熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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渡される仲直りのための鍵

らんこの逆鱗に触れてしまったひかるを助けるべくどうすれば彼女の機嫌を直せるか考えるユキ達。色々と手は考えたものの、最終的にらんこが大好きなアイドルであるうらら若しくはまこぴーのグッズか何かがあれば良いという答えに落ち着く。

 

しかし、そんなレアアイテムを都合良く持っているなんて事は無く。最早打つ手無しかと思われた。そんな時、ユキがアサヒへと促すと彼は自室に戻っていく。

 

「アサヒ君……うららさんか真琴さんかどちらかのグッズを持ってたりするの?」

 

「でも、アサヒってそんな言う程のアイドルオタクじゃなかった覚えがあるけど」

 

かけるとあげははアサヒがらんこのような重度なアイドルオタクでは無かった事を頭に思い浮かべるとこのタイミングで何を持ってくるのかが気になった。

 

「ヒョウは何か知ってます?」

 

「ううん。流石にわからないわ。それに、あの2人に接触する機会なんて……」

 

ツバサやヒョウのプニバード族2人組もアサヒはらんこが大好きな2人の人気アイドルのグッズなんて都合良く持ってなどいない事について言及。そもそも彼女達と会う事すらレアだという話になっていた。

 

「うららさん……ああっ!」

 

「そうだ……そうだよっ!」

 

ただ、このタイミングでソラやましろは何かを思い出したのか。いきなり声を上げるとそれを聞いて思わずツバサ達4人は彼女達の方を向く。

 

「この感じだと2人も思い出したね。……私達、前にうららさんと直接会ってたって事」

 

「……は?待て待て待て待て!?そんな事あるのか!?だって、あの人は有名なアイドルだぞ?」

 

ひかるはまさかユキ達が既にうららと会っているという事実を聞いて困惑。その話が初耳だったのもあって思わず体を乗り出しつつ抗議する。

 

「え、えっとね……私達がらんこちゃんと初めて出会う前日……だったかな。ソラシドモールでうららちゃんと偶々出会ったんだよね」

 

「そうなんですよ。本当に偶々出会えたんです」

 

ソラやましろはひかるからの問い詰めに対してあくまで偶々出会った事を強調する形でどうにか乗り切ろうとする。

 

実際ユキ達4人が超人気の有名人であるうららと出会ったのは偶々だったが……その後に襲ってきたダークネスの事を考えるともし仮に最初の出会いが無かったとしても最終的にはユキ達4人とうららが出会う運命は変わらなかっただろう。

 

「おーい。例の物、あったぞ……」

 

「アサヒお前!何でうららさんと会ったのを黙ってたんだよ!」

 

「へ?」

 

アサヒは部屋からある物を取ってきた上で戻ってきた。ただ、その際に事情を聞いたひかるは彼を見た瞬間に慌てて詰め寄る。

 

「うららさんと会ったんだって?何で俺からんこさんにその事を言わなかったんだよ」

 

「あー……えっとな。多分それを言ったららんこさんの逆鱗に触れるかもって思ってさ」

 

「逆鱗って……でも言われてみたら確かにそうか」

 

「だろ?」

 

ひかるからの質問に対してアサヒはらんこに対して言わなかった理由をらんこの逆鱗に触れないためと説明すると彼は割とあっさりと理解した。

 

「納得早っ!?」

 

「でも、私もアサヒと同意見かな。前に話を聞いたんだけど、らんこちゃんって物凄く運が悪いらしくて」

 

「具体的には推しのアイドルであるうららさんやまこぴーさんのライブチケットだよね。アレをゲットしたくてかなりの数の抽選に応募したらしいんだが……結果は全部惨敗したんだと」

 

『うわぁ……』

 

らんこは兎に角運が悪い。実際、彼女はうららとまこぴーを合わせて80回以上もコンサートチケットの抽選に応募したのだが……その応募は全て落選。その度に彼女は落胆の声を上げていた。

 

ここまで運が悪いとそこに何かの作為のような物を感じそうな物ではあるが、そのくらい他人よりも運の偏りが極端に不幸へと寄っている。

 

「言われてみれば確かにらんこさんの運って悪い方ですけど」

 

「でも、幾らうららさんや真琴さんが人気だからって2人のチケットがずっと当たらないのは不憫だよね……」

 

「ああ……。でもそのくらいらんこさんの運の悪さは際立ってるんだ。だかららんこさんがチケットの抽選に参加しても当たっているイメージが無くてな」

 

どちらにせよ、らんこは自分の運の悪さを気にしている節がある。そして、その様子だと恐らくうららや真琴ことまこぴーとは一度も出会った事が無いだろう。そして、その状態でユキ達4人がらんこへとうららと会った事を自慢げに話せばどうなるのか……。

 

「確かに下手に言うのは危険かもしれない……」

 

「少なくとも機嫌の良い時じゃないと受け入れてくれなさそうだよね」

 

「特にひかるさんは結構口が軽い方だよね?多分ソラさんよりはマシだと思いますけど」

 

「ちょっ、ヒョウさん!?」

 

