熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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幹部二人との一対一 小心者の怒り

カゲロウことサンスポットによって痛めつけられ、あと一歩でトドメを刺されてしまうその時。ようやく到着したのはアポロンとアルテミスのコンビ。それを見てサンスポットは僅かに苛立つ。

 

「あと一歩でユキを連れ帰れたのになんてタイミングの悪い……」

 

「おいおい、カゲロウ。お前、ちょっと遊びすぎだぞ?少しばかり面倒になっただろうが」

 

ヒューストムはこの二人の到着を受けてサンスポットことカゲロウへと僅かに不信感を抱いたのか、怒ったような低めの声をかけた。

 

「は?テメェは俺との勝負に負けた身だろ?大人しく……」

 

「いいや。俺が手出しを禁止されたのはキュアオーロラ……ユキに対してだけだ。こっちの二人に対して好き勝手を止められたわけじゃないだろ」

 

ヒューストムはそう言ってサンスポットの隣に降り立つ。彼の顔は割と不機嫌そうである。それもそうだろう。サンスポットがいつまでも遊ばずにさっさとオーロラを気絶させておけば今頃彼女を連れ去る事ができたのだ。これで負けでもしたら彼を戦犯として追及しようとさえ考えているくらいである。

 

「仕方ないな。どっちをやりたいか選ぶくらいは良いぞ。そのくらいは融通してやる」

 

「ふん。俺にとっては当然の権利だ。……そっちの男をやる。女のガキの矛先はお前に向いてるだろうからな」

 

「ガキって……アンタ、ユキ姉やアサヒと同い歳でしょ?私とそんなに歳変わらないじゃない!」

 

アルテミスはヒューストムにガキ扱いされて元々オーロラことユキを傷つけられて苛立っている所に更に油を注がれると怒りを露わにする。

 

「アルテミス、落ち着いて。あの二人は元々アルテミスを煽って戦いやすくするために言ってるんだよ」

 

「わかってる……わかってるけど……」

 

ただ、ここはアポロンがしっかりとカバー。アルテミスが一人で先走らないように落ち着いてしっかりと手綱を握る。

 

「私も戦う、二人だけには……あうっ……」

 

そしてオーロラはその間にどうにか倒れている状態から立とうとするが、先程サンスポットに身も心もボロボロにされたせいでとっくに満身創痍。更に体は地面に拘束されているのでとても戦える状況じゃ無かった。

 

「オーロラはそこで休んでて。もう動くのも辛いでしょ」

 

「でも……私が助けないと……」

 

「お願い。オーロラが今一緒に戦ってもあの二人には勝てない」

 

オーロラは無理を押してでも先程受けたサンスポットからの拘束を外しつつ立とうとする。しかし、悔しい事ながらどれだけ体に力を入れようとしても痛みが走ると同時に力が抜けてしまう。

 

「く……」

 

「悔しいか?ユキ。お前なんて所詮足手纏いでしか無い。お前らもよくそんな奴と一緒に……」

 

「あの……」

 

ヒューストムが動けないオーロラを見て再度彼女への精神攻撃をかけようとする。ただ、そのタイミングでアポロンが声を上げるとその声を遮った。そのため、ヒューストムはアポロンへと視線を移す。

 

「……あん?」

 

「これ以上俺達の大切な友達を悪く言うのはやめてもらえるかな。……それと、俺達の友達は俺達自身が決める事。お前が外野からどうこう言って良い事じゃない」

 

アポロンの声色はいつもの優しい物だったが、その奥底には明らかに怒りの感情が入っていた。それを聞いてアルテミスは僅かに寒気がする。普段怒らない人程怒った時の怖さは凄まじい。この前、初変身の際にバッタモンダー相手に怒りを感情を露わにしたあげはも普段の彼女から感じない凄みを感じられた。だが、アポロン……かけるの場合はそれ以上に言葉にしない怒りの圧を感じられる。

 

「そうかよ。だったらお前ら二人を倒して……その気持ちを否定してやる!」

 

サンスポットとヒューストムはそのタイミングで同時に飛び出すとアポロン、アルテミスは同時に頷く。その瞬間にアポロンはヒューストム。アルテミスはサンスポットの前に行くとまずはアポロンが手に光の剣を構える。

 

「ッ!」

 

ヒューストムはそれを見てすかさず風の刃を生成してそれに対抗。二つの刃がぶつかると鍔迫り合いとなる。

 

「へぇ。力を得ているとはいえプリキュアじゃないから少し物足りないと思ったけど……流石、裏切り者のシャドーってわけか」

 

「シャドー……か。君の事だからそうやって煽ると思ったよ」

 

アポロンはヒューストムからその事で煽られる事に関してはあくまで想定内という事で落ち着いた様子を見せる。そして、ヒューストムを押し返すと手にした剣を構え直す。

 

