ユキ達四人はそれ以降も暫くゲームセンターを堪能。それを終えるとゲームセンターでの事を話しながら出てきた。
「むむむーっ……まさか鉄の箱を運転?するゲームがあそこまで奥の深い物だったとは……」
「あはは、ソラちゃん。最初の方は最短コースを進もうとしてコースから外れたりしてたもんね……」
四人が最後にやったゲームセンターは○リオカートと呼ばれるゲームだ。それをやる際に運良く四台分のゲーム機が空いており、四人で対戦プレイをする事になった。
その際にスカイランド組の二人が初プレイだったので特にソラが珍プレイを連発。最初、アクセルを踏まずにスタートダッシュに失敗。その後、早くゴールする事を目的に言われたので慌ててコースを外した部分を走ろうと減速。
他には順路では無い道を走ろうとしたり、手に入ったアイテムで前のカートを妨害しようとして投げた爆弾兵の所に自ら突っ込んで文字通り自爆。こうして、ソラの初○リオカートは散々な結果となってしまった。
「それにしてもアサヒ。もうちょっとくらい手加減してもよくない?」
「だから悪いって。俺だってやり過ぎたって思ったから……」
尚、アサヒはやはりこのゲームでも上手さを発揮したせいで他の三人を置いて行ってしまう始末だった。レースの際にモブCPUもいた事もあって余計に負けず嫌いが発揮されたのかもしれない。
ゲームセンターでの思い出を話すのもそこそこに、ユキ達は続けて次に向かう場所の話題を始める。
「それじゃあ、次はどこに行こうか?」
「あ、あの。私……行きたい所を思いついて」
ユキがそう言うと三人は折角彼女が行きたいと言い出したために彼女のやりたい事をやらせようと頷いた。
「うん、良いよ!」
「ユキが行きたい所ってどこかな」
「え……でも大した所じゃ無いよ?」
ユキが困惑した顔のままそう話すが、三人はそんなユキを微笑ましい目で見守る。
同時刻。突如として空いたトンネルを通ってソラシドモール内部に来てしまった風波らんこ。彼女は色々と事情があってこのモールから出ようとして歩いていた。
「はぁ……。それにしても疲れたわ……。プリキュアに変身したてであんな強い相手と戦ったせいかしら」
らんこの口振りから見るに彼女もプリキュアらしい。らんこはつい先程までそのプリキュアに変身して戦闘していた。しかも、彼女にとってはそれが初陣で。尚且つ相手が相当強かったので体への疲労感も強い。
「……そういえば、私が来る前まで夕方だったのに何でこの中がこんなに人で賑わってるんだろ」
らんこはそう呟きつつ困惑したような顔を見せる。らんこはここに来る前、正確には強敵を倒したタイミングの時点で時刻は夕方に差し掛かっていた。それなのに何故かこのソラシドモール内にいる人々はそれなりに多い。むしろ、先程から増えてさえいる。
「普通夕方にかけて人は少なくなるはずなのに、これじゃあまるで午前中じゃない。……スマホ、スマホ」
らんこはふと先程のトンネルを通ってから時間を確認していないと考えると急いでスマホを取り出して日付と時刻を見る。
「……は?」
その瞬間、らんこは視界に映った光景に困惑した。そこにあった時刻は午前11時過ぎ。……そう、午前の11時過ぎなのだ。
「……嘘……待って。しかもこの日付、明日学校じゃない!?」
らんこが思わず混乱すると声を上げてしまう。それから彼女は混乱する思考をどうにか整えつつ、状況を整理した。
「と、とにかく落ち着きましょう。改めて整理するわ。私はついさっきまであのマッドサイエンティストのランボーグの相手をしてて、ソラとましろが合体技を使って倒して……ソラと仲直りして。……そしたらスカイトーンが光って気がついたらここに……」
らんこは一つずつここに来る前の出来事を思い出しながら心を落ち着けていく。その中で彼女は気になる言葉を口にした。それは、彼女がソラやましろと知り合いという事である。だが、ここで矛盾が発生してしまう。ソラやましろと知り合いなのにユキやアサヒとは知り合いじゃないという事だ。
何しろ四人は基本的に固まって行動しているためにバラバラになる事は少ない。加えてソラやましろが新しい知り合いができた時に一緒にいる二人に紹介しないはずがないだろう。
加えて、らんこはマッドサイエンティストといういかにも碌でも無さそうな人物がいる事について示唆していた。
「……あー、もう!考えれば考える程わからないわ!?何よ、タイムスリップって!何で気がついたら時間が経ってるわけ!?しかも何年前とか何年後とかならともかく、たった数日先なの!?」
どうにか心を落ち着けたはずのらんこ。しかし、彼女は何故かたった数日しか先に進まない中途半端なタイムスリップなんて聞いた事無いために思わず声を荒げてしまう。そしてそうなれば当然周りから変な目で見られるわけで。
