熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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雷に巻き込まれた太陽の窮地

戦いに決着が着き、満天の星が煌めく夜空の下。虹ヶ丘家でソラが決意を新たにした時。突如としてひかるが帰還するとアサヒを押し潰してしまう。

 

その後、そんな彼を伴ってユキ達一同は虹ヶ丘家へと戻ると居間で事情を聞く事になった。

 

「そっか、もうアサヒは大丈夫なんだな」

 

「おかげさまでユキに助けてもらったからな」

 

「ッ……私は当然の事をしただけで……」

 

ユキはアサヒに言われたのが恥ずかしいのか、少し頬を赤くしてしまうとそのアサヒが彼女の頭を撫でる。

 

「本当に強くなったよ、ユキは」

 

「うん……ありがと」

 

「……相変わらずのお熱い2人だな」

 

ひかるはアサヒが復帰した途端に2人でいつものイチャイチャを見せつけてくるのに苦笑いを浮かべるとソラがましろへとそっと話しかけた。

 

「……先程からずっと思ってたんですけど、何だかアサヒ君が戻ってきてからアサヒ君がユキさんと接する時にリラックスしてませんか?」

 

「ソラちゃんもそう思う?実は私もなんだよね」

 

アサヒが闇堕ちしてしまう前。つまりカゲロウが表面化する前の頃も確かにユキとアサヒの恋人としての仲は良すぎるほどに良好だった。ただ、今の2人のやり取りの際にアサヒが何の躊躇も無くユキの頭を撫でたという時点で前までと違う点ができている。

 

「前まではアサヒの方からユキちゃんの体を触るのには躊躇があったんだよね。多分ユキちゃんに嫌われたく無いって気持ちでセーブしてたんだと思う」

 

「なるほど、今回の件でユキさんの方がアサヒ君を強く信じて任せるようになったから……」

 

要するに、不十分だったユキからアサヒに対しての信頼が今回の件で補完された結果……アサヒはユキの気持ちをより理解できるようになった。その上でユキがどのくらいまでのラインならセーフでどこから先がユキの嫌がる一線を超える事になるのかをアサヒが前以上に把握しやすくなったわけである。

 

「うう……私もツバサとあんな風に……」

 

「ふふっ、ヒョウちゃんならきっと大丈夫よ」

 

「ッ!?あ、あげはさ……」

 

ヒョウは以前にも増して仲睦まじい夫婦のようなやり取りをするユキとアサヒに羨ましさを感じてしまうとそんな彼女をあげはがそっとフォロー。それはさておき、かけるがひかるへと改めて問いかけた。

 

「じゃあ、そろそろひかる君の方の現状報告を聞いても良いかな?」

 

「あ、ああ。向こうの世界であった事だな」

 

それからひかるはらんこのいる世界で何があったのかを説明。大まかに言うとらんこを乗っ取っていた諸悪の根源であるヘルメットを破壊。その中に巣食っていたパラサイアと呼ばれる者を倒した事を聞く。

 

「ヘルメットが自律して意思持ってるとか恐怖でしか無いんだけどそれ」

 

「待って、という事はキメラングはそのパラサイアとキメラング自身。2人分の脳みそがあったからあんなにも精密かつ効果の強い発明をしまくってたって事?」

 

「でもヘルメットが壊れてそのパラサイア?って奴がいなくなったのなら敵は大幅戦力ダウンだよね!」

 

ひかるからの話を聞いてキメラングのヘルメットが壊れ、尚且つその中身が倒されたのであればキメラングにとって大きな痛手だという事でユキ達は嬉しそうにする。

 

「まぁ。一応油断は禁物だと思うけど、らんこさんが戻ってきたのならそれだけでも良かったよ」

 

「………」

 

するとひかるはらんこが帰ってきたという話題を聞いても何故か考え事をしているのかボーッとしたような感じだった。

 

「それとひかる君。そちらの世界のシャララ隊長も大丈夫だったんですよね?」

 

「………」

 

「ひかる君?」

 

「へ?あ、ああ。シャララ隊長も無事だったよ。何なら前に話した巨大な鳥もワシオーンだった。……ただ、そのワシオーンはどこかに吹っ飛ばされたきりどこ行ったかわからない状態になったけど」

 

その話を聞いてひかる達は確かにキメラング達アンダーグ帝国陣営に対して勝利を収め、尚且つ洗脳されていたらんこやシャララ隊長を救い出す事には成功したのだが……今度はワシオーンが行方不明になるという完全勝利とは言えないものだった事を認識する。

 

「そっか……」

 

