シャララボーグを浄化してしまえばシャララ隊長は死ぬ。その言葉に戦意を喪失してしまったスカイことソラはとうとうヒーローとして戦う意思も失うとプリキュアへの変身が不可能になってしまった。
失意に暮れるソラ達の元に届けられたかけるからの電話。こうなればせめてそちらだけでも上手く行ってて欲しかったが、その内容は芳しくなかった。ここで少しだけ時間を遡り、そこで何があったのかを説明する事にしよう。
「どうした?俺を捕まえてみろよ」
「ッ、ホントさっきから影に潜ってばかり!」
アルテミスはサンスポットの能力である影潜りを相手に翻弄されてしまっていた。
「ほら、隙だらけだぞ」
サンスポットはアルテミスの後ろに出てきては一発殴って影の中に戻るという所謂ヒットアンドアウェイで彼女を翻弄。少しずつダメージを蓄積させていく。
「元のスピードはサンライズとそんなに変わらないのに……これじゃあ私の方がスピードで上回ってる意味が無い」
アルテミスは今オーロラの力を引き出しているために機動力が高めな状態ではあったが、サンスポットの影潜りからの不意打ち戦法の影響して上手くその利点を活かせていなかった。
「ふっ、悔しいだろうな?いつも俺に煽られてムキになって脛とか蹴って。今回はどれだけ煽られてもそれすらできないんだからよ」
「ッ!私が暴力的なのはアンタのそういう所が原因でしょーが!」
ついでと言わんばかりに再度アルテミスを煽りにかかるサンスポット。しかしアルテミスはどれだけ煽られたとしても対処法があるわけじゃ無い。
「反撃してみろよ暴力女。そんなのだからツバサがいつまで経っても振り向いてくれねーんだよ」
「煩い!」
サンスポットはとうとう暴力の事だけじゃ無くツバサへの気持ちという触れてはいけないタブーにも触れ始めた。そのためアルテミスの怒りは爆発。しかし、だからと言って反撃ができるわけでは無い。
「良くないなぁ、結局お前の弱点はそういう怒りに任せる所だぞ」
サンスポットからの攻撃で次々とアルテミスの体に傷が付いていくと状況は防戦一方になってしまう。
「がっ!?ああっ……」
アルテミスはとうとう耐え切れずにその場に膝を着くとそのまま崩れ落ちるように倒れ込み、サンスポットは笑みを浮かべた。
「おいおい、そんな物か?あそこまで俺へと好き放題言ってくれた癖に呆気ないなぁ」
サンスポットは影から姿を表すと倒れ込んだアルテミスの前にしゃがみつつその姿を見下ろす。だが、そう話しかけてもアルテミスは返事を返さない。
「何だよ、返事くらいはしたらどうだ?」
サンスポットは彼女の胸ぐらを掴むと持ち上げる。すると彼女の体は傷だらけになっており、気絶してしまったのか目を閉じていた。また、体もダランとしているために抵抗する事は難しそうにも見える。
「ふっ……もう終わりか。今まで散々俺を相手に暴力振ってくれたよなぁ。そのツケ、そろそろ払ってもらおうか」
サンスポットはアルテミスの体がもう限界だと感じ取ると一気に倒すために手に黒い炎を纏わせる。そして、トドメを刺そうと拳を振り上げた。
「喰らえよ……オラァッ!」
「……はあっ!」
その瞬間、アルテミスは目を開くとサンスポットの体に右腕から高速で繰り出した拳を突き刺す。この一撃を受けてサンスポットの顔は歪んだ。
「があっ……何?」
「はぁ……はぁ……」
そこにはアルテミスは消耗したかのように息切れこそしていたものの、サンスポットへとカウンターの拳を叩きつけていた。そのためサンスポットはアルテミスからのカウンターでのダメージで思わず胸ぐらを掴んでいた手を離すと数歩下がり、同時にアルテミスはどうにか地面を踏み締めて持ち堪える。
「チッ……」
サンスポットはまさかアルテミスが反撃してくるとは思っておらず。そのため完全に虚を突かれていた。ただ、それでも致命傷には至っておらず。彼も持ち直すとアルテミスを睨んだ。
「お前……」
「やっと……まともに出てきてくれたわね」
「なるほど。俺に良いようにやられ続ける事でわざとダウンし、俺を釣り出したか」
どうやらアルテミスが防戦一方になったのは彼女の考えだったようである。敢えて攻撃を受け続けて大きな隙を晒せばサンスポットは自分の前に出てくると思ったのだ。
ただ、これによって決められたのはたった一撃だけ。そのためサンスポットの方はまだまだ余裕そうだった。対してアルテミスの方はこの一撃を入れるためだけに酷く消耗してしまっている。
「俺に一撃入れたのは良かったが、その間にやられ過ぎたなぁ」
「そんなのわかってるわよ」
アルテミスは今の一撃でサンスポットをダウンさせるつもりだった。そうしなければ引き摺り出す過程でダメージを受け過ぎると思ったのである。しかし、思っていた以上に自分が受けてしまったダメージが大きく。その分だけ攻撃の威力が落ちてサンスポットをダウンさせるには至らなかったのだ。
