スノーとサンライズがシャドー相手に突撃する中、彼は笑みを浮かべると両腕を広げる。
「だだだっ!」
「はぁああっ!」
シャドーはサンライズとスノーによる二正面攻撃に対し、それぞれ片腕のみで相手していた。
「サンライズはパワーがあっても技量不足。逆にスノーは技量があってもパワー不足。俺相手にバラバラでは届かないぞ!」
シャドーはサンライズからの拳は無理に受け止めずに受け流す方向でできる限り捌いている。この方がサンライズのパワーをまともに受けるよりは対応しやすいらしい。逆にスノーの方は力不足なので全て攻撃を掌で受け止められてしまった。
「二人がかりでも攻撃が当たらない……」
「このままじゃ……」
しかし、シャドーの方は攻撃を捌きこそしても反撃はして来ない。単純に二人同時だと反撃の糸口を掴めないのか、それともわざと野放しにしてるのか。……彼の余裕さから恐らく後者の可能性が高いだろう。
「そろそろ反撃するぞ?」
「まだだよ!」
するとスノーが攻撃を止めると後ろに下がる。そのタイミングでサンライズはシャドーの正面に入るとまた拳を繰り出す。
「ふん。何をするかと思えば、そんな単純な事……」
シャドーは前と同じように単純な攻撃を仕掛けたサンライズの拳を回避。すかさずガラ空きの左側から手刀を振り下ろそうとする。
「今だよ!」
その瞬間、スノーが手を翳すといきなりスノーの周囲に氷の礫が生成。それが射出されるとシャドーへと飛んでいく。
「チッ……」
シャドーがその攻撃を回避する中で、今度はスノーが前に出ると彼女がラッシュを仕掛ける。
「はぁああっ!」
「無駄だ!」
シャドーが目を光らせると衝撃波がスノーを襲い吹き飛ばす。しかし、彼女のダメージは無駄にはならない。
「ッ、きゃあっ!?」
「だあっ!」
スノーが吹き飛ばされたその直後にサンライズがシャドーのすぐ目の前に迫ると炎を纏わせた拳を彼のガラ空きの腹に叩き込む。
「ぐっ!?これはまさか……」
シャドーは二人の連携に何かを感じ取る。しかし、シャドーが思考を纏める前にサンライズからの蹴りが迫った。
「させるか!」
シャドーが対応しようとすると今度は彼の足が動かなくなる。そのため、シャドーが困惑するとそこには彼の両脚が地面に凍結させられていた。
「なっ!?」
普通なら二度も同じ手を喰らうようなシャドーでは無い。しかし今回はスノー以外にもサンライズがいるのに加え、先程一撃を貰ってしまったために注意力が僅かに散漫になってしまったのだ。
「だあっ!」
その瞬間、炎を纏わせたサンライズからの中段蹴りが突き刺さるとシャドーは両脚の凍結を破壊されながら吹き飛ばされて建物の壁を突き抜けて外にまで叩きつけられる。サンライズとスノーがそんな彼を追って外に出ていくと、その視線の先にはまだまだ元気そうな様子が映った。
「くくっ。少しはやるじゃないか。お互いの隙を上手くフォローしてる。この感じだと主にスノーが連携を生み出しているか。……それにしてもお前達が組むだけでここまで強くなれるとは驚きだな」
「完全に不意を突いたというのにあまりダメージになってないか」
「本気じゃ無いのにやっぱり強い」
するとシャドーは背中に背負った刀に手をかけると引き抜く。それを見て二人はより一層身構える。彼が刀を抜き放つ事の意味……それを知らない二人では無いのだ。
「少々お前達の連携をみくびった事は謝罪しよう。……ここからは俺も刀を使わせてもらう」
「刀……アイツの刀が乱戦でどのくらい使えるかはわからないけど……」
「うん。あの長さで私達二人同時に対応するのは難しいはず」
シャドーが手にしている刀の長さは一般的な日本刀と同じくらい。そう考えると幾らリーチと攻撃力に優れても二人が接近して乱戦に持ち込めば刀を振る余裕を減らせると考えていた。
「……お前ら。何を勘違いしてる?俺が使う刀がいつ一本であると言った?」
その瞬間だった。シャドーが右手に持っていた刀の刀身が半分近くに減ると同時にシャドーの左手に同じくらいの長さの刀が生成される。
「マジか……」
「嘘、まさかの二本目!?」
「多数を相手取る時のために二本目を作れるようにしていてな。さぁ、第二ラウンドと行こう」
シャドーが向かってくるとサンライズとスノーは顔を見合わせると一度後ろに跳んで回避。シャドーはすかさず二連撃の斬撃波を飛ばす。
「はあっ!」
それに対してスノーが地面から自分の身長程くらいある氷の壁を生成。それが切断されると二人の姿はいなくなっていた。
「ほう?」
「「はあっ!」」
するとサンライズとスノーはシャドーの両側。完全に挟んだ位置に陣取ると両方から挟み込むようにして攻撃を繰り出す。
