スカイとプリズムの合体技によってランボーグの中から解放されたシャララ隊長。彼女は目を覚ますとスカイへと話しかける。そして、スカイはシャララ隊長が生きていて自分への話しかけてくれたという事実を改めて噛み締めると思わず抱きついた。
「シャララ隊長……会いたかった!」
「ソラ、少し見ない内に立派になったんじゃないか?」
シャララ隊長はそんなスカイからのハグを受けると彼女へと優しく問いかける。スカイとしてはそう言ってもらえるのが嬉しかったものの、ここで満足する彼女では無かった。
「いえ、そう言って貰えるのは光栄ですけど、……私はまだまだ未熟者です。隊長を助ける前に……私、一度心が折れてしまいました」
「そうか……。だが、そんなソラを助けたのはユキやそこにいる子なのだろう?」
「へ?わ、私!?」
すると、突如として自分の事を言われて困惑するプリズム。そんな彼女を横目にソラは大きく頷く。
「はい!私は沢山の人に支えられてて。ですから、ヒーローとしては未熟なんです」
「それで良い。ヒーローとて1人で全てを解決するのは不可能だ。だから私はソラにヒーローと言われつつ、青の護衛隊の隊長として彼等を率いているんだからな」
「ッ……」
スカイはそれを聞いて納得したような顔つきになる。シャララ隊長の言う通り、彼女もまたヒーローとして活躍する一方で沢山の人に支えられていた。やはり、1人で全てを解決できてしまうヒーローというのは存在しないのだろう。
それこそ、事件に関連する事以外だとしてもヒーローは誰かの力を借りて生きているのだから。するとそのタイミングでスカイ達の周囲から轟音が聞こえるとシャララ隊長はスカイへとある事を促した。
「ソラ」
「はい?」
「……私の事はもう大丈夫だから、そろそろ仲間の元に行ってあげるべきだ」
「ッ……!」
それは自分の事を助けてくれた仲間達を今度はスカイ自身が助ける番だと言わんばかりのシャララ隊長からの言葉だった。
「わかりました」
「そっちにいる……キュアプリズムだったか」
「はい!」
スカイへと言うべき事を終えたシャララ隊長は続けてプリズムの方を向くと彼女にも話しかける。
「ソラを……キュアスカイを頼む」
「ッ……はい!」
シャララ隊長の言葉にプリズムは強く頷くと2人は揃って近くで戦っているであろう仲間達の元に向かう。それを見届けたシャララ隊長は微笑ましい顔をスカイへと向けていた。
「ソラ……良い仲間と出会ったな」
同時刻、スカイ、プリズムがシャララ隊長の無事を確認していた頃。続けてヒューストムと交戦していたオーロラ、ムーンライズの2人の方へと場面は移る。
「折角あと一歩って場面まで追い詰めたのに息を吹き返しやがって!力では俺の足元にも及ばないくせに!」
「確かに、力じゃあなたには勝てない。だけど!」
「俺達には誰かを想い、戦い抜く心がある!」
オーロラとムーンライズはヒューストム相手に2人がかりとはいえ、食らいつくと互角の肉弾戦を展開していた。
「チッ……ふざけんな。己の力以上に強い物なんてありはしないんだ。力がある者が絶対!力ある者が正義なんだ!俺のような強者がお前らのような弱い者を蹂躙して全てを手に入れるんだよ!!」
「それはあなたの勝手な気持ちでしょ!」
「俺達はそんな暴君のような奴を相手に負けるつもりは無い!」
オーロラとムーンライズは2人同時のパンチでヒューストムを後ろに押し戻すとすかさず両手を翳してそれぞれの気弾を連射。それらがヒューストムに命中する。
「ぐうぅ……はあっ!」
だがヒューストムは最初こそその攻撃を受けていたものの、途中で自らの周囲に風を起こす事で攻撃を全て弾いてしまう。
「その程度か!」
「良いや。まだまだやれる!!」
ヒューストムへと接近するムーンライズ。それを見てヒューストムはすかさず手を翳すと風のエネルギー弾を生成。その動きを止めようとする。
「させない!」
しかし、これに対してオーロラが反応すると彼女の能力で瞬間移動してヒューストムの後ろに回り込む。
「ふん。そう来ると思っていた!!」
「ッ!?」
ヒューストムはこのオーロラの動きを予想していたらしく。すかさず振り向きざまに移動直後のオーロラへと上段回し蹴りを振り抜いた、
「うん。私もヒューストムなら反応してくると思ったよ」
「はぁ!?」
その瞬間、ヒューストムからの振り向き様の回し蹴りに対して彼女はしゃがんでその脚を回避。すかさず体勢が沈み込んだのを利用してヒューストムの顎にアッパーカットを命中させる。
「やあっ!」
「ぐはあっ!?て、テメェ……」
「ムーンライズ!」
「ああ、任せろ!」
