熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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実家に戻ったソラ 様子を見に来たツバサ達

ユキ達が虹ヶ丘家にてソラがいなくなった事を知り、また話し合っている時。彼女の姿はスカイランドの田舎……自分の家にあった。

 

「(……結局、戻ってきてしまいました)」

 

ソラはこの日の朝、ユキから実家に帰るように促されて最初こそ帰るのに抵抗感があった。しかし、いざ実際に家に帰ると決めて行動したらそれはあっという間に進んでしまい……今はもう夕方の時間ながらも家の前に着いてしまう。

 

「(ユキさん、私の事を想ってくれて。自分の事だって手一杯のはずなのに)」

 

ソラはそんな事を考えつつ、自らの家にある呼び鈴を鳴らす。これはソラシド市のある世界で言う所のインターホンに当たる物だ。そして、それを鳴らした事で扉が開くとソラよりも濃い青髪のポニーテールの女性が姿を現す。

 

「はーい!……あっ、ソラ!?」

 

「ただいま」

 

その女性はソラの母親であるレミ・ハレワタール。彼女はいきなり帰ってきた自分の娘の姿を見て驚いたような顔を見せるとその娘が浮かない顔をしているために心配する。

 

「一体どうしたの!?王様達の呪いを解くために向こうの世界に行ったって聞いてたけど……。それに、ユキは……」

 

「うん、あのね……」

 

レミは落ち込んだソラと彼女と一緒にいるはずのユキがその場にいない事が気になって疑問をぶつけていく。するとソラが申し訳なさそうに事情を説明しようとする。そのタイミングで一人の少年が走ってきた。

 

「あっ、お姉ちゃんだ!ソラお姉ちゃーん!」

 

「レッド……」

 

彼はソラの弟であるレッド・ハレワタール。彼もまたハレワタール家特有の青い髪をしており、背中にはヒーローの証と言わんばかりの青いマントを付けていた。恐らくこのマントはソラが昔付けていた物だろう。

 

そして、何も知らないレッドは帰ってきた姉であるソラへと興奮した様子で話しかける。

 

「お帰り!……って事は、悪者をやっつけたんだね!本物のヒーローになったんだね!」

 

レッドはそう言ってソラへと問いかける。しかし、ソラの顔は浮かない。そして同時にレッドもまた、姉と一緒にヒーローになるために出かけたユキがこの場にいない事に違和感を感じた。

 

「……あれ?そういえばユキお姉ちゃんは……ユキお姉ちゃんはどうしていないの?」

 

「ッ……え、えっと……ユキさんは……」

 

ソラはレッドへとどう説明すれば良いのか迷っているとそこにまた一人、家の中にいる男性が話しかける。

 

「レッド、ソラ。チシューが冷める。……入りなさい」

 

それは青い髪をしつつ頭に青いバンダナを巻いた男性でソラとレッドの父親。シド・ハレワタールであった。同時にレッドのお腹が空腹を訴えて鳴り響く。

 

「あ……えへへ、お腹空いた〜」

 

「あはは……」

 

ソラは苦笑いを浮かべつつ話はまた中に入ってするという事を話して今は一旦家へと入る事になった。それから彼女は一旦荷物を自分の部屋に下ろすとまたユキの事を考える。

 

「(ユキさんも私と同じように落ち込んで帰りたいって気持ちだったら……)」

 

しかし、ソラはそこまで考えて大慌てで首を横に振る。そんな事になってしまえば、今よりももっと辛い気持ちになるのと同時にそれはユキに対して失礼な考えだと思い至ったソラ。そのためこの気持ちを抑え込むように家族の元に向かう事になる。

 

そして、チシューが並べられると久しぶりに家族揃っての夕ご飯の時間に。ただし、この場にいないユキは除く事になるが……。ちなみにチシューと言うのはソラシド市で言うシチューに当たる物のようだった。

 

「……そう、そんな事が。それに、ここにユキが来てないって事は」

 

「うん、ユキさんはまだ向こうの世界で頑張ってる。私、そんなユキさんを置いてきてしまった」

 

ソラは改めてユキを置いてきた事に罪悪感を感じてしまう。自分のすぐ近くで支えてくれた人を裏切ったような気がしてならないからである。

 

「そういえば、何でお姉ちゃんのペンは壊れちゃったわけ?」

 

するとレッドがソラのペンが壊れた……つまり無くなった事に対して疑問を抱く。

 

「ミラージュペンはね、ここから出てきたの。きっと、私の気持ちが形になったんじゃないのかな」

 

ソラはそう言って胸の辺りに手を当てる。ミラージュペンが生み出されたのはソラが初めてソラシド市に落ちてカバトンやそのランボーグと対峙したあの時。ヒーローとして戦いたいという胸の覚悟があったからこそ生まれた物だ。。

 

「……でも、無くなっちゃった。強い敵に立ち向かう勇気も、ヒーローになる夢も。友達が考えてくれた作戦が信じられなくて。失敗するのが怖くて……。それに何より……」

 

