ウィングとバタフライの合体技、タイタニックレインボーアタックの前に倒れたバッタモンダー。そんな中でスカイ達が2人へと駆け寄る。
「「「ウィング、バタフライ!」」」
「皆……ッ!?」
だが、その瞬間……震えていたバタフライの脚が限界に達したのか。その場に倒れかかってしまう。
「あ、あれ……」
「「「「バタフライ!?」」」」
バタフライは今までずっと立てていたのが奇跡だったのか。最後のぶつかり合いで全力を出し過ぎたせいで肉体的な体力の限界に達してしまう。そんな彼女をそっと正面から受け止めたのはアポロンだった。
「大丈夫?」
「ッ……アポロン……ごめんね」
「俺は大丈夫。それよりもバタフライは見た感じ極度の疲労かな?」
アポロンはバタフライを支えつつ、彼女の息がかなり荒くなってしまっているのを見てこのままでは危険だと判断。ウィングに声をかけた。
「ウィング、ミックスパレットをお願いしても良いかな。バタフライが使っても自分の体力回復は無理だから」
「は、はい!癒しの力、アゲてこ!」
ウィングが負傷し、自分で使っても効果が無いバタフライの代役としてミックスパレットを使用。これによりバタフライの傷と体力が回復し、ついでとばかりにウィング以外の面々も回復させた。
「ウィング、ありがと。ウィングも回復させるね」
そして、当然ながらバタフライはウィングの事も回復させるとこれで全員が万全と言えるような状態に戻る。
「それにしても、アポロンはどうして無事だったんですか?あの時完全に姿が見えなくなってしまったので……」
「あ、それ私も気になったのよね」
するとスカイは何故アポロンが無事だったのかが気になると彼に問いかけた。当然これは他の4人もかなり気になる話題である。
「ああ、それなんだけどね。さっきバッタモンダーの背中に張り付いたあの時々……バタフライが咄嗟に守りの力を俺にかけてくれたんだ。そうだよね?」
「うん、そうだよ!」
アポロンが自爆特攻をしても無事だった理由……それは、バタフライが咄嗟にミックスパレットを使用して守りの力をアポロンに与えたからだった。
「守りの力……確かこの前信号機ランボーグの能力を防いだ時の」
「単純な防御力アップにも使えるんだね」
「じゃ、じゃあ爆発の時にアポロンがいなかったのは?」
アポロンが耐え切れたのは守りの力を付与されたからだとして。それだけだと自爆特攻後にアポロンの姿がいなくなった理由が説明できない。
「アレはバタフライが守りの力を俺に使った都合上、爆発を仕掛けるためのエネルギーだけを体から外に出して起爆したんだけど……。その衝撃波に耐え切れなくて反動で思いっ切り吹っ飛ばされちゃって」
「「「……えっ?」」」
「あはは……そういう事でしたか」
まさかのアポロンが自爆を体外で行ったがための反動によって遠くに飛ばされてしまっただけらしい。その際に背中を叩きつけられたのだが、その音もアポロンが仕掛けた爆発が消してしまったようで。
そのためアポロンが吹き飛ばされた姿も、遠くの建物に叩きつけられてしまったのもわからないままだったのだ。
「もう、心配かけないでよ」
「皆、心配をかけて本当にごめん」
「本当にそうだよ!アポロン……無事で良かった……」
すると、今までずっと不安だった気持ちが爆発したのか。バタフライは思わずアポロンに抱きついて安堵の声を上げる。アポロンはそんな彼女の背中をそっとさする形まで安心させる事に。
「あれ、でも確かバタフライはアポロンが生きてるって信じてたけど……何か理由があるんじゃなかったの?」
「ああ、アレ?うん。アポロンが生きてるのは早い段階で気づいてたよ。でも近くにいなかったから不安だったんだ」
「それってどうして?またアポロンの事を信じてたとか?」
アルテミスは先程バタフライが妙にアポロンの事を信じて戦っていた事から何か明確な証拠があるのだと感じていた。そして、その予感通りにバタフライは頷く。
「それもあるんだけど、1番の要因はあなたを見た時だよ。アルテミス」
「えっ!?」
アルテミスはまさかの自分の様子を見てアポロンが生きてる認定をされた事に困惑した顔を見せる。彼女はその事を聞いて何故自分が基準にされていたのかがわからずに困惑していた。
「それってどういう……」
「あっ、そういう事ですね!」
「ウィングまで!?」
アルテミスがどうにか答えを出そうとする中でウィングがわかったような声を上げたために更に混乱してしまう。するとスカイやプリズムも何となく理解が追いついた。
「なるほど、わかりました」
「うん、よくよく考えれば確かにあの場面でアルテミスがいる時点でね」
「私がいる時点……あーっ!!」
アルテミスはようやく答えに辿り着いたため思わず大声を上げてしまう。そして、その答えがアポロンから明かされた。
