熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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逆風を打ち破る幻想と月の一芝居

本気の力を解放し、魔神のような姿に変身したヒューストム。彼は本来の戦い方である力によるゴリ押しをしてくるとプリキュア達は圧倒されてしまう。

 

「く……ううっ」

 

「ヒューストムの本気がここまでとは」

 

「ふん。この俺が本気を出せばお前達など敵ですら無い。それをようやく思い知ったか」

 

ヒューストムは傷つき、倒れてしまった8人を見下ろすと己の勝ちを確信。それに対して倒れたプリキュア達はどうにか動こうと足掻く。

 

「まだ……だよ。私達はあなたなんかに」

 

「はぁ、お前らの生命力や諦めの悪さとかどうなってるんだよ。どう見ても負けなのは決まってるのにさ」

 

ヒューストムはプリキュア達の諦めの悪さやそのしぶとさに呆れたような視線を向ける。ただ、8人はどうにか立ち上がると戦う意思を示しつつ構えを取った。

 

「ふぅ……なるほどなるほど。諦める気持ちが無ければいつかは俺に勝てると。要するにいつもの精神論か」 

 

ヒューストムはその言葉はもう聞き飽きたとばかりに溜め息を吐くと指パッチンを構える。

 

「じゃあもうその精神論を言えない状態にしてやるよ」

 

ヒューストムが構えていた指パッチンをすると突如としてプリキュア達の上から空気による圧力がかかった。これにより、8人共無理矢理地面に押し付けられてしまう。

 

『うわあああっ!?』

 

「俺の事をここまで馬鹿にしてくれたんだ。ただ倒れるだけじゃ許さない。……跪け」

 

「な、何よこれ……」

 

「体が、動かない……」

 

プリキュア達はどうにか体を動かそうとするものの、ヒューストムが目を紫に光らせると更なる風の風圧がプリキュア達の上から吹き付けられる。そのせいで8人は更に体力を奪われてしまう。

 

『ああああ!?』

 

「この野郎……」

 

「これじゃあ、動けないよ……」

 

「どうすれば……」

 

「どうすればぁ?打開策なんてねぇよ。お前らは俺の前で好き放題し過ぎたんだ。もうお前達は自由に動く事すら許さない。この姿の力は強力で相手を痛ぶるのには向かない……が、ちょっと工夫すればお前ら如きゴミ共を痛ぶる方法なんて幾らでもあるんだよ」

 

ヒューストムは更にプリキュア達の真上に風のエネルギー弾を無数に生成すると風の圧力で全く動けなくした所に容赦無く降り注がせる。

 

『ああああああああ!?』

 

プリキュア達の悲鳴がその場に響き渡るとそれでもヒューストムは油断する事は無い。ダメ押しとばかりに電撃による追撃をかけた。

 

「もう謝っても許さない。少なくとも、お前達がバラバラになるまではな!」

 

「ッ……あなたのその性根、歪んでますよ。ヒューストム……」

 

「へぇ、まだ喋れるんだ〜。じゃあもうちょっと痛ぶっても壊れないよな」

 

スカイがヒューストムの心が歪んでいるのを指摘すると彼はまだプリキュアが喋るだけの元気があると考え、また彼女達を痛ぶるために風圧を引き続き継続。その上で風のエネルギーボールをぶつけようと手を上に上げてそこで生成する。

 

「バタフライ、バリアは……」

 

「ごめん、バリアを作るためには手を合わせないといけなくて……」

 

ウィングはダメ元で少しでもダメージを軽減するためにバタフライにバリアが作れないかと聞くが、バタフライのバリアは作るために両手を蝶の形に重ね合わせないと生成すらできない。

 

そのため今の体を全く動かせない状況下ではバリアを作る事はできず、ヒューストムの一撃をまともに受けてしまう。

 

「残念だなぁ!ま、仮にお前がバリアを張れたとしても大したダメージ軽減になんかならない!要するに無駄な抵抗って所だ」

 

