バッタモンダーを撃破し、全員が集結したプリキュア。ただ、未だにヒューストムは健在。しかも彼は怒りを露わにすると奥の手を発動。彼の周囲から凄まじい量の風が集約されると同時に召喚したアンダーグエナジーを取り込み始めた。
「うぉおおおおっ!」
「ヒューストムの姿が……変わっていく」
「しかも、前にカバトンが変身した時よりも遥かに強い力を感じます。皆さん、気をつけてください!」
そして、ヒューストムはアンダーグエナジーに加えて周囲の風や電撃のような物も取り込むとその姿がまるで人型の巨大な魔神のような物に変化する。
具体的には上半身はガッシリとし、ボディビルダーのような強靭な筋肉を持っている。ただ、服装は身に着けてないのかあくまで裸のような状態だった。頭部は逆立った黒い髪に額の両端から伸びる2本の尖ったツノ。顔は鬼や悪魔のような鋭い目つきに口からは牙が生えている。
そして下半身は存在しないのか、腹辺りから上しか視認できず。その代わりにその腹から下を隠すように竜巻が逆三角形のような形で下に向かうに従って細くなっている。また、体の色はヒューストムのイメージカラーである暗い緑色だった。*1
「アレは……うーん。やっぱどっかで見た事ある感じだなぁ……」
「あはは……それはあるかもしれないけど、でもヒューストムの奥の手で変化した姿。だから油断は禁物だよ」
案の定そのアニメを知っていて既視感のあるムーンライズとアポロンはそれについて指摘するが、こんな姿でもあのヒューストムの切り札。少なくとも侮って良い相手では無いと気を引き締める。
「お前ら、この俺の本気も本気。アンダーグ帝国トップクラスの力を見せてやる!」
ヒューストムが早速手を翳すと暗い緑色の竜巻が8人へと放つ。勿論8人はそれを避けるが、命中した地面が大きく抉れるとその周囲のアスファルトにさえもヒビや大きな亀裂もできている事からその威力の高さを実感する。
「これは当たったらかなり不味いですね」
「しかもここにヒューストムのスピードもあるんでしょ?」
バタフライはヒューストムの得意なスピードによる速攻を警戒。するとヒューストムは早速プリキュア達に向かって来る……なのだが。
「オラァッ!」
「「「ッ!」」」
ヒューストムからの拳のパンチはスカイ、プリズム、オーロラを纏めて狙うものの全員がそれを回避。3人はそのスピードの遅さに逆に驚きの顔を浮かべる。
勿論ヒューストムの拳が大きくなった事で当たり判定も大きくなったのだが、それ以上に今までずっとスピード重視の戦い方をしてきたヒューストムの驚異的なスピードが落ちているのだ。
「何今の……」
「いつもよりかなり遅い」
「いえ、ヒューストムの事なので油断させに来てるのかもしれません」
スカイはヒューストムの性格上わざと遅く殴る事でプリキュア側の油断を誘っている可能性を指摘。気を抜かないように呼びかける。
ただ、ヒューストムは僅かに苛立ったような様子は変わっていなかった。そのためか。今度は風のエネルギー弾を周囲に大量に展開すると弾幕としてそれを放つ。
「喰らえよ!」
「うわっ!?」
「こっちのスピードは変わらずなのね!?」
幾らヒューストム本体が遅くなったからと言って流石にスーパーバッタモンダー第三形態の時のように飛び道具のスピードも少し落ちるなんてことは無い。
「でも、こっちも回避できない事は無い……そろそろこっちも反撃行くぜ!」
ムーンライズはヒューストムのエネルギー弾を回避するとスカイ、ウィング、バタフライとアイコンタクトを取る。
「そうですね!」
「ヒューストムの速度が遅いのなら!」
「うん。前より攻撃を当てられるチャンスは多いはず!」
そのままムーンライズ、スカイ、ウィング、バタフライの4人はヒューストムの動きが遅いのなら同時攻撃を回避するのも難しいと考えて一気に攻めに出る。
「なるほど。俺の動きが遅いからって舐めた真似しやがって。けどなぁ!!」
ヒューストムが右腕を体の左側に突き出しつつ腕を曲げる形で力を込め、横薙ぎに振るうように動かす。その瞬間、突如としてヒューストムの周囲にまるで防御フィールドのような形で突風が吹き荒れるとプリキュア4人を纏めて吹き飛ばす。
「「「「ッ!?うわあっ!?」」」」
「な、何!?」
「風だ……ヒューストムが自分の周囲に風が吹き荒れるフィールドを作り出したんだ」
「その通り。そして、これならお前達もまともに動けないだろ?」
