カゲロウが変身したサンスポットとの戦闘を開始したオーロラ。今現在、彼女は圧倒的に押されてしまっていた。
「あははっ!どうしたオーロラ。俺を倒すんじゃ無かったのか!」
「くうっ……」
サンスポットはオーロラに肉薄しながらの連打を彼女に叩き込んでおり、オーロラはそれを捌くので手一杯と言った所である。
「この!」
オーロラが至近距離から気弾を放って対抗するが、サンスポットはその瞬間にオーロラの影に潜り込むと姿を消してしまう。
「また……」
「遅いんだよ!」
直後にサンスポットが背後から姿を現すとオーロラのガラ空きの背中を殴る。オーロラは痛みに顔を歪めながらもどうにか後ろに蹴りを放つ。
「くっ!」
「へっ、その程度で手一杯か!」
ただ、オーロラのカウンターである蹴りは防御されてサンスポットには殆どダメージ無し。この辺りは単純なパワーのスペックの差が如実に現れていた。サンスポットの長所はサンライズと同様のパワーとそれを活かした近接格闘戦。オーロラの長所は逆に少し距離を取っての射撃戦や瞬間移動、透過する幻の弾を利用した撹乱である。
「距離を取りたいのに……離れられない」
オーロラは瞬間移動を駆使してどうにかサンスポットから離れようとするが、彼も彼でもう一つの能力である影潜りによる擬似的な瞬間移動をしてくるためにどうしてもオーロラの得意な中距離の間合いに移行できない。
「オラよ!」
サンスポットはオーロラへと踏み込むと右からのフックを放つ構えを見せる。
「ッ!」
「残念、前だよ!」
「え……がふうっ!?」
しかし、サンスポットはその右フックを囮にしてオーロラの正面からの左ストレートをぶつけて彼女を怯ませてしまう。
「ッ……!」
オーロラに隙が出来たと考えたサンスポットは右脚を左から回すようにして開脚しつつ真上に振り上げる。それを見てオーロラは咄嗟にバリアを展開した。
「無駄無駄!」
するとサンスポットの右脚に漆黒の炎が宿ると踵を振り下ろしてオーロラのバリアを一撃で粉砕してしまう。更にその衝撃波でオーロラに尻餅を付かせてしまった。
「嘘、そんな……」
「お前、そんな体たらくで俺を倒せるなんて思うなよ?本気で戦えよ本気でさ」
オーロラは唇を噛み締める。今のオーロラは持てる力をフルに発揮した全力状態。つまり、それで歯が立たないという事は勝ち目が無い事を意味する。
「まだだよ……私はまだこんな物じゃ無い!」
「へぇ。じゃあ見せてみろよ!」
サンスポットは倒れたオーロラへと容赦無く左腕による拳を振り下ろす。しかし、その拳は何故か彼女の体を透過。同時に姿が薄く溶けて消える。
「ッ!」
「氷雪拳・雪ノ型。そして、氷雪拳・氷ノ型!」
オーロラはサンスポットが話しかけてきたタイミングで雪ノ型で自らの幻を残しつつ瞬間移動で移動しており、そのままサンスポットの背後を取ったのだ。
「このタイミングなら!」
オーロラが右腕に氷を纏わせるとそのままサンスポットの背後に振り下ろす。しかし、サンスポットはそんなオーロラの動きに笑みを浮かべた。
「少しはやるじゃん!」
するとサンスポットは左腕の拳を振り下ろした体勢からすかさず右脚を後ろ回し蹴りとして放つ。その一撃はオーロラが拳を放つためにガラ空きとなった右の脇腹へと突き刺さり、彼女は痛みに顔を歪めてしまう。
「うぐうっ!?」
「オラァッ!」
そして、サンスポットが更に力を入れながら蹴りを振り抜くとオーロラは成す術なく吹き飛ばされてしまった。
「く……きゃああっ!」
「俺の真骨頂を見せてやるよ」
サンスポットが邪悪な笑みを浮かべるとすかさず近くにある影の中へと潜り込む。そして、オーロラが吹き飛ばされる先にある影から出てくると無防備なオーロラの体へと左横から振り抜く形で膝蹴りを命中させる。
「がはっ……」
オーロラはそれを受けて再度吹き飛ぶとサンスポットはまた影に入って瞬間移動。吹き飛ぶ先の影から出てきて再度不意打ちを喰らわせる。
「あがあっ!?」
「まだまだこんな物じゃ終わらねーよ」
ここからはもう単純な流れ作業だった。オーロラが吹き飛ばされる度にサンスポットは飛ぶ先の影から出現してオーロラを痛めつけては向きを変えて吹き飛ばす。それを受けてサンスポットが移動して攻撃を繰り返すだけでオーロラの体はサンドバッグと化してしまった。
「おうおう、カゲロウの奴随分とえげつない痛ぶり方をしてくれるなぁ」
ヒューストムはサンスポットがオーロラに殆ど何も抵抗させる事なくフルボッコにしている現状を見て僅かに口角が上がる。
