熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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風と雷の邂逅 混乱が止まらない風

らんこはユキ達がいるCDショップから離れると胸の中にモヤモヤとした感情を抱えつつ一度ソラシドモールを出るとその入り口付近で振り返る。

 

「(……やっぱり、ソラやましろに謝るなら今の内なのかしら……)」

 

その間彼女の脳裏に浮かんだのは自分が連絡しなかった事に心配し、怒っている二人の姿だった。そうは言っても、トンネルを潜っている間は連絡のしようが無い。

 

日付が何日か経過したとしてもその事実は変わらないためにらんこはモヤモヤする気持ちを無理矢理抑え込む。

 

「……このままじゃダメね……。考えてても、二人とは明日会わないといけない。だから、会った時にちゃんと話しましょう。……今は帰らないと」

 

らんこは日にちが経過しているなら心配しているのはソラ達だけで無い。家にいるだろう家族だって数日間も娘が帰ってこないなんて事態になれば混乱するし、下手したら警察に捜索を依頼しているかもしれない。

 

「(お願いだから家に帰ったら警察がいるなんて事にならないでよ……。正直面倒だし)」

 

らんこはそう一人で祈りつつ、自分がよく見知った道を歩いて家のある場所へと向かっていく。そして、暫くして家に到着。結論から言うと、まだ行方不明のらんこが警察に探されている……と言う事は無かった。ただし、問題が無かったかと言えばそうでも無く。……むしろ、問題だけが残っていた。

 

「……は?どういう事?」

 

らんこは自分の家のある場所に到着すると脳内が混乱し始めた。何しろそこにあるのは全く見覚えの無い家。更に表札を確認するとそこに書いてあったのは自身の苗字である風波では無く、実際に書いてあったのは雷田という知らない物であった。

 

「確かここに私の家があったはず。なのにあるのは違う家で、表札も違う」

 

らんこはどうにか記憶を遡って再度道を思い出すが、何度シミュレーションしても出てくる答えはこの場所。つまり、場所を間違えたなんて有り得ないはずなのだ。

 

「だとしたら引っ越し?……いいえ、私が前にいた時から数日しか経ってないはずだし、そんな短期間では絶対無理。何より引っ越しだけなら家の形状が違うのも説明が付かないわ」

 

ただ風波家が引っ越しをしただけなら家は取り壊されずに残るはず。それに壊したとしてもやはりこの短期間でもう一度家が建つなんて事は無い。

 

「こうなったらましろの家に……」

 

しかし、らんこは首をすぐに横へと振る。幾ら非常事態とは言え、先程ましろは怒っていると知ったばかりだ。しかも自分が原因でである。それなのに彼女を頼るなど都合が良すぎるだろう。

 

尚、実際はましろが電話に出なかった理由はまた違うのだが……、兎に角らんこにとって彼女を頼る選択肢は無い。

 

「でもどうしよ……。家が無いとなると、銀行でお金を下ろさないと。今の手持ちのお金じゃ宿を取るのも厳しそうだし……」

 

運の悪い事にらんこは手持ちのお金があまり無い状態であった。これでは宿を取るだけの分も無い。幸い貯金はしてあるので銀行に行けばお金を下ろせるだろう。

 

らんこはひとまず移動しようとするとそのタイミングで突然彼女は声をかけられた。

 

「君!」

 

「ッ!?」

 

らんこが振り向くとそこにいたのは黄色い髪のスポーツヘアのような短髪にらんこより少し背の高い少年だ。彼はらんこが先程から雷田家の前にいるらんこを見ていたのか不思議そうな顔つきをしており、ひとまずらんこが不審な人物でないかと話しかけたのだ。

 

「俺の家の前で何をしてるんだ?」

 

「えっ……」

 

「さっきからずっと家の前で立ってるし……ほら、服装が……」

 

少年からの言葉に自分の姿を見たらんこ。その姿はパーカーを被っており、更にいかにも陰キャのようなオーラを出している。しかも、他人の家の前にずっと用も無く突っ立っていれば服装の事もあって家の中への侵入を狙う不審者として怪しまれても仕方ないだろう。

 

「別に、私は不審者じゃ無い」

 

「えっ?そうなのか?」

 

「ちょっと混乱しているだけよ。ずっと同じ場所にいるのはそれが理由」

 

らんこはここで不審者として疑われるのは不味いという事で、あくまで冷静な顔つきのままで彼からの質問を否定する事にした。

 