しれっとヒョウの毒舌の被害者となったソラは“ガーン”という効果音が鳴りそうなくらいに唖然としてしまう。

 

「ああ……特に有頂天になってる時とかつい言っちゃいそうだな」

 

ひかるはヒョウからの質問に肯定すると彼は早速彼女のらんことの時間をシミュレーション。するとその話を言った瞬間に彼女の逆鱗に触れてしまうという状況があっさりと脳内で予想できてしまったようで。

 

「まぁ、確かにあり得る話ですね」

 

「う、うん……。そうなった時にらんこちゃんが可哀想だもんね」

 

「という事は、その2人の件はらんこさんの前ではあまり言わない方が良いかも。それこそ前のひかる君みたいにプレゼントの際の事情説明の時にちょこっと言うだけの方が安全かな」

 

ひとまずはツバサやあげは、事情を知らない組が今の会話に納得するとその話は一旦終わりとなり。ようやく本題のアサヒが用意したその切り札の話へと変わる。

 

「それで、アサヒ。お前は何を持ってきたんだ?話の流れだと春日うららさんに関連する物……だよな?」

 

「ああ、これな。お前の予想通り、俺達がうららさんと会った時に彼女に頼んで書いてもらった物だ」

 

それからアサヒは手にしていた物をユキ達が囲んでいる虹ヶ丘家の居間のテーブルの上に置く。そこにあったのは春日うららの直筆が入ったサイン色紙だった。

 

「おお……確かにこれなら……」

 

そう言ってひかるは無造作に手を出そうとするとアサヒがそれを引っ叩く。

 

「えいっ!」

 

「痛ああっ!?あ、アサヒ!?」

 

「話はまだ終わってねぇよ。それに、渡すとも言ってないのに勝手に取ろうとするな」

 

「ええっ!?」

 

ひかるはいきなりアサヒに手を叩かれて痛みに悶えているとアサヒはまだ譲渡の意思を示してないのに勝手に取ろうとしたひかるを戒める。それから彼は改めて話を進めた。

 

「……正直、今の段階でこれをお前に渡すのはちょっと気が引ける」

 

「何でだよ」

 

「何でだろうな?らんこさんって性格的には結構チョロい所があるとは言っても、結構状況ごとで感情がコロコロ入れ替わりがちなんだ」

 

「そんなの、俺が一番よく知ってるよ」

 

アサヒの言葉に対して今更何を言っていると言わんばかりにひかるは反論。この場の誰よりもらんこを知っているひかるらしい言葉ではあるが、だからこそアサヒは物申したかった。

 

「もし仮にこれをらんこさんに渡して彼女を喜ばせたとして。……その直後にお前が余計な事を言わない保証がねーんだよ」

 

「ッ!?余計な事って何だよ。俺は別に余計な事なんて……」

 

『いや、言ってなかったらそもそもこうなってない(んですよ)(んだよね)(でしょうね)(かな)』

 

「うぐっ!?」

 

ひかるは自分が余計な事なんてらんこに言ってないと反論したのに対し、その場の全員でひかるへと総ツッコミを入れると彼はあまりのダメージに胸の痛みを感じる。

 

「で、話を戻すけど。このサイン色紙はお前も察しの通り、激レア物だ。それをお前に渡すのは良いけどそれを更にらんこさんに渡したとてその直後にらんこさんを怒らせるような事態になったらこの切り札を使う意味が皆無なんだ。それどころか俺達からしてみれば大損だって事ぐらいはわかるよな?」

 

「あ、ああ……」

 

アサヒの言う通り、このサイン色紙を使えばほぼ確実にらんこの機嫌を直せるだろう。……しかし、らんこはまるで野良猫のように気分が移ろいやすい。つまり、感情の起伏がかなり急で激しいのだ。なので、ひかるが対応を誤ればこのサイン色紙を使う効果が極端に薄まってしまうのである。

 

「だからこれを使って機嫌を直すからには最低でも1ヶ月は彼女の機嫌を損ねるな。そのくらい大事な切り札だと思って扱ってほしい」

 

「1ヶ月……」

 

1ヶ月と言えば結構短いと思う人もいるかもしれないが、らんこと付き合う上で1ヶ月間ずっと彼女がご機嫌でいつづけるなんて事はほぼ無い。むしろ、この1ヶ月の間にもらんこの感情は凄まじい乱高下をするだろう。

 

そのため、せめてひかる周りの気持ちだけは上機嫌のままでいてほしいのである。少なくとも、ひかるがらんこの機嫌を直しに行って帰ってきた際にらんこをまた怒らせましたなんて報告は聞きたく無いのだ。

 

「ひかる、約束しろ。これを使わずに解決できるのならそれをしてほしい事。それと、これを使うからには1ヶ月はらんこさんと仲違いをしない事を」

 

「1ヶ月……できるかな……」

 

ひかるはアサヒから言われた条件に迷いを生じさせる。確かにアサヒの言う事も理解できる。折角激レアなアイドルのサイン色紙を渡したのにらんこをまた怒らせましたではまるで無意味であるという事も。