「じゃあ答え合わせしよっか。……もうわかってると思うけど、俺がプリキュアでいるためにはアルテミスと同時変身かつ変身状態を維持してないといけないんだ。そしてそれはアルテミスも条件は同じ。だからあの時アルテミスが変身解除されていなかった時点で俺はアポロンに変身している……つまり、無事だったって事だな」
アポロンが生きていたという証明、それはアポロンと一緒に変身して尚且つ変身解除が2人同時に行われるアルテミスがアポロンの自爆特攻後も変身状態を維持していたという事実から持ってくる事ができるのだ。
「もう、バタフライも人が悪いよ。そういう事だったら教えてくれたって良いのに……」
「あはは、ごめんごめん。あの時はバッタモンダーにアポロンが生きてるなんて知られたらそっちの方に行っちゃうかな〜って」
「確かにバッタモンダーの性格を考えたらあり得るかも……」
バッタモンダーは自分に屈辱を与えた相手をしつこく狙う所がある。そのため、下手にアポロンが生きてる事が彼に知られれば当然のように彼のヘイトはアポロンの方に向くだろう。
そうなれば自爆特攻したばかりでダメージが回復し切ってないアポロンを狙われて今度こそアポロンが再起不能になるまで痛めつけられる危険がある。
「とにかく、アポロンが無事で本当に良かった……」
「うん、バタフライが一緒に背負ってくれたおかげだよ。ありがとう」
そんなバタフライとアポロンが微笑ましい時間を過ごす中で当のバッタモンダーは気絶したまま倒れていた。
「さて、ここで倒れて気絶してるコイツ……どうする?」
アルテミスがそのバッタモンダーの方を指差すと彼をどうするべきか問いかける。
「うーん、このまま放置しておくと起き上がって悪さをしそうだよね?」
「でも、かと言って下手に手を出すのも……」
バッタモンダーの事なので気絶していると見せかけて不意打ちを仕掛けてくるリスクもあり得る。そのため、本当に気絶しているとわかっていてもプリキュア達はどうするべきか迷ってしまう。
そんな時、ウィングがバッタモンダーに対しての疑問が浮かんできてそれを問いかける事に。
「あの、思ったんですけどバッタモンダーはどうしていきなりパワーダウンしたんですかね?ボク達は実際に押し合ってたのでその理由が全然わからなくて」
「そういえばそうだよね。少なくともアポロンとアルテミスが来るまではウィングとバタフライ相手に勝っていたわけだし」
結果論で言えば押し勝てたから良かったものを、もし仮にアポロンとアルテミスが来ておらず。またバッタモンダーのパワーダウンが無ければ確実に2人はタイタニックレインボーアタックを破られて負けていたために急激なあのパワーダウンがプリキュア側の勝利を決定づけたと言っても過言では無い。
では何故そんな事が急に起きたのかという話をウィングはしたいわけだ。そして、最初に言い出したのはアポロンである。
「うーん。俺が外から見ていた限り多分だけど、バッタモンダーが第三形態で戦っていた時。時間が経つ程にやたらと疲れていたでしょ?」
「そういえば……途中からバタフライとバッタモンダーの疲れ方が逆転してましたよね」
「最初はバタフライの方が疲れていたけど、途中からバッタモンダーの方が息が荒くなってたもんね。でもアレってバッタモンダーが慣れてなかっただけとかじゃないの?」
「それもそうなんだけど、あそこまで筋肉が膨れた状態を維持するのって凄く体力を使うんだと思う。ほら、俺達もずっと体に力を入れっぱなしにするのは大変でしょ?」
アポロンはバッタモンダーの消耗スピードの速さを自分達で置き換えて例える。この方が難しい説明を入れるよりも理解が早いだろう。現に体を鍛えているスカイは割と簡単にわかった。
「確かに……ずっと腕に力を入れて筋肉を盛り上げたままにするのは私でも大変ですよ。だとしたら……」
「うん、バッタモンダーは全身の筋肉を常時膨れ上がらせているせいで体力を余計に消費してたんじゃないかな」
「でもそう考えるとバッタモンダーが第三形態?になったのって……」
「うん……完全に失敗みたいになっちゃってるね」
思えばバッタモンダーが第三形態に変身した辺りからプリキュア側に少しずつ形勢が傾いて行っていた。この感じだとバッタモンダーが第三形態になってしまった事が皮肉にも彼にとっては命取りであったと言わざるを得ないだろう。
「っと、ひとまずはこのバッタモンダーを……」
先程の戦いの疑問点の話はこの辺にして、まだ戦いそのものは終わってない。何しろ、未だに戦いの音は鳴り止んで無いからだ。
「「はぁあああっ!」」
「ぐ、クソ……クソッ……クソがっ!」
同時刻、オーロラとムーンライズの2人が戦っていた相手であるヒューストムを完全に圧倒。かなりのハイペースで追い詰めて行った。
「力が漲る!ここでの回復はマジでありがたい!」
「うん、これならきっとヒューストムを倒せるよ!」
「テメェら、回復とか卑怯な手を使ってるんじゃねーよ!」
