ヒューストムの小細工を破り、とうとう彼を追い込んだオーロラ達。そして、追い込まれたヒューストムは両手を真上に掲げると電撃を纏った巨大な風のエネルギーボールとなる。
恐らくこれをプリキュアに叩き込む事で一撃で倒すつもりなのだろう。彼もまたここまで来たらなりふり構っていられないらしい。
「ッ、凄いパワーですよ。あのエネルギーボール!!」
「流石にアレを止めるのは難しいかも」
「ええ、しかもどんどん大きくなってます!」
ヒューストムは自らの体内に存在し、溢れ出すエネルギーを全て注ぎ込むとプリキュア達を全員纏めて。尚且つ最悪殺すのも厭わないつもりで放とうとしていた。
「恐らく、アイツは全力の一撃を俺達にぶつけるつもりなんだ。それこそ、本当に殺すつもりで」
「あははっ、その通り。お前達の努力なんて俺の力の前では無力で無価値なんだ。特にユキ、お前は小細工を使って俺を怒らせた!俺の妾として俺の言いなりの奴隷になっていれば命だけは助かったものを。お前は余計な事をして俺を怒らせたんだ!」
ヒューストムはいつものように自分の思い通りに行かない事に対する不満や怒りをぶつけまくる。それはまるで駄々を捏ねる子供のようにも思えた。
しかし、だからと言ってこの状況は決して楽観視できるものでは無い。何しろ、これまでずっと力を解放する度にプリキュア達を窮地に追い込んできたヒューストムの文字通りの全力である。これをまともに受けてしまえば敗北は免れない上にここまでの戦いが水泡に帰してしまう。
「ムーンライズ」
「どうした?オーロラ」
「ヒューストムとの決着。私とムーンライズの2人で着けたい」
「ッ、まさか2人で行くって事ですか?」
スカイ達はたった2人でヒューストムとの決着を着けると聞いて不安そうな視線を向ける。……当然だろう。今のヒューストムはその力を全て解放し、尚且つプリキュアを絶対に仕留めるつもりで攻撃を準備している。
中途半端な技では返り討ちに遭う上にそうなれば全員纏めてやられてしまう。あのエネルギーボールのサイズからも避けるという選択肢は現実的では無い。
「皆、我儘かもしれないけど。ヒューストムは私のせいであんな風に歪んでしまったんだ。だから、ちゃんと決着を着けたいの」
「俺もだ。アイツはユキに受け入れられなかった事で逆恨みしてユキを今でずっと傷つけてきたんだ。俺は今のユキの彼氏として、ユキと一緒に責任を持って俺達が倒す」
2人はヒューストムとの因縁の決着は自分達が着けないといけない。一見ヒューストムに対する舐めプにも思えるが、それでも2人は最後の一撃は自分達の力で決めないとダメだと思っていた。
「ッ……決意は固そうだね」
「はい……これだけは絶対に譲れません」
「わかった。アルテミス、俺達は2人のサポートをしよう。少しでも2人を強化するんだ」
「アポロン……うん!」
2人の決意や意思が固い事を理解したアポロンはせめて2人の事をできる限り強化しようと考えた。2人が最後の一撃を放つ際に押し負けてしまわないように。
「私もミックスパレットで2人を強化する。それなら行けるはずだから」
「バタフライ……ありがとう!」
それから2人がヒューストムの方を向こうとした時。スカイ達が声をかけた。
「オーロラ、ヒューストムは身勝手な理由であなたの人生をメチャクチャにしてしまいました。やはり恨んでいますか?」
「うーん、きっとヒューストムを恨む気持ちも多分ある。でも、あの事件があったから最終的に皆と会う事ができた。ムーンライズと恋人になる事ができたの。だから、私は恨むとか後悔とか……今はその気持ちばかりじゃないよ」
スカイはオーロラが微笑みながら答えを返してくれた事に彼女は決して無理をして取り繕っているわけでは無いのだと察するとこの出会いが彼女を大きく変えたのだと考える。
良い意味でも、悪い意味でも。それでも今はユキがその運命を受け入れて前を向こうとしてくれる所にソラの瞳から涙が溢れ出す。それは姉妹のような関係性としてずっと過ごしてきたスカイの胸の中の想いだった。
「ユキさん……立派になりましたね」
「ムーンライズ」
「プリズム、どうした?」
オーロラとスカイが会話を交わすのと同じタイミング。プリズムもまた姉弟のように同じ時を過ごしたムーンライズに話しかけた。
「ムーンライズは今、幸せ?」
「……ああ。少なくとも、オーロラと出会う前よりもずっと幸せだ」
プリズムの問いにムーンライズも微笑みながら答えを返す。彼もまた、オーロラとの出会いで人生が大きく狂った者の1人だ。そして少し前まで彼は心を闇に支配されてしまっており、プリズムはその事を心配していた。
