熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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エルの勇気 思わぬ協力者達

その頃、サーロインと戦闘を繰り広げるサンライズ、ブルーム、ミルキィローズ。その中でサンライズとミルキィローズは初手からサーロインへと接近しつつ乱打戦を始める。

 

「「はぁああっ!」」

 

「ふふっ、来い!」

 

サンライズは以前までの戦いで自分の攻撃が大振りな物が多いということがわかった。そのため、ここまでユキやソラ辺りに最小限の動きで強い拳を打てるようなトレーニングをして多少はマシになってはいる。ただし、目の前の相手に通用するかは別問題だ。

 

「赤い方はまだだいぶ荒いな。戦い慣れしてないだろう?」

 

「ッ!?」

 

サンライズの方はサーロイン相手に明らかに通用していない。その証拠にミルキィローズの攻撃はしっかり防御しているのに対し、サンライズの方は攻撃の幾つかは捌く回避されてしまっていた。

 

「ぬん!」

 

サンライズはその直後にサーロインからの拳をまともに受けて吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐあっ!?」

 

サンライズが下がったそのタイミングで、ミルキィローズが踏み込むと前に出てくる。

 

「さっきからどこ見てんのよ!」

 

彼女は先程からサーロインへと攻撃していたものの、彼がサンライズの方を向いていた隙を突いてその腹へと拳を叩き込む。そのダメージで彼を少しだけ後退させる。

 

「今だ!」

 

サンライズはその間にすぐに立て直すとサーロインが怯んだ今を好機と捉え、炎の拳をエネルギーとして射出。つまり、拳圧による攻撃を放った。

 

「ふっ!」

 

しかし、サーロインが手を翳すと地面から巻き上がった砂を纏った風が障壁としてそれを止めてしまう。

 

「まだだ!」

 

サンライズはすかさず前に出ると脚に炎を纏わせるとサーロインの視線が下に移動。そこにサンライズの肩に手を置く影が見えた。

 

「む!?」

 

「だあっ!」

 

そこにはサンライズの肩を利用してブルームが飛び出すとすかさずサーロインへとドロップキックを放つ。

 

「ッ!」

 

サーロインはそれを受けて数歩下がる中、その直後にサンライズとブルームがサーロインの懐に入るとすかさず彼の腕を掴んで拘束。彼を動けなくした所でミルキィローズが突っ込んでくる。

 

「三人がかりで私に攻撃するか。だが!」

 

サーロインがそう言うとミルキィローズの足元の砂がいきなり緩むとミルキィローズは上手く踏み込みができずに少しだけ沈んでしまう。

 

「うっ!?」

 

「惜しかったな!」

 

ミルキィローズがいきなり足を取られて動揺した瞬間。サーロインはサンライズとブルームを拘束されたまま力ずくで投げ飛ばし、二人はミルキィローズとぶつかって三人纏めて吹っ飛んでしまう。

 

「私の新たな力を見せてやろう。……アクセラレート」

 

サーロインがそう言った直後、彼の体がほんの一瞬だけ加速。そのまま吹き飛ばされる三人の元に先回りすると無防備な体に追撃を叩き込む。

 

「「「うわぁああっ!?」」」

 

三人は纏めてサーロインによって倒されてしまうとその痛みに耐えつつ彼の方を向く。

 

「今の何……」

 

「アンタ、前までそんな能力無かったでしょ!」

 

ミルキィローズが困惑する中、ブルームはサーロインとは何度も戦っている事もあって彼が新しい能力を使った事を指摘する。

 

「その通りだ。これもダークネス様のお力。私自身の速度をほんの5秒間だけ加速させられる能力だ」

 

五秒という数字は一見短いように見えて戦いの中では大きな意味を持つ。つまり、ある程度強い人間にとっては五秒間加速できるだけでもかなりのアドバンテージなのだ。

 

「ッ……デタラメな能力使ってくれて!」

 

サンライズは立ち上がると飛び出す。それに合わせる形でブルームも出ていくとサーロインを両サイドから挟み込もうとする。

 