「あくまで冷静に相手するつもりだなぁ。だけど、見直したとは言っても所詮プリキュア以下の力しか無いお前に勝てるかな?」

 

「……はぁ。毎回聞いてて思うんだけど、君ってさ。偉そうな事言う割に小心者だよね」

 

「……何だと?」

 

アポロンは僅かに溜め息を吐くと先程まで出していた怒りの感情を消し去り、代わりにあくまで冷静な声色でヒューストムへと話す。そして、それにヒューストムは僅かに苛立ったような反応を見せた。

 

「だってそうだろ?自分よりも弱い立場の相手を散々痛めつけてばかりで強い相手に挑む気概が無い」

 

「ふん、何かと思えば負け惜しみかよ。それはお前らが俺よりも格下で弱いからであって……」

 

「いいや、違うよ」

 

ヒューストムはアポロンからの言葉を負け惜しみという言葉で切って捨てようとする。その間もアポロンとヒューストムは何度か移動しつつそれぞれの武器で競り合っており、その力はヒューストムが手を抜いている側面が大きいのか拮抗してはいた。

 

その後、二人は同時に斬撃波をぶつけると中間点で爆発。それぞれが少しだけ下がって様子を見る。

 

「君の悪口って大体が俺達がベストコンディションで来れないようにするための挑発ばかりだ」

 

「それがどうした?お前らがその言葉に図星を突かれて傷ついてるだけ……」

 

「裏を返せば、お前は本調子の俺達を恐れてるって事だ。それに比べて闇に堕ちていた俺……シャドーは、少なくともプリキュアの全力を相手しようとしていた。記憶が残ってないから話を聞いた限りだけど、彼は正々堂々とした男だったよ」

 

その言葉を聞いてヒューストムは心の中でプライドが傷つく音がし始めた。実際問題その通りなのだ。シャドーはプリキュアとの戦いを楽しむ戦闘狂の部類に入るが、ヒューストムのように相手の調子を狂わせる言葉を言う事は殆ど無かった。言ったとしてもあくまでそれは相手へのダメな部分に対する指摘の側面が強く。ヒューストムのように悪意に満ちているわけでは無い。

 

そして何より、彼はプリキュアの全力を引き出すようなやり方を見せていた。そんな彼の正々堂々と戦うのとは対照的にアポロンはヒューストムが卑劣な精神攻撃をして、全力を出させないのを見て、全力を出させるタイプのシャドーとは大違いだと指摘。

 

「ふざけるな。俺がお前らなんかに負けるはずが無い。例え全力を出されたとしてもだ!」

 

ヒューストムが更に加速しようとする。しかし、やはりアポロンとアルテミスが揃っている事による特殊な阻害フィールドが彼の力を抑制してしまう。

 

「喰らえよ!」

 

ヒューストムがそれでも構う事なくアポロンの周囲を走り回り、彼の背後に出てくると指鉄砲を構える。するとヒューストムの指鉄砲の先に風のエネルギーで高速回転する弾丸が生成された。

 

「……そこだね」

 

しかし、アポロンはヒューストムの動きを見切ったと言わんばかりに自身の周囲に空中に浮く光の剣を展開。それをヒューストムのいる後ろに向けて射出。その剣が何本もヒューストムの風の弾丸とぶつかり合って相殺。だが、光の剣はまだ残っているためにヒューストムへと迫っていく。

 

「チッ!」

 

ヒューストムは高速移動でその場から逃げると再度アポロンの前に戻ってくる。

 

「お前……」

 

「ユキさんに対してもそうだ。告白を振られたなんて理由で彼女にトラウマを植え付けて。そのせいでユキさんがどれだけ苦労したか」

 

「煩い。あんな女、俺の彼女にするよりも玩具として使い倒した方が有意義だと思ったから……」

 

「それだよ。君が小心者だっていう最大の理由。……良い加減諦めなよ。幼い頃の恋の恨みをいつまでもさ。だからそうやって他人を貶める事でしか喜びを見出せなくなるんだ」

 

アポロンから向けられた精神的に幼く醜い可哀想な男を見るような同情的な目線を向けられたヒューストムの怒りは……もう止められなかった。

 

「煩いんだよ……お前好き放題言って舐めやがって……俺は、俺はそんな誰かの下に見られるような、そういう奴じゃねーんだよ!!」

 

ヒューストムが激昂したように声を荒げるとアポロンへと怒りのままに攻撃を仕掛ける事になる。そして、それを見たサンスポットはアルテミスと戦いながら呆れたような目線を向けた。

 

「はぁ……。アイツ、あんなに器の小さい奴だったとはな」

 

「ホント、アレを見てるとあんな小さい奴に挑発されて怒ってた私がみっともなく感じるわね」

 