2人はお互いの先の手を予想した上でのその予想に寸分違わずにピッタリ合わせる動きでヒューストムを完全に圧倒。しかも2人にとって追い風だったのが、先程バタフライを回復させるために発動させた癒しの力の恩恵を得た事だ。
バタフライを回復させるために発動された癒しの力、それは彼女の近くにいたスカイ達にも届いていた。という事はつまり、当然ヒューストムと交戦している2人にも届く事を意味する。
「ぐ、テメェら。調子に乗るな!」
「「はぁああっ!」」
ヒューストムは腕に風を纏わせるとプリキュア2人を殴ろうとするが、それよりも早くオーロラとムーンライズからの拳が命中。復活した2人のパワーも相まってヒューストムは堪らず吹き飛ばされるとそのまま地面に叩きつけられた。
「ぐあああ!?」
「やったか?」
「ううん、多分今のじゃダメ。もっと強い力をぶつけないと」
オーロラの予想した通り、ヒューストムは未だにダメージを受けた状態で立ってしまっていた。そして、吹き飛ばされた先でバッタモンダーの事をどうするか迷っていたスカイ達と合流する。
「今のは……」
「お、おのれ……」
「ヒューストム!」
スカイ達はヒューストムが近くに来たのであればバッタモンダーは一旦後回しにするべきと感じて彼相手に構えた。
「気をつけて、何をして来るか……」
「アイツら、何であんなに余裕そうなんだ」
ヒューストムは今のバッタモンダーが足止めしているなら他のプリキュア達にはそんなに余裕は無いだろうと考えてそのバッタモンダーを探す。だが、残念ながらそのバッタモンダーはスタミナ切れと大ダメージでダウンしているのもあってプリキュアの足止めなどできそうに無かった。
「は!?あの馬鹿何やってんだ!?」
「そこまでだよ、ヒューストム!」
「何があったかよくわからないけどもうバッタモンダーもダウンしてる。これであとはお前だけだ」
そこに吹き飛ばされたヒューストムを追ってきたオーロラとムーンライズも合流。こうなるとヒューストムはプリキュア側に大人数で攻撃されるという所謂リンチ状態に陥ってしまう。
そして、ただでさえ目の前の2人相手にも苦戦しているのにここからはプリキュアが8人がかり。しかも全員が傷と体力を全回復してるのならヒューストム側に勝ち目はかなり薄いだろう。
「クソ……どいつもこいつも役に立たないクズばかり!俺が折角勝てる舞台を作り上げて勝利の栄光だって見えていたはずなのにいいいっ!」
ヒューストムはそう言いつつ激昂。彼からしてみれば以前彼の上司と思われる男とプリンセス・エルを確保してプリキュアを打倒する約束を期限付きで伸ばしてもらったあの時から今までずっとその準備をしながらプリキュアと戦ってきた。
そして、つい先程まで完全にプリキュア相手に勝てるムードだったのだ。それなのにも関わらず、今の惨状はどうだろうか?
カゲロウは負けてムーンライズは復活し、シャララ隊長も救い出されてバッタモンダーもこうして情けない姿を見せている。ヒューストムとしてはこの1ヶ月程の準備期間で積み上げた物がこれでほぼ無意味に帰ったのだ。怒るのも無理はない。
「お前達のせいで、お前達のせいで……俺の計画はメチャクチャだ!!」
ヒューストムは自分の思い通りに行けば今頃プリキュアを倒し、エルを捕まえて自分の力を誇示した上でカゲロウが倒したユキを奪い取って我が物にできている予定だった。しかし、現実はそう上手く行くはずも無く。
結果的に見れば考え得る限り最悪に近い物になってしまっている。ヒューストムの怒りもわからなくは無いが、やってる事がやってる事なので同情の余地は皆無だろう。
「碌でもない計画立てておいてよくそんな事が言えるわね。昔も逆恨みでオーロラの事をメチャクチャにしたくせに!」
「煩い!黙れ!お前ら如き……全員纏めてぶっ潰してやる!」
するとヒューストムの怒りに呼応するように凄まじい量の風とそれに付随する電撃がどこからか集まってくると彼は自らの力を解放する掛け声を言い放つ。
「来い!アンダーグエナジー!」
ヒューストムが召喚したアンダーグエナジーは彼自身の体へと取り込まれていくと同時にその体の全体を覆うように風と雷が集まっていく。
「ッ、ヒューストムの姿が変わっていく……」
「まさか、カバトンと同じ!」
かつてカバトンと決闘をした時も彼は似たような形でアンダーグエナジーをその身に纏った。ただ、今回のヒューストムは周囲の風を取り込む事でそれを遥かに凌ぐ力を叩き出す。
「皆さん、絶対に油断したらダメです!」
「ええ、ヒューストムの本気。私達皆で気を引き締めて立ち向かわないとだもんね!」
「無駄だ……もうお前達は俺に勝つのは不可能だ!うぉおおおっ!」
こうして、味方全てを倒されて最後に本気モードを解放したヒューストム。その力とはどういう物なのだろうか……。
また次回もお楽しみに。