熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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空に浮かぶ巨大な悪夢 バラバラなプリキュア達

ソラから告げられた無慈悲な宣告。それを受けたユキの精神はもうボロボロであった。

 

「ソラちゃん……ごめんね……ごめんね……。役立たずな人間で……」

 

「ユキちゃん……大丈夫だから。ソラちゃんだって悪気があって言ったわけじゃないと思うよ」

 

今現在、ユキ達四人は街中にある街灯の下の円形状のベンチで座って改めて話をする事に。ただ、ユキはソラからトドメの一言を受けてしまったせいで完全にメンタルが崩壊。肩を落として落ち込んでしまっていた。そんな彼女をましろがどうにか繋ぎ止めている状態である。

 

「はぁ……ソラ、流石に今のは言い方が悪すぎるぞ」

 

「ですが、本当にユキさん達にはもう戦ってほしくないんです」

 

「夢の中身については理解はできる。……でもな」

 

「それでこれ以上ユキさんが無茶をしたらどうなるんですか!」

 

ソラは立ち上がるとアサヒへと割と強めな声を上げた。先程のヨヨの時と言い、ソラの心にはもう殆ど余裕が無いのか周りの事をまるで考えられていなかったのである。

 

「ソラちゃん、そんなに怖い夢を見て……。でも、ソラちゃんだってわかってるでしょ?ユキちゃんは今……」

 

「私だってわかってますよ。ユキさんは今心に大きな傷があるって……。でも、でもだからこそ戦ってはいけないんですよ!」

 

一応アサヒやましろもソラの夢の中身は本人から聞いていたものの、今はユキのフォローが先であるためにソラへと指摘しようとする。しかし、ソラも必死な声色をしていた。確かにソラはユキの事を思ってさっきの発言をしたのかもしれない。それでも今回はあまりにも言い方が悪過ぎた。

 

「それに、ソラの見たのはただの夢。現実ではこうならないように……」

 

「それもちゃんとわかってます……。だから、皆さんが心配なんです。これ以上強い相手と戦って傷付いたら……それこそ、シャドーを相手にして今のアサヒ君は勝てるんですか!?」

 

「う……。それを言われたら辛いけど……」

 

ソラからの指摘にアサヒは何も言えなくなってしまう。事実、自分はシャドー相手に手も足も出なかった。そのため、ソラからの言葉に何も言い返す事ができなくなってしまう。

 

「ソラちゃん。心配してくれるのは嬉しいよ。でも、私達だってエルちゃんを守らないとだし」

 

ましろはソラと交代する形でエルを抱っこしており、彼女を優しく撫でつつ少しでも場の空気を良くしようと優しく話をしていた。

 

「それに、シャドーが強いなら尚更私達は四人で協力した方が……」

 

「いえ、一人の方が良いんです!私がもっともっと強くなれば良いんですよ!」

 

ソラからの言葉にアサヒは苛立つ。ユキの事があるためにアサヒも怒らないようにどうにか抑えてはいるが、それでも今の傲慢なソラの言葉にはどうしてもムッとしてしまうのだ。

 

「なぁソラ。それって具体的にどのくらい経ったらお前の理想的なレベルにまで強くなれるんだよ」

 

「そんなの、一人でエルちゃんを襲ってくる相手を倒せるくらいに……」

 

「じゃあソラ。変身できない俺達が別の場所にいて同時に強い敵に襲われた時……どうやって俺達を同時に守るつもりなんだ?」

 

「それは……」

 

アサヒは怒る少し手前。どうにか怒りの感情を抑え切れる程度の声色でソラへと問いかける。

 

彼の言う事は正しい。幾らソラに並外れた強さがあったとしても二箇所同時に敵に襲われたらどちらかは見捨てないといけない。もし仮にそんな状況になったとして、どちらを助けるかの選択をできるかと言われてもヒーローを目指すくらいに真面目なソラには無理がある。

 

「俺達が弱いなら助け合うべきだろ。それで……」

 

「ッ、それで夢の中では皆さんが揃って負けてしまったんです!それじゃあ何の意味もありません!」

 

アサヒがどれだけ説得しようとしてもソラはまるで聞く耳を持ってくれない。このままでは話は平行線のままだ。それに、これ以上のヒートアップは街中を歩く人々にも迷惑がかかる。ましろはどうすれば良いのかと悩んでしまった。

 

そんな時、突如として四人の周囲の空気が一変。ソラは特に胸騒ぎがした。

 

「ッ……何でしょうか。この嫌な予感は……」

 

同時刻。ソラシド市内を走る電車の駅にあるホームの屋上部分にて。一つの丸い大きな物体が張り付いていた。

 

「来い来い来〜い!」

 

その丸い大きな物体……いや、先程おでんを大量に平らげた男、カバトン。彼は今現在、凄まじい程に体内へとパワーを溜めていた。

 