「ふん、無駄な事を……」

 

そのまま二人はサーロインへとラッシュを仕掛けていく。しかし、彼は平然とした顔のままそれを捌いてしまう。そこにミルキィローズが入ると三人がかりでサーロインを倒しに行くのだった。

 

場面が変化し、プリズム達の方面へ。プリズムは気弾を放ってムシバーンを牽制する中、気弾その物はあまり通用していなかった。

 

「この程度で私を止められるものか!」

 

「ううん、あなたの気を引きつけるのが狙いだよ!」

 

ムシバーンがそれに目を見開くとそのタイミングでルージュとドリームが飛び出す。

 

「「はぁああっ!」」

 

「小賢しい!」

 

しかし、ドリームとルージュが二人がかりで攻撃をしてきたタイミングで剣を真上に放り投げると自らの拳でそれを全て捌いてしまう。そのまま攻撃の隙を突いて二人を殴り飛ばして返り討ちに。

 

「「うわぁっ!?」」

 

その直後、ムシバーンは放り投げていた剣を再度掴むとプリズムへと向かっていく。

 

「ッ!はぁああ!!」

 

プリズムは自分がターゲットにされたと見てすかさず気弾による弾幕を張る。しかし、先程同様にムシバーン相手に気弾はまるで通用しない。そのままムシバーンはどんどん距離を詰めてくる。

 

「そんな物か!」

 

「ううん、あなたを引き寄せるのが狙いだよ!ヒーローガール!プリズムショット!」

 

ただ、プリズムも無策で気弾を撃ち続けたのではない。ムシバーンを十分に引きつけたこの瞬間こそがプリズムが待ち望んだ瞬間。

 

このタイミングでプリズムは自身の渾身の力を込めた巨大なエネルギー弾を放つ。

 

「ふん。そう来た所で……無駄なんだよ!」

 

「ッ、嘘!?」

 

しかし、プリズムが放った全力のプリズムショットもムシバーンの手にした剣によって簡単に真っ二つに切り裂かれてしまうとムシバーンは肉薄。

 

「危ない!」

 

その瞬間、ルミナスがムシバーンとプリズムの間に割って入ると自身の能力であるバリアを展開。これによって物理的にムシバーンは弾かれると後ろに押し戻される。

 

「ぬぅ……」

 

「プリキュア!ファイヤーストライク!」

 

そして、ムシバーンの脚が止まったタイミングでルージュが両手をクロスさせて炎のエネルギーを高めるとボール状に集約。そのままそれを蹴り込む形でムシバーンへと飛ばした。

 

「ぬん!」

 

ムシバーンは咄嗟にその攻撃を剣で受け止めると切り裂いて粉砕。だが、ムシバーンがそれなりに力を入れて攻撃を切り裂いたためにこの直後は大きな隙となる。

 

「プリキュア!シューティングスター!」

 

ドリームが両手をクロスさせてからピンクのエネルギーを腕に纏わせると両腕を広げ、跳び上がってからそれを合体させつつ突っ込んでいく。

 

そして彼女は同時に蝶を模したエネルギーを纏うとムシバーンへと一直線に向かっていった。

 

「はぁああっ!」

 

「ふん!」

 

ムシバーンは体に力を入れるとドリームからの技を正面から受け止めてしまう。

 

「ッ……」

 

「同じ手で二度もこの私が敗れると思うな!」

 

実はムシバーンはブラックホールの手によって復活した際も同じようにプリキュアの技の連続で体勢を崩された所にドリームからのシューティングスターで敗北した経緯があるため、彼は同じ手を喰らわないと言わんばかりだった。

 

「ッ……はぁああっ!」

 

それでとドリームはこの一撃を決めるために力を入れる。しかし、ムシバーンは気合いを入れると同時にドリームを吹き飛ばしてしまう。

 

「うわあっ!?」

 

「ドリーム!?」

 

「そんな……」

 

「お前達に勝ち目は無い……消え去れ、プリキュア!」

 

