熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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バラバラな二人への説得 温かい光で溶かされた氷

電車ランボーグから逃れたスカイとプリズム、そしてエル。三人はランボーグのいる建物から少し離れた建物と建物の間の路地に身を潜めていた。

 

尚、サンライズはスノーを助けに行ったためにこの場にはおらず。プリズムは自分達を探すランボーグを遠目に視認しつつスカイに話しかけた。

 

「危なかった……。今は言い争ってる場合じゃ無いよ。一緒に戦おう。ね?」

 

「……できません」

 

プリズムはこのままやり合っても勝ち目が薄いためにどうにかスカイを説得しようとする。しかし、スカイからの反応は拒絶であった。

 

「えるぅ!」

 

「でも……。それにここにはいないけど、サンライズやスノーとも協力しないとあのランボーグとシャドーには勝てないよ」

 

プリズムはスカイからの反応が芳しく無い事に愕然とする。ただ、スカイもスカイで心の中にある想いがあった。

 

「……それでも私は了承できません」

 

「私達はもう友達だよ?私達友達だからお互いに助け合って……」

 

「友達だからダメなんです!ユキさんは私の初めての友達で一人の家族だから。ましろさんやアサヒ君は、こっちの世界での私の初めての友達だから……」

 

スカイの言葉にプリズムは目を見開く。それは、スカイの心の奥底からの願いだった。そのまま彼女は自分の身の上の話を始める。

 

 

「あの日。憧れの人に助けられたあの瞬間から……ヒーローになるためのトレーニングを始めました」

 

スカイの脳裏に過ったのは過去の記憶。スカイは、ソラは幼い頃に憧れのあの人に助けられてからヒーローになるためのトレーニングを積んできた。それこそ、日差しの強い夏の日も、雪化粧に覆われる冬の寒い日も。

 

そのトレーニングは幼い頃のユキやソラと同年代に当たる年齢の子は絶対にやらないような過酷な物ばかり。それを彼女は一緒に育ったユキと二人きりで毎日のようにやっていた。

 

それから数年の月日は経ったある日。ユキとソラがトレーニングをしていると二人の近くの道をを自分達と同年代である女の子達が三人くらいで固まって通りかかった。

 

〜回想〜

 

「良いね、これ!」

 

「似合ってる!」

 

「買えて良かったね!」

 

「それ可愛いよ!」

 

「でしょ?欲しかったの!また一緒に行こ!」

 

「「うん!」」

 

女の子達は自分達で買ったと思われるオシャレのための可愛らしいブレスレットを見せ合っては楽しそうに話しており、ソラはふと自分の手元を見た。ただ、そこにはオシャレやアクセサリーなど何もついておらず。トレーニングで傷だらけになったみずぼらしい腕があるのみである。

 

「ッ……」

 

「ソラちゃん?……大丈夫?」

 

「ユキさん……。はい、大丈夫ですよ。これも私が自分で決めた事ですし、自分で受け止めるしかありません」

 

ただ、ソラの顔は少し寂しそうだった。ユキ以外の友達がおらず、学校に行く時以外の殆どの時間をトレーニングに回した彼女は余計にその思いが強くなっていた。……とは言っても当時のソラにはそんな余裕なんて無い。何しろ隣にいるユキが学校で精神を折られる程の虐めに遭ったばかりだから。

 

「(それに、ユキさんはもっと辛いはずなんです……。それに比べたらこんな寂しさ……何ともありません)」

 

彼女を守るために、ソラはトレーニングを欠かすなんてできなかった。ユキもそれを責任に感じ始めたのか、彼女は少しだけトレーニングの時間をソラができてないそれ以外の事に当てる事になる。

 

「……一人ぼっちを恐れない。それがヒーロー」

 

先程ランボーグ相手に言った言葉。それは周りに誰も友達がいない自分自身に向けて言った言葉でもあった。ソラはその文言をヒーロー手帳に書き込むとその言葉の意味を飲み込んだ。

 

〜現在〜

 

それから時間が経って、ソラシド市にやってきたユキとソラ。ソラにはユキ以外の友達なんて絶対にできないと思っていた。しかし、そんな彼女の思いとは裏腹に友達と呼べる存在がこの街でできてしまう。

 

「でも、友達ができました」

 

その友達は前に破られてしまったヒーロー手帳の代わりとして、自分のためにお金を出して新しいヒーロー手帳をプレゼントしてくれた。ランボーグ相手に苦戦したり、ミラージュペンを取られて変身不能に陥った自分達を身を挺して助けてくれたのだ。