「心配しなくても、俺は大丈夫だ。確かに闇に支配された時はオーロラに嫌われるって思って怖かったけど……オーロラがそれをキッカケに自分を成長させて俺を助けてくれた。だから、きっともう俺はオーロラ……ユキ無しの世界なんてあり得ないくらい幸せ者だと思える」
「そっか……。じゃあ、ユキちゃんともっと一緒にいるためにも絶対負けちゃダメだからね」
ムーンライズはプリズムの言葉に頷くとサムズアップする。そんな中でヒューストムはチャージを完了したのかまるで○リーザの○スボールとも言えるような凄まじい闇のエネルギーボールが完成。その状態のまま空中に飛び上がる。これは自分の攻撃での巻き込まれを危惧したようだ。
「お喋りは終わりだ。これで全部砕け散れ……!」
「私達は絶対に終わらないよ!」
「俺達は自分達の未来を自分達の手で……」
「「掴んでみせる!」」
2人の言葉と共にアポロンとアルテミスは変身アイテムであるツインチェンジライトを捻るとライトに光を宿す。
「月の力!」
「光の力!」
「「ファンタジーパワー!」」
それによって該当する力が高められた2人からはそれぞれ黄色とミントグリーンの光が飛び出す。それらはムーンライズ、オーロラの腕に集まると光はシャイニングブレスへと変化。これにより、ブレスを装着したムーンライズとオーロラの2人は合体技を発動させる。
「輝け、月の力!」
「煌めけ、光の力!」
「「集まれ!二つの幻想の力達よ!」」
2人は掛け声と共に光の球体となると宙へと浮かび上がり、天高く舞い上がりつつヒューストムに突進し始める。
「「プリキュア!ファンタジーパワー・クレシェンド!」」
そのまま2つの光は合体しながらヒューストムに近づいていく。そしてその際に2人の纏うエネルギーは徐々に増幅されて力を増す。
これはこの技の特性として飛距離が伸びれば伸びる程に力が増すという物があるからだろう。
「二つの色を一つに!レッド!ホワイト!元気の力、アゲてこ!」
バタフライの掛け声と共にピンクの光が2人を包み込むと技の力が更に強化。飛距離が少なくても最大値並みの力が出せるようになった。
「ふん、それで終わりか。ならば砕け散れクズどもが!」
一方のヒューストムはわざとプリキュア側が全力を出せる状況を待っており、その状況が完成すると全力を持って叩き潰すつもりである。そして、2人が仲間の力を束ねて向かってくるのを見て自身の一撃を振り下ろした。
そのまま巨大なエネルギーボールと2人の浄化技はぶつかり合い、凄まじい量の火花を散らす。
「「はぁあああああ!」」
オーロラもムーンライズもこの一撃が通用しなかったらその時点でほぼ負けである事をわかっていた。そのため、どうにかヒューストムを押し切ろうと全力で力を出し切ろうとする。
だが、ヒューストムはそんな2人の抵抗に邪悪な笑みを浮かべた。それはまるで、彼が全くもって本気を出していないかのように。
「ふふっ、確かにお前らの全力を尽くす姿勢と気迫は感じる。だがな?そんな程度で俺に勝てると思うな!!」
その瞬間、ヒューストムが更に力を込めると一瞬にして2人は押し込まれ始めてしまう。
「「ッ!?」」
「う、嘘……まだ本気じゃなかったの」
「このままでは……」
「あははっ!2人に加勢するなら今だぞ?ゴミ虫共。押し切られて負けちまう前によ!」
ヒューストムは2人の決意をへし折った上で尚且つプリキュア側を全滅させるつもりで攻撃を出している所があった。そのため、このまま行けば他のプリキュアが焦れて2人を助けると考える。
そうなれば2人のメンツは丸潰れ。しかもその上でプリキュアを全員纏めて叩き潰せばそれだけで自分は最高の勝利を掴み取れるわけだ。
「くううっ……まだ……負けられない」
「俺達は、終わってなんか無い!」
一方で技が押され気味になっているオーロラとムーンライズの方は必死に持ち堪えながらも自分達は戦える姿勢を示していた。
「……皆さん、お二人ならきっと大丈夫です」
ただ、ヒューストムの予想に反してスカイが2人を信じる姿勢を示すと他の5人も技を使って助ける様子は見られない。
「ほーう。わざわざ仲間を見殺しにしたかぁ。ならその選択を後悔しながら消えろ!」
ヒューストムはそう言いつつ更に力を強める。ただ、それでも少し後ろに押し込まれながらも未だに2人は耐えていた。
「まだ……負けられない」
「俺達は、俺達はここで終われないんだ!」
すると2人の体からオーラのような力が溢れ出すと2人の力が増幅される。それを見てヒューストムは目を見開く。
「ッ……何?まさか、まだ力を残してたか。だが!」
ヒューストムは少し押し返されたものの、未だに優勢を維持しているために余裕そうである。そんな時、ウィングは何かに気がつくとその手にミックスパレットを呼び出した。
「ッ、そうか!」
「ウィング、どうしたの?」
