ユキがショッピングモール内で逸れてしまったのに気がつく数分前。彼女は何かに気がついていたのかその方向へと急いで移動していた。
「うぇええん!パパ、ママ、どこぉ……」
そこにいたのは両親と逸れてしまっていた幼い少女だった。ユキは遠目だったものの、それに気がつくとその事をアサヒ達に相談する事無く急いで助けに行ってしまったのだ。
「ねぇ、パパとママと逸れちゃったの?」
ユキは少女に優しく話しかけると少女は目の前でしゃがんで目線を合わせてくれたユキに気がつく。
「う、うん……ぐすっ」
「大丈夫。私がパパとママの所にまで連れて行ってあげるからね」
ユキはひとまず少女を落ち着かせるために彼女の小さな頭をそっと撫でて安心させる。そんなユキの優しさがあったからか、少女の気持ちも落ち着くとひとまず泣き止んでくれた。
「えっと、パパとママと最後に行っていた場所……覚えてる?」
「さいごにいったばしょ……。えっと、ほん……たくさんあった」
「本が沢山。……そうなると本屋になると思うけど……」
ユキはひとまず偶然にも近くに設置されているショッピングモールの地図を見つけると今自分がいる階の中にそういう場所が無いか探す。
「えっと……あ、これかな」
ユキは慣れないこちらの世界の地図から本屋らしい場所を探すと少女を連れて移動を開始する。
「うぅ……」
「大丈夫……。パパとママはちゃんと待っててくれてるからね」
ユキは不安でいっぱいの少女と手を繋ぐと励ましながら移動。どうにか本屋のあるブースに到着すると不安そうな顔つきの若い男女を見つける。
「「ここな!」」
「パパ、ママ!」
すると、ユキが連れていた少女が若い男女を見ると嬉しそうな声を上げて駆け出す。
「ここな、もう。心配したのよ!」
「ママ、ごめんなさい!」
「良かった……」
少女が母親に抱かれているのを見てユキは安心した顔つきを見せていると少女は両親に話し始める。
「おねえちゃんがいっしょにパパとママをさがしてくれたの」
少女がそう言うと両親と共に三人でユキの元にやってきた。そして、少女の両親はユキへと頭を下げる。
「うちの子を、ここなをありがとうございました」
「い、いえ。当たり前の事をしただけです……」
「ほら、ここなも」
「おねえちゃん。たすけてくれてありがとう!」
少女が嬉しそうな顔つきでユキへとお礼を言うとユキはしゃがんでから優しく微笑んでまた彼女の頭を撫でた。
「どういたしまして。パパとママに会えて良かったね」
少女がユキにお礼を言った後、両親はユキに改めて頭を下げ、親子三人で去っていくのだった。
「おねえちゃん、ばいばーい!」
「ばいばーい」
ユキが少女から手を振られたため、優しい微笑みの顔のまま手を振りかえす。
「(……家族はやっぱり一緒が良いよ。バラバラだなんて……そんなの寂しいから)」
ユキは幼い頃から本当の両親の顔を知らずに育った事もあって迷子の子を放っておけなかった。
「さて、アサヒ君やソラちゃん。ましろちゃんの所に戻らな……あれ?」
ユキがホッとしたのも束の間。ある重大な事実に気がつく。それは、今度はユキが迷子になってしまったという事だ。
「……ソラちゃん達どこに行ったんだっけ?」
ユキは必死に他の三人の言っていた行き先を思い出そうとするが、最後に移動していた時点でましろから行き先は告げられていなかった。つまり、今のユキにはアサヒ達の居場所がわからない。加えて連絡手段も無いという事でこうなると完全な迷子である。
「どうしよ……。多分皆心配してる。早く戻らないとだけど……」
ユキは動くべきなのか動かずに待つべきか迷った。動かなければ見つけてもらえないリスクが発生するし、動けば行き違うリスクが発生する。どちらにしてもリスクは出てしまうのだ。
「はわわ……」
そんな時だった。混乱するユキの元に一人の少女が歩いてくると声をかける。
「あの……」
「は、はい!」
ユキがその声に驚いてそちらを向くとそこには小柄で金髪をツインテールにした体つきの細い少女の姿があった。
「大丈夫ですか?凄い焦っているような顔をされてましたけど……」
「べ、別に大丈夫です!わ、私迷子なんかじゃ……」
「えっ?迷子?」
「あっ……」
ユキは少女に心配をかけさせまいと必死に迷子である事を隠そうとしたが、誤って自分から迷子について触れてしまう。
「はうぅ……すみません」
ユキは恥ずかしさのあまり顔を手で覆ってしまう中、少女の元に友達と思われる二人の少女がやってきた。
「うらら、どうしたの?」
「この子は?」