ヒューストムはプリキュアを嘲笑うようにそう言うとオーロラはある覚悟を決める。そして、ムーンライズの方を向くと先代プリキュアのライトピラーを介する形で声をかけた。

 

『ムーンライズ……お願いがあるの』

 

『オーロラ?』

 

オーロラの声かけを聞いてムーンライズは咄嗟にルーセントムーンの力を借りて聞き返し、2人はヒューストムに聞こえないようにコッソリと会話する。

 

『……ムーンライズ、お願いしても良い?』

 

『確かにそれなら。でも……大丈夫なのか?』

 

オーロラの口振りとムーンライズの躊躇いの様子から彼女の言っている事がリスクの高い物であり、そのためムーンライズはやらせるか迷ってしまう。

 

『うん……下手したらタダじゃ済まないかもだけど。でも、頼めるのがムーンライズしかいないの。お願い!』

 

『頼めるのが俺しかいない……か。わかった!背中は任せろ』

 

『うん』

 

ただ、それでもムーンライズはオーロラに任してもらった以上は自分も覚悟を決めて彼女を信じるべきだと考える。

 

オーロラはムーンライズにサポートをお願いするとエネルギーボールのチャージを完了させたヒューストムに向けて話しかけた。

 

「ヒューストム!」

 

「あん?」

 

「……あなたは元々私を狙ってたんでしょ?だったら潰すなら私からにして!」

 

突如として攻撃するなら自分からにしろと訴えるオーロラ。それを聞いて当然スカイ達は驚きの声を上げる。その中にはオーロラと示し合わせたムーンライズもいた。

 

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

「……!!」

 

ただ1人アポロンは声を出さなかったものの、オーロラが自己犠牲をするような事を言い出した事自体には動揺したのかその目線がオーロラの方を向く。

 

「なるほどなぁ。だけどさ、ユキ。今更お前1人が潰されれば他の仲間は助かる。そう思ってるのか?」

 

「ううん……今のヒューストムはきっとその程度じゃ済まさない。むしろ、私を奪還しようと躍起になるのを嫌って皆の事も潰すと思う」

 

「ははっ、そうだ。その通りだ!仮にお前1人が犠牲になったとしても結果は変わらない。それなのに何故今になって自己犠牲をしようとする」

 

どうやらヒューストムもオーロラが1人で自己犠牲をするのは何かの策だと考えて警戒している様子だった。彼も今まで自分にとって美味しい話を向けられた際に散々油断してやられてきたため、より一層警戒も強くなってしまっている。

 

「それでも、それでも私が皆を巻き込んだ責任を取らないといけないから。皆には1秒でも長く無事でいてほしいから……」

 

オーロラの声は震えており、自分を犠牲にする恐怖に怯えているようだった。そのため、スカイ達は慌てて反論する。

 

「オーロラ、止めてください!」

 

「そんな事したって、結局は何も……」

 

「そうです!そうなるくらいなら全員で受けた方がマシですよ!」

 

「ユキ姉お願い!考え直して!」

 

「オーロラがそんなに責任を背負う事じゃないよ!」

 

必死にオーロラへと考え直すように言うスカイ達。それを見てヒューストムは改めてオーロラに問いかける。

 

「お仲間はああ言ってるけど、それでもお前1人で俺に壊されに行くか?キュアオーロラ。いや、ユキ」

 

「……うん。お願い……。私にとっては皆大事な友達だから……友達が少しでも長く痛みを受けないで済むのなら……」

 

「ダメだ!ユキ止めろ!!」

 

するとここでムーンライズも必死に止めるように呼びかけるとヒューストムは彼の必死さからムーンライズはオーロラの企みに関与していないと判断したのか。彼を見て嘲笑う。

 