「なかなか良い動きだな……が!」
シャドーは手にした二刀流の刀の内の一本を回転させながらサンライズへと投げる。
「くっ!?」
サンライズはそれを回避する間も無く、どうにか防御して受け切ろうとする。そのタイミングでシャドーはもう片手の刀を手にスノーへと肉薄。刀の間合いの外から太刀を振ろうとする。
「ッ!また斬撃波!?」
「いや、違うな」
その瞬間、サンライズを迎撃していたはずの刀がいきなり消滅。サンライズは完全に肩透かしを喰らってしまうと目を見開く。
「なっ!?」
同時に消した刀の分だけスノーへと斬撃波を放とうとしていた彼の刀が伸びるとその刀の射程範囲内にスノーが自ら入ってしまう。
「嘘!?」
「はあっ!」
「ッ、きゃああっ!」
スノーはシャドーからの太刀をまともに喰らって吹き飛ばされる中、サンライズがようやくシャドーの背後に到達する。
「この野郎!」
サンライズが手に生成した火炎弾を至近距離から命中させようとする。しかし、シャドーの対応力はそんなサンライズをも凌駕した。
シャドーはスノーへと振り下ろした刀をそのまま地面に突き刺すとそれを起点にぐるぐるバットをするが如く自分の位置を一瞬で反対側に移動。地面の刀を抜く事無く手に短い刀を生成。同時に地面に刺した刀の長さは分離した影響で半分に減った。
「なっ!」
「遅い」
シャドーはすかさず手にした短い刀でサンライズを切り伏せると彼もダメージを受けてしまう。
「ぐあっ!?」
二人が地面に倒れると地面に刺していた刀を抜き、再度二刀流に戻る。二人はダメージに悶えていたものの、どうにか立ち上がった。ただ、シャドーの強さは自分達を二人同時に相手しても優位に立ち回れる程だ。
「はぁ……はぁ……。二対一でも強すぎるだろ」
「でも……どうにかする手段はきっとある」
スノーの言葉にサンライズは彼女がちゃんと冷静に戦う事ができていると安心感を覚え、彼女の隣に並ぶ。
「勿論。勝負はまだまだこれからだ」
「行くよ!」
こうして二人は再度シャドーへと向かっていく事になる。そんな彼女達の戦いと同時並行して。スカイとプリズムの方は先程の追いかけっこの開始時点からあまり状況は変わっていなかった。空中からプリキュア達を狙うカバトンの乗る電車ランボーグとそれからどうにか逃げ回るスカイ、プリズムという構図である。
「ええい、ちょこまかちょこまか!ランボーグ、さっさと攻撃を当てろ!」
「ランボーグ!」
一応ランボーグの方はスカイやプリズムへと拳による攻撃を繰り出しながら追跡中であるため、最高速度はまだ出しておらず。その影響なのか、二人は未だに捕まる事無く逃げられていた。
「ランボーグ、ビームを使うのねん!」
「ラン!」
その瞬間、ランボーグの目が発光するとビームが放たれる。それを三人はどうにか回避。ただ、こちらもこちらで全速力を出せているわけでは無かった。理由として、一番スピードのあるスカイは先程のランボーグとの技の撃ち合いに負けた影響でダメージが大きく。とてもでは無いが、全速力を使えないのだ。
それだけならまだ何とかなったのだが、それに加えて近くには二人が守るべき対象であるエルもいた。エルもスリングを変化させた浮かぶ小舟に乗っているものの、あくまでそれはスピードを出して移動するための物では無い。スピードが速すぎると乗っているエル自身に負担がかかるのでその構造上、プリキュアの全速力にはどうしても及ばないのだ。
「このままじゃ、追いつかれちゃう!エルちゃんも近くにいるから全速力は出せないし……」
だからこそプリキュア達はエルを置いて行けないために全速力は使えない。そのため、ランボーグの方は妨害しながらでもしつこく三人を追ってきた。
「こうなったら、上に行きましょう!」
スカイの提案で三人はひとまず上へと避難するべく跳び上がる。上であれば見通しが良く障害物が減るのでより逃げやすいという判断だ。
「うん!」
「える!」
「逃がさねぇ!」
ランボーグはそんな三人を追いかけるようにこちらも急上昇。ビルの窓際を走るスカイ、プリズムと近くのエルへと迫っていった。
「ランボーグ!」
するとランボーグは腕をビルの窓ガラスに突っ込むとそのまま前進する事で後ろの方から窓ガラスを破壊し続けてプレッシャーを与える。それを見たスカイはカバトン達の想定通り、プレッシャーを感じたのかプリズムへと話しかけた。
「プリズム、ここは私が囮になります!」
「二言目にはそれ言うよね。もう一人じゃ無いんだよ!」
プリズムはスカイの提案を拒否。彼女はあくまで一緒に戦うべきだと考えていたのだ。そのまま二人はもうすぐビルの横幅を渡り切ってしまうという事でエルと共にまた場所を移動。
