熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

254 / 271
折れてしまった心 雲に覆われた空

エルの呼びかけで辛うじてタイタニックレインボーアタックを発動する前に危険を察知できたプリキュア達。そして、困惑する彼女達を嘲笑うかのようにバッタモンダーが真実を語り始めた。

 

〜回想〜

 

時は巨大ランボーグを浄化し、窮地に陥ったエル。そして、彼女がバッタモンダーに連れ去られそうになった時。

 

「動くな!……そこからエルちゃんに1ミリでも近づいたら……。絶対に許さない!」

 

「く……ううっ…… バ、バッタ……モンモン!」

 

スカイからの気迫に押されて撤退せざるを得なかったバッタモンダー。彼は王城から転移して移動すると王城の近くにある森の中に来ていた。

 

「チィッ……クソォ……」

 

彼は自らの計画が全て上手く行ったと思っていた。何しろプリキュア達はヒューストムの協力もあって全員倒すか行動不能にし、尚且つ最後に立ち塞がったスカイランドの国王夫妻も呪いをかける事で打ち倒したのだ。

 

あと一歩で目的が達成され、自分はアンダーグ帝国にエルを連れて帰り実力を評価されて昇進する。勿論功績はヒューストムとの山分けになるだろうがそんな事はどうでも良い。結果を出せるのならそれに越したことは無かったのだ。

 

「ぐううっ……うわぁああああっ!!キュアスカイィイイイ……」

 

……しかし、バッタモンダーの作戦は最後の最後で止められてしまった。しかも手負いな上に自分よりも下だと見下していたキュアスカイに。バッタモンダーにとって今回の件はこれ以上無い程の屈辱感を与えられ、更に彼女への憎悪の感情を感じさせられたのだ。

 

「この屈辱は絶対にぃいい……あん?」

 

バッタモンダーが自らの怒りの気持ちを大声で発散しようとしていると彼は近くに何かを見つける。

 

「う……うぅ……はぁ……はぁ……」

 

「コイツは確か……」

 

バッタモンダーが見つけたのは森の中、地面の上で一人傷だらけの姿をして横たわっていたシャララ隊長である。先程超巨大ランボーグへと一撃を与えた際に彼女はランボーグからの反撃に遭ってアンダーグエナジーに呑み込まれると致命傷を負ってしまっていたのだ。

 

「スカイランドの最強剣士様かぁ。そんでコイツの事をキュアスカイは事の他尊敬しているようにも見えた。……ふふっ」

 

バッタモンダーが邪悪な笑みを浮かべるとシャララは彼の気配に気がついたのか薄らと目を開ける。しかし、目の前にいるのが敵であるバッタモンダーとわかっていても彼女は今指一本すら動かすことができない。そのためバッタモンダーはシャララへと話しかけた。

 

「このままだとあと半日すら保たずにお前は終わりだ。だが、カモン!アンダーグエナジー!」

 

バッタモンダーが指を鳴らし、アンダーグエナジーを召喚するとシャララが寝ている地面からアンダーグエナジーが噴き出して彼女を覆ってしまう。

 

「うわぁああああっ!?」

 

シャララはどうにかアンダーグエナジーへ抗おうとするが、もう体が動かせないくらいに傷ついて疲弊している今。この場から逃げる事すら叶わない。そのため彼女はあっという間にアンダーグエナジーに侵食されてしまう。

 

「ソラ……すまない」

 

シャララは僅かにその言葉を遺してアンダーグエナジーに取り込まれるとその姿をランボーグへと変えていく。そしてバッタモンダーは高らかに告げた。

 

「アンダーグエナジーがお前の傷を塞ぐ。失われた血の代わりとなり、お前を生かす力となる!ただし、お前の体はもう人間では無くなってしまうけどなぁ?なははははっ!」

 

バッタモンダーは先程までの怒りはどこへやらと言わんばかりの上機嫌さでシャララ隊長が変貌してしまったランボーグ……シャララボーグを作り出す。

 