今はその時と比べるとその胸の覚悟は折れ、ヒーローとしての夢さえも失ってしまっている。苦しんでいるシャララ隊長を見た時、ソラは立ち向かう事ができなかった。同時に自分ではヒーローになるのなんて絶対に無理だとわかってしまったのだ。そして、ソラは胸の辺りが苦しくなるのを抑えるように手でそこを触りつつ言葉を絞り出す。

 

「私は……私は、小さい頃からずっと守るって誓ってきたユキさんの事も見捨てて逃げてしまった。ユキさんも……今きっと辛い気持ちを押し殺して戦ってるのに」

 

ソラの瞳には涙が流れていた。幼い頃、ヒューストムの策略のせいで家族以外の全てからの悪意の目に晒されたユキはソラ達さえも信じる事ができず。一人孤独に部屋の中に閉じこもっていた。そんな彼女の心を開く際にソラは心に誓ったのだ。ユキの事はこの先何があっても自分が守ると。

 

彼女が成長し、アサヒと付き合って強い心を持つようになって明るくなった後もその気持ちはずっとソラの中に残っていた。……だからこそ今のこの現状がソラにとっては辛いと感じてしまう。

 

「……だからミラージュペンは壊れちゃったんだと思う。……私、ヒーローになれなかった」

 

「ソラ、……もう良いわ。今はゆっくり……」

 

「良くないよ!」

 

ソラが辛そうにしているのを見てレミはひとまず彼女の気持ちを休ませるために優しく言葉をかける。しかし、ここで待ったをかけたのはソラの弟。レッドであった。彼は彼でヒーローとしてのソラを尊敬していた。

 

何しろ幼い頃からソラはヒーローを目指してトレーニングを続け、つい最近だがそのヒーローになるための力であるプリキュアの力を勝ち取ったのだ。そして今ではプリキュアとなって悪い敵と戦い、その悪い敵をやっつけている。

 

その姿を物心ついた頃から見続けてきたレッドにとって、お手本のようなヒーロー像であるソラは憧れでもあり目標でもあった。そう考えるとそんなソラが今こうしてここにいるというのはまるでレッドにとっては憧れのヒーローが悪い敵に負けて帰ってきたと考えても仕方ない事である。

 

「約束したじゃん!絶対ヒーローになるぞって!それにユキお姉ちゃんは今も頑張ってるんでしょ?何でソラお姉ちゃんはそんなに簡単に諦めちゃうの。仲間を見捨てるなんてヒーローじゃないよ!」

 

「……レッド」

 

「僕、間違ってない」

 

レッドはソラへと突っかかると何故ヒーローを諦めてしまうのかと問いかけるが、そんな彼をシドが静かに制した。しかし、それでも彼は納得がいかない。

 

「人が本気で決めた事に口を出すのは間違った事だ」

 

「ッ……」

 

レッドは我慢できなくなったのか立ち上がると部屋から出て行こうとする。

 

「レッド!?」

 

だが、ソラの言葉にレッドが止まると振り返って姉を馬鹿にするかのように変顔と罵倒の言葉を叫ぶ。

 

「お姉ちゃんの弱虫〜!!」

 

「あはは……」

 

そのいかにも幼い子供がやりそうな動きと言葉にソラは苦笑い。そんな中で改めてシドがソラへと話しかける。

 

「ソラ、食え。美味いぞ、母さんのチシュー」

 

「お代わりいっぱいあるよ!」

 

「……ありがとう」

 

こうして、ソラは久しぶりの家族との団欒の時間を過ごす。ただ、事情を話して少し気分をスッキリさせてもそれ以上に胸のモヤモヤは無くならない。そのため、夕ご飯を食べた後にすっかりと日が沈んだタイミングでシドが改めてソラに話しかける。

 

「ソラ」

 

「何?パバ」

 

「……少し出かけよう。お前がヒーローを目指したいと強く願ったあの場所に」

 

「ッ……」

 

ソラはシドからの提案に頷くと彼と共に外へと出かけた。ただ、夜道を歩く二人の間に会話は無く……。どうしても無言の時間が流れてしまうのだった。

 

そして、二人が出かけてしまった割とすぐ後。虹ヶ丘家からソラの様子を見に来たツバサ、あげは、ヒョウ、かけるの四人がハレワタール家の戸を叩く。

 

「はーい」

 

「こんばんは。そして初めまして。僕は望月かけるです」

 

「ボクはツバサ」

 

「私はヒョウ」

 

「聖あげはです。私達、ソラちゃんと一緒にプリキュアとして活動している友達です」

 

まずは家から出てきたレミに対してかけるが挨拶。そのままの流れで四人が自己紹介を済ませるとレミもその落ち着いた対応にすぐにこの四人は本当にソラと友達なのだと何となく察しがつく。

 

また、あげはとかけるの大人コンビは何気に初めてのスカイランドになるのだが……落ち着いた様子でレミと接しておりツバサとヒョウもそんな二人がいるからこそ安心してレミと対面できた。

 

「初めまして、娘がいつもお世話になってます。レミ・ハレワタールです」

 

レミからも自己紹介が返された所で早速ツバサがここに来ているであろうソラの事を質問する。

 

「ソラさんはここに戻ってきてますか?」

 