「こまちさん、かれんさん。えっと、先程から焦ったような顔をして困っているように見えたのでひとまず声をかけたんです」
少女の友達としてやってきた二人は彼女達の身長は最初の少女よりも高かった。その内片方は緑髪でボブヘアだが後ろ髪のみ背中に届くくらい長くなっている。また、彼女の容姿は旅館の女将として出てきそうな和風なイメージを受けた。もう一人は青髪のロングヘアで女性ながらもキリッとした目つきがカッコ良いという雰囲気を与えた。
「あ、自己紹介が遅れました。私、うららって言います。歳は中学一年です」
「私は秋元こまち」
「水無月かれんよ。私とこまちは三年生。あなたは?」
それからユキは二人へと自己紹介すると事情を説明する事にした。ここで誤魔化しても良かったが、そうなると事態が更に悪化しそうだったので素直に話さざるを得なかったのである。
「なるほど、人助けをしていたらいつの間にか自分が迷子ね」
「はい……。本当に情けない話です。ここに慣れてないのに一人で飛び出したから」
「ううん。ユキさんは立派ですよ。多分、のぞみさんとかりんさん辺りはユキさんと同じようにこういう場面があったら真っ先に飛び出しますから」
「そうなんですね……」
ユキは僅かに申し訳なさそうな顔つきを見せる中、こまちはかれんへと話しかける。
「かれん」
「えぇ、私も同じ事を考えてるわ。うららもね」
「はい!」
こまちはうららやかれんの意思が自分と同じだと判断するとこまちがユキへと提案する。
「それじゃあ、私達がユキさんのお友達を探すのに協力しても良いかな?」
「うえっ!?そんなの悪いですよ……。その、皆さんにご迷惑は……」
「私達も丁度一緒に来ていた三人の友達と合流する所だったので一緒に探したいんです」
どうやらうらら達三人も他の友達と来ており、彼女達もその友達と合流したいらしい。
「……本当に良いんですか?」
「勿論よ。一緒に行きましょう」
「すみません、お願いします」
ユキはこれ以上一人で下手に彷徨うより協力してくれる同年代の子達と一緒に探した方が良いと考えたために三人の魅力的な提案に頷く事になるのだった。
その頃、ユキを探しているアサヒ達の方では。三人がしらみつぶしにお店を探して回っていたが、ユキはどこにもおらず。少しずつ焦りが生まれていた。
「ユキさん、どこに行ったのでしょうか」
「もしかするとユキも俺達を探しているのかも。それで丁度このショッピングモールの中で入れ違ってたり」
「それはあまり考えたく無い展開だけど……でも十分あり得そうだよね」
このままではどちらにせよユキを見つけられないと考えたアサヒ達。だが、かと言って手掛かりを見つけようにもユキの特徴を伝えてそれを見かけたかと周囲の人に聴き込むしか無い。
「取り敢えず、早い所見つけないとだな。えっと……」
それからましろはキョロキョロと周りを見渡すとその視線の先には周りと比べてよく目立つピンクに染めた少女がいたのを確認する。
「あの子、ピンクの髪……。何だか親近感を感じるし、あの子にしよう」
「ええっ!?そんなので良いんですか!?」
ましろは珍しく自分の直感を信じると言わんばかりの勢いで目を付けたピンク髪の少女へと話しかける。
「あの!すみません!」
「え?私?」
ピンク髪の少女の姿はよく見るとツーサイドアップのボブヘアーであり、そんな彼女はキョトンとした顔で首を傾げる中、ましろは少女へと捲し立てるようにユキの特徴を聞いた。
「あの、いきなりですみません。白い髪のセミロングヘアで薄い水色の澄んだ瞳をした私と同じくらいの身長の子って見ませんでした?」
「ましろ、いきなりそんな直感で探したってそんな簡単に見つからないって」
「そうですよ、アサヒ君の言う通り無茶ですって!」
アサヒとソラはこんな探し方をしてもユキは見つからないとましろを諌めようとする。しかし、ピンク髪の少女の反応は二人の予想とは違った。
「白い髪、水色の瞳で女の子を探してる人達あっ!もしかして……うらら達の言ってた子達って……」
「「……あれ?」」
「あの、その子ってユキって名前だったりする?」
「ユキちゃんを知ってるの!?」
まさかましろの直感行動はたった一発で当たりを引き当てたらしい。そして、少女は三人に少し待つように言うと二人の少女を連れてきた。
「男の子一人に女の子二人組。特徴もあの子の言ってる事に完全一致。間違い無いね」
「のぞみ、お手柄よ」
「あはは、今回は向こうから話しかけてくれたから……」