「あはははははっ!せーっかくカゲロウの支配から逃れて元通りになったのに残念だったなぁ!キュアムーンライズ。まぁお前はカゲロウの時に俺にた〜くさん生意気な口を聞いた挙げ句卑怯な手を使ってユキの事を好き放題する順番を奪いやがったからな。お前の目の前でオーロラの体を見るも無惨な姿にしてやる!」

 

ヒューストムは手の上で巨大なエネルギーボールを維持しつつ自身の前に拘束したオーロラを持ってくると彼女へと個人的にエネルギーボールを叩きつけようとする。

 

「さて、ユキ。お仲間にお別れの言葉は言わなくても良いか?」

 

「……良いよ。あなただって下手に引き伸ばしたら私が何かするかもって思ってるでしょ。無駄な時間はいらない」

 

「あはっ、良い答えだ。ならお望み通り!」

 

ヒューストムはオーロラが余計な言葉は要らないとばかりに拒否した事から彼女には本当に何の策も無いのだとヒューストムは考える。そして、ムーンライズはヒューストムが容赦無くオーロラを潰そうとしている所を見て必死に叫んだ。

 

「止めろ……止めろヒューストム!!」

 

「や〜だよぉっ!!」

 

「(ッ、今だ!)」

 

ヒューストムがエネルギーボールを放つ手を振りかぶった瞬間。オーロラは自らの能力で瞬間移動。ヒューストムの後ろに姿を現すと彼女にかかっていた凄まじい風の圧力から逃れる事に成功する。

 

『えっ!?』

 

「ッ!」

 

これは前にヒューストムが使った金縛りから逃れたのと同じ。瞬間移動という一瞬にしてその場からいなくなる技であればどれだけオーロラに凄まじい圧力がかかっていても関係無く使える。そのため、ムーンライズ達はいきなりいなくなったオーロラに驚きの声を上げた。

 

だが、ヒューストムはこの手を使うのを読んでいたように笑みを浮かべると自らの能力で風や空気の変化をキャッチ。すかさず真後ろにエネルギーボールを放つ。

 

「それで出し抜いたつもりかよ!」

 

ヒューストムはオーロラのワープ先を狙い撃ち。彼女へとエネルギーボールが迫る。

 

「しまった!?」

 

「オーロラ!!」

 

「ううん、狙い通りだよ!」

 

「は?」

 

「ひろがる!ムーンライズドリーム!」

 

その瞬間、ヒューストムのエネルギーボール攻撃を受けた彼の真後ろに現れたオーロラは薄く溶けて消えると同時に彼女の場所にあったオーロラと全く同じ形をした氷塊がエネルギーボールに呑まれて砕け散る。

 

同時に何故か自身の能力で風圧を受けているはずのムーンライズがいきなりヒューストムの目の前に現れると彼の技であるエネルギー波をヒューストムの顔面に至近距離からぶっ放す。

 

「な!?」

 

「だぁあああっ!」

 

ヒューストムは想定外のムーンライズからの不意打ちに唖然とするが、エネルギー波を顔面に喰らいながら自慢のパワーと耐久力で無理矢理受けてしまうと鋭い眼光を光らせる。

 

「チッ、やっぱテメェ小細工を!でもその程度もう一度風圧で……」

 

「やあっ!」

 

その瞬間、ヒューストムの頭の真上からオーロラがドロップキックを叩き込むと不意打ちで脳天を突かれたからか、僅かに脳震盪を起こしてしまう。

 

どうやらヒューストムも人間の姿をしているだけあって普通の人間と同じく脳をいきなり揺らされれば意識を一瞬飛ばすらしい。

 

「バタフライ!守りの力!」

 

「ッ、オッケー!守りの力、アゲてこ!」

 

「バタフライの守りはこれで!」

 

するとヒューストムが意識を途絶えさせたからか、プリキュア達にかかっていた風圧が消え去ると彼女達の動きが自由になる。そのタイミングですかさずバタフライは自分以外の全員に対してミックスパレットの守りの力を発動。

