熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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持ち直した雪 アサヒを助ける鍵

虹ヶ丘家で現状整理が終わった頃。そこにユキが一人降りてきた。それを見てヒョウが慌てて駆け寄る。

 

「ユキ姉!!」

 

「ッ、ユキちゃん……」

 

ましろ達もユキの方を向くと彼女の顔つきは元気……からは程遠かったものの、かつて落ち込んだ時に見せた絶望顔に近い物では無かった。つまり、まだ彼女の心は折れていない事になる。

 

「すみません、ご迷惑をおかけしました」

 

「良いの、ユキちゃんだって辛かったんだから……」

 

「……いえ。私よりも辛い人がいるって思ったら……こんな所で折れてなんかいられませんよ」

 

ユキの声色は普段と比べると少しだけ冷たいようにも感じた。ただ、アサヒが闇堕ちした時のような時程では無い。無理しては無いとはいえ、酷く心が傷ついたのは間違いないのだ。

 

「そっか……」

 

「ユキちゃん、もし辛くなったら言ってね。それと、無理だけは絶対にしないで」

 

「うん、ありがと」

 

やはりどこか言葉遣いが冷たくなっていると言うべきか。ユキがまた心を閉ざしたような冷たい接し方にどうしてもましろは違和感を覚えてしまう。

 

「……ごめんね、ましろちゃん。今はこうしてないと……どうかしちゃいそうなの」

 

「えっ……」

 

するとユキはましろの反応を見て自分がアサヒのようになってしまったと疑われていると思ったのか。本当の気持ちを話す事にした。

 

「……正直言うと凄く辛い。本当はもうアサヒ君と戦うのは嫌って気持ちもある。ヒューストムは怖いし……こうやって冷たく話さないと気持ちがどうにかなってしまいそう」

 

ユキの声色は震えていた。それだけ自分を奮い立たせるという時点でかなり我慢しているのだろう。それでも彼女が踏み留まっているのには理由がある。

 

「もしかしてユキちゃんがそれで頑張ってる理由って」

 

「うん……アサヒ君とソラちゃんが私以上に辛い気持ちになってるって思ってるからだよ。アサヒ君はカゲロウのせいで表に出てこれなくて、ソラちゃんはバッタモンダーのせいで心を折られてしまった。私がここで踏ん張れ無かったら……もっと状況が悪くなっちゃうから……」

 

ユキはそう言いつつも言葉はどんどん震えていく。結局の所、ユキは痩せ我慢をしていたという事なのだろう。

 

「……あの、ましろちゃん。皆……お願いがあるの」

 

ユキはそれから少しだけ気持ちを落ち着ける時間を貰ってから頼み込むように真剣な声色になる。

 

「私、もう一度カゲロウと……アサヒ君と戦う」

 

「えっ……」

 

「ユキさん、それ……大丈夫なんですか!?」

 

ツバサがユキの宣言に多少不安そうに話しかける。先程までのユキの話し方を聞いているともう精神的にかなり追い詰められているようにも見えたからだ。

 

「正直、大丈夫か大丈夫じゃないかって聞かれたら大丈夫じゃない。……私だってアサヒ君と戦いたくなんか無いよ。……だけど、ここで逃げたらもう取り返しがつかない。そんな気がするから」

 

根拠は無い。しかし、ユキは以前に夢の中で出会った未来から来たと言った自分自身の話や今の状況を総合すると少なくともここで目を背けたら絶望の未来ルートに入りそうな気がしたのだ。

 

「アサヒ君は今きっと助けを求めてる。私は彼に助けてもらった。……だから、今度は私がアサヒ君の助けにならないとダメなの!」

 

「ユキ姉……」

 

ユキの決意は固く。自分の手でアサヒを助け出さないと気が済まないと言わんばかりだった。そして、その気持ちを受けてかけるが話す。

 

「……ユキさん」

 

「はい」

 

「ユキさんの気持ちはわかった。……ましろさん、良いね?」

 

「うん。ユキちゃんがそうするって言うなら」

 

ましろもその事について了承するように頷く。これは先程話して決めた通り、もしユキにそのつもりがあるのならアサヒ……と言うよりはカゲロウの相手をするのは彼女に任せるという話の確認である。

 

「ユキさん、ユキさんにそれだけの覚悟があるなら……俺達からもアサヒ君の事お願いしても良いかな」

 

「……ッ!はい!」

 

かける達はアサヒの救出をユキのその気持ちに賭ける事にした。ユキも仲間達からの期待を感じつつ頷き、自らの手でアサヒを助け出すという決意を固める。

 

「……ましろさん。ほんと、ユキ姉……アサヒと出会ってから凄い変わったよね……」

 

「うん。最初はあんなに自分に自信を持ってなくて、他人からの目を凄く気にして。でも、そんなユキちゃんをアサヒは変えてくれた。だから今こうしてユキちゃんは全力で恩返ししようとしている」

 