「ああああああっ!?」

 

シャララ隊長はアンダーグエナジーに侵される苦しみから悲鳴を上げていたが、それもじきに無くなってしまうと意識を消失。その体はアンダーグエナジーによって作られた空間に縛られる形で囚われてしまうと彼女はシャララボーグと化す。

 

「ランボーグ!」

 

「キュアスカイ、俺にここまでの屈辱と憎悪を与えたお前を絶対に許しはしない。コイツを使ってジワジワと追い込み、最後には二度と正義のヒーローとして立ち上がれないような状態にしてやる!!」

 

こうして、バッタモンダーはプリキュアに対する切り札を手に入れる事になった。ただ、狡猾な彼は最初からこの切り札を使うつもりは無く。あくまでいつも通りを装ってプリキュア相手に嫌がらせを続けてきた。

 

だが、ヒューストムに諭されて以降。彼は心を入れ替えた。勿論、やるからには全力。徹底的に相手の心をへし折ると。そのためなら一度は諦めた努力だってした。

 

〜現在〜

 

その結果、こうして今ここでバッタモンダーはプリキュア相手に完全なる優位性を確立したのである。

 

「今のシャララ隊長はアンダーグエナジーによって生かされてるんだよ?それを浄化なんてしてしまったら……どうなるだろうね?」

 

「そう!君達ご自慢のタイタニックレインボーもアップドラフト・シャイニングもファンタジーパワークレッシェンドさえも、隊長にトドメを刺すヤベェ技に過ぎないって事さ。あははははっ!あーっはっはっはっはー!」

 

バッタモンダーから告げられた衝撃の事実。アンダーグエナジーによって傷が塞がれ、生命活動を維持しているという話であればそれを取り除けばどうなってしまうか。……結果は明らかだろう。

 

そのためその場にいるプリキュア達は絶望的な顔を浮かべ、エルは今にも泣き出してしまいそうな顔つきだった。対照的にバッタモンダーはこれ以上は自らが手を下すまでも無いと判断したのか跳び上がる。

 

「さーてと。本当なら君達に隊長を始末をさせるつもりだった。その行為が君達にとっての最高の絶望になるからね。でも、こうなった以上は僕としてはどちらでも良い」

 

するとシャララボーグは先程プリズムから受けた光による目眩しの効果時間切れなのか、視界が戻ってしまうと再度剣をプリキュアへと向ける。そしてバッタモンダーは変身を解除し、元のヒョロヒョロとした姿になって建設現場の鉄骨から全体を見下ろす。

 

「君達に残された選択肢は二つに一つだ。このまま君達ご自慢の技で隊長を斃すか……それとも隊長にトドメを刺すのは嫌だからここで隊長に斃されてしまうのか。好きな方を選んで良いよ」

 

バッタモンダーが二択の選択肢を提示している間にもシャララボーグは剣を構えつつプリキュアへと迫っていく。

 

「ランボーグ!」

 

「あ……ああ」

 

そして、シャララボーグの行く先にいたのはキュアスカイだった。近くにいたエルは咄嗟にその場から離れたものの、スカイの心は絶望の中に堕ちていたため彼女は動かなかった。それを見てプリズムが慌てて声をかける。

 

「スカイ逃げて!早く!!」

 

「シャララ……隊長……」

 

スカイが改めて自らの尊敬する隊長の名を口にするが、当然彼女は応えてはくれない。そのためもうどうでも良いと言わんばかりにスカイはシャララボーグからの一撃をまともに受けようとした。

 

「ふふふっ……ようやく、ようやく待ち望んだこの瞬間だ。やれ!シャララボーグ!!」

 

「ランボー……!?」

 

しかし、そんな時だった。突如としてランボーグの動きが止まると異変を見せる。そのためバッタモンダーの顔が曇った。

 

「あ?」

 

「グ……」

 