すかさずそこにムーンライズが到達するとヒューストムを背中から羽交い締め。そのまま自らの体に光のエネルギーを纏うと自身の能力で浮遊。
そのまま上に急上昇しつつ錐揉み回転をしながら向きを反転。2人纏めて地上へと落下を始めた。この攻撃をわかりやすく例えるなら○闘士星矢の○ガサス・○ーリングクラッシュと同じような感じと考えれば何となく理解できるだろう。
「お、お前!?こんなのやったらお前もタダじゃ……」
そして、ヒューストムもこの技のリスク……発動者自身も大怪我をする可能性が高いというものがわかっていたために慌てていた。まさか復帰早々にムーンライズがこんな事をするとは思えなかったのだ。
「そんなのわかってるさ。俺だって覚悟の上でやってるに決まってるだろうが!」
「なっ!?」
ただ、ムーンライズの覚悟はヒューストムの想像以上だった。そのため、2人はそのまま纏めて車田落ちすると撃墜の衝撃で爆発が起きる。その直後、ムーンライズは爆発の衝撃の中でほぼ無傷な状態で飛び出した。
『もう、復帰早々に無茶しないでくださいよ』
「ルーセントムーン。助けてくれたのか?」
『ええ。私だってもう前みたいに黙って見ているだけにはなりたくありませんから』
どうやらムーンライズの方は車田落ちによるダメージをルーセントムーンが軽減してくれたらしい。
そして当然ながらヒューストムは今の一撃をまともに受けたわけで。彼が気合いで煙を弾き飛ばすが、体へのダメージはそこそこ入っていた。
「ぐ……クソが……雑魚のくせに。一度カゲロウに体を乗っ取られた弱虫のくせに……もう許さんぞ!俺の本気で相手してやる!!」
ヒューストムはプリキュアにここまでしてやられたのが気に入らなかったのか。本気モードと言わんばかりに力を解放。その衝撃で凄まじい風が駆け抜ける。
「お前らが悪いんだぞ。弱いくせに手間取らせるからだ。特にキュアムーンライズ!カゲロウに乗っ取られて恋人をあれだけ襲い、恐怖させた。嫌われてもおかしくないくらいにな!!そんなお前に、俺の事を悪だと言い切る資格なんてあるのかよ?」
ヒューストムはこのタイミングでお得意の精神攻撃……というよりは相手を逆上させる煽り攻撃を仕掛けた。そして、その言葉は今のムーンライズに効果覿面なのか。
「ッ……それは……」
「ハッ、そうだよなぁ?お前は俺と同じだ。好きな人への気持ちが行き過ぎたが故にユキの事を好き放題にしようとして嫌われた。もうお前らの間に恋人関係が残ってると思うなよ?」
ヒューストムはムーンライズがその事を認めたと言わんばかりに次々と彼を貶める言葉を投げかける。ムーンライズはそれに反論する事ができない。実際自分の意識が底に行ってる間とはいえカゲロウの人格としてムーンライズは、アサヒはオーロラことユキに酷い事をしてきた。
嫌われて距離を置かれるのは当然の結果だろう。そして、その先に待ち受けているのは恋人としての関係解消だけだ。
「そうだよ、俺はユキに……ユキに酷い事を……」
「待って!!」
そのタイミングで声を上げたのはオーロラである。そして、彼女はムーンライズを庇うように彼の前に立つとヒューストムへと反論した。まるでムーンライズが反論できない分を補うかのように。
「確かに、カゲロウは私に酷い事をしようとしてきた。実際私の事を貶して、無理矢理従わせようとしたよ。……だけど、それは私にも非がある事だったから。私が、アサヒ君のダメな部分を受け入れようとしてなかったからだよ」
「はぁ?だったら何で俺の時は俺を受け入れなかったんだ!!ふざけんなよ!!俺が告白したあの時、俺がどれだけ傷ついたかわかってるのか!?俺の心にダメージを与えたんだから罪悪感はあって当然だろう!!」
「私があなたを受け入れなかったのはあなたのそういう所が嫌だったからだよ!!」
「なっ……」
ヒューストムは一方的に意見を押し付けられると思っていたオーロラが反論してきた事に思わず驚きの声を上げる。
「アサヒ君と違ってあなたがやった事はただの逆恨みでしょ。私が告白を断った後もしつこく私を恨んできた。皆を洗脳して、関係無い人達まで巻き込んで。ソラちゃんだって私のためにどれだけ苦労してくれたか。……私、あなたみたいな人の恋人になるなんて絶対嫌だから!!」
「はぁあああっ!?」
「(オーロラ、珍しく容赦無いな……。それだけオーロラがヒューストムに怒ってるって事だと思うけど)」
オーロラはヒューストムに対してハッキリと断りを入れると改めて彼をフッた。そして、幼い頃に続いて二度同じ相手にフラれる事になったヒューストムはメンツ丸潰れである。当然オーロラに対して激昂するわけで。
