熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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バッタモンダーが見せた偽りの勝機

プリズムが到着し、スカイを助け出すと彼女へと手を差し伸べる。それを見たバタフライはすかさずミックスパレットの力を発動した。

 

「っとそうだ!あっちにも……二つの色を一つに!イエロー!ブルー!癒しの力、アゲてこ!」

 

バタフライが発動した癒しの力によってスカイとウィングの体の傷が消えていく。同時に体力も回復したのかウィングが目を覚ました。

 

「ッ……バタフライ、ありがとうございます!」

 

ミックスパレットの新たな力もわかった所でウィングは目の前の状況を確認。まだ自分達はバッタモンダーとシャララボーグの二体を崩す事はできていない。プリズムの参戦と向こうが連携してないから幾分かはマシと言える……が、それでもシャララ隊長が囚われている以上は圧倒的不利には変わらない。

 

「ましろ……さん……ましろさん!」

 

そんな時、スカイはプリズムから差し出された手を掴むどころかシャララ隊長が囚われてしまっている事による心細さからプリズムの肩を掴む。そして嗚咽を漏らしつつ涙を流しながら彼女へと真実を伝えた。

 

「アレは……あのランボーグは……シャララ隊長なんです!!」

 

「えっ!?」

 

プリズムはそれを聞いて困惑。もう一度シャララボーグの方を見ると確かにシャララ隊長の面影が残るような巨大な剣にヒーローのようなマント。体の模様も彼女を感じさせるような物だ。そのためプリズムは混乱する気持ちをどうにか抑え込む。

 

もしそれが本当ならスカイの、ソラの気持ちは酷く傷つき……病んでいるだろう。自分はそのフォローに回らないといけないと悟ったからだ。

 

「アンダーグエナジーのせいで……シャララ隊長がランボーグに……ううっ……」

 

そのままスカイはその場で崩れ落ちるように両手を地面に付けると泣いてしまっていた。

 

「嘘……」

 

「もうどうすれば良いかわかりません……助けて……ましろさん」

 

スカイの心は完全に折れている状態であり、目の前にいるプリズムに助けを求めるのが精一杯。そのためプリズムはそっとスカイを抱きしめるとまずは彼女を安心させようとする。

 

「ッ……くっ」

 

ただ、今の自分にはシャララ隊長を救えるだけの力は無いためにどうすれば良いかわからずに悔しさを噛み締めていた。

 

「ウィング、バタフライ。今の話って……」

 

「残念だけど全部本当の事さ。もし疑うのなら攻撃してみたら?ただし……中にいるシャララ隊長がどうなっても知らないけどね」

 

バッタモンダーは自らが優位に立っている事を良い事にプリキュアを煽りまくる。その言葉にプリキュア達が悔しそうにしているとバタフライが最初に動き出す。

 

「バッタモンダー!」

 

「おっと、不意打ちだなんて君も他人の事言えなくなってきてるんじゃないのかなぁ〜」

 

バタフライからの拳に対し、バッタモンダーがそれを受け止めると邪悪な笑みを向ける。

 

バタフライとバッタモンダーが交戦を開始するとシャララボーグはその隙に二人で抱き合って隙を晒しまくっているスカイ、プリズムを攻撃しようと構える。

 

「ランボーグ!」

 

「ッ、そんな事絶対にさせない!」

 

だが、先程のミックスパレットのお陰で回復したウィングがすかさず立て直すとシャララボーグの顔面の目の前を下から上に上がる形で通って邪魔をする。

 

「ラン!?」

 

「二人を攻撃するならボクを倒してからにしてください!」

 

ウィングが再度シャララボーグの注意を引き付けるように動き回る形で自分にヘイトを集めるとどうにかシャララボーグの位置をスカイ、プリズムから引き離す。

 

「シャララボーグを引き離してキュアスカイの場所を安全圏に戻したか」

 