 

同時にオーロラは自らのバリア能力バタフライの体をコーティングするように使用し、彼女の体全体をミントグリーンのオーラのような物で包み込む。

 

「ぐ……クソがテメェら。よくもこの俺を……本気で死にたいらしいな!だったらもう一度跪け!!」

 

全員にバリアが展開した直後、意識が戻ったヒューストムはもう一度プリキュア達に風圧による行動抑制をかけようとする。

 

「ッ!?」

 

「しまっ……あれ?」

 

それを受けてスカイ、プリズム、ウィング、アルテミスの4人はヒューストムからの風圧がもう一度自分達を襲うと考えて慌てて構えてしまう。しかし、幾ら待ってもその風圧はやって来ず。

 

「馬鹿な……跪け!跪けよ!!」

 

「あなたなんかの命令なんて聞かないよ。その攻撃はもう私達には通用しないから!」

 

「何だと!?」

 

ヒューストムが自分の能力が効かなくなって混乱しているとオーロラがそんな彼に話しかける。

 

「バタフライの使った守りの力、それは特殊能力から私達の体を保護する。もうどれだけあなたの風の能力を使っても私達の動きは制限できないって事!」

 

「なあっ!?」

 

ヒューストムは完全に失念していた。以前信号機ランボーグの停止能力をプリキュア達はこの守りの力で打開したという事実を。そして、それはヒューストムの風の力に対しても有効なのだと。

 

だからオーロラは瞬間移動、氷雪拳の氷ノ型で作り出した自身の身代わり、雪ノ型で作った残像。そしてそれらで時間稼ぎした間にムーンライズの背後に移動して彼をヒューストムの目の前に瞬間移動させた。

 

「俺もオーロラなら上手くやってくれるって信じてた。だから作戦を知らないフリをするために全力でオーロラの事を止めたし、あの時迷いなく全力でぶっ放したんだ」

 

「なるほどね、俺も今のオーロラがいきなり自己犠牲をするなんて何となく変だなって思ったけど……2人の間では話が済んでたんだ」

 

「アポロンも気がつくのが早い辺り、流石似たような作戦をやっただけあるね」

 

「あはは……」

 

オーロラとムーンライズの種明かしに納得するアポロン。そのアポロンから先程似たような作戦を提案されて頼られたバタフライはオーロラから声をかけられた時点で彼女もまたここまでが2人の作戦だと気がついたようだった。

 

ただ、それ以外の4人はまた自分達そっちのけで作戦を立てた2人にムッとした顔を向ける。

 

「もう!バタフライやアポロンだけじゃなくてお二人もですか!」

 

「そうだよ!事前に言ってくれてたらあんなに焦らなかったのに!」

 

「悪い悪いって!もし言ってたら勘の良いヒューストムにバレると思って……だろ?オーロラ」

 

「う、うん……特にスカイとかアルテミス辺りはそういう嘘とかあんまり吐けないだろうし……」

 

「ああっ!?オーロラまで……ガクッ……」

 

「あはは……そういう事ね」

 

スカイは色々違う意味でオーロラに信頼された事にガックリと項垂れるとアルテミスは苦笑い。どちらにせよ、これでヒューストムに動きを縛られる事は無くなった。後は全員で倒すだけである。

 

「ヒューストム。お前の小汚い策も封じたし、そろそろ覚悟してもらおうか!」

 

「うん、これで決着を着けるよ!」

 

「ほざけ!もうキレたぞテメェら!俺様の全力で……叩きのめしてやる!」

 

その瞬間、ヒューストムはプリキュア達を封じるために使っていた風のエネルギーを全て取り込むともう一度両手を真上に掲げる。それによって電撃を纏った強力な風のエネルギーボールを生成。それが彼の怒りに合わせてどんどん巨大化するのだった。




また次回もお楽しみに。
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