「ぐぬぬ、だったらこれでも喰らえ!」
するとランボーグは地面から生えていた街頭を掴むとそのパワーでへし折り、スカイ達へと投げる。
「ラン!」
三人は建物の屋上にまで来ると下からランボーグが投げた街灯が迫る。
「一人じゃ無いから怖いんです!」
それをスカイが振り向き様にランボーグへと蹴り返す。その直後、街灯はランボーグの額に命中。しかし、ランボーグ自身から放たれたエネルギー弾を反射したわけでは無いためにランボーグの体には傷一つ入らず。そのせいで大したダメージにはならない。
「むきーっ!ランボーグ、ギアチェンジだ!」
するとランボーグの額にある急行の文字が特急に変化。これにより、ランボーグの速度が上がると体に一瞬だけオーラを纏う。
「ランボーグ!」
その直後、ランボーグは更なるスピードで加速すると三人の真上に一気に移動。そのまま顔面から突進する。
「「うわっ!」」
三人はそのパワーによって発生した衝撃波で前に押し出されるものの、スカイ、プリズムはどうにか建物の上に着地。エルもバランスを崩して落ちるという事は無かったのでスカイ達に合流。三人揃って移動していく。そんな中でプリズムが声を上げた。
「わかったよ。友達が傷つくのが怖いって言うなら私達、友達やめる!」
「ええっ!?」
まさかのプリズムの宣言にスカイは困惑する。しかも友達をやめるメンバーの中にはスノーやサンライズも含まれているため、二人の意思は無視された形だ。ただ、プリズムは完全にスカイと決別するつもりでは無いために代案を出す。
「たった今から私達は、友達じゃなくてチームって事でどうかな?」
「はえっ!?そんなの言葉遊びですよ!」
スカイはまさかの呼び方を変えただけという事態に慌てたような顔を浮かべる。
「じゃあ、四人組!カルテット!四天王!」
プリズムはスカイと共に建物を跳び移りながら色々と呼び方について提案していく。尚、スカイは四人組はともかく、カルテットや四天王に関してはわからなかったようで。
「ちょっ、よくわからない言葉を使わないでくださいよ!」
「だったら他に何かある?」
「知りません!」
スカイとプリズムはまるで押し問答のような中々綺麗に纏まらない会話を続けてしまう。そのため、流石にエルも不安に思ったのか涙を浮かべてしまった。
「えるぅ……」
「「ええっ!?」」
「け、喧嘩してるんじゃ無いんですよ!」
「泣かないで……」
「「ほら〜!」」
エルが泣きそうになった影響で二人は慌てると足を止めてその場で肩を組み、二人の仲は壊れてない事をアピールする。……しかし、まだランボーグを完全に撒いたわけでは無い。そんな状況下で足を止めてしまうという事はその接近を許してしまうことに繋がる。
「チャンスだ!」
「ランボーグ!」
立ち止まってしまったスカイとプリズムの元に飛んできたランボーグ。二人はその巨大に轢かれてしまうと容赦無く吹き飛ばされてしまった。
「「うわぁああっ!」」
そのままスカイは建物の屋上へと続く階段のある小屋のような場所に激突。プリズムはそんなスカイとは別で地面を何度かバウンドして建物の端にある塀に激突。
二人揃ってダメージを受けたプリキュア達。そんな中で唯一攻撃に巻き込まれなかったエルがランボーグの前に一人取り残されてしまう。
「う……くうっ……」
「ああっ!」
「える……」
エルの前で両腕を広げて今にも彼女を捕まえようとするランボーグ。エルはその体格差と恐怖で涙目になってしまう。
「エルちゃん!」
「え、えるぅ!」
スカイが呼びかけるが、二度目の大きなダメージの影響で立ち上がる事ができず。このままではエルが拐われてしまう。
「ヒヒッ。やっとこの時が来た!……プリンセス・エル。いただきまーす!」
カバトンがそう言うとランボーグが誤って潰してしまわないようにするべくゆっくり彼女へと飛びかかろうとする。
「止めて!」
そのタイミングで比較的累計でのダメージが少ないプリズムが飛び出すとエルを助けようとした。しかし、その光景はスカイにとって悪夢で見てしまった光景と似たような物になってしまう。
「そんな……ましろさん!」
そのためスカイはその夢での光景を思い出した。それは、プリズムがランボーグからのビーム攻撃を受けて変身解除して倒れてしまうというもの。しかも先程ランボーグはそのビームを使っていた。だからこそ余計にその可能性が頭に浮かんだのである。
「ダメーッ!」
スカイは必死に叫ぶが、もう自分の位置とコンディションではプリズムを助けるなんてできない。だからこそ彼女がやられてしまう事を止められないのだ。スカイにとって悪夢のような瞬間が夢では無く現実に実現してしまうのだった。
また次回もお楽しみに。