熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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いなくなってしまったソラ ユキの決断

ソラシド学園の授業の時間。今日もいつものように学校での時間は進んでいく。しかし、ユキやましろがふと誰も座ってない椅子へと不安そうな目線を向ける。

 

「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色……」

 

担任の雑木林が平家物語の冒頭部分を読みながら授業を進めているとユキやましろの脳裏にここにはいないアサヒやソラの事が浮かぶ。やはり、ユキもましろもここにいない二人の事を考えずにはいられなかった。

 

「猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の……」

 

それからイマイチ授業に集中し切れなかった二人は学校を終えて帰路につく。

 

「ソラちゃん、大丈夫かな……」

 

「う、うん……きっと大丈夫だよ」

 

するとましろはまたユキの様子がどこか隠し事をしているかのようにぎこちなくなったのを見てジト目を向ける。

 

「ユキちゃん、やっぱりわかりやすいよ?隠し事するならもっとわからないようにしないと」

 

「そ、それはわかってるけど……」

 

ユキは学校への出発前にソラへとある事を言ってしまった。そして、ましろはそれを知らない。もしましろがそれを知ってしまったら何て言うか。かなり不安がっているのである。

 

それはさておき、ユキとましろの二人は帰宅すると玄関の戸を開けて手洗いを済ませた。そして、そのままの流れでましろは階段を登ってある部屋の前に向かう。勿論その先にあるのは当然ソラの部屋だ。

 

「ソラちゃーん、前にソラちゃんが食べたいって言っていたチョコチップメロンパン。買ってきたよ!」

 

「………」

 

その隣にはユキもおり、ましろと一緒にソラへの励ましをやろうと誘われていた。だが、ソラはましろがどれだけ呼びかけても返事をする事は無く無言を貫く。そのためましろは不審に思った。

 

「あれ……何でこんなに返事を返さないんだろ……」

 

「……やっぱり、ソラちゃん……」

 

するとユキは朝の不安が当たってしまったかもしれないと考え、ましろも僅かに困惑。それからましろは会わないと話す事すらできないという事で中にいるであろうソラに対し、声を上げる。

 

「……ごめんね、ソラちゃん。入るよ!」

 

ましろはいつまでも返事を返してくれないソラに痺れを切らせて部屋の戸を開けた。それからふと周りを見渡すが、部屋の電気は点いておらず。ましろは電気が点いてないという事でソラが寝ている事を考えた。

 

「ソラちゃん?寝ては……無いよね」

 

「ッ……ましろちゃんこれ!」

 

だが、ベッドの上にも人影はおらず。あるのはただ綺麗に整頓された布団や枕だけだった。そんな時にユキが何かに気がつくとましろへと慌てたように声を上げる。そのためましろがその方に行くとそこにはソラが使っていた勉強机があった。

 

「何でミラーパッドがここに?確かヨヨさんから任されたツバサ君が持ってたはずなのに……」

 

「それに……この手帳……ッ、嘘!?」

 

そこにあったのはソラが書いたと思われる一言が残っており、ミラーパッドが一緒に置いてある点からソラはもう虹ヶ丘家にいないのだと察せられた。

 

そしてそこにあった言葉と言うのが……“私、ヒーローにはなれませんでした。さようなら”という簡潔だったが、今の彼女の心境をよく表す物である。

 

勿論こんなメッセージを見たましろはショックで手にしたチョコチップメロンパンの入った袋を落としてしまう。そして、慌ててこの家に住んでいるツバサ達他の面々に話に行く事になるのだった。

 

「た、大変だよ!?」

 

「ちょっ、ましろちゃん!?」

 

ユキはましろの慌てように動揺してしまうと急いでその後を追いかける。こうして、虹ヶ丘家は夕方になったこのタイミングでソラがスカイランドに逃げ出してしまったと知る事になるのだった。

 

その日の夜、虹ヶ丘家の居間にはユキ、ましろ、ツバサ、あげは、ヒョウ、かける、エル、ヨヨの八人が集まっておりソラがいなくなった件について改めて話す事になる。

 

「改めてだけど、今日帰ってたらソラちゃんが置き手紙を残していなくなってて」

 

「そっか……それにミラーパッドがソラさんの部屋にあったと言う事はスカイランドに帰った可能性が高いのも頷けるね」

 

ユキ達はソラがいなくなったとは言っても部屋にあった荷物ごと綺麗さっぱり全部無くなっていた事、更にミラーパッドをわざわざツバサのいないタイミングを狙って部屋から持ち出した事を考えると彼女の身寄りの無いこの世界のどこかと考えるよりはスカイランドの実家の方に帰った可能性が高いと言える。

 

「ミラーパッド、どこに行ってたかと思ってたんですよ……」

 

「ツバサ、今日ミラーパッドを紛失してから家中を探してたのよね」

 