「そんな事言ってる場合?私を相手にしててさ!」

 

バッタモンダーに対しては引き続きバタフライが相手をする。だが、バッタモンダー視点で見ると自分にとってバタフライ一人は余裕で相手できてしまう。そのため彼はまたバタフライ相手に余裕の顔のまま戦いを継続した。

 

「ほらほら〜、僕はここにいるんだよ〜。悔しかったら僕に当ててみなって」

 

「ッ……」

 

バタフライはこれを受けてもう一度思い知らされる。一対一では彼相手に勝つ術が無いという事を……。

 

「それでも負けるわけにはいかない!バタフライキッス!」

 

バタフライはバタフライキッスを発動すると一回のキッスで呼び出す蝶の数を増やす。

 

「お願い!」

 

するとバタフライキッスはフワフワと飛びながら位置に着くようにバッタモンダーの周囲に待機する。

 

「……あ?何だこりゃ」

 

「はぁあっ!」

 

その状態でバタフライはバッタモンダー相手に突撃。何度か攻撃を繰り出しているとそれを見てバッタモンダーは嘲笑する。

 

「おいおい、馬鹿の一つ覚えじゃないんだからさ」

 

バタフライは右腕からのストレート、左脚の回し蹴り、回し蹴りした脚をそのまま連続で繰り出すと言った激しい攻めを展開するがバッタモンダーに涼しい顔のまま避けられてしまう。

 

「やれやれ、そろそろ反撃をさせてもらうよ」

 

バッタモンダーもこれ以上はやっても無駄だと考えると反撃するために左腕を後ろに引っ込める。その瞬間、バタフライは手を横に振った。

 

「む……ッ!?」

 

バッタモンダーがその動きに疑問符を浮かべていると周囲に浮かんでいた蝶の一匹がバッタモンダーに命中。爆発して多少のダメージ与える。

 

「はあっ!」

 

直後に体勢を立て直したバタフライからのアッパーカットが迫るとバッタモンダーは慌てて後ろに下がった。

 

「なるほど、その蝶はどうしても足りない手数を補うための物か」

 

今バタフライが呼び出した蝶型の投げキッス。それはバタフライとバッタモンダーの実力差によって生じる一瞬の隙をカバーするための物だった。これなら単発ながらも、どうしても足りない一手を埋める事ができる。

 

「少しは考えたかぁ。でもこれで今の僕に勝てるなんて思ってないよね?」

 

「ほんと……性格が悪いだけだった方がマシだったかも……」

 

バタフライはそう呟いて顔を歪ませた。今打った手はあくまでその場凌ぎ。戦闘が長期化すれば対応されて通用しなくなる。しかもバタフライは未だに彼に勝つ手段が無いのだ。

 

「(どうにかしないと、バッタモンダーじゃ無くても……シャララ隊長を助ける手でも良い。考えなきゃ……)」

 

バタフライはそう考えつつバッタモンダーとの戦いを継続。そして、ウィングの方もシャララボーグ相手に動き回る事で狙いを絞らせないようにしていた。

 

「(シャララ隊長を救うにはどうしても攻撃しないといけない……だけど、ボク一人の力じゃさっきみたいに……)」

 

ウィングもそう考えつつ自分の弱さに悔しそうな顔つきを浮かべる。何しろシャララボーグを止めるにしても倒すにしても自分単独ではシャララボーグ相手に勝てないのは先程の戦闘で痛い程わかってしまっている。このままではどうする事もできない。

 

「ウィング!まだ諦めたらダメ!」

 

その時響いたのはバッタモンダー相手に拳を振るいながら善戦するバタフライの声だ。ただこの場合、善戦しているとは言ってもバッタモンダーがまだ本気を出さずにある程度手を抜いているから互角になっているだけだが……。

 

一先ずそれは一旦さておき、バタフライがウィングへと希望を捨ててはいけないと声をかける。彼女だってバッタモンダー相手に余裕が無いはず。それなのに声をかけたのには理由があった。