「恐らく、お二人の中にはまだ沢山力が残っているんです。でも、それを使えるだけの体力が無いので使えずに止まってて。だからミックスパレットで回復させます」
ウィングはすかさずスカイトーンをパレットに装填すると筆を使って色を選択して混ぜる。
「二つの色を一つに!イエロー!ブルー!癒しの力、アゲてこ!」
それによって2人の体力が復活。これにより、2人は眠っていた更なる力を解放できるようになった。
「ッ、体力が戻った!」
「良し、これなら行ける!」
「「はぁあああああああ!」」
すると2人の黄色とミントグリーンのオーラが先程までよりも明らかに強くなると一気にその力を解放。ヒューストムは2人の攻撃が自分の攻撃を押し返し始めた現状に狼狽える。
「なぁ!?何故だ、もう力は残ってないはずなのに……あとちょっとでこんな奴ら潰せるのに!!」
ヒューストムが動揺していると2人の中にいる先代のプリキュアのキュアルーセントムーンとキュアライトピラーは自らの内部に秘められた力を2人に分け与える形でサポートするのが幻影として見えた。
『『はぁあああ!!』』
「あれはルーセントムーンにライトピラー!?」
「もしかして、2人があそこまでパワーアップしてるのは」
「ええ、間違いなく先代のお二人が力を貸してるからでしょう」
先代プリキュアの力によって飛躍的にパワーアップする2人。しかし、このパワーアップには大きなリスクを伴う。それが……。
「でも、このままじゃまた前みたいに」
「下手をするとまたお二人が変身できなくなるんじゃ」
2人のプリキュアの力の源は先代プリキュアに依存している所がある。そのため、先代プリキュアが何らかの理由で力を失えば当然2人も力を失ってしまうわけだ。
そして、このままではその時と同じ事が起きてしまう。その証拠にルーセントムーンとライトピラーは薄らと消え始めてしまっていた。
『ルーセントムーン……覚悟は良い?』
『えぇ、私はお二人に救われました。だから、私の力尽きてでもお二人の力に』
ムーンライズとオーロラは2人がバーニングサンやブリザードみたいに自らの力を犠牲にしてでもヒューストムを倒すための力になろうとしている事を感じるが、この自己犠牲を止めさせてしまうとヒューストム相手に勝てなくなる。
そのため、このままでは仮にヒューストムに勝ててもまた先代プリキュアの2人が力を失ってしまうだろう。
「どうすれば……」
「それでも、俺達は……!」
2人は先代プリキュアを失ってでもヒューストムを倒す覚悟を固めようとする。だが、そんな時。突如として2人の体から赤と白のオーラが追加で発生。そして……2人の精神世界。先代プリキュアのいる空間にもある奇跡が起きていた。
『例えこの命を投げ捨ててでも』
『あの2人に笑顔になってもらうために……!』
『……そんなの、絶対にダメよ』
『そうそう。自己犠牲なんて、悲しみしか生まないわ』
『『ッ!?』』
その瞬間、ルーセントムーンの隣には一つの赤い炎の魂が。ライトピラーの隣には一つの白い雪の結晶をした魂が姿を現す。そして、その魂も2人を助ける形で力を貸すとルーセントムーンとライトピラーは消滅を免れつつその上で2人の力を更に強くした。
「オーロラ!」
「うん!決めるよ!」
「「はぁあああああっ!」」
同時にオーロラとムーンライズは自分達の力が高まるのを感じると今しか無いとばかりに全力で突撃。そのままヒューストムのエネルギーボールの中に押し入る形で突入するとそのエネルギーボールは一瞬にして大量のキラキラエナジーとして変化する。
「な!?う、嘘だろ……こんな、馬鹿な事が!?」
ヒューストムは自分の切り札かつ本気も本気のエネルギーボールが打ち破られた事に動揺すると慌ててしまう。しかし、もうこうなるとヒューストムにどうにかする手立てなんてものは無い。
ヒューストムの全力の一撃を粉砕したオーロラとムーンライズはそよ勢いのまま、魔神と化したヒューストムの胸の辺りに激突してその体を貫く。
「「はぁあああああああっ!」」
「ぐはああっ!?」
2人がヒューストムの体を貫くと同時に彼の体が巨大な星マークに包まれるとその体が一気に浄化。どんどん消失していく。
「馬鹿な何故だ……俺は全てを手に入れられるのに、全てを手に入れられるはずなのにぃいいいっ!ちくしょおおおおっ!」
ヒューストムは最後の一撃に体内の殆どのアンダーグエナジーを消化したからか。2人の技から自身の体を守れるだけのエネルギーは残っておらず。
また、普段の数倍は強いであろう2人からの一撃を受けて彼の体は完全に消え去ってしまうのだった。
「す、スミキッタァァアアアア!!」
その声は普段のランボーグの浄化の声よりもプリキュアに向けた屈辱や怒りの混じったものであり、同時にヒューストムの魂も跡形も無く粉砕されてしまうのだった。
また次回もお楽しみに。