 

そう、ましろとアサヒの二人である。彼女達の存在はソラにとって大切な心の支えだった。

 

「我儘です。わかってます!でも怖いんです……。ましろさんやアサヒ君が傷つくのは……そして、ユキさんも」

 

そして何より、ユキは幼い頃から自分の側にずっといてくれた。彼女自身だって虐めで精神的に弱ってる所なのに、自分を助けてくれたソラへの恩返しのため。ユキはソラの心の支えになってくれたのだ。

 

「ユキさんは私にとって友達で片付けて良い人じゃ無いんです。例え血が繋がってなくても……。私にとってユキさんは家族と言えるような。そんな温かさがあるんです。だから、ユキさんがいなくなったら私は……」

 

「スカイ……」

 

スカイはそう言って顔を覆い、嫌な事から目を逸らそうとした。プリズムはこの時、ある事実を感じ取る。これまでスノーことユキは周りを信用できない分、過剰にソラへと依存している所があると思っていた。しかし蓋を開けてみればユキがソラへと依存している以上に、ソラの方がユキが傷つくのを過度に嫌がっているように見えたのだ。

 

「やっぱり、あの時スノー、ユキちゃんを無理矢理に自分から突き放したのは……ユキちゃんのためを思っての事だったんだね」

 

ソラはやり方が強引でユキの心を深く傷つけてしまったものの、あんな風に無理にでも突き放さないとユキは自分に期待して着いてきてしまう。そうわかっていたから、ソラは大きな後悔と引き換えにユキを自分から切り離そうとしたのだ。

 

「……はい。私だって、あんなやり方……本当はやりたく無かったんです。でも、ユキさんを助けるには……私が傷つけた分以上に彼女を傷つけないようにするには……こうするしか無かったんです」

 

スカイはそう言うと覆っていた手を退けて立ち上がる。その顔つきには強い覚悟の瞳が宿っていた。

 

「私は、友達が傷ついて自分の前からどんどんいなくなるのが嫌なんです。そうなってしまうくらいなら一人の方が良い。……私、一人で戦います!」

 

「そんな……」

 

結局、スカイは一人で戦うと言い出してしまう。プリズムの顔が曇る中、突如として三人の真上から大きな音が鳴り響く。慌ててその方向を見るとそこには三人を覗き込むランボーグとそれに乗り込んだカバトンの姿があった。

 

「みぃつけた!」

 

「ッ、しまった!」

 

カバトンは探し物をやっと見つけたと言わんばかりの笑みを浮かべると同時にランボーグが声を上げ、三人のいる場所に突っ込むべく三人のいる路地を作り出している建物を破壊しようと手をかける。

 

「ランボーグ!」

 

そのまま建物はランボーグの怪力であっという間に破壊されると三人のいる場所へと突っ込んできた。

 

「「うわぁああっ!」」

 

「えるぅ!」

 

三人は完全に不意を突かれた上に狭い路地では戦えないのでその場から一目散に逃げ出す。ランボーグは下にまで降りてくるとその大きな車幅が通るために必要なスペースを建物を破壊しながら確保。三人と同じくらいの高さに到達した。

 

「ランボーグ、絶対に逃すな!」

 

「ランボーグ!」

 

カバトンは追いかけっこを長々と続ける気持ちなど無い。さっさとエルを捕まえてプリキュアを叩きのめすためにランボーグを三人の元に突っ込ませた。

 

「何でここまで入って来れちゃうの〜!」

 

「とにかく今は逃げましょう!」

 

「える〜!」

 

普通は体の大きい追っ手を撒くために体の小さい逃げる側の常套手段として細い路地や隙間を使うパターンがよくある。ただ、ランボーグはそんな常識なんて通用しないと言わんばかりに建物をそのパワーで無理矢理粉砕しながら進撃。あっという間にスカイ、プリズム、エルへと迫っていく。

 

「ひとまず広い所に出ましょう!このままじゃ、路地にいる意味がありません!」

 

「そうするしか無さそうだよね、これ!」

 

スカイの提案でエルを含めた三人は路地から飛び出してすぐに曲がって進路変更。その後ろからすぐさまランボーグが飛び出す。ランボーグは巨体な上に加速しているため、すぐに方向転換ができない。それを利用して三人はランボーグを撒こうとしたのだ。

