望を持つとソラは特に嬉しそうな顔つきになると共に、彼女を信じて良かったと感じる。

 

「……ちょっと待って。目撃情報だけ?妖怪や幽霊じゃあるまいし。目撃された後はどうなったわけ?」

 

『……そこなんだ。隊長はその後すぐに煙のように消えてしまうんだ』

 

ベリィベリーも残念そうにそう話す。ペギンも似たような感じだと付け加えると、かけるは何か感じたのか考え込む。

 

「(……夜にだけ現れて、そのまま消えるシャララ隊長。……あれ?なんか人が煙のように消える現象って、俺達もどこかで見ているような)」

 

かけるが考え込むのを他所にユキやソラはまた不安そうな顔つきになるとましろは自分の考えを話す事にした。

 

「……本当なのか、嘘なのか。ここで話していても始まらないと思います!引き続き捜索を続けて、何が情報があったらまた教えてください!どんな小さな事でも良いので。……待ってます。ベリィベリーさん、ペギンさん!」

 

ましろからの言葉にベリィベリーやペギンは微笑むと頷く。会えたと思ったら消えてしまうシャララ隊長。不可解な点は拭えないが、少なくともここまで何の進展も無かった現状に対して僅かでも希望があるのならそれを膨らませて大きくできる。

 

そう信じたましろは引き続きスカイランドの事は現地の人間に任せる事にした。

 

『ああ、了解だ!』

 

『任せてくれ』

 

こうして、その場は解散する事になった……のだが、ユキ、ソラ、ましろがいなくなったタイミングでペギンが声を上げる。

 

『……あげは、かけると言ったか。二人に話がある』

 

それは二人がそれを聞いて振り向くとそこにはアリリやベリィベリーはおらず。ペギンが一人で真剣な様子を見せている。

 

「はい、何ですか?」

 

『……私の方で個人的に気になってる事がある。ただ、これはユキやソラの前で話すのは無理だ』

 

「ッ、わかりました。お願いします」

 

ペギンも何か気がついているのか、その事をこちらにいるプリキュアのメンバーの中で大人であるあげはとかける相手に話す事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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