「ワシオーンはシャララ隊長の相棒とも言うべき存在で、恐らくそっとやちょっとの事では死ぬなんて事にはならないとは思います」

 

「ですが、ただでさえこの世界ではあれだけ大きな図体をした鷲は目立ちますよ。しかもワシオーンにとってこちらの世界は知らない土地で。不慣れな所も多いはずなので可能なら早めに見つけたい所なのかなと」

 

ソラは青の護衛隊に一時的に入った事でワシオーンの優秀さは実際に見てよく知っている。そのため、そう簡単には倒れない事を言うものの……同じ鳥として先祖が繋がっているツバサはワシオーン当人の視点での考えを話す。彼は特にワシオーンがソラシド市側の世界には慣れてない事を懸念していた。

 

「どっちにしても私達にもどうしようもできないから、後は祈るしかないわ」

 

「そうね。そのワシオーンって子が早く見つかってくれると良いね」

 

ひとまずユキ達の中で話が纏まる事に……ただ、ひかるはこの時点である事をユキ達に伝えていない。それは先程のキメラングのヘルメットの内部にいたパラサイアという存在についてだ。

 

ユキ達の予想ではそのパラサイアとキメラングが二つ分の脳みそとして稼働していた事を示唆していたが、実際は違う。本当の答えはパラサイアがキメラングのヘルメットに宿り、そのヘルメット越しにキメラングを操っていた……という物だ。

 

ユキ達はその部分を誤解して捉えていたのだが、本来ここでそれが違うという事を伝える必要があったひかるはらんこの事で頭がいっぱいのために訂正ができなかったのである。

 

そんな余談はさておき。ユキ達が勝手な解釈を進めている間もひかるはただ1人不安そうな顔を見せたままブツブツと呟いていた。

 

「……おい、ひかる」

 

「大丈夫かな、らんこさん……絶対怒ってるよな……早く謝らないとなのに」

 

そんなひかるを見たアサヒは声をかけるが、ひかるの独り言は収まる様子は無く。それどころかどんどん酷くなっているようにも思えた。

 

「おーい、ひかる」

 

「ブツブツブツブツ……」

 

「はぁ……この馬鹿こっちを見ろって!」

 

アサヒはこのままでは話にならないとしてひかるの頭を無理矢理自分の方に向けるとようやく彼は正気に戻る。

 

「ちょっ、アサヒお前何を……」

 

「それはこっちの台詞だ!さっきからどうしたんだよ」

 

「えっ?」

 

アサヒがひかるへとジト目を送るとユキ達も先程から色々と呟きまくっているひかるを心配そうな目で見ていた。

 

「ねえ、ひかる君。何があったか教えられる?」

 

「ッ……えっと……」

 

かけるはまるで相談に乗る教師のようにひかるの近くに座り直すと優しく話しかける。かけるは保育園のとはいえ先生見習いである事を活かしてひかるの相談に乗ろうとしたのだ。

 

「大丈夫よ。私やここにいる皆が相談に乗るから。ね、皆」

 

「はい、勿論です!」

 

「目の前で友達が困ってるからな。放っておくわけにはいかない」

 

「うん。私達、できる限りの事をするね!」

 

「ひかりゅの悩み、聞く!」

 

そんなかけるに突き動かされるような形であげはも寄り添うとユキ達もその話を聞く事になった。

 

「皆、すまん……じゃあ、お言葉に甘えて話すよ」

 

「おう、ドーンと来い」

 

ひかるはユキ達が自分の悩みを聞いてくれると言うため、1人で抱え込んでしまっていたらんこに関連する話を折角ならここで言ってしまおうと思って話す事にした。

 

「実はな。らんこさんが目の前にいなかったとはいえ、グランさん……いや、アサヒ達にはキメラングの方がわかりやすいか。……アイツのデカい胸をジロジロと見てしまったんだ

 

『……(えっ)(はぁ)?』

 

ユキ達はまさかのひかるがらんこという彼女がいるにも関わらず、他人の大きな胸に目が行ってしまったというとんでもない失態を聞いて脳の処理が追いつかずに思わず聞き返してしまう。

 

「おいひかる、もう一回頼む。聞き間違えかもしれない」

 

「……だから、俺がキメラングのあの胸に見惚れかけたっつーか。アイツの胸を見てそれに釘付けにされちゃったんだよ!」

 

ひかるはもう一度だなんて言いたくなかったが、言わないとユキ達が事実をちゃんと理解できないと考えて仕方なく言う事にした。

 

「「「「そりゃあ(怒りますよ)(怒るよ)(怒るに決まってるでしょ)!!」」」」

 