「おい、お前。そんなにパワー使ったらどうなるか……」

 

「煩い!裏を返せばこれだけ力を込めてランボーグを生み出せばその分だけTUEEEランボーグになるはずだ」

 

「はぁ……。なら好きにしろ」

 

シャドーはカバトンを心配した様子だったが、彼は聞く耳を持たない様子だったために溜め息と共にそれ以上の言及をせずに静観する事にした。そんな中でそのカバトンは己の力を一気に解放する。

 

「おでんのカロリーを全てくれてやる!カモン!アンダーグエナジー!」

 

すると凄まじい程の禍々しいオーラを纏ったカバトンがいつも通りにランボーグを召喚。その際に発生したアンダーグエナジーは一時的に青かった空を暗く染めてからホームの中にあって丁度この駅が終点で運転手と車掌以外は誰も乗っていなかった電車へと吸い込まれる。

 

それと同時にその二人も電車から叩き出され、同時に空に浮かぶ巨大な電車ランボーグとして爆誕した。

 

「ランボーグ!」

 

「はぁ……はぁ……やったのねん。遂に生み出したのねん!見ろ!これが俺史上、最高にTUEEEランボーグだ!」

 

上空に浮かぶランボーグを見てカバトンは嬉しそうな声を上げる。そんな彼を近くの建物の上から見たシャドーはその姿に目を細めた。

 

「全く……そんな姿になるまで無茶をして。いや、そのくらい無いと勝てないと考えたという事か」

 

シャドーの視線の先にいたカバトンは何故かガリガリに痩せており、丸かった彼の体や顔はまるで別人と思える程に変貌していた。カバトンの発言から察するにランボーグ召喚に体内に存在していた彼のエネルギーを殆ど使い果たしたのだろう。

 

先程あれだけの量の熱々のおでんを無理して一気に食べたのもこのランボーグを作るための不足分を補う目的があったからだ。

 

「ラン?」

 

「ん?」

 

するとランボーグは自分を生み出してくれた生みの親であるカバトンを見ると彼を巨大な腕で捕まえると同時に自らの運転席の中に放り込んだ。

 

「ラン!」

 

「のはあっ!?っと、ここで運転しろって事か?」

 

「ラン!」

 

「だったら運転してやるのねん!出発進行!」

 

ランボーグはカバトンを運転手に据える事で、彼が自らプリキュア相手にランボーグを操って勝つ快感を得られるようにするという何とも粋な計らいを見せる。

 

そしてそんなランボーグに乗せられたカバトンはノリノリで少し小さめな車掌の帽子モヒカンの隣辺りに添える形で被ると早速アナウンスを始めた。

 

『脇役の皆さんにお知らせ致します。邪魔クセェので白線の外側にまでお下がりください……』

 

カバトンはランボーグに乗ってソラシド市の空を飛び回る中、それを見た人々があまり逃げる事無く空のランボーグをただ見ているだけという現状を確認して苛立つと更に強めの脅しをかける事にした。

 

『下がれってんだオラァ!』

 

その瞬間、ランボーグは急降下。地上ギリギリを走る事で人々の危機感と恐怖心を煽ると流石に人々もこの状況が危険だと察して逃げ惑う事になる。

 

『出てこいプリキュア!誰が本当にTUEEEのか、ハッキリさせてやる!そしてプリンセスをいただくのねん!』

 

カバトンがそう言ってアナウンスをしつつソラシド市の上空を我が物顔で飛び回る中、その様子は下にいるユキ達からもしっかりと見えた。

 

「野郎、こんな時に来てくれて!」

 

「ッ……ましろさん、アサヒ君。ユキさんとエルちゃんを……」

 

そう言ってソラは一人で腰に下げていたミラージュペンを手にすると行こうとする。そんな時だった。先程までメンタルを壊して落ち込んでいたユキがソラの前にフラフラと出てくる。

 

「ユキさん、下がっててください!ここは私で……」

 

「良いよ……。ソラちゃんこそ危険だから離れてて……」

 

「は?」

 

ユキの声色は震えており、大丈夫と言えるような物では無かった。ただ、まるで彼女は使命感に突き動かされているようなそんな声色である事を呟く。

 

「そうだ……あのランボーグを私一人で倒せば、きっと誰もが私が使える女だって思ってくれる……」

 

ユキの言葉と行動にソラは困惑した。先程自分は下がるように、戦わないように伝えたはずなのにどうして彼女は前に出ているのかと。そして、ましろも思わず呟いた。

 

「ユキ……ちゃん?何を言って……」

 

「ここは私一人(・・・)で何とかしなきゃ。……皆はエルちゃんを連れて安全な所にいて。そうすれば、そうすれば……もう誰も失わなくて済むから」

 