その瞬間、ランボーグの体からいきなり少量のアンダーグエナジーが飛び出してしまう。そのためプリキュア達は唖然とするとバッタモンダーはつまらなさそうな顔を見せた。

 

「「「「えっ……」」」」

 

「える?」

 

「チッ、おいおいマジかよ。これからって所で。……まぁ人間にアンダーグエナジーを注ぐのはそもそも無理があるんだよなぁ」

 

そう。本来は意思を持つ人間を相手にアンダーグエナジーを注ぐという行為は邪道なのだ。だからこそ普段ランボーグの素体となっているのは意思を持たない無機物が多い。とりわけ人間が相手だと特に難しいようだ。

 

その結果、アンダーグエナジーを取り込んだ人間達は最終的に全員が暴走する事を一度は経験する羽目になっている。

 

「うーん。これだとシャララボーグは使い物にならないな。俺がやっても良いんだけど……」

 

バッタモンダーは怠そうな顔を浮かべつつも再度先程のスーパーバッタモンダーへと変身するために力を込めようとした。

 

「ウィング!」

 

「はい!」

 

それを見てバタフライはウィングへと素早く声をかけるとウィングがパンチ、バタフライがキックによる二人同時攻撃をバッタモンダーへと放つ。

 

「「バッタモンダー!!はぁああっ!」」

 

そして今のバッタモンダーはスーパーバッタモンダーへと変身する前。つまり戦闘能力はプリキュアよりも下となる。二人はこの好機を逃したく無かった。

 

「チッ……潮時か。バッタモンモン!」

 

だが、バッタモンダーも退き際は弁えていたのか。二人の攻撃が直撃する前に即撤退。同時にシャララボーグもアンダーグエナジーとなって露散するとその場にバッタモンダーの声だけが響いた。

 

「ふふっ。今回はダメだったけど、楽しみが増えたと思えば良いのかな。何度でも何度でも遊びに行くよ?君達の心がズタズタになるまで。ふっ、あはははははっ!」

 

バッタモンダーからの最後の伝言をウィングとバタフライは悔しそうな顔つきで。スカイやエルは絶望感に近い顔で聞くと一旦バッタモンダーは完全撤退したのか戻ってくる事は無かった。

 

だが、プリキュア達にとって今回のバッタモンダーとの戦闘は実質的な敗北に等しかったのである。

 

それから少し時間が経って夕焼けに染まる空の下。プリキュア達は変身を解いた後、その場からまだ動く事ができてなかった。理由は勿論ソラである。

 

「……」

 

「しょーら……」

 

「隊長さんを助ける方法、きっとあるよ。ね?」

 

エルがソラを心配して声をかけるとましろはそれに続く形でソラへと希望を見せて前を向いてもらおうとする。

 

「……どんな方法があるって言うんですか?結局私達は真実を知らされてから何もできなかったのに」

 

「「えっ……」」

 

しかし、ソラは絶望した目線で冷たく返す。ただ実際の所、今回はソラの言う通りの事態になってしまっている。そのためましろも隣で聞いていたツバサも何も言い返せなかった。

 

「ッ!そうだ、パレット!ミックスパレットを使えば何とかなるかもしれない!」

 

ソラの問いに対してあげはが思い至った対処法はミックスパレットである。つまり、ミックスパレットを使えばアンダーグエナジーを丸ごと消してしまっても癒しの力を使えばシャララ隊長を万全な状態に戻せるという事だ。

 

「アンダーグエナジーを浄化して、その後すかさず回復の技を使う。それなら救えるかも!」

 

「確かにそれなら行けるかもしれません。現に重傷だったボクとソラさんを回復させましたし」

 

ツバサもあげはの意見には説得力があったのかその意見を肯定。しかし、今のソラにとっては何もかもがネガティブな捉え方になってしまうようで。

 

「もしそれでダメだったら……シャララ隊長はどうなるんですか!?」

 

「えっ、それは……」

 

ソラはそう言いながらあげはの意見をバッサリと否定してしまう。しかもあげははそれに口籠もってしまった。

 