「このまま終わらせてやるのも良いが、この俺を貶めて一撃入れられた分があるからなぁ。もっともっとお前を苦しめてやるよ。尊敬する姉のような存在のユキの役に立てない無力さを味わせることでさ!」
そのまま満身創痍の状態でアルテミスはサンスポットと戦う事になってしまう。
そしてアポロンの方も先程まで煽り返された事で怒っていたヒューストムからの猛攻に一方的な戦いとなりつつあった。
「オラァ!俺に生意気な事言った割には大した事無いじゃないか!」
ヒューストムは左腕に風の力で生成した手刀を振るっており、アポロンがそれに手にした光の剣で対応。しかし、単純な能力値はヒューストムが圧倒的に上。
「はあっ!」
「甘ぇよ!」
ヒューストムが手刀を振り上げた瞬間を狙ってアポロンが突きを放つ。ただ、それをヒューストムは見切って暗い緑色のバリアを使って突きの位置を局所防御。更にアポロンの動きが止まったのを良いことにヒューストムが手刀で彼の右肩を斬りつけてからすかさず右脚での膝蹴りを命中させる。
「ぐっ……がはっ……」
「お望み通り小細工無しでやってるんだ、これで満足かよ!」
ヒューストムが自ら言う通り、小細工を使っていた先程までとは違って真正面から一気に猛攻撃を加えている。そして、アポロンがどうにか先程の攻撃に踏み止まった瞬間を狙ってヒューストムが風を纏った飛び蹴りをぶつけるとアポロンはそれをどうにか腕をクロスさせる事で受け止めた。
「ぐうっ……」
「どうだ?舐めてた俺相手にボコボコにされる気分はよ!」
「舐めては無いんだけどね……」
アポロンはそう呟くように言い返すが、それでも実力差は埋まらない。手にした光の剣でヒューストムの手刀による攻撃を凌ぐので手一杯だった。
ヒューストムは怒りで多少単調な行動になりながらもその能力の差でアポロンを圧倒している。しかし、当然ながら負けているアポロンもまだ諦めていない。
「ッ、まだだ!」
アポロンは先程同様に小さな光の剣を生成するとその先端がヒューストムへと向けられる。対してヒューストムは手の手刀の先端が少し伸びるとそれが左右に倒れるようにして弓のような形へと変化。
「はあっ!」
アポロンが掛け声と共に剣を振り下ろすと生成された光の剣がヒューストムに降り注ぐ。だが、その瞬間にヒューストムが生成した弓を引き絞るとそこに出てきた暗い緑の矢が放たれてそれが分裂。アポロンからの光の剣を全て相殺してしまった。
「ッ、これでもダメか」
「何度も同じ手が効くと思うなよ……このクズが!」
ヒューストムが体にオーラを纏うと高速で移動。アポロンはどうにかそれを見切ろうとするが、その前にヒューストムからの高速移動攻撃が命中。
「ぐああっ!?」
「俺を馬鹿にした事、後悔しろ!」
ヒューストムやサンスポットに二人は完全に押されてしまっていた。そんな中、その様子を完全に動きを封じられたオーロラは、ユキは見ているだけしかできない。
「……何でこんな事になるの……。私は、何を間違えたの?」
『落ち着きなさい、ユキ』
「でも……」
『絶望の未来から来たあなたの言葉を思い出して。ここであなたが折れたら何もかも終わる』
それを聞いてオーロラは悔しそうな顔つきになる。せめて自分がここから動けるのなら何か手はあるかもしれないため尚更だ。
「ねぇ、ライトピラー。まだ外には出られない?」
『……それは厳しいわね。少なくとも、この影縫い状態を解かない事には……』
「……影縫い……影……。ッ!アポロン!」
オーロラは何かを思いついたのかアポロンへと声を上げる。同時にアポロンはヒューストムに吹き飛ばされて地面を転がったが、その声に気がついて顔はヒューストムの方を向いたまま声を返す。
「ッ、オーロラ?」
「何でも良いから光を!」
「光……そういう事か!」
アポロンが手を翳すと小さい光弾が発射される。ヒューストムはその光弾を無視してアポロンへと迫って行った。本来のヒューストムならこの光弾を止めるはず。それは彼が相手の希望を全てへし折った上で痛ぶるのを楽しむ性格であるからだ。
だが、今はアポロン個人にヘイトが向いている状態。つまり、周りで何が起きようとアポロンだけは潰すという心理状況と言えば良いのだろう。そのため彼が放った光弾が自分に来ないと知って無視したのだ。
「輝け!」
それからアポロンが手を上に翳すと先程放った光弾が光を放ちつつ上から周囲を照らす。その輝きによって周囲に存在していた影が一時的に全て消え去った。
「なっ!?」
「これって……」
そのタイミングでサンスポットは影が消えた事によりその中から追い出されるとアルテミスもその事に困惑。そして、オーロラを拘束していた影が消えた事で彼女はどうにかその場から移動に成功。
「はぁ……はぁ……やった……」
「む、ユキが影から抜け出したか」
ただ、休んだとは言えオーロラの体力が残り僅かな事に変わりは無い。それに体の傷だって回復できない以上は長期戦なんて無理だ。そして、小細工を使ったアポロンに更なる怒りを抱く。
「チッ。貴様、他人に散々言っておきながら小細工を使ったな!」.