 

ただ、ランボーグが通過した後の建物はあっという間に崩壊していくと音を立てて崩れ落ちてしまう。更にランボーグはすぐに方向を変えるとプリキュア達を追いかけて行った。

 

「ぎゃははははっ!待て〜!」

 

カバトンは今まで散々自分を追い詰めてきたプリキュアを逆に追いかける立場になって気分が良くなると笑い声を上げる。そのまま再度プリキュア達との追いかけっこが始まるのだった。

 

少し時間を遡り、シャドーの前から撤退したスノーとサンライズ。この二人もシャドーの目を盗んで隠れていた。

 

「……シャドーは……いないか。ふぅ……」

 

サンライズが息を吐く中、スノーは何かを言いたそうに震えていた。そんな彼女へとサンライズが話しかける。

 

「取り敢えず、脚の痛みは大丈夫か?もしヤバそうなら少し休んで……」

 

「……何で……」

 

スノーはサンライズからの言葉なんて聞こえてなかった。そこにあったのは彼への疑問ばかりである。

 

「何で!何で私なんかを助けたの!」

 

「……へ?」

 

「私みたいな使えない奴なんて……捨てられて当然で、虐められても文句を言う資格なんて無いのに……。何でアサヒ君は……私なんかを助けたの!!」

 

スノーの目には涙が浮かんでおり、恐怖に怯えていた。心の中では捨てられたく無い、一人になりたくない恐怖でいっぱいで。それでも彼女の口から出てきたのは自分は捨てられても文句を言えないと言う自分の気持ちとは真逆の言葉ばかり。

 

「さっきだって、朝ご飯作るのに失敗して。ソラちゃんにも見捨てられて……。ランボーグどころかシャドーさえ倒せなくて……もう私なんか要らないんじゃないの?」

 

スノーは、ユキは……自分のやる事成す事が何一つ上手く行かずに自棄を起こしてしまっていた。

 

「遡ったら私が捨てられる理由なんて幾らでも出てくる……。プリキュアになる前は考えも無しにランボーグに突っ込んでアサヒ君に迷惑かけて、ましろちゃんには心配をかけて。プリキュアになった後は自分が強くなったと錯覚してランボーグに打ち負かされて。焦った私はオーバーワークをして動けなくなって」

 

スノーは次々と自分の悪い点をサンライズにぶつけるように吐き出していく。サンライズはそんなスノーからの言葉を何一つ反論せずに聞いていた。

 

「私の大切な人はどんどんいなくなっていく。ソラちゃんも、こんな私要らないって……捨てちゃった」

 

スノーは吐き出すだけ吐き出すとそのまま崩れ落ちて啜り泣き始める。サンライズはそんなスノーの心の叫びを全て聞き終えるとようやく口を開いた。

 

「……言いたい事は全部言えたか?」

 

「え……」

 

スノーは嗚咽を漏らしながらサンライズへとそう聞き返す。彼はそんなスノーへと歩み寄るとスノーへと頭を下げた。

 

「スノー、ごめん。俺はスノーの事、全然わかってなかった」

 

「……ッ!?」

 

スノーはその光景を涙ながらに見ながら困惑する。何しろ、今まで散々自分が悪い点を吐き出し続けたのに何故サンライズの方が謝る流れに繋がるかわからないからだ。

 

「スカイから。ソラから全部聴いたよ。ユキの過去の話……」

 

「あ……あぁ……」

 

スノーはその言葉に顔から血の気が引いていく。知られたく無かった一番弱い部分を知られてしまった。ソラも自分を見捨てたからアサヒにそれを全部教えたのだと、スノーの思考はそう変わっていく。

 

「ただ、最初に言っておく。……ソラは、ユキの事を心配してたぞ」

 

「はぇ……?」

 

「ましろも、エルも、ヨヨさんもそうだ。勿論俺だってそう」

 

スノーはその言葉に未だに困惑している。自分が無様な姿を晒しているのにその自分をまだ支えようとしてくれる周りの思考がわからないのだ。

 

「ユキ、俺は間違ってた。プリキュアになれれば、ユキの力になれるって勘違いして。ユキの気持ちも何も知らないで」

 

「そんな、アサヒ君は何も悪くなんか……」

 

「だったら、今のユキだって何も悪くないよ」

 

スノーはサンライズからの言葉に遮られて思わず息を呑む。自分が否定してきた己の行動が悪くないと言われてまた脳内がパンクしそうになったのだ。

 