 

今の段階で空気感はプリキュア側に圧倒的に不利。そしてこの空気感はプリキュアの士気を下げてしまう。そのためバタフライはウィングがこれに呑まれないように繋ぎ止めたのだ。

 

「切り札はまだこっちにあるよ!」

 

「えっ……」

 

「アンダーグエナジーが悪いんでしょ?」

 

バタフライはバッタモンダーと戦いながらこの答えに辿り着いた。そしてそれはこの場を打開する一手である。そして、彼女はバッタモンダー相手に回し蹴りを放つとバッタモンダーは後ろに飛び退く形で下り、距離を取って僅かに訝しんだような顔を見せる。

 

「……あん?」

 

「バタフライ、どういう意味ですか?」

 

「アンダーグエナジーが悪さをしてるならそれを私達で浄化しちゃえば良いんだよ!」

 

バタフライの言葉にウィングは目を見開くと暗闇の中に一筋の光が灯った。シャララボーグ……と言うよりはランボーグの力の源はアンダーグエナジー。そしてそれがシャララ隊長をおかしくしている原因だ。しかし、逆に言えばアンダーグエナジーさえ取り除けば全て解決するという事でもある。

 

そして、今この場にいる戦力ならそれが可能だ。ウィングもバタフライの言葉の意味を察して顔つきが明るくなる。

 

「あっ!そうか、ボク達にはまだタイタニックレインボーがある!」

 

「チッ、そう言えばお前達二人が揃ってる以上できちゃうんだよなぁ」

 

バッタモンダーもその事実を思い出すと顔つきが歪む。スカイ・プリズム、そしてこの場にいないムーンライズ・オーロラの技に並び、匹敵する技であるタイタニックレインボー。それならシャララボーグを浄化できる可能性が高いだろう。

 

「はっ、だからって僕がそんなのわざわざ黙って見過ごしてやるはずが無いだろう!」

 

「ッ!!」

 

バッタモンダーだって折角作ったシャララボーグをみすみすやらせるなんて事には無い。そのためプリキュアの邪魔をするべくバタフライへと拳を放つ。彼女はそれを止めるために咄嗟にバリアを展開して受け止めた。

 

「ッ……くううっ……」

 

「はっはーっ!無駄無駄!そんなバリアなんて簡単に壊れるんだよ!!」

 

バッタモンダーが突き出した右腕にアンダーグエナジーを集約。すると拳の威力が強化されてバリアにヒビが入ってしまう。

 

「ううっ……」

 

するとプリズムはウィングとバタフライが中々合流できないこの状況を見てスカイやエルへと声をかける。

 

「スカイ、私……行くよ」

 

「ッ!?そんな、ましろさ……」

 

「シャララ隊長を救いたいのは私も同じ。バタフライが示してくれた可能性を私は信じたい」

 

「ッ……」

 

スカイはプリズムが自分の側から離れるのに恐怖を感じるが、今の自分には止められないという事で彼女を見送らざるを得なかった。そしてプリズムはエルへと声をかける。

 

「エルちゃん」

 

「える?」

 

「……スカイをお願い」

 

「える!」

 

「ましろさん……」

 

プリズムがいなくなるとスカイは一人になった事で心細さがまた胸の中を支配してしまう。だが、そんな事言ってられる場合では無い。

 

「くうう……」

 

「オオォラッ!」

 

バッタモンダーの一撃によってとうとうバタフライのバリアが限界を迎えると彼女は尻餅を着いてしまう。そして、バッタモンダーの笑みがバタフライを見下ろす。

 

「ヤバっ……」

 

「あははっ!折角の切り札も不発に終わりそうだなぁ!」

 

バッタモンダーが勝ち誇った顔でバタフライを踏みつけようと脚を振り上げた瞬間。すかさずウィングがそれを見て飛び出す。

 