サンスポットの拳を受け止めたアルテミスも不本意ながら彼と同意見だったようで。それから二人は僅かに距離を空ける。

 

「そうか。お前も大概怒りっぽいもんな。やっぱり男の方でいた方が恥ずかしく無いか?ヒョウ」

 

「……」

 

アルテミスはサンスポットに対して少しだけイラッとするが、同時に頭の中にある仮説が浮かび上がる。

 

「へぇ図星かぁ。まぁでもあんなに暴力的な女だったら仕方ないよな?何しろ事ある毎に俺の脛とかを蹴ってたし」

 

「……今全部腑に落ちたわ。私の事を軽口で煽ってたアサヒの一面って……」

 

「ふふっ、正解!俺の分の闇としての性格だ。だから何度も言ってるだろ?俺もカゲロウとは銘打っているが虹ヶ丘アサヒの一面だって。ユキも哀れな女だよな。俺の助けられたというだけで、俺の光の部分をだけを見て惚れたんだからさ」

 

ついでとばかりにユキの事まで貶すサンスポット。これはアルテミスがユキを馬鹿にする発言をした際に怒りやすいという彼女の性格を利用した物だ。

 

「……そうね。ユキ姉も何であなたの事を好きになったのか不思議なくらいよ。……だから誑かされてほしく無かったのに……」

 

「お?それは俺に対する嫉妬か?」

 

「勘違いしないで。……元々私はユキ姉が一番辛い時に側にいてあげられなかった。その時点で私なんかがあなたへと嫉妬する権利なんて無かったのよ」

 

アルテミスはユキが初めてこの世界にやってきた時の事を思い出す。そして、彼女が一人で悩んでいるのに自分はその前に出る事すらできなかった。プニバード族の事がアサヒやましろにバレてはいけないという話を差し引いてもである。

 

「それを助けてくれたのは他の誰でも無いアサヒよ。それに対して今更文句や嫉妬を言うつもりは無いわ」

 

「だったら何故そんな後悔したような事を言うんだ?」

 

サンスポットはアルテミスがユキの事を割り切っているのなら何故いちいちその件を未練のように語ったのかを問う。

 

「別に。ただアンタがもっと優しいだけの奴だったら良かったってだけの話」

 

「そうか。なら残念だったな!」

 

アルテミスはサンスポットがそう言ったのと同時に踏み込むと彼の懐に入り、高速の拳による連打を放つ。

 

「だだだだっ!」

 

「速い拳か。俺にこれを捌くのはちょっとキツそうだな」

 

アルテミスオーロラの特性としてペギンから教わった高速の拳がある。それをパワータイプであるサンライズ寄りのスペックであるサンスポットが捌くという方法で対処するのは厳しい。

 

「けど、あくまでキツイのは捌くという行為だけ。この程度の攻撃など効かない!」

 

ただ、やはりパワーで差がある分サンスポット相手にアルテミスのラッシュはそこまで大きなダメージにはならない。

 

「だったら!はぁああっ!」

 

アルテミスは拳のラッシュでガードを頭から胸の辺りに集中させた直後にガードの隙が出来たサンスポットの腹の辺りに拳を捻り込むようにして放つ貫通力の高い拳を放つ。足りない火力を技術力で補おうとしたのだ。

 

「やるなぁ。だが!」

 

しかし、その瞬間。サンスポットは能力である影潜りを発動。いきなりアルテミスの前から姿を消すと彼女の渾身の一撃は呆気なく回避されてしまう。

 

「ッ!?」

 

「オラよ!」

 

アルテミスが驚いている間に彼女の真横に出てきたサンスポット。やはり影のある場所なら後ろ側以外にも出られるらしく。アルテミスのガラ空きの腹へと逆にアッパーカットを打ち込んだ。

 

「あがあっ……くっ……」

 

「っと、やっぱ最初はそうだよな」

 

アルテミスはダメージに顔を歪めるが、まだ肉体的に疲弊し切ってるわけでは無い。そのため、すぐにサンスポットへと蹴りを放つ事で追撃を免れた。一方のサンスポットもまだアルテミスとは交戦したばかりなのである程度の反撃も予想の範囲内である。

 

「その影潜り、本当に厄介ね」

 

「だろ?お前でこの能力に対抗できるかな」

 

「対抗してみせるわ。アンタを倒して元のアサヒをユキ姉の元に返すまで!」

 

それを聞いて良い加減聞き飽きた台詞にサンスポットが補足説明を加えた。

 

「だーかーら。もう今の俺がニュートラル。正常状態のアサヒなんだよ。良い加減受け入れろ」

 

「そんなのあなたが勝手に決めた事でしょうが!」

 

勿論アルテミスはそのような事を受け入れるわけが無い。こうして、アルテミスもサンスポット相手に勝つために本格的な戦いを始める事になる。




また次回もお楽しみに。
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