「ママ、あの人なんか変な事言ってる……」
「しっ、ああいう人とは関わらない方が良いから。早く行くわよ」
「ぷぷっ……何あの子……変な事言ってるし」
人々は奇妙な事を一人で口走るらんこに視線を向けてはヒソヒソと話をしていた。幸いだったのは当のらんこ自身はこのあり得ない転移現象について考えていて周りが全く見えていなかった事だろう。
「それとも何?あのトンネル潜ったら何日かあの中に閉じ込められるの?でもその割にお腹の空き具合はそんなに変わらないし……」
一応トンネル内部を通った場合、時間の流れの違いの観点から移動に数日かかる事も考えた。だが、どれだけ考えた所で答えに辿り着けるかと聞かれたらそうでも無い。そのため、最終的にらんこの出した結論は……。
「止めたわ。考えても無駄ね……。ひとまず、明日学校なら尚更準備しないと。あ、でもその前にソラ達が心配しているはずだから電話を……」
らんこはひとまず通話をするために電話機能を開くと迷う事無くましろへと電話をかける。
「ましろ……私が数日も行方不明になって心配かけさせちゃってるわよね。ちゃんと謝らないと……」
それかららんこはましろが電話に出てくれるのを大人しく待っていた。……待っていたのだが、何故か電話に出る気配が無い。
「……あれ?何で出てくれないのかしら」
しかし、どれだけ待ってもましろは出てくれる様子が無かった。そのため、スマホの画面を改めて見ると通話相手はましろで間違い無い。するとその直後に電話が勝手に切られてしまった。
「……は?」
それを見てらんこは動揺する。電話が切られた。それは、ましろがらんこ相手に何かしらの負の感情を持っている事に他ならない。だが、らんこにはましろが怒るような事をした心当たりが無いのだ。
「う、嘘でしょましろ。もしかしていきなりいなくなった事を怒ってる!?」
らんこはどうにか弁明しようとメッセージアプリでましろへとメッセージを送る。……だが、少し待っても返事が返ってくるどころか既読すら付かない。そのため彼女は更に焦ってしまう。
「(不味い、不味すぎるわ。ましろ……絶対怒ってる……。どうしよう……。そうだわ、明日は学校だからちゃんと謝って……。謝ってどうするの?もし口さえも効いてくれなかったら)」
らんこの思考はどんどんネガティブな方向へと転がり始めていく。ましろかは自分にとってかけがえの無い友達であり、かつて友達の件で病んでしまった自分を救ってくれた救世主みたいな人だ。
「とにかく、こうなったら尚更準備のために家に帰らないと……」
それから彼女はましろが今、手が離せない何かをやってるから電話を切らざるを得なかったと断定。いや、そう思い込む事で精神的なダメージを抑えるくらいしか今のらんこには出来なかった。
彼女が慌てて電話をする少し前。ユキ達四人がある場所へと移動していくとそこはCDショップと呼ばれる所である。
「ここは……しーでぃーしょっぷ……ですか?」
「える?」
「うん。昨日迷子の子を連れて行く時に偶然通って気になって……。でも、その時はゆっくり寄れなかったから……」
「あー。そういう事か」
実は昨日、ユキは偶然このお店の横を通っていた。ただ、この時は迷子の子を優先しなければならず。そのため結局中に入る事までは出来てなかった。
「だから折角時間ができたしゆっくり見てみたいかなって」
「おお、それは良いですね!」
「折角だ。また色々と教え……」
「あれ?ちょっと待って」
ユキが事情を説明していざ、早速中に入ろうとしたその時。ましろは何かに気がつくと自身のスマホが震えている事に気がつく。
「お婆ちゃんかな?もしかして新しく買って欲しい何かがあるのかも」
ましろは電話に出るためにまずはスマホを取り出すとその画面を見る……が、そこに映っていた番号にはまるで見覚えが無かった。そのためましろは困惑する。
「誰……この番号」
「ましろ?」
「えっと、知らない人から電話がかかってきてるの」
……実はこれが先程ましろに電話して繋がらなかったらんこからの電話だ。ただ、ましろからしてみたらそんな人物は知らない。加えて、この状況ではただの迷惑電話だ。そのためアサヒが詰め寄ると電話の正体が不明だと改めて認知。ある事を言い出す。
「本当に知らないやつからだな。ましろ、その電話に出るのは不味い。電話を切って拒否した方が良いだろ」
「う、うん。そうだね。最近は迷惑電話とかも多いみたいだし」
ましろはそう言って電話を切るための赤いボタンを押してしまうとらんこからの電話を完全に無視してしまう。その影響でらんこが慌ててしまうのだが、それはさておき。
「ふああっ……薄くて小さな箱がびっしり……」
「まぁ、CDショップだからね。この小さな箱の中に丸い円盤……丁度アップドラフト・シャイニングの時に出てくるあの丸い奴がすごーく小さくなった物が入ってるの」