「あああっ!?」
「そろそろ遊ぶのも飽きてきたな。終わりにしてやるか」
そして、オーロラを一方的に痛ぶるのに飽きてきたサンスポットは彼女を真上に蹴り上げるとそのまま彼女の真上に来る形で先回り。ダブルスレッジハンマーを振り下ろした。
「じゃあ……な!」
「ッ!?」
最早オーロラはサンスポットからの攻撃の痛みに声にならない悲鳴を上げると地面へと叩き落とされる。
『はあっ!』
ただ、オーロラの体が叩きつけられてしまう寸前に彼女の中にいるライトピラーが力を発動。これにより、オーロラの体がバリアのエネルギーボールに包まれると激突の衝撃を和らげた。
「あん?……先代のプリキュアか。最後の最後で水を差しやがったな」
サンスポットは最後の一撃をライトピラーに止められて僅かに不機嫌そうな顔をするものの、それでも自分が圧倒している現状は変わらないために笑みを浮かべる。そして叩きつけられてしまったオーロラは最後の一撃を和らげたとはいえ、ここまでのダメージが酷く。
「ゲホッ、ゲホッ……はぁ……はぁ……はぁ」
しかも激突の際に周囲に発生した砂埃を運悪く吸い、むせてしまう。それが無くとも体の痛みのせいで上手く動けていなかった。
「あ……ううっ」
「痛いか?辛いか?」
「そんなの……痛いし辛いに決まってるよ」
オーロラはどうにかサンスポットからの質問に答えると立ちあがろうとする。しかし、体は上手く動かないために何度か崩れ落ちてしまう。
「でも、私はこんな事で折れたくない……アサヒ君を助けなきゃ……彼女として、それが当たり前の事だから」
オーロラは歯を食いしばってフラフラと立ち上がると構えを取る。ただ、そんな粘りを見せるオーロラにサンスポットは気に入らない様子だった。
「お前な、幾ら頑張ったって無意味なことくらいわかるだろう?現に体はボロボロ。立つのもやっとじゃないか。それを彼氏のためだからってお前ちょっと異常だぞ?」
「あなたこそ、アサヒ君の事を乗っ取って何がしたいのよ……。私の大切な彼氏を返して!!」
「チッ……気に入らねぇなぁ。彼氏彼氏って、その事ばかり俺からアサヒを救う言い訳にして」
するとサンスポットがオーロラの前に歩いてくると彼女の胸ぐらを掴んで持ち上げる。
「あうっ!?」
「間違えるな、今は俺が虹ヶ丘アサヒなんだよ」
「何……で……」
「お前らも知ってるはずだ。俺は虹ヶ丘アサヒのもう一つの人格。つまり、虹ヶ丘アサヒは外部から他人に乗っ取られたわけじゃない……これが虹ヶ丘アサヒっていう人間のもう一つの顔なんだよ」
オーロラはその言葉にその事実からどうにかして目を背けようとする。しかし、サンスポットはそんな彼女の気持ちを見透かしたように詰め寄った。
「ほら、そういう所。お前は俺という存在がどういう奴かわかっているのに目を背けようとする。気に入らないんだよ……俺の事を好きになってるくせに……愛情だってあるくせに……」
「違う……あなたなんかにそんな気持ちは……」
オーロラは必死にサンスポットへと反論。しかし、サンスポットへの否定をする事は何故かできなかった。
「そんな……そんな気持ちは……」
「……はっ、だろうなぁ。俺相手にその愛情の気持ちを否定なんてできないよなぁ?」
「そんなはず無い……あなたなんかに、あなたなんかに……愛情……なんて……」
オーロラはキッパリとサンスポットを否定しようとする。だが、やはり完全否定しようとする度に彼女の胸の中でざわめきがどんどん大きくなっていく。そんな光景にサンスポットの口角は上がる。
「ほらね?そうやって俺に対する否定を言えない所にまで来てしまっている。感じるんだろ?俺の中にお前が知っている虹ヶ丘アサヒとしての感覚を」
「嘘……嘘だよ……そんなわけ無い……アサヒ君が、アサヒ君がこんな事……」
「はぁ……。良い加減目を覚ませよ!」
その瞬間、オーロラは少しだけ上に持ち上げられてから手を離されるとすかさずサンスポットがオーロラの腹に拳を叩き込む。
「が……あ……っ」
それによってオーロラの体は宙を舞うとそのまま地面に何度かバウンドしつつ転がり、体の痛みのせいで彼女はグッタリとしてしまう。
「く……ううっ」
「どれだけお前が現状から目を逸らそうと俺の知った事では無いが、そろそろ認めたらどうだ?俺はもう虹ヶ丘アサヒその人だって」
「嫌だ!そんなの……認めたら……」
サンスポットがそう言って自分という存在を認めるように勧告。もう虹ヶ丘アサヒは前までのオーロラ……ユキ・ハレワタールに優しくしてくれたあの温かい人格では無いのだと思い知らせようとしているのだ。