「それに、今回はバラバラでしたが相手にはヒューストムもカゲロウだっているんですよ!あげはさんだってバッタモンダー相手に手も足も出てなかったじゃないですか!そもそもその状況で浄化なんてできるんですか?もし仮に出来たとして、あの三人の妨害を阻止しながら回復の技なんて使えるんですか!?」

 

ソラの意見は感情的ではあったものの、割と物事の核心を突く内容であった。そもそもの話、今回プリキュア四人がこの場所で揃って対応出来たのはヒューストム、カゲロウ、バッタモンダーがバラバラで攻めてきたのに加えてこちら側に人員を厚く揃えたからだ。

 

三人が纏まって攻めてきた場合、こちらもオーロラ、アポロン、アルテミスの三人が増えるとはいえ、追加戦力の質において相手の方が高いのは明白。

 

つまり、今よりももっと余裕の無い戦いをしながらシャララボーグの浄化とミックスパレットによる回復を両立しないといけない。付け加えると回復に専念してもらう都合でバタフライが技を使えない事を考えると難易度は更に跳ね上がる。

 

何しろムーンライズがカゲロウとして寝返っている事からプリキュア側がシャララボーグをワンパンで浄化できる技を撃てるのは現状スカイとプリズムだけ。そしてそのスカイはシャララボーグ相手に攻撃ができない。……この案はそもそも前提からして現実的な話では無いのだ。

 

「ソラさん!それでも信じてやるしかありませんよ!現状、シャララボーグを浄化できるのはソラさんとましろさんだけ。それにヒーローは諦めたらそこでおわ……」

 

「止めてください!!」

 

それでもツバサはどうにかソラを前向きにさせようと必死に話しかける。だが、もう今のソラには……ヒーローという言葉さえも重荷になってしまっていた。

 

「ヒーローなんて……私もう……戦いたく無い!!」

 

ソラは涙ながらに胸の中に秘めた想いを口にして叫んだ。叫んでしまった。その瞬間、ソラが握っていたプリキュアに変身するために必要なアイテム。ミラージュペンは灰色になってしまうとそのまま消失。

 

「ミラージュペンが!?」

 

「そんな……」

 

「ッ……」

 

「えるぅ……」

 

そして、ミラージュペンが失われたのと同時にソラがふと取り出した変身用のスカイトーンも効力を失ったのか……。かつてサンライズやスノー、ムーンライズ、オーロラの四人が覚醒する前に彼女達が持っていた石のスカイトーンと同じように色が褪せていく。

 

「あ……ああ……」

 

「この石のスカイトーン……」

 

「うん。プリキュアになる前にアサヒ達が持ってた物と同じ」

 

こうしてキュアスカイは、ソラ・ハレワタールは……プリキュアへの変身資格を失ってしまうのだった。するとあげはのスマホに着信が入ったのかブルブルと震える。

 

「ッ!もしかして……」

 

あげははこのタイミングでの連絡はきっとかけるからの物だと予想。そしてそれは当たっており、彼の名前が浮かんでいた。

 

「かける君!!そっちはどうだった!?」

 

あげはは藁にでも縋る想い出いきなり結果をかけるへと問いかけた。そのくらい彼女にも余裕が無かったのだ。だが、彼からの返事は暗い。

 

『ごめん……ダメだった。だけど二人共無事。大怪我とかもしてないよ』

 

「そっか……」

 

そして、かけるもあげはの声色から結果が芳しく無かったと察すると真剣な声である事を提案する。

 

『ひとまず、家に戻って現状整理をしよう。多分、お互いに言うべき事はあるだろうから』

 

「うん……じゃあ今から私の車で向かうね」

 

こうして、プリキュアは双方の戦線に於いて敗北。そんな中でかけるは現状整理を提案する事になるのだった。




今回はスカイ達の方の戦いが終わりましたが、まだ決着を描いていないオーロラ達の戦いについての振り返りはまた次回行います。それでは次回もお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。