「うわぁあっ!?」

 

ただ、当然ながらひかるのとんでもない爆弾発言を改めて聞いたソラ、ましろ、ツバサ、ヒョウによる総ツッコミが飛ぶとひかるはその圧に驚いてしまう。

 

「お前なぁ……流石にそれは擁護できないぞ」

 

「ッ、仕方ないだろ。その……デカい胸を見たら思わず見ちゃうだろうし」

 

ひかるはアサヒからもジト目を向けられるとどうにか言い逃れをしようとする。それに対してヒョウはまた声を荒げた。

 

「アンタね、彼女がいるのにそんな所に目が行って。挙げ句の果てに許してもらおうだなんて……アンタの脳みそには花でも植えてんのか!!」

 

「声真似上手っ!?というかその台詞を言うとらんこさんにそっくりな声をした森羅万象にツンデレなあの子を思い浮かべるんだけど!?」

 

ひかるはまさかのらんこと声質が全く同じで恋人に対してツンデレをするために滅茶苦茶な理屈を言う100人の彼女の中の1人の声に似せた言い方をヒョウがするとは思わずに驚いてしまう。

 

「あはは……ひかる君、そんなに落ち込まなくてもちゃんと謝ったららんこちゃんも許して……」

 

「それが無理なんだ……」

 

「へ?」

 

ユキはらんこの事なので誠心誠意謝ればひかるのやらかしの事も許してくれる。そう言おうとしたのだが、ユキの言葉は途中で遮られるような形で否定されてしまう。彼女はひかるの言葉に思わずキョトンとしてしまうとひかるは頭を抱えた状態で絶望的な現実を告げる。

 

「らんこさん、俺が謝ろうとしても凄い怒気?殺気?みたいなのをガンガン向けてきて……何ならダークツイスターっていうアンダーグエナジー全開の姿で俺の事を襲おうとしてくるんだよ。だからあんならんこさんに謝るなんて無理無理。謝った瞬間に殺される」

 

「殺されるって、大袈裟な事言うなぁ……」

 

ひかるは完全にダークツイスターと呼ばれる漆黒のキュアツイスターに恐怖を覚えてしまっており、このままでは謝るどころからんこの世界に行く事さえも怖くてできないだろう。

 

「(そういや、さっきはついひかるの事を言っちゃったけど……よくよく考えればキメラングの野郎は妙にスタイルが良いというか胸がデカいんだよな……)」

 

するとアサヒはそんな中で先程からひかるの言っている事にもよくよく考えてみれば一理あるのではないのかと感じ始める。何しろ、キメラングの胸は女性の中でも凄まじいと言えるレベルで大きい。それこそ、自分の彼女であるユキやこの中では一番胸のあるあげはよりもだ。

 

そして、自分も以前そんなキメラングの胸に魅了されかけた事もあった。そんな事情もあってひかるの意見にも同情の余地があると考えてしまう。

 

「な、なぁ、ひかる」

 

「何だ?アサヒ」

 

「そういや、よくよく考えたらキメラングのあの胸って結構大きいよな?」

 

「何言ってるんだ。あんな胸、大きい以外の何がある」

 

「だよな……」

 

アサヒはひかるへと確認するようにそう問いかけてからひかるにも同意の言葉を受ける。それから少し考えるとアサヒはある決断を固めた。

 

「ひかる。さっきまでお前を責めて悪かった。よくよく考えたらあんなデカくて魅力的なサイズ感、ジロジロ見ない方が無理だ。というか、前に一回俺も意識がそっちに行ってたわ」

 

「だろ?あんな胸を見て凝視しない奴なんかいないだろ!というか、アイツもアイツで反則だろ!俺達の心を壊しに来てるって!」

 

「だよなーっ!」

 

「………」

 

そんな風にアサヒとひかるが2人でキメラングの胸が大きい事に意見が一致。2人は自分達は悪くなんかないと言わんばかりに勝手な持論を展開。そんな2人を見てソラ達は呆れたような顔つきを浮かべていた。

 

このように周囲から呆れられたような目線を向けられたアサヒ達だが、ただ1人。アサヒ達の身勝手な意見を聞いていた少女から少しずつ冷たい空気が2人に向けられており、ソラ達はそれに気がつくと寒気がしてしまう。

 

「ッ……アサヒ君!ひかる君!」

 

「「何ですか、かけるさん」」

 

「ふ、2人共。ユキさんがヤバいよ……」

 