ユキは震えた声のまま三人の方を向かずに呟くとランボーグに立ち向かうために上を向く。その顔つきは恐怖に怯えたような青ざめた状態だったがユキはそんなのどうでも良いと言わんばかりにミラージュペンの力を使った。

 

「ヒーローの……出番よ」

 

ユキは悲壮な覚悟を固めたような声色でそう言いながらプリキュアへと変身。

 

「ひろがるチェンジ!スノー!」

 

ただ、あまりにもユキの顔が酷かったためにいつもの変身バンクを使う事なく直接変身。その姿をキュアスノーへと変化させていくと変身を完了し、プリキュアとして降り立つ。

 

「ユキ……さん。何で……」

 

「ソラちゃん……待ってて。私がソラちゃんの分の恐怖も……打ち払ってくるから」

 

スノーは変身後の名乗りさえも言う事無くソラへと改めて念押ししてから一人で飛び出してしまう。

 

「ッ!?ユキちゃん待って!」

 

「嘘……です。ユキさん……何で一人で」

 

「ソラ、俺達も追うぞ」

 

「で、ですが……」

 

「そんな事言ってる場合か!?お前のせいでユキは一人で心を痛めたんだぞ!」

 

アサヒはもうなりふり構っていられないのか、一人で行ってしまったスノーを呆然として見ていたソラを正論で叱咤するとミラージュペンを手にする。

 

「ましろ、先に行く。えっと、エルちゃんは……そっちでどうにかして!」

 

「うん、任せ……ええっ!?」

 

まさかのエルの事は全部自分にぶん投げられると思ってなかったましろは唖然とする。そんな中でソラとアサヒは同時にプリキュアへと変身した。

 

「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

二人が変身を完了するとサンライズは隣にいるスカイへと声をかけようとする。

 

「スカイ、最初に言っておくけど……」

 

「スノー、今行きます!」

 

「は!?」

 

スカイはサンライズからの言葉をガン無視するとこちらも一人で先に飛び出してしまう。ここまでグダグダだとサンライズもヤケになるしか無かった。

 

「あー、もう!話を聞けってスカイ!」

 

サンライズも二人を追いかけて行ってしまう中、ましろは慌ててエルを置いても安全そうな場所を探す。しかし、敵のランボーグは見るからに巨大で強そうなため少なくともこの付近に置いておくわけにはいかない。

 

加えて、素体が電車という事はスピードもそこそこあるために万が一遠い場所に置いてきてもその場所に戦場が移行する危険もある。何よりカバトンがいてシャドーがいないため、カバトンに気を取られたら連れ去られましたでは意味が無いのだ。

 

「どうしよう……流石にエルちゃんを抱いたまま戦うなんて無理だし……。それに安全な場所なんてこの近くには……」

 

ましろはどうにかエルを安全にしつつ、自分も戦いに行けるような状態にしようと思考を巡らせるが、焦っているせいか何も良い案は浮かばない。

 

「せめてここにエルちゃんを預けられる誰かがいれば……」

 

ましろがそんな風に考えていると突如としてエルを抱いている際に装着していたスリングが光を放ち始めた。

 

「へ?……うわっ!?」

 

ましろが驚く中、ポンという音と共にあっという間にスリングその物が虹の輝きを放つ小さな小舟のような形へと変化。宙に浮かべるエル専用の乗り物となった。

 

「えるぅ〜?」

 

「うええっ!?」

 

ましろはあまりの超現象に驚き唖然とするが、エルの方はご機嫌そうな様子でフワフワのましろの近くを飛び回っていた。

 

「えるぅ〜!」

 

「嘘、エルちゃんが空を飛んで……あ。これってもしかして!」

 

ましろは以前、山登りの時にヨヨから言われた“色々と役に立つと思うわ”という言葉を思い出す。その言葉の意味が当時はわからなかったが、今の現状からこの事を指していたのだと思い至る。

 

「おばあちゃん、ありがとうすぎるよ!これなら!」

 

エルが自分で空中を移動し、動けるなら無理してまで抱きかかえて守る必要性は薄くなる。つまり、ましろも変身が可能になったという事だ。

 

それからましろは先に行ってしまった他の三人を助けに行くためにプリキュアへと変身するためのミラージュペンを取り出す。

 

「待ってて、皆。今行くよ!」

 

そして、ましろの姿が光に包まれるとミラージュペンがスカイミラージュへと変わるとプリキュアへの変身を開始。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!プリズム!」

 

その後、ましろはプリキュアとなると一応変身後の名乗りもやる事になった。

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

こうして、プリズムはエルと共に先に行ってしまったスノー達三人を後から追いかける事に。先に行ってしまったスノー達の無事を祈りながら……。




また次回もお楽しみに。
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