ムシバーンはエネルギーを地面に叩きつけると地面から禍々しい液体のようなエネルギーが噴き出す。それが四人のプリキュア達へと向かっていくと四人はそれを止められずに飲み込まれてしまった。

 

「「「「うわぁああっ!?」」」」

 

このようにプリキュア達はどの方面でも前よりも強化された敵の猛攻に圧倒されてしまう。

 

そんな中、外の世界では一人残っていた魔女が手を翳すと周囲の空が暗く染まっていく。

 

「良いぞ、邪魔者がいないだけでこうも上手く事が運ぶとはな……あはははっ!」

 

魔女がご機嫌そうな顔つきを浮かべているとその現場に向かってくる小さな何かを見つける。

 

「あん……。何だ?あの赤ん坊は……」

 

魔女の視線の先にいたのは暗くなってしまった空に不安な顔を浮かべているエルだった。彼女は虹ヶ丘家から街に出てきたのは良かったものの、普段なら暗闇に立ち向かってくれるユキ達プリキュアを探しても全く見つからないため慌てて探し回っていたのだ。

 

「える……ぷいきゅあ!ぷいきゅあぁ……」

 

エルがどれだけ呼びかけてもプリキュア達はいない。何しろ、ソラシド市にいたプリキュア達は全員が魔女に捕まって水晶の中に閉じ込められてしまったのだ。どれだけ探したとしても彼女達が姿を見せる事は無い。

 

「えるる!ぶいきゅああっ!ぷいきゅああっ!」

 

エルはプリキュア達がいないせいで溢れてくる不安な心をどうにか押し留めると先程よりも強くプリキュアの返事を求めて叫ぶ。そして、そんなに激しく動きながらプリキュアを探していたら魔女も気がついてしまうわけで。

 

「おやぁ。随分と可愛い赤ん坊だけど、プリキュアを探してるのかい?」

 

魔女はプリキュアを探して動き回るエルの前に出てくると邪悪な笑みを浮かべた。そんな彼女からの視線にエルは思わず怯えてしまう。

 

「える!?」

 

「残念だけどあなたが探しているプリキュアは来ないわ。何しろ、この私がこの水晶の中に閉じ込めたんだからね!」

 

「えるぅ……」

 

エルはその事実を聞いて涙目になる。そして、そんな彼女を見た魔女は言い放つ。

 

「もうすぐダークネス様が降臨される。そうなれば、この世界はあっという間に破壊され、闇の世界に……」

 

「えるるぅ!」

 

「あん?」

 

するとエルは赤ちゃん言葉で震えていたが、必死な様子で魔女の言葉に反論しようとしていた。つまり、ダークネスの支配に抵抗したのである。

 

「えーる!えーるぅ!」

 

エルは魔女の体に体当たりするとポコポコと彼女へと駄々を捏ねるように小さな腕で魔女を攻撃した。勿論彼女にとってエルからの攻撃なんて痛くも痒くも無いわけで。

 

「はぁ……。あのね?お前如きの攻撃が効くとでも思ったのかしら?本当に赤ん坊には話が通じなくて困るよ」

 

そんなエルの様子に魔女は呆れたような顔つきを見せると彼女を簡単に振り払ってしまう。

 

「えるぅ!?」

 

エルは魔女に弾かれたせいか、吹き飛ばされてしまった。幸いにも彼女のスリングが慌てて受け皿として移動したためにエルは叩きつけられずに済んだものの、このままでは世界がこの街を滅ぼされてしまうだろう。

 

「えるぅ……」

 

「そこで大人しくしているんだね。私はダークネス様降臨のためにこの街をさっさと制圧してやろう」

 

魔女はこれ以上グズグズしていると第二、第三のエルのような力の無い人々が無駄な抵抗をしてきそうと考えるとさっさと街をメチャクチャにしようとする。それを見たエルはどうにか彼女を止める手段が無いか考えた。

 

「……える!」

 