そして、ソラが持って行った影響でミラーパッドが紛失したと考えたツバサはユキ達がこの知らせを伝える直前まで血眼になって家中を探していた。何しろミラーパッドはヨヨから託され、キラキランドの王様達を助けるために必要となる超重要アイテム。そんな物が紛失したとなれば一大事である。ツバサが必死になって探すのも無理はない。

 

「兎に角ミラーパッドの方は無事で良かったです。ただ、問題はやっぱり……」

 

「うん。スカイランドに行っちゃったソラちゃんの事だよね。多分ソラちゃんは今実家に帰ってる……はず」

 

「ソラさんの性格上帰ってると思いたいけど現時点じゃ確実とは言えないんだよな」

 

スカイランドに戻ったソラだが、今の時点でユキ達がわかるのはその事実だけ。スカイランドに帰った後に実家にも顔を出しづらいとなってそのまま失踪コースも僅かながらに残されている。

 

「……それだったら、心配無いよ。ソラちゃんは実家に帰ってるって私は確証を持って言える」

 

「ユキさん……まさかソラさんが帰ってしまうって知ってたんですか!?」

 

ユキの話を聞いてツバサはユキへと詰め寄りつつ立ち上がる。すると彼女は申し訳なさそうな顔で俯きつつ話を続けた。

 

「……私なの。ソラちゃんに一度帰った方が良いと薦めたの」

 

「なっ!?」

 

ユキがそう呟くように話すとツバサの顔つきが一気に変わる。ソラがただ帰っただけなら全て彼女自身の意思だとわかるから良い。しかし、ユキが唆したのなら話は別だ。何故ただでさえ大変なこんな時にソラに帰るように唆したのかツバサは問い詰めざるを得なかった。

 

「ユキさん、何でそんな事言っちゃうんですか!!今は……今は……大変な時なのに」

 

「ツバサ。……ユキ姉だって悪気があってやったわけじゃないよ。だから落ち着いて」

 

「ヒョウ……。確かにそれはわかるんですけど、でも……ユキさんにそうやって薦められて、その後に僕達に何の相談も無いなんて」

 

「えるぅ……」

 

この事からツバサはどちらかと言えばユキが唆した事よりもソラがそれを受けた上で無断で勝手に帰ってしまった事に対して言いたいのだとわかる。

 

「……ツバサ君。じゃあ仮にソラさんが俺達に相談したとして。ツバサ君はどうやって対応した?」

 

「そんなの、前を向くように励まして……」

 

「多分、ソラさんが一人で勝手に帰ったのはきっとそうなるってわかってたからだよ。ユキさんがソラさんに一人で帰る事を促したのも同じ理由」

 

「えっ?」

 

ツバサはかけるからそう指摘されて唖然とする。同時に頭の中が混乱してしまう。

 

「ユキちゃん、かける君の言ってる事。合ってる?」

 

「……はい。私も昔虐められて塞ぎ込んだ時、ソラちゃんに対しても疑いの目を向けた事があって……。今のソラちゃん、きっとその時の私と同じ気持ちだと思ったから」

 

ユキの言う事は何も間違って無い。人には他人から一切干渉を受けたく無い時がある。そしてそんな時に他人が励まして前を向けようとさせてもまるで無意味。それどころか事態がかえって悪化するリスクも大きい。

 

「そんな……」

 

「少年が引き留めたい気持ちもわかるよ。だけど私だって親から引っ越しを言い渡された時、最初余裕が無くてましろんに対して怒鳴っちゃった。だからソラちゃんの事を誰よりも一番側で見てきたユキちゃんが気持ちの逃げ道を作ってくれたんだよね」

 

「はい……。でも、私も相談しなかったのは事実だから。ごめんなさい」

 

するとヒョウはプニバード形態になるとユキの膝の上に乗る。そして彼女を見上げつつ声をかけた。

 

「ユキ姉は何も間違ってないよ。事前に相談してたら私達の中で対応を揉めてる間にいなくなるかもだったし。むしろユキ姉だってアサヒの件で大変なのにソラさんを助けようとしたんだから……」

 

何にせよ、ソラが実家に帰ったのはユキの証言でほぼ確定的となった。勿論、これから直接行って確認する必要はあるだろう。ここで実家に帰ったと断定して、後から色々と食い違いが起きてしまう方が危険だからだ。

 

「……すみません、ユキさん。ユキさんも大変なのにあんな態度で」

 

「気にしないで。私は大丈夫だよ。ただ、ましろちゃんにもバレバレの隠し事になっちゃったのも私のミスだし」

 

「あー。そう言えば隠し事してるなーって思ってたけど、そういう事だったんだね。確かにそれならパンを買いに行くって流れに対しては言い出しにくかったのはわかるから」

 

ましろもユキが不自然な動きをしていたとは察していたために彼女の中でできていた謎が一つ解決してスッキリしていた。

 