当然オーロラはその言葉を容認なんてできないし、したく無い。してしまえば……今度こそ確実にアサヒは自分に見捨てられたと考え、闇に染まり切ってしまうからだ。
「おいカゲロウ。そろそろその長ったらしい茶番は終わりにしてくれよ。このままじゃ埒が明かないだろうが」
すると高みの見物をしていたヒューストムがつまらなさそうに声をかける。彼としては良い加減もうオーロラは虫の息なんだからさっさと倒してアジトに連れ帰るべきと考えていた。そうすれば、後は彼女を好き放題、時間を気にせずにグチャグチャにできるという判断である。
「チッ……余計な事を。だが、奴の言う事に理がないわけでは無い。あまり長々と遊んでいると仲間が来てしまうか……」
サンスポットはこれ以上オーロラとの問答に時間を使ったとしても彼女の心をへし折る前に仲間が来ると考えた。そして、彼は改めてオーロラに向き合うと歩み寄っていく。
「く……ううっ……」
オーロラが必死に立ち向かおうとするものの、もう満身創痍なのか体が動いてくれない。そして、サンスポットが目の前にまたまたやってきてしまう。
「お前の心を完全にへし折るのは後のお楽しみにしてやる。まずは俺達と来てもらおうか」
「(ダ……メ。早く……逃げないと捕まる……でも、もう体が……)」
オーロラはどうにか瞬間移動を使えばほんの少しだけ時間が稼げるために移動しようとする。しかしサンスポットはオーロラのその考えを見透かしており、彼が指を鳴らした。
「今更逃すかよ」
その影響でいきなりオーロラの影から闇の手が伸びてくると彼女の体をその場に縛りつけるように拘束。オーロラは瞬間移動しようとするが、移動できなくなってしまう。
「ッ、あれ……何で……」
「文字通り影縫いって奴だ。お前を影に縛り付ける事で瞬間移動を使えなくしたんだよ」
「そんな……」
『ッ、だったら私が……』
するとライトピラーが再度オーロラを守るために干渉しようとするが、彼女も何故か外の世界に干渉できなくなってしまう。
「先代プリキュアか、だが無駄だ。お前の外への干渉は今の技で封じた」
『本当のようね……私の力をあなたの体の外にまで広げられない』
「ライト……ピラー……」
『やっと理解できたわ。私達と同等の力を持ってるルーセントムーンに何もさせずに一方的に痛ぶったのは……』
「あははっ、そういう事。この影縫いの力で彼女の干渉領域を俺の体の内部までに抑え込んだってわけ。お前ら先代プリキュアの通信による連携はその強大な力が体の外にまで広がり、二人の力が電波同士で接続されるからこそ適用される。だったらルーセントムーンの方の力を体の内部から出られないようにするだけでお前らの連携は断たれるんだよ」
更に言えば、この力でルーセントムーンの抵抗する力を奪ったがために先程のようにルーセントムーンがボロボロになるまで彼女を痛めつけられたのだろう。何にせよ、これでライトピラーからの支援の手も絶たれた。
「さ、俺達と来てもらうためにも一度気絶してもらおうか」
サンセットは右腕の拳に炎を宿すとオーロラへとトドメを刺そうと拳を振り上げる。それに対してオーロラは痛みに備えるために目を瞑った。
「ッ……」
しかし、その瞬間。オーロラの前で拳がぶつかる音がすると彼女の体にダダメージが来る事は無かった。そして、彼女が目を開くとそこには二つの影がサンスポットの拳を受け止めている。
「チッ……また邪魔か……」
「アポロン……アルテミス……」
そこにいたのはオーロラことユキを助けるために予め変身し、この場所へと駆けつけたアポロンムーンとアルテミスオーロラであった。
「遅くなってごめん、オーロラ!」
「オーロラを、ユキ姉を散々好き放題痛ぶったツケ……払ってもらうわよ!」
アポロンとアルテミスは二人がかりでサンスポットからの拳を押し返すと彼を少しだけ下がらせる。そして、サンスポットはそれを見て笑みを浮かべた。そのままの流れでアポロンとアルテミスは名乗りをする。
「夜空を照らす満月の輝き!アポロンムーン!」
「夜空を彩る幻想の奇跡!アルテミスオーロラ!」
「聖なる世界を汚す者よ!」
「光の裁きを今下さん!」
こうして絶体絶命のオーロラを助けに来たアポロン、アルテミス。二人はオーロラに加勢し、目の前にいる敵であるサンスポットや後ろに控えているヒューストムに対抗する事になるのだった。
また次回もお楽しみに。