「……ユキだって、考えて必死に今の状況を改善しようとした結果がユキがやってきたその行動だ」

 

「でも、それは全部悪い方向に……」

 

「確かにそれはそうだ。でも、ユキ。それはユキが全部一人で行動しようとしたから起きた事。皆を頼れば、全部と言わなくても殆どが良い方向には向かっていくはずだよ」

 

「ぁ……」

 

ここでユキは思い至る。自分のしてきた間違いの行動。それらは全部、誰の手も借りようとしなかったからこそ起きた事態だと。

 

「ユキ、過去の事で自己犠牲や自虐の念が極端に強くなるのはわかる。……だったら俺はそんなユキを支えたい。ユキのやりたい事をサポートしたいんだ」

 

「……私のやりたい事……」

 

「もう一度、信じてほしい。スカイの事、プリズムの事。エルの事、ヨヨさんの事……そして、俺の事」

 

サンライズはそう言ってスノーへと手を差し出す。それはサンライズが自分を覆う固く冷たい氷に閉じこもってしまったスノーを救い出すための手だった。

 

「私……信じられるかな。きっと、また皆の事を疑って……悪い結果を生み出すかも……」

 

スノーはそう言って自信を無くしたような顔つきであった。もう一度友達を信じられるのか、本当に自分の背中を預けても良いのか。ただ、彼女には予感があった。この手を拒絶したら……本当に自分はひとりぼっちになってしまうかもしれない……と。

 

「私は……私は……」

 

スノーは手を掴む勇気が中々持てなかったために酷く悩んだような顔をしていた。サンライズはそんな彼女を見てある覚悟を固める。

 

「……スノー、いきなりごめんな」

 

その瞬間、サンライズはいきなりスノーを抱きしめると優しく頭を撫でた。

 

「ふぇっ!?あ、アサヒ君!?な、何を……」

 

スノーはいきなりサンライズに抱かれて顔を真っ赤にすると恥ずかしさでいっぱいになる。それと同時に色々と悩む気持ちが全て吹き飛んだ。

 

「……ユキ、俺達はユキの側にいるって絶対約束する。ユキは毎日一人で頑張り過ぎなんだ。一人で全部悩みを溜め込んで辛いなら、偶に俺達の前で吐き出して良い。少しずつ、俺達を信頼して頼ってくれれば良い。……だから戻って来い。皆ユキを待ってる」

 

「あ……あぁ……」

 

スノーは折れて粉々に砕けてしまった心が温かく包まれて治っていくような、そんな感覚になると同時に言葉が溢れ出してきた。

 

「私こそごめんなさい……辛い気持ちを全部溜め込んで……。何でも一人で解決しないとって決めつけて……。皆を頼りないって思っていたのは私の方だった。皆を信頼できていなかった」

 

スノーはサンライズに抱きしめられて安心感を覚えたのか、素直な自分の気持ちがやっと出てきた。そのタイミングで二人の近くから声が聞こえてくる。

 

「……いつまでそこで取り込んでいる?キュアサンライズ、キュアスノー」

 

二人が振り向くとそこにはずっと二人のやり取りが終わるのを待っていたのか、シャドーが立っていた。同時にスノーは慌ててサンライズから離れると恥ずかしさでいっぱいになる。

 

「ッ……」

 

「お前、待っててくれたのか?」

 

「……俺もお前らが喧嘩している所に横槍を入れて、それで圧倒的に勝っても面白く無いからな。それと、今回は二人同時で良い」

 

シャドーの言葉に二人は顔を見合わせて頷くと改めて彼と向き合う。それからサンライズがスノーへと声をかけた。

 

「スノー、一緒に戦おう。……正直な所、俺もスノーに戦わせるのは怖い。無茶を沢山するから危なっかしいって思ってる。でも、それはスノーだって同じ気持ちだ」

 

「うん。私だって皆が傷ついていなくなるのは怖い。でも、だからこそ……今度はサンライズ達と一緒に!」

 

スノーとサンライズはお互いをプリキュアとしての名前で呼ぶ。それは二人の間にできてしまった溝が完全に塞がれた事を示していた。

 

「さぁ……俺を楽しませろ」

 

「「勝負よ(だ)……シャドー!」」

 

こうして、スノーとサンライズはお互いを信頼。背中を預けると目の前にいる強敵……シャドーに立ち向かうのであった。




また次回もお楽しみに。
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