「はぁああっ!」

 

「煌めけ!」

 

「ラン!?」

 

同時にプリズムが光弾でシャララボーグの目を潰すとウィングはフリーになったままバタフライを抱えて飛び上がった。

 

「馬鹿な!?」

 

「バッタモンダー、あなたの相手は私がするよ!」

 

そして、離脱したバタフライと交代してプリズムがバッタモンダーの相手をする事に。これならウィングとバタフライがシャララボーグの相手として揃う事ができる。

 

「わ、ワンダホー……」

 

「ですね……」

 

「プリズム、ありがと!」

 

バタフライはバッタモンダーを受け持ってくれたプリズムにお礼を言うとウィングと共にシャララボーグを見据えた。しかも幸いな事にまだシャララボーグは目が復活していない。倒すなら今がチャンスだ。

 

「さぁ、行きますよ!」

 

「オッケー!」

 

ウィングの言葉にバタフライが答えるとすかさずミックスパレットを召喚。同時に技の発動プロセスをスタートした。

 

「全ての色を一つに!ミックスパレット!」

 

そして、それを見たバッタモンダーは焦ったような声を上げる。このままでは当然シャララボーグを浄化されてしまうからだ。

 

「ま、不味い!このままではこの僕の計画が、計画がぁああっ!?」

 

「レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!混ぜ混ぜカラーチャージ!」

 

バッタモンダーが喚く間、バタフライが技の発動を準備する。この動きは当然だろう、……だが、プリズムはバッタモンダーのこの動きに違和感があった。

 

「ち、チクショオオオオオッ!!」

 

「(……あれ?何で悔しそうな割に技を邪魔しないの?)」

 

プリズムはそう考える。何しろバッタモンダーの事だ。自分の渾身の作戦を邪魔されればすぐにでも止めるために動きそうな物である。普段なら生身でやり合った際のプリキュアとの実力差を考慮して何もしなさそうだが、今の彼には止めるだけの実力があるのだ。

 

だが実際はどうだ?悔しそうに叫んでこそいるものの、そんな事を言ってる暇があったらすぐに動くのが当然だろう。そして不意打ちしてでもバタフライを止めるはずだし、そのバッタモンダーをどうにかするのが今のプリズムの役目だ。

 

「(……待って、何かがおかしい……。前までならこうなったら余裕が無くなるはずなのに。……でも、その理由がわからないよ……)」

 

プリズムが内心でそう思っているとスカイの隣で状況を見ていたエルも何かを感じる。

 

「えるぅ……」

 

そして、次の瞬間。青い薔薇の花が一刀両断されて消え去るようなそんな不吉な予感がエルの脳裏に過ぎると彼女は思わず声を上げていた。

 

「える!ダメーッ!」

 

エルが涙を浮ばせながら悲鳴にも近い声でウィングとバタフライによる合体技の発動を止めるように言う。そのいきなりの反応にバタフライは慌てて技の発動を止めた。

 

「えっ!?」

 

「ッ!」

 

ウィングとバタフライがいきなり味方であるエルに止められて唖然としていると先程まで悔しそうに叫んでいたバッタモンダーの頬の口角が上がる。

 

「……なーんちゃって」

 

バッタモンダーの言った“なんちゃって”という言葉。それは先程までの彼は演技をしていたみたいな言い草である。

 

「あーあ、折角なら君達がシャララボーグにトドメを刺してからこれを言いたかったんだけどさ、バレたのなら仕方ないなぁ」

 

バッタモンダーは完全に自分が優位に立ったかのような雰囲気を見せるとまだ理由が分かってないプリキュア達は彼に問い正す。

 

「どういう事……?」

 

「ふふっ、教えてあげよう。こういう事だってさ!」

 

それからバッタモンダーは話し始める。今の今まで自らの心に秘めていた彼のもう一つの秘策を。




また次回もお楽しみに。
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