するとかけるは流石にその少女……ユキから2人に向けられた寒気にこれ以上2人だけでの会話をさせるわけにはいかないと思って教え、彼等はユキの方を向く。その瞬間、2人の顔は凍りついてしまった。

 

そして、ユキは目元に影ができて少しだけ目の当たりが暗くなった状態になるとアサヒへと詰め寄っていく。

 

「ねぇ、アサヒ君。アサヒ君は私なんかよりもキメラングの方が良いの?」

 

「えっ、あっ、その……」

 

「苦しかったよね、辛かったよね……私がダメな女だったせいでカゲロウに乗っ取られて」

 

「ゆ、ユキ?」

 

ユキは瞳にハイライトが無い状態の笑顔を向けたままアサヒへと自分よりもキメラングの方が良いのかと問い詰めていく。そしてそれは前までのような自分のダメさに嫌気がさして病んでいるユキに近い物があった。

 

「……私なんかじゃ、アサヒ君は満足できない?私みたいなダメな彼女じゃ物足りない?」

 

「ち、違……そういうわけじゃなくてだな」

 

アサヒの額にはどんどん冷や汗が溢れ出る中、ユキは更に両手を肩に置きつつ顔を近づけると今度は逆に瞳に涙を浮かべながら問い詰める。

 

「私なんかなんてもういらない?アサヒ君にとって私ってその程度?」

 

「ゆ、ユキ。ひとまず落ち着いて……冷たっ!?しれっと前みたいに氷雪拳使ってる!?というか、何でこんなに殺意だけは感じるんだよ!?」

 

ユキの声は弱りきった乙女のような縋るような声色だったが、その声とは裏腹にアサヒへと問答無用で氷雪拳の氷ノ型を発動。

 

しかも、心の奥底からは他の女に目移りした事に対する怒りを込めた殺気が出ており、ユキはアサヒの肩に両手を置いた状態のままその場所を起点にアサヒを凍らせ始めていった。

 

「………」

 

「ゆ、ユキ!頼むって。このままじゃ固まっちゃうだろ!」

 

「……それが何か問題ある?私を見てくれないアサヒ君なんて嫌だから冷凍保存してあげるんだよ。そうしたら記憶を喪失して私の事を刷り込めるかな〜って」

 

「ちょっ、発想が怖すぎるんだが!?」

 

ユキはこの時点でかなり怒っている。何しろ、自分があれだけ苦労して命懸けでカゲロウから助け出した自分の彼氏が助けられて早々に他の女のよりにもよって胸の話をしたのだ。怒らない理由が無い。

 

そしてアサヒはどうにか反論するが、彼女はヤンデレを拗らせたような形で自分の事をアサヒの脳内に刷り込ませるという怖い事まで言い出した。

 

このように大好きな相手のアサヒを問答無用で凍らせる手に出ているユキの様子から彼女のメンタル的に見て今の状況がそろそろ本格的にヤバいと思ったのか。慌てて謝罪した。

 

「ご、ごめんって!今回は俺が悪かった!ユキが命懸けで助けてくれた直後なのに他の女の胸の話題なんてして!」

 

「本当?もう変な事言わない?」

 

「言わない……って言い切れないのが辛いけど言わないようにする!だから許してください。お願いします!」

 

アサヒはユキに凍らされかけ、命を懸けてまで自分を助けようとしてくれた彼女の気持ちを全く考えていなかった先程の発言の数々を謝罪。

 

「……本当?私の事、ちゃんと大事にしてくれる?もういなくならない?」

 

「うん、約束する」

 

アサヒがユキの顔を真っ直ぐ見て答えを返すとようやく彼女の気が済んだのか。凍りかけていたアサヒの体は元の状態に戻ることになる。

 

「約束だからね?……私もアサヒ君が大好きでいてくれる私になるから」

 

ユキとアサヒはユキが怖い発想をする程にアサヒへの怒りを募らせていたが、ギリギリ謝った事でどうにか和解に成功。その様子を見せられたひかるは唖然とした顔つきになっていた。

 

「ゆ、ユキさんって意外と怒らせたら怖いんだな」

 

「ほんと、誰かさんが変に焚き付けるから」

 

「うっ……」

 

「ひかる君、今のを見て分かったと思うけど次からはもう少しらんこちゃんの事を考えてあげよ?」

 

「ああ……そうする」

 

ひかるはアサヒへと下手に今回の話題を振ってしまった事を後悔するともう二度と変な話題は振らないようにしようと決意することに。

 

また、ひとまずはユキとアサヒの双方が落ち着くのを待ってから次の話題に移る事に決定。これにより、一時休憩を行う事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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