 

ただ、ひかるはこれまで自分の欲を露わにしたせいでらんこを怒らせた事が何度かある。そして、らんこの気持ちの乱高下を考えたら1ヶ月もの間……彼女の怒りを買わずにいられるかと言えば自信が無いのだ。

 

「……ひかる君」

 

「ユキさん?」

 

すると、迷っているひかるの元にユキがそっと話しかける。それを聞いて彼はユキの方を向いた。

 

「ひかる君は、らんこちゃんの事が好きで。大切にしたいんだよね?」

 

「ッ……あ、ああ」

 

ユキの問いにひかるは迷う事無く頷くと彼女はそっと優しい微笑みを見せつつ彼を励ます。

 

「それならきっと大丈夫だよ。それにほら。アサヒ君はこう言ってるけど、別にひかる君は絶対にらんこちゃんと喧嘩したらダメって言ってるわけじゃないと思うんだ」

 

「えっ?」

 

ひかるはユキからの言葉に目を丸くする。喧嘩をするなと言ったのに喧嘩をしても良いと言われてもお馬鹿な自分ではまるで理解が追いつかない。

 

「確かにできる限り喧嘩は避けてほしいと思うけど。アサヒ君が言ってるのって今回みたいな事態が何度も発生したら困るって言いたいんだと思う。

 

「そうですね……。私達としても、先程みたいにらんこさんの世界への扉を開いた瞬間に色々呪いの声が聞こえてくるのはちょっと」

 

「私達としてもひかる君とらんこちゃんが喧嘩してたら心配になっちゃうし、今回みたいなサポートなんていつでも出来るわけじゃないから……」

 

ひかるはそれを聞いて頷く。改めて再確認だが、今回アサヒが用意した切り札はそう簡単に代えが効かない物。つまり、何度も同じような物を用意するのはどう足掻いても無理なのだ。

 

「ッ……俺もできるのなららんこさんと喧嘩なんてあんまりしたく無い。だけど、上手くいくかな」

 

「大丈夫。ひかる君がそれだけらんこさんの事を想ってるのならきっと彼女は許してくれるよ」

 

ひかるが珍しく不安そうにしているとかけるがしっかりとフォロー。ユキ達もそんな彼の背中を押すために微笑んだ。

 

「皆……。俺、絶対にらんこさんと仲直りする。アサヒ、頼む……」

 

ひかるは覚悟を決めるとアサヒへと切り札的存在として出してくれたうららのサイン入り色紙を渡すように頼んだ。

 

「……ふぅ、わかった。その代わり、ちゃんと仲直りしてこいよ」

 

「おう!」

 

アサヒの方からサイン入り色紙を受け取ったひかるはニッと笑う。こうして、ひかるもまたらんこと仲直りをするための一歩を踏み出す決意を固めるのだった。

 

「……そういえば。もう夜も遅い時間になりつつあるけど、家に帰らなくても大丈夫?」

 

「……え?ああーっ!?」

 

今現在、時刻は夜の8時を過ぎている。ひかるは時間のあまりの遅さに思わず叫んでしまうと頭を抱えた。このままだと母親から怒られてしまう。しかも翌日は学校である上、仕方ないとはいえこの日は学校をサボる羽目になってしまった。

 

こんなのが親にバレたららんこと仲直りするよりも更に大きな問題となってしまう。ひかるが焦っているとヨヨがやってきた。ただ、腕に抱えていたエルがいない所を見ると彼女は寝てしまったようだが。

 

「それなら大丈夫よ。ひかるさんのご両親には帰るのが遅くなってしまう事を伝えたし、学校の方への根回しも済んでる」

 

「ヨヨさん……!」

 

「用意早っ……」

 

「流石はお婆ちゃんだよね」

 

ユキやましろが苦笑いを浮かべているとひかるは感謝の気持ちでいっぱいになる。そして、ヨヨはミラーパッドを取り出すとトンネルを開いた。

 

「今あなたの家の近くに出口が来るようにトンネルを開いたわ。ここを通れば帰れるわよ」

 

「ッ、すみません。ヨヨさん、ありがとうございます!」

 

それからユキ達はひかると別れると彼はヨヨの開いたトンネルを使って家へと帰っていく事になる。

 

その頃、精神世界では。4人の先代プリキュアが先程のひかるについての話をしていた。

 

「さっきのひかるって子が世界を越えようとした時のアレ、一体何だったのかしらね?」

 

「……推測にはなるけど……あの事じゃないかしら」

 

「ッ、確かにそうかもしれないですね……」

 

バーニングサンの問いにブリザードはある可能性を示唆。そして、ルーセントムーンもそれに頷く。

 

「でも、だとしたらこれ以上世界を越えるのは不味いわね。今のままが継続するとなると……二度とこの世界に戻って来れなくなるわよ?」

 

ライトピラーの言葉に他の3人はどうするべきか迷ったような顔つきを見せる。そして、4人が話したひかるがこの世界に戻れなくなるという彼女達の言葉の意味とは一体……。




また次回もお楽しみに。
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