ヒューストムの言う通り、彼の周辺は大型の台風に近いレベルの突風が吹き荒れている。そして、その風はプリキュアの動きを少なからず鈍らせるわけで。特に、自身の能力で常に宙に浮いているキュアウィングには効果抜群だった。
「うわっ!?ああっ!」
「ウィング!掴まって!」
ヒューストムの起こした風の結界に翻弄されて飛ばされかけるウィング。そんな彼を見たアルテミスは慌てて彼を地上に下ろすために手を差し出し、ウィングがその手を掴んだためにどうにか彼は風の吹き荒れる空中から地上に降り立つ事ができた。
「ありがとうございます、アルテミス」
「ううん、このくらい当たり前だよ」
「ウィング、ひとまず君は無闇に飛ばない方が良い」
「そうですね、あの風があるとボクの持ち味が全部持ってかれてしまいますし」
ウィングは空を時間制限無く飛び続けられるという他のメンバーに無い唯一の持ち味があるが、今の状況ではそれが活かせるとは言い難い。しかも突風のせいで動きづらいどころか飛ばされるリスクがある事を考えるとやはりここで空を飛ぶのは得策とは言えないだろう。
「ふはははっ!俺の速度が遅いと思って油断しただろ?残念ながら遅くなるのは俺だけじゃねぇって事だ」
「くっ……だけど……こんな事で諦めるわけにはいかない!」
「はっ、だったらこれでも喰らえ!」
ヒューストムは目を紫に怪しく発光させると多数の風の斬撃波が生成。プリキュア達へと飛ばしていく。
「くっ!?」
「うわっ!?」
「ッ、風のせいで避けにくい!?」
「おらどうしたぁ?隙だらけなんだよ!」
ジャンプして地上から足が離れてしまうのは危険なため、どうにか風の斬撃波を走って避けるプリキュア。しかしジャンプができないせいで機動力も半減し、この状態ではヒューストムの動きを先程までのように余裕を持って避けれるとは言い難い。
「ッ!?しまった!」
「まずはお前だ!キュアプリズム!」
するとヒューストムは他のメンバーと比べて反応が遅いプリズムを狙うと彼女の背後に回り込んで強靭な拳を振り下ろそうとする。
「ッ!プリズム、危ない!」
「チッ、邪魔なんだよ!!」
その瞬間、オーロラがバリアを展開する形でプリズムを守ろうとする。だが、ヒューストムのパワーは見た目通り上がっているためそのバリアを一撃で粉砕。
「「きゃああああっ!?」」
オーロラとプリズムは呆気なく纏めて吹き飛ばされると叩きつけられてしまう。
「だったらこれでも喰らえ!ひろがる!ムーンライズドリーム!」
「今更効くわけないだろ!」
ムーンライズは両手を前に翳すと浄化の力が入った光のエネルギー波を放つ。だが、ヒューストムは片手を出すだけでムーンライズ渾身の一撃を打ち破ってしまう。
「くっ……」
「お返しだ!」
その瞬間、ヒューストムが手のひらで先程のムーンライズの攻撃を防いだ状態のままその手のひらから竜巻を放出。ムーンライズは避ける間も無くそれを喰らってしまう。
「がぁああっ!?」
「ムーンライズも……だったらこれで!」
すると今度はアルテミスがヒューストムの気を引くように接近。その動きにウィングが呼応するとヒューストムの背後に回り込む。
「ウィング、同時攻撃よ!」
「はい!はぁああっ!」
ウィングは風で飛ばされるリスクを承知でヒューストムに飛び掛かると蹴りを放ち、アルテミスはヒューストムの意識が後ろを向かないように両手を翳して大きめな氷の砲弾を生成。それを一気に放つ。
「やあっ!」
「そんな程度か、甘過ぎるんだよ!」
だが、ヒューストムは敢えてその氷の砲弾を正面からまともに喰らうと平然とした顔であっさり耐え切ってしまう。そして、ウィングの方は空気の流れを察知する形でウィングの攻撃の軌道を見切ると自身の後ろにバリアのような障壁を生成。ウィングの蹴りはそれで受け止めて完全防御してしまう。
「「ッ!?」」
「消えろ」
ヒューストムが怪しい紫の光を発光させるとその瞬間、ウィングとアルテミスの2人の元にいきなり無数の斬撃波が襲いかかる。当然2人共動揺で無防備な姿を晒していたためにあっという間にその攻撃の餌食となってしまった。
「「うわぁああああ!?」」
「だったら私が!」
「仲間のピンチに毎回ご苦労な事で。ホント、お前は単純だよなぁ?」
ウィングもアルテミスもやられてしまうのを見てスカイが耐え切れずに飛び出してしまう。そんな風に仲間の窮地に健気に駆けつけるスカイの姿をヒューストムは鼻で笑うと容赦無く強靭な拳を繰り出す。