ヒョウはユキに対して改めての頼もしさを感じると共に、幼い頃に自分が助けられた事を思い出す。

 

「……私の恩返しがまだなのに……ユキ姉、どんどん遠くに行っちゃうな……」

 

「うーん、ユキちゃんは恩返しされてなくてもそんなに気にしないと思うよ。むしろ、毎日助けてもらってる分でも十分恩返しされてるように感じそうだし」

 

「そうかもね」

 

それから一同はもう夜も遅くなりつつあったために翌日のそれぞれの活動に備えて寝る事になった。

 

「……ん……」

 

ユキが目を覚ますとそこは真っ白な空間。そして、その中に真っ黒に染まった少女がいた。同時にユキの中には既視感が浮かぶ。

 

「もしかして、私……また夢の中で呼び出されてる?」

 

「流石にもう察しが良いわね」

 

その瞬間、真っ暗な少女の全身にヒビが入ると同時に黒いドレスを着た自分自身がいた。

 

「えっ……えっと、また未来の私?」

 

「残念。私は未来の存在じゃ無いわ」

 

「うーん、じゃあ誰だろ……。私自身ではあるんだよね?」

 

「そうよ。私はあなた自身」

 

ユキはヒントを貰いつつ目の前の存在について考える。すると目の前の自分の空気にどこか似た存在を見たのを思い出す。

 

「(この子、そういえばどこかカゲロウに似た気配を感じる。もしかして……)」

 

「そうよ。私はカゲロウと同じ。闇のユキ・アラーレと呼べる存在」

 

「ッ!?もしかして、カゲロウみたいに……」

 

「待って。私はカゲロウみたいにあなたを乗っ取るつもりは無いわ。……それに仮にそうしたくても無理なのよ」

 

ユキはカゲロウと同じと聞いてすぐに警戒心を高めるものの、闇のユキはそれができないと聞いて拍子抜けしたように唖然とする。

 

「え?えっと……それは何で?」

 

「周りの空間を見て。これはあなたの中の光と闇の割合を示してるの。今は光の色が強いから真っ白でしょ?」

 

「あ……この白いのってそういう意味があったの?」

 

この事から前にアサヒがカゲロウに乗っ取られてしまった理由に闇の自分が強くなってこの周囲が暗く染まってしまったから……そう考えれば今闇のユキがどんなに頑張ってもユキを乗っ取れないのも納得ができる。

 

「じゃあ何で私の事を……」

 

「警告しに来たのよ。今のあなたじゃ無理だって」

 

「ッ……」

 

ユキは闇のユキから言われて僅かに動揺する。確かに今のアサヒを助け出すのは困難かもしれない。だがだからと言ってやる前から否定されるのはどうしても気持ちに来るものがある。

 

「それはどうして?」

 

「今のあなたにアサヒ君を助けたいって気持ちが無いからよ」

 

「そんな事無い。私はアサヒ君の事を助けたくて……」

 

「じゃあ何で大事な事から目を背けてるのよ……。どうせ今の私なんかじゃ……どれだけ頑張っても無理なのに……」

 

ユキはそれを聞いて頭が混乱する。大事な事から目を背けている。闇の自分が言った言葉の意味がまるでわからないのだ。

 

「私が目を背けてる大事な事?……わからない。私はアサヒ君を助けたいの!だから……」

 

「……無理よ。もう彼には嫌われてる。少なくとも、もう一度付き合うなんてできないわ……」

 

「ッ……」

 

ユキはそれを聞いて何となくそのイメージが浮かんでしまう。少なくとも、カゲロウに完全に乗っ取られてしまう直前のアサヒのあの罪悪感に塗れた顔を浮かべるとどうしてもそう考えずにはいられない。

 

「だけど、それでも助けるよ……」

 

「それはあなたが諦めたら世界が終わるからでしょ?……もう良いじゃない。あなたは十分頑張ったのよ。むしろ頑張り過ぎてるくらい。ソラちゃん達に心配されるくらいにさ」

 

ユキは目の前の自分自身から何度も諦めるように促されるとどうしても心の中にその言葉が響いてしまう。やはり自分自身に本音をぶつけられるのは簡単には無視出来ない程の心への影響を与えるらしい。

 

「……あなただって今も怖いんでしょ?他人から捨てられてしまうのが」

 

「そんなの怖いに決まってるよ……。だけど、アサヒ君だって……自分が自分じゃなくなるの……凄く怖い事だと思う。だから私が助けないと」

 

「助けて?その先はどうするの」

 

「えっ……」

 

闇のユキは目の前のアサヒを助けるという事だけでは無く更にその先の事まで聞いた。ユキが言ってるのはあくまで助けるという事まで。その後どうするかについては一切触れてないのだ。

 

「助けた後にあなたは今のままでアサヒ君とまた元通りの関係に戻れるとかおめでたい事思ってないわよね?……私なんていつも落ち込んでばかりで、慰めるのも面倒な人で……他人に迷惑かけてばかりで……」