「ここにオーロラが入るのは面倒。だったらお前達二人を倒すのみだ」
するとサンスポットが構えを取ると背後に黒い太陽がエフェクトとして現れるとそこから放出された炎が右腕に集約していく。同時にヒューストムが自身の正面に三つの緑のリングを生成するとそれを重ね合わせる形で技を放つ。
「ひろがるソーラーエクリプス!」
「エクストリームツイスターズ!」
その瞬間、サンスポットが拳を繰り出すと同時に右腕から小さな黒い球体のエネルギーボールがアルテミスへ。ヒューストムの方は彼が重ねた緑のリングから緑の竜巻がアポロンへ。それぞれ命中してしまう。
「「うわぁああああっ!?」」
そのまま二人は崩れ落ちて変身解除。かけるとヒョウの姿に戻ってしまう。同時にアポロンが生み出した光の球体も消えてしまった。
「ッ、かけるさん……ヒョウ……」
「ユキ、復活するのが遅すぎたな」
「でも、私は……」
オーロラが諦めない意志を示そうとした時。ヒューストムは高笑いしつつかけるへと歩み寄って行った。
「くく……あははははっ!どうだ?結果的に何も変わらなかっただろう?お前と俺とじゃ格その物が違うんだよ!」
ヒューストムは未だに煽られた事を根に持っており、そのターゲットがオーロラでは無くなってしまっている。そのためサンスポットが溜め息と共にヒューストムの前に影を伝ってワープした。
「おい、少しは落ち着け」
「何だと!?大体お前のせいでこの二人が到着したんだろうがこのクズが!」
「はぁ、そんなんだからユキに嫌われて仕返ししないと気が済まなくなったんだろうが」
「貴様ぁ!」
そのままヒューストムが声を荒げ、サンスポットがそれを正論でぶん殴るという状況が始まってしまうとオーロラは唖然とする。
「ちょ、ちょっと……」
「「煩い!ユキは黙ってろ!」」
「えぇ……」
完全にそっちのけにされてしまったオーロラは困惑。そんな時、突如として体に緑のオーラが発生すると体に受けていたダメージが回復していった。そして同時にそれはかけるやヒョウの体にも発生すると二人も体の傷が回復する。
「えっ……これは……」
『恐らくキュアバタフライのミックスパレットね。あのアイテム、確か回復の力も使えるのよ』
それを聞いてオーロラは驚くが、起き上がったかけるやヒョウはそれ以上にサンスポットとヒューストムが喧嘩している事に驚いていた。
「えっと、これって」
「何してるのよ……」
何にせよ今は絶好の機会。二人の意識が自分達プリキュアから外れている以上、何かをするなら今である。そのためオーロラはどうするか考えようとした。
「今のうちに……」
『待って、あの二人がやり合ってるならここは退くべきよ』
だが、その前にライトピラーがオーロラの思考を阻止するように話しかける。そしてその撤退の判断に彼女は困惑した。
「ッ、でもアサヒ君が……」
『このままやってもさっきの二の舞よ。それに、今度そうなったら逃げられる補償が無いわ。諦める気持ちが無ければいつか絶対助けられる。あなた達はルーセントムーンだって助けられたんだから』
その言葉にオーロラはライトピラーの考えが正しいと感じ取ると視線をかけるやヒョウに向けた。二人はそれを見て頷くとオーロラの意思に賛同する。この反応からどうやら二人にもライトピラーがこっそりとテレパシーを送っていたらしい。
『撤退は私に任せて。はあっ!』
その瞬間、オーロラ、かける、ヒョウの三人の後ろにオーロラのような美しく眩い光を放つカーテンのような物が生成されるとその光でサンスポットとヒューストムの動きが止まる。
「ッ!!何だ?」
「まさか、コイツら……」
そして、光によってサンスポットが潜れる影が全て消失すると同時に三人の体をスキャンするようにオーロラのカーテンが移動。その光に包まれた三人はその場からいなくなった。
「「なっ!?」」
こうして、ユキ、かける、ヒョウはどうにか二人からの追撃を受ける事無く撤退に成功。瞬間移動でかけるの車の近くに戻った三人はそのまま虹ヶ丘家に戻る事にし、無事に到着。
三人が家の中に入るとそれから少しして前回のラストと同様にかけるがあげはへと電話をかける事になるのだった。
今回で一応アニメ22話分の話が終了となります。ここから23話に向けて繋ぎの話を入れてからアニメ23話となります。それではまた次回もお楽しみに。