「ッ!そんなの、当たりませ……」
「誰がいつ避けて良いって言った?」
スカイはヒューストムからの拳が単純なパンチだったのに加えてスピードが遅くなっているためその一撃をジャンプしつつ避けようとする。だが、その瞬間に突如としてスカイの体がガクンと押さえつけられるようにジャンプできなくなってしまう。
「えっ!?な、なんで……うわぁああああ!」
その間に容赦の無いヒューストムの拳が命中。スカイが吹き飛ばされるとその様子をバタフライは驚いたような顔で見ていた。
「ッ!?スカイの動きが何であんな急に……」
「恐らくだけど、ヒューストムの周囲にある風の防御フィールドが風圧でスカイの動きを制限したんだ」
「ああそうさ。そして、お前らもそこにいるだけで邪魔なんだよ!」
ヒューストムは怒りを含んだ声色で両腕に風の力を集約。また竜巻弾を放つと考えた2人はそれに備える……だが、その瞬間に風の力で自らの拳の威力を増幅。
具体的には拳型の攻撃を2人へと一気に放つ。それを見た2人は予想した物とは違うものの、それを避けようとする。
「「くっ!!」」
「お前らも逃がさねぇよ」
その瞬間、また先程のスカイのように風圧のせいで身動きが取りづらくなった2人はヒューストムからの拳型のエネルギー弾をまともに受けてしまう。
「「うわぁああ!?」」
これにより、8人のプリキュアは全員が倒れると体に走る痛みに悶えてしまっていた。
「く……ううっ」
「さっきまでよりスピードは落ちてるはずなのに……」
「でも、それ以上にヒューストムの周りに展開してる突風が厄介過ぎる」
ヒューストムは今まで、風属性の能力を攻撃に使う事は多々あっても今回のように防御やサポート能力として使うのはあまり無かった。強いて言うなら自身のスピードアップや身体能力強化程度には使っていたものの、やはりそれはあくまで攻撃に転用する目的での使用が殆どである。
だが、今回本気を出したヒューストムは今までのスピード重視の戦い方とは決別するかのように一貫して力によるゴリ押しに重きを置いていた。そして、同時に自身の風の能力はあくまで防御や相手の動きを制限するためのサポート的な形で使っている。
「いつもはスピードを重視した戦い方なのに本気モードは真逆のパワー系かよ。そのせいで今までなら通用したヒューストム対策がまるで意味を成さない」
「でも、本気モードの戦い方の方がヒューストムの力の根底にあるのだとしたら……何で今まで使わなかったんだろ……」
バタフライはヒューストムの戦い方が本気モードの時だけ変化する事に疑問を抱く。普通ならパワータイプの戦い方が得意なら最初からこの力に沿った戦い方。つまり、普段からパワーに頼った戦い方をして風を防御やサポートに使うパターンを使うはずだ。その方が本気モードになった時もわざわざ戦い方を変える必要が無いからである。
それなのにヒューストムは普段スピード重視の戦い方をして本気モードの時だけパワー重視の戦い方にしていた。その意図を知りたいのである。
「……正直この力は使いたく無かったんだ」
「えっ?」
「この力を使えば相手は俺の力の前に簡単に倒れてしまう。それじゃあ俺は楽しめないんだよ!」
『ッ……』
どうやらヒューストムがわざわざ戦い方を変えるのはただただヒューストムの性格上、相手がすぐ倒れてしまうこのパワータイプよりも相手を長く痛ぶって楽しめるスピードタイプの戦い方の方が単に好みだったからとの事である。
「ま、お前らを痛ぶる快感に慣れてしまったせいでこの姿の遅さには逆にうんざりするくらいになってしまったけどな?」
「だから最初ちょっと苛立ってたのか……」
「はっ、わかったらとっとと諦めろよ。このクソ雑魚共が」
ヒューストムは右手を真上に掲げるとそこに先程まで防御のために使っていた風が集約されていく。それによって生成された巨大な竜巻。ヒューストムは容赦無くそれを倒れているプリキュア達を叩きのめすべく振り下ろした。
『うわぁああああああ!?』
「今度こそ終わりだ、俺の前から消え失せろ!」
その直後、ヒューストムがダメ押しとばかりに凄まじい量の電撃を追加。地面に倒れてしまっていたプリキュア達はその一撃をまともに受け、大爆発と共にその中に全員纏めて呑み込まれてしまうのだった、
また次回もお楽しみに。