 

「それは……」

 

ユキにだってそう言われて心当たりはある。自分のダメな部分。所謂闇の部分だ。

 

「あなたは本当にそれでもう一度彼とまた同じように過ごせるって思ってるわけ?アサヒ君に気を使わせてばかりなくせに!」

 

闇のユキからの言葉にユキの心は乱れていく。確かに自分は今までアサヒ相手に迷惑をかけ続けてきた。しかもそれは自分の中では外的な部分だけだと思っていたのだが、今の闇のユキが言ったみたいにユキの内面の部分でアサヒに凄まじい負担をかけていたのだとようやく理解する。

 

「だから言ったでしょ。あなたにアサヒ君と向き合う資格なんて無いって。それに、どうせ彼に振られるってわかってるなら……もう私は……」

 

「……確かにそうだよ……」

 

ユキはその時、闇のユキへと呟くように返した。そして闇のユキもそれに気がつくと無言になる。

 

「私の欠点なんて……私が一番よく知ってるよ。アサヒ君に沢山我慢させてるって。……だから今度は……私がアサヒ君の事、ちゃんと正面から受け止めてあげたい」

 

「……本当にそれで良いの?カゲロウだとしてもアサヒだとしてもあなたが嫌だと思う事をこれから沢山してくるかもしれないよ……。そもそも、許してもらえるかもわからないのに……」

 

ユキの強い気持ちを聞いた闇のユキは先程までの感情的な言い方とは打って変わり、念押しするように……尚且つユキが嫌そうな話を出す形で問いかけた。

 

「……覚悟の上だよ。例え私にとって嫌な事をされる事になっても……アサヒ君が私の事をもう彼女として見てくれなくても……。私の手でアサヒ君の心を救い出してみせる」

 

「………」

 

ユキがそう言い切ったのを見て闇のユキは想定外と言わんばかりの顔を見せる。ただ、同時にある事も脳裏に浮かんだ。そして柔らかく微笑む。

 

「そっか……それでこそ私だよ……」

 

「え?」

 

「……それなら私の方から助ける上で一つ大きなアドバイスをあげる」

 

「アドバイス?」

 

すると闇のユキはユキへとゆっくり歩み寄ると真剣な顔つきで改まって話す。

 

「そう。……アサヒを救いたいのなら彼の全部を受け入れて」

 

「全部……。勿論そのつもり……」

 

「そうじゃ無い。……あなたが嫌だと思うような……彼の闇の部分。カゲロウも含めて受け入れてあげてって言ってるの」

 

「え……でも、それじゃあ……」

 

ユキはカゲロウも助けてしまったらまたアサヒが今回のような事態に何度でも陥るリスクを抱えるような物のために少しその事を躊躇した。しかし、闇のユキはそれではダメだと言わんばかりに続ける。

 

「あなたに私がいるようにアサヒにもカゲロウがいる。そして、アサヒは私の事も含めて受け入れてくれているわ。だけど、カゲロウの方はあなたに受け入れてもらってない。……私は今回の事が起きた一番大きな原因はそこだと思っているの」

 

「あっ……」

 

ユキはそう言われて心の中で何となく理解する。言われてみれば自分はカゲロウの事を拒絶してばかりで助けようとも思わなかった。彼の性格が捻くれている……という点が大きいのかもしれないが、それはあくまで彼自身が自分に受け入れられなかったから捻くれたと考えたら色々と納得できてしまうのだ。

 

「それじゃあ、私が今までしてきた事って……」

 

「そうよ。無意識に目の前にいる表面上のアサヒの性格だけを見てカゲロウの性格を見て見ぬフリをしていたのと同じ。彼が怒ってもある意味仕方ないわ。……まぁ、カゲロウのやり方にドン引きしてるのは私も同じだけど……」

 

「あはは……」

 

ユキはカゲロウが以前から割と過激な性格なのはわかっていたために苦笑いしてしまう。ただ、もしこの性格の原因の一端が自分にあるのならそれをどうにかするのも自分の役目であると彼女は考える。

 

「……っと、そろそろ長話も終わりにしましょうか」

 

「うん。アサヒ君もカゲロウも……同じ一人の人間の人格だって事、気づかせてくれてありがと」

 

「別に……私なんかにできるのはこのくらいだから、当然の事だし……」

 

闇のユキは恥ずかしそうな顔でそう返すとその既視感のある台詞に改めて彼女も自分の一面であるという事に思い至る。そして、同時にアサヒとカゲロウ。二人共助けないといけないという大事な事に気が付かせてくれた闇の自分にユキは感謝するのだった。

 

「そっか。じゃあ、ここから先は任せて。絶対に二人共助けてくるから」

 

「うん……お願いね」

 

そして、ユキは朝の日差しで目を覚ます。同時に起き上がると先程の夢……というよりは精神内での自分との会話を思い出して決意を新たに動き出すのだった。




また次回もお楽しみに。
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