「ふざけんなテメェッ!!何で……何でだよ!!俺とそんな野郎の何が違うって言うんだ!!」
「アサヒ君は、私の事をちゃんと受け入れてくれた」
「ッ!?」
ヒューストムの怒りの声に対してオーロラはあくまで冷静にヒューストムに対してムーンライズの、アサヒの良い所を挙げていく。それを隣で聞いているアサヒは内心複雑だったがひとまずそれを聞く事にした。
「アサヒ君はソラちゃんやその家族以外で私が信じられた初めての人で。私の事をちゃんと見てくれて。いつも不安な気持ちに陥ってた私を安心させてくれて……。凍りついていた私の心を優しく照らして溶かしてくれた。何より、私の良い所もダメな所も含めて受け入れてくれたの」
「ッ……だから!アイツと俺の差を言えって言ってるのに何でアイツの自慢話ばかり!惚気かよ!!」
「これが差だから言ってるんだよ!!」
「はぁ!?」
ヒューストムは惚気話とでも取れるような話に思わずツッコミを入れるが、オーロラは真面目に理由を説明している所を邪魔されて言い返す。
「じゃあ、あなたに聞くけど。あなたは私の事をちゃんと見てくれてるの?私の全部を受け入れられる?私みたいなダメな彼女をそっと支えるとかできる?」
「ッ!!黙れ黙れ!!お前は俺の奴隷なんだよ。俺の意見を肯定すれば良いし、俺のやりたいと思った事を黙って受け入れれば良い。そもそもあの時大人しく恋人になるのを受け入れていれば、お前がそんなに心を病む事にもならなかった!だから自業自得なんだよ!お前のその悩みも迷いも全部!!」
オーロラはヒューストムが逆ギレして本性を露わにしたのを見るともう自分ではヒューストム相手に付き合いきれないと考えて溜め息を吐く。
「……わかった。そういう考えならもう良いよ。……私、あなたに何の未練も無いし。これからは私がアサヒ君の事を受け入れるって決めたから!」
そう言ってオーロラは自分の方からヒューストムとの会話を切って捨てるとムーンライズの腕にそっと抱きつくように体を預ける。それをされたら当然ムーンライズは気不味くなる上にヒューストムは怒り狂うわけで。
「ざけんな、ざけんな、ざけんな……ユキぃいいっ!」
「ちょ、ちょっとオーロラ。今はまだ戦いの途中……」
「あっ、ごめん……」
オーロラはつい感情的になってヒューストムに見せつける意味も込めてムーンライズの方に行ったのだが、ムーンライズから指摘されて慌てて我に帰ると顔を赤くしてしまう。
「オーロラの事を1人にしたのは俺のせいだし、それをしたいなら後で幾らでもやって良いから。今はヒューストムと戦おう」
「うん!」
「ああもう!目の前でイチャイチャイチャイチャ……お前ら、性格最悪かよ!!」
「「(あなた)(お前)にだけは言われたく無い!!」」
こうして一通りの押し問答を終えた3人は改めて戦いの中であるために構えを取る。するとヒューストムは体にまた暗い緑のオーラを纏わせた。
「ぐぬぬ……さっきからお前ら調子に乗りすぎだぞ。美味しい所を貰うつもりだったのにカゲロウは役立たずだしシャララ隊長も解放されて……。痛ぶりながら楽しむのはもう止めだ。今度こそ徹底的にバラバラになるまで潰してやる!」
するとヒューストムの周囲に小さな風の竜巻が幾つか生成されるとそれが2人向けて発射。
「「ッ!」」
2人はそれをジャンプで回避するとすかさずヒューストムへと2人同時の気弾による射撃で挟み込む。
「ふん。弾幕ってのはこう使え!!」
ヒューストムが今度は球体の暗い緑のエネルギー弾を多数生成すると2人の気弾を迎え撃つように斉射。それによって相殺してからすかさず追加投入して2人へと面攻撃を仕掛ける。
「オーロラ!」
「うん!」
2人はそれに対してわざと弾幕の中に突撃すると攻撃に当たりながらヒューストムへと迫っていく。
「馬鹿が、それじゃあただの自爆特攻……なっ!?」
「「こんな攻撃、痛くも何とも無い(よ)!」」
しかし、オーロラもムーンライズもヒューストムと同じようにプリキュアとしてのオーラを体に纏うと風のエネルギー弾の威力を軽減。そのまま一気に肉薄するとダブルパンチを繰り出す。
「「はぁああっ!」」
「ぐあっ!?」
ヒューストムは2人からの突進の勢いを乗せた拳の威力に思わず後ろに押し戻されると苛立ったように歯軋りする。
「ぐ……」
「例え、あなたが私達の絆を引き裂こうとしたって」
「俺達の絆は壊れない!」
「「この戦いで(あなた)(お前)との因縁を終わりにする!」」
「やれる物ならやってみやがれぇええっ!」
こうして、オーロラとムーンライズはヒューストムとの完全な決着を付けるために彼との本格的な戦いを開始する事になるのだった。
また次回もお楽しみに。