「なるほど、わかりやすいです!」
「いや、浄化技の時に出てくるアレを物の例えにするのもどうかと思うけどな……」
アサヒはましろが出した例えに苦笑いを見せる。するとソラは何かに気がつくと目を見開く。あっ、見てください!うららさんがいます!おーい、うららさーん!」
ソラが指差す先にあったのは壁に貼ってあったうららこと春日うららのポスターだった。そのポスターへとソラは話しかけているために三人は慌ててソラを止める。
「ソラちゃん、あれはポスターだよ!」
「うん、うららちゃんは昨日のぞみちゃん達と帰っちゃったし。絶対に違うって!」
「で、ですがあそこに……」
「取り敢えず恥ずかしいから静かにしててくれ!」
ソラはポスターなど知らないため、勘違いを起こしてしまっていた。そもそもスカイランドには絵はあっても写真の概念なんて無い。また、印刷機も無いのでポスターそのものを知らなくてもこれも仕方ないだろう。だからって騒がれるのは色々問題なのでまずは静かになってもらったが。
「すみません……取り乱してしまいました」
「もう、ソラ。ポスターと本物の区別くらい付けてくれよ」
「それにしても、この世界は凄いよね。印刷だっけ?絵よりも正確に人の顔とかこうやって描けるし。ほら、絵だと上手い下手もあるから」
「うーん。印刷は描くとは違うけど……。同じ質の絵を何枚も生み出せるってイメージが一番近いかな」
ましろからの補足にユキやソラは納得の顔つきになる。するとうららの隣に貼られていた紫のショートヘアにインカムを付けたアイドル姿の少女のポスターもあった。
「あれ?こっちの子もうららさんと同じくらいの歳の子ですよね?この人は?」
「こっちは剣崎真琴さんだな。彼女もうららさんと同じで大人気のアイドル歌手。ファンの中ではまこぴーって名前で通ってる」
「「まこ……ぴー?」」
「その人の事を呼びやすい愛称って言えば良いのかな。とにかくそんな風に呼ばれてるの」
春日うららに剣崎真琴。彼女達中学生前後のアイドルという枠の中では若者を中心に絶大な人気を誇る二大歌姫と言える。
「お二人共凄いですね。とても私達と同年代とは思えません……」
「うん……」
ユキとソラが二人の人気度の高さに圧倒されていると、彼女達のブースの所に一部穴あきのようにポッカリと商品が無くなっている場所がある事に気がついた。
「あれ?でもあそこ……何だか不自然に空いているような……」
「あー……。これはつい数日前に発売されたうららさんのCDがあった……と思う場所だな」
「どうして疑問系なんですか?」
「学校のクラスメイトに聞いた話によると、二人の人気が凄まじすぎて売られ始めたばかりのCDは割とすぐに品切れになっちゃうんだよ。物によってはお店の開店前に行列とかできちゃうパターンもあるらしい」
「「えぇ……」」
二人もスカイランドで人気商品を手に入れようとしてできる行列についての概念は知っていた。だが、CDは音楽を聴くための所謂娯楽の道具。しかも二人にとっては馴染みが無いのであまりそうなってしまうイメージは湧かなかった。
「うーん、二人共ピンと来てない感じだね……。じゃあ今日帰ったら二人の曲を実際に家で聴いてみよっか」
「うん。その方が凄さが伝わってわかりやすいと思う」
「そうですね……。お願いします」
こうして、ユキとソラは後程二人の曲をましろから聴かせてもらう形で試聴する事に決める。
同時刻、そのCDショップの近くを通ったらんこはそこを通り過ぎかけて戻ってきた。
「……っと……そういえばこの日付ならうららの新しいCDが発売されてたっけ。もしかしたら残ってたり……いいえ、無理ね。あの人気の凄まじさを考えたら多分もう無いわ」
らんこは折角数日未来にタイムスリップしたのならうららのCDを確保する事を考えたが、今からではもう売り切れていると読むと諦める事にした。
「取り敢えず、家に帰って学校の準備を……」
「あっ、あれは何ですか?ましろさん!」
「える!」
「えっと、あれはね……」
らんこがその場から立ち去ろうとするとそのタイミングでソラやましろと声がCDショップから聞こえてきたように感じる。
「……ッ!?ソラ、ましろ?」
しかし、パッと見た感じ外からは二人の姿は見えず。らんこはお店の中に入る事も考えた。
「直接行けば……ううん、さっきの拒否の事もあるわ。いたとしても今会いに行くのはちょっと……」
しかし、行こうとした所で脚を止めてしまう。どうやららんこは先程電話を向こうから切られた事を気にしており、今会って二人から嫌われたら今度こそ精神的に病んでしまいそうで怖くなってしまう。そのため、無言でCDショップに背中を向けて去って行く事になるのだった。
また次回もお楽しみに。