するとエルは何かに気がつくと自身の力を発揮しようとする。それは前に一般人だったソラやましろをプリキュアに変身できるようにした時のような自分の中にあると思われる不思議な力だ。

 

それを使えば魔女を倒す事はできなくても、彼女を足止めしてその間にプリキュア達が逆転するための隙にはできるはずと考える。

 

「える!すうーっ……ぷいきゅあああっ!」

 

エルは息を吸うと先程以上に大きな声を出すために息を大きく吸い込み、ありったけの大声で叫ぶ。しかし、残念ながら何も起きる事は無かった。

 

「える!?ぷいきゅあ!ぷいきゅああっ!」

 

エルは何も起きない事に慌てて何度かプリキュアの名前を呼ぶが、やはり何も起きない。今まではプリキュアの名前を呼べば確実に能力が発揮されたのに何故こうなるのか。……それは、エルに力を与える能力があったとしてもそれは受け取る相手が前までの自分を超える覚悟を決めた上で尚且つその場にいないといけないというルールのような物があるからだ。

 

幾ら能力を与える事ができても受け取る側の人間無しでは能力を発揮できない。至極当たり前だろう。

 

「チッ……。良い加減そろそろ鬱陶しいわね」

 

すると、流石に無駄だとわかってるはずなのに無意味な事を続けるエルに対して苛立ちを露わにした魔女。彼女は良い加減煩いエルを黙らせるために彼女へと近づいていった。

 

「えるぅ!?」

 

エルは魔女から逃げようとするが、魔女は手を翳すと空中に闇のエネルギー弾を生成。エルの方へと雨のように降らせた。

 

「える!?えるぅ!!」

 

そのエネルギー弾は逃げるエルへと降り注ぎ、爆発。直撃こそ免れたものの、その中の一つが彼女の逃げ道を塞ぐように降ったことでエルは脚を止めてしまう。

 

「えるぅ……」

 

「ふん。抵抗力が無いくせに良い加減しつこいんだよ。……そろそろあの世に送ってやろう」

 

魔女が手を翳すとその手にエネルギー砲が高められる。エルはそれに恐怖すると逃げる事も出来なかった。

 

「え、える……」

 

「死ねぇ!」

 

そのまま魔女がエネルギー砲を放とうとした時だった。どこからか叫び声が聞こえてくると魔女の方へと何かが吹っ飛んでくる。

 

「うわぁあああっ!」

 

魔女はそれを聞いて慌てて後ろに下がって避けるとそれは地面に着弾。エルも含めた二人が驚く中で着弾した何かを見るとそこにいたのは……。

 

「痛ててっ……あの野郎、何をするのねん」

 

「えるぅ!?」

 

エルの窮地を救ったのは……まさかの彼女を狙っているはずのカバトンだった。そして、彼女を助けに来たのは彼だけでは無い。

 

「ひろがるシャドーブラッドムーン!」

 

その声が響くと同時に刀の斬撃波が魔女へと命中。彼女は咄嗟にそれを魔力障壁で防いだものの、それを解除する頃にはもう一人降り立っていた。

 

「なっ!?もう一人だと!?」

 

「える!」

 

「ふん、勘違いすんなよプリンセス・エル!お前が殺されでもしたら俺様があのお方から大目玉を喰らってしまうのねん!あくまで利害の一致だって事を忘れるな!」

 

「まぁ、この場は助けてやる。安全な所に隠れていろ。……エルレイン」

 

「える?」

 

エルは聞き覚えのない名前に首を傾げるが、ひとまず二人が助けてくれるという事で近くの物陰に避難する事にした。

 

「まさか、邪魔するのはプリキュアだけと思ってたけど……とんだ邪魔が入ったものね!」

 

「行くぞ、カバトン。見た所、アレが狙い目だ。あと、負けそうになってもランボーグは使うなよ?」

 

「言われなくてもわかってるのねん!」

 

こうして、一時的ではあるがシャドーとカバトンの二人はエルに協力。彼等はある事を狙って魔女へと向かっていくのだった。




また次回もお楽しみに。
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