そこに来たのは茶髪のショートヘアで先程会ったなぎさや咲のようなカッコ良い系統のボーイッシュ女子と紫髪のロングウェーブで頭の後ろでリボンを付けた少女がやってきた。
「じゃあ全員揃ったら自己紹介するね。私、夢原のぞみ」
「私は夏木りん。のぞみとは幼馴染で同級生」
「美々野くるみ。私も二人と同年代の中学二年」
「じゃあ、私達の方も……」
三人はそれぞれ自己紹介を済ませていく。尚、自己紹介の模様は特に変わらないので省略する。
「あの、改めて。ユキと知り合いなんですか?」
「えっと、私達はユキちゃんが友達と逸れたって事をうららっていう私達の友達から教えてもらって」
「私達もうらら達と合流するために移動しながら探していたらタイミング良くあなた達と出会った感じ」
するとアサヒは僅かに違和感を覚える。先程聞いたうららと言う名前にどこか聞き覚えがあったからだ。
「あれ、うららって名前どこかで……」
「それで、ユキさんはどこに?」
「これから私達の友達が連れてきてくれる所だよ」
「わざわざすみません。ありがとうございます」
そんなわけでアサヒ達はのぞみ達三人と話しつつ移動してくるユキ達四人を待った。そんな中でアサヒ達はのぞみ達の事を聞く事に。
「えっ、のぞみちゃん達もこの街に住んでるわけじゃ無いの?」
「うん!私達、丁度この辺でビデオの撮影があったう……」
「ストップのぞみ!それ以上はダメだから!」
「ビデオの撮影?」
のぞみは何やら言ってはいけない事を言いかけたようでりんに無理矢理止められて慌てて口をつぐんだ。
「もう、そんな簡単に喋っちゃったらシロップに怒られちゃうでしょ」
「シロップ?あ、もしかして外国人の方ですか?」
「何言ってんのよ。シロップは外国人じゃなくてローズガー……」
「アンタも何勝手に言おうとしてんのよ!」
くるみがある事を言おうとするとまたりんが大慌てでツッコミを入れる。こうやって見るとどうやら彼女は苦労人気質らしい。
「はぁ……。アンタら二人揃って」
りんの苦労っぷりに三人は苦笑いを浮かべる。特にアサヒやましろは正直過ぎるせいで色々と危なっかしいソラを近くで見ているからこそ彼女の苦労が手に取るようにわかった。
「それで、皆さんはどうしてこの街に?」
「簡単に言えば前まで同じ学校だった友達がこの近くに住んでるから会いに来たって所」
りんの言ってる事は先程までの誤魔化しから嘘であると三人はわかったが、それでも自分達にだって他人には言えない秘密があるために彼女達の気持ちを汲む事になる。
「なるほど……」
「のぞみ!りん!くるみ!」
するとそこにかれんの声が聞こえると離れていたユキ達四人がやってきて合流。ようやくユキは三人と再会した。
「もうユキさん。どこに行ってたんですか!」
「ごめんね、ちょっと寄り道してたらつい……」
「寄り道って……」
「ユキさんは迷子の女の子を助けてたのよ」
するとこまちがユキをフォローする言葉をかけるとアサヒ達は目を見開く。
「ごめんなさい……。歩いてたら泣いてた女の子を見つけちゃって。でも距離が遠いから皆気づかないと思って一人で助けに行っちゃった……」
「そうだったんですね……。私達こそごめんなさい」
「ううん、皆は何も悪く無いよ。私が一声かけておけば」
「はいはい、自分を責め合うのはここまでここまで」
ソラとユキが罪悪感に包まれる中、かれんがその言葉を遮って止める。それからましろはのぞみ達にお礼を言った。
「のぞみちゃん、皆さん。ユキちゃんを助けてくれてありがとう!」
「どういたしまして!ユキちゃんが無事に合流できて良かった」
「私も、ありがとうございました」
ユキもそんなましろに続く形で頭を下げるとアサヒは目の前にいる六人の少女達の方を見ていたのだが、そんな中である予感が脳裏に浮かんでいた。
「……あの、さっきからずっと思ってたんだけどさ」
「何?どうかし……」
「そちらの金髪のツインテールの人って……もしかして、あの超有名人気歌手の春日野うららさん……だったりしますか?」
「……え?」
アサヒの言葉にましろもハッとする。彼女もうららについて知っていたのと先程改めて済ませた自己紹介の時にうららだけ何故か名字について言及しなかった事。それらから総合して彼女が春日野うららだと断定したのだ。
「え、えっとね。うららは……」
「良いですよのぞみさん。これ以上は誤魔化しても意味がありません。はい、私はアサヒさんの言う通り……春日野うららです」
こうして、ユキ達は迷子になったユキと合流したのは良かったものの。その際にまさかの大物芸能人とその友達との邂逅を果たす事になるのだった。
また次回もお楽しみに。