「じゃあ、これからスカイランドに行ってソラさんの様子を見に行く事にしようか。……ヨヨさん」

 

「何かしら?」

 

「ミラーパッドの転移先って変更しておく事はできますか?」

 

「あ、もしかして直接ソラちゃんの家に行くって事?」

 

あげはの指摘にかけるは頷く。もし仮にこのままワープしてスカイランドの都に出てしまった場合、そこから更にソラの家のある田舎にまで移動するという二重の手間がかかる。そのため直接ソラの家にまで飛べるのならその方が良いのだろう。

 

「ええ。移動先を変える事は可能よ」

 

「ありがとうございます。じゃあ後は誰が行くかだけど……」

 

かけるはお礼を言った後、ソラの家にまで行くメンバーを募る事に。その結果行く事が決まったのはツバサ、あげは、ヒョウ、かけるの四人。そしてその間にヨヨのミラーパッドの設定が完了したため早速四人はソラの家を訪れる事にした。

 

「……ましろさん、ユキさん。本当に良いんですか?」

 

「うん……。本当は私が行った方が良いかもしれないんだけどさ。今私が行ったらソラちゃんならきっと……申し訳ないって思っちゃうから」

 

ツバサからの問いにユキはそう返す。普通こういう時はソラを一番理解しているユキが行くべきなのだろう。しかし先程言及した通り、ユキはアサヒの事を抱えている状態。そんな大変な時にユキにフォローされるのはソラにとっても精神的な負担になりかねないという事だ。

 

そして、もう一人。ましろもましろで内心大きな不安があるのかツバサへと聞き返す。

 

「ねぇ、やっぱり今は一人にしてあげよう。確認はしないといけないけどさ……。もし私達が行ったらそれだけでソラちゃんの負担に……」

 

ましろは幾らソラと直接話をしないと事前にわかってたとしてもやはり今彼女の元に行くのは違うのではないのかと声を上げる。するとあげはが優しくましろの気持ちをフォローした。

 

「ちょっと、行ってくるよ。私もかける君だってついてるから大丈夫!心配しないで待ってて。ましろん!」

 

「もしツバサが変に熱くなってたら私がしっかり止めるから」

 

「ちょっとヒョウ!何でボクが熱くなるって……」

 

「現にさっきなってたんだからましろさんだって心配なのは当然よ」

 

「うっ……」

 

ツバサはヒョウから正論を突きつけられて何も言い返せない。そして、ミラーパッドのトンネルの中へとツバサ達四人は吸い込まれていく。ユキとましろの二人はそれを見届けてからソラのいた部屋に行くと二人でソラが最後に残した手帳のページを見つめる。

 

「……ソラちゃん」

 

「大丈夫だよ。アサヒ君もソラちゃんもきっと帰ってくる。私達が信じなくて……他に誰がそれを信じるって言うの」

 

「うん……」

 

ましろはユキに言われてソラがシャララ隊長の言葉を手帳に書き写した時の事を思い出す。そして、その時の自分はソラがヒーローになれると本気で信じていた。なら、ここは彼女信じるべきだと考えて二人で手帳を閉じる事になる。

 

場面が変わり、ヨヨの部屋。そこにはヨヨがエルを抱えた状態で椅子に座っており、カーテンを開けた状態で月や星が出ている空を窓越しに見上げる。

 

「なりたい私、夢は人を動かすエネルギー。……でも、その夢を無くしてしまった時。人は何を頼りに前に進めば良いのかしら」

 

「えるぅ」

 

エルが不安そうに話しているとヨヨは珍しく悩んだような声色で話を続けた。幾ら彼女でも今のソラの精神状態をどうにかするのは厳しい。少なくとも、自分が今何かを言って解決させられるわけじゃ無い事もわかる。

 

「……わからない。どれだけ沢山の本を読んでも、世界の端から端まで飛び回っても……」

 

ヨヨは博学者だ。それこそ、スカイランドではレジェンドと呼ばれる程の知識量を持つ。……だが、そんな彼女でも人の心まで全て理解するというのは不可能。この問題は当人達にしか乗り越えられないという事だろう。

 

ヨヨが悩んでいたそんな時、ヨヨの部屋がノックされると外からユキの声が聞こえる。

 

「……ヨヨさん、入っても大丈夫ですか?」

 

「ええ、大丈夫よ」

 

「失礼します……」

 

それからユキがヨヨの前にまで歩いてくると胸に手を当てて深呼吸する。そして、彼女は真剣な顔つきでヨヨへとある事を頼む事に。

 

「ヨヨさん、お願いがあります」

 

「……!!」

 

こうして、ユキはヨヨへとある事を頼むと彼女も頷く。今の精神的に強くなったユキなら……任せられると信じて。




また次回もお楽しみに。
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