「え、えぇ。夕方には帰ってきているわ」

 

「ッ……良かった」

 

「うん、ひとまず安否は確認できたね」

 

それを聞いて四人はひとまず安心する。まだ今の段階だとソラがここに来た事さえも確証を持ってなかったからであった。そして、ツバサが改めて話を続ける。

 

「あの……すみません。ソラさんと話をさせてもらう事はできますか?」

 

「勿論、無理に連れ戻すとかじゃ無いんです。……ただ、一言声をかけるだけでもって」

 

ツバサの言葉にヒョウも補足を入れる。今のソラが戻って来れる精神状態じゃ無い事。今は周りからどれだけ声をかけてもソラには届かない事はよくわかっている。だからこそ、ツバサ達は少しだけでも声をかけておきたかった。

 

「……ごめんなさい。今、ちょっとそこまで出掛けてるの。だから……」

 

「ッ、そんな……」

 

「こんな遅くに?」

 

レミは申し訳なさそうな声色でそうやって返す。ここはソラと入れ違いになってしまったために仕方のない事だ。ただ、やはりどうしてもツバサは少し気になるようで。彼が呟いたタイミングでかけるが手を置く。

 

「……わかりました」

 

「もし大丈夫でしたら、ここで待たせてもらっても良いですか?」

 

かけるとあげははツバサがこれ以上邪推するのを防ぐのと共に落ち着いた雰囲気のままここで待つという手段を取ろうとした。もし出掛けるのがすぐに終わって帰ってくるのであれば、待っていた方が会うのは早いからである。

 

「……」

 

だが、レミは少しだけ考える仕草を見せてから首を横に振った。その対応に四人は少し驚いたような顔になる。

 

「それは、どうしてですか?」

 

「……今のソラは、あなた達に対して罪悪感が残ってる。ユキの話をする時のあの子、辛そうだったから」

 

それを聞いてヒョウはユキの言った事は間違って無かったのだと思い知った。そして、それはツバサも同じなのか俯いてしまう。そして、レミは真剣な顔つきで話を続けた。

 

「例えヒーローになれなくたってソラはソラだわ。優しくて、真っ直ぐで素敵な子。今のソラを受け入れてあげて。お願い、あの子には少し時間が必要なの」

 

「ッ……」

 

レミの話にツバサもこれ以上言う事ができずに黙り込んでしまうとあげはが本来ソラに直接言うつもりだった伝言を残す。

 

「……だったら、ソラちゃんに伝えてください。“皆、あなたの事が大好きだ”って」

 

「ええ、必ず伝える。ありがとう」

 

こうして、ハレワタール家でやるべき事を全て終えた一同。後は帰るだけになるとかけるがツバサへと話しかける。

 

「ありがとうございます。……ツバサ君、色々思う所はあるかもだけど……」

 

「わかってますよ。今はそっとしておくべき……ですよね」

 

「うん。それじゃあ、帰ろうか」

 

こうして、一同はレミに別れの挨拶を済ませてからハレワタール家を後にする。そんな中でツバサは少しモヤモヤとした気持ちを抱えていた。

 

「ツバサ……」

 

「結局、ユキさんの言った通りでした。ボクは何であんなに……」

 

ツバサがあんなにムキになっていた事を後悔したように呟いているとヒョウがそっと手を繋ぐ。

 

「大丈夫よ、ツバサ。ソラさんならきっと復活できる。もしどうしても不安なら……わ、私が側にいてあげるから……」

 

ヒョウの声は恥ずかしさからか震えており、ツバサはヒョウが恥ずかしさを我慢しながら自分に寄り添おうとしているのを見て優しく微笑むとそれを受け入れる事になる。

 

「はい……ありがとう、ヒョウ」

 

「べ、別に……このくらい友達として……当たり前だから」

 

そんなヒョウの様子を見たあげはとかけるは二人の仲の良さに微笑ましい顔つきを見せつつ、その様子を見守る事になる。

 

場面が変わってソラと父親であるシドの所へ。二人が行った先にあったのは星空の下、その星空が水面に映る程大きな湖であった。

 

「……ここも懐かしいですね」

 

「ああ、そうだな」

 

そんな風に話をしているとソラは何かの気配を感じて思わず後ろを振り向く。同時にその気配の主を見てソラは思わず驚きの声が漏れる。

 

「ッ……何で……」

 

「ごめんね、ソラちゃん……。本当は待ってるつもりだったけど……。やっぱり、幼い頃に助けてもらった分を返せてないのは……嫌だから」

 

そこにいたのは少し申し訳なさそうにしつつも、柔らかい笑顔をソラへと見せるユキであった。彼女は元々ここに姿を見せるつもりは無かったものの、やはり幼い頃に虐めから自分の心を救い出してくれたソラの窮地に黙って見ているだけなのはできなかったようである。

 

「ユキさん……」

 

「少しだけ、ここで一緒にお話ししよ」

 

ソラはユキに対して色々複雑な気持ちだったが、今は藁にでも縋りたい思いだったために彼女の提案に思わず頷く。こうして、幼い頃から同じ屋根の下で過ごした二人は夜空の下でシドと共に話し合う事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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