「そっか。……疑ってすまん」

 

「……謝らなくても良いわよ。私だって……紛らわしい行動をした事ぐらいはわかるから」

 

少年が謝るとらんこも同じく謝罪で返す。そして、彼女はふと少年へと質問をした。

 

「そういえば、さっきも言ってたけど……ここはアンタの家なの?」

 

「えっ……そうだけど。あ、もしかして父さんや母さんの知り合いの娘さんだったりするのか?」

 

「いえ、違うわ。……ちょっと道を間違えたみたい」

 

らんこは少年と話をしてもお互いに疑問ばかりが浮かぶ状況が続いたためにこれ以上は会話をしても無駄だと判断。加えて、先程から変な質問ばかりしているために下手したら本当に不審者だと思われてしまうかもしれないと危機感もあったのだろう。

 

「それじゃあ、私はそろそろ……」

 

らんこはこれ以上この場に留まるのは危険だというわけで無理矢理その場から立ち去ろうとする。しかし、歩き出そうと後ろを向いた瞬間。らんこの少年は掴むと話は終わってないと言わんばかりに引き止める。

 

「待って」

 

「はぁ……何よ?」

 

「道を間違えたって言うけど、君はこの辺りの子なのか?」

 

少年はらんこが道を間違えた……つまり、迷っていると聞いて思わず問いかける。それかららんこが答えを返そうとする前に少年は更に話を続けた。

 

「多分だけど俺と君はほぼ同学年だろ?でも、俺の学年に君みたいな子はいないし……あっ、もしかして来年入ってくる新入生だったりする?」

 

「いや、私は明日から中二よ」

 

「マジか!じゃあ同学年だな!」

 

らんこは面倒そうにしつつも少年からの質問に答えると彼は嬉しそうになると勝手に話を進めていく。

 

「あ、自己紹介が遅れて悪い。俺は雷田ひかるだ。えっと」

 

「……らんこ。風波らんこよ」

 

「らんこさんか。良い名前だな!まさか明日から転校してきたりするのか?だとしたら同じクラスになれたら嬉しい!」

 

ひかると名乗った少年はあくまでらんこと話が続けたいのか、グイグイと行く。ただ、ここまで冷たくしているのに迫られたらんこは流石にひかるの事が迷惑に思ったのか彼が掴んでいた腕を振り払う。

 

「色々言ってくれてる所悪いけど、これ以上あなたに構うつもりは無いわ」

 

「えっ……」

 

「それと、私は転校生じゃないし。元からソラシド中学校の生徒だから」

 

「???」

 

そう言って今度こそひかるの事を振り切って歩いて行ってしまうらんこ。彼女と別れたひかるはらんこの言ってる言葉の意味がわからなかった。何しろ、先程から言っているひかるの通う学校もらんこと同じソラシド中学校。ただ、らんこのような子は彼の記憶が正しければいないはず。それなのに元から同じ中学校と言われれば混乱するのも仕方ないだろう。

 

それはさておき、ひかると別れたらんこは途方に暮れていた。何しろ、自分の家があったはずの場所に家が無く。しかも自分の存在を同じ学校の同級生にも覚えられていないという事にショックを受けたのである。

 

「(……あれ?そういえば、さっきのひかるって奴……学校にいたっけ?」

 

らんこが歩きながら先程の少年、ひかるの事を思い出すと違和感を感じた。どうやら、らんこの脳内ではひかるが同じ学年の子の中にいないと思ったのだ。普段から一人でいる事が多く、クラスメイトに関してもあまり覚えてないらんこでもさっきのひかるくらい煩……目立つような子なら特徴だけでも記憶している。

 

だが、らんこはあれだけ目立ちそうな子が同学年にいるという記憶が脳内に残っていなかった。この事実に彼女の頭にある仮説が浮かぶ。

 

「この世界……もしかして……」

 

らんこが何かに気づき始めたその時。彼女の視線の先から一人の男が歩いてきた。

 

「はぁ……。シャドーの奴。折角プリンセスを黙って持ち逃げするチャンスを棒に振って……ぶっちゃけあり得ないのねん……」

 

らんこの前から歩いてきたのはおでん屋の屋台で食べる時のコート姿にカツラを被った男……カバトンであった。シャドーは珍しく隣におらず、一人だけで来ている状態である。

 

「ゲッ……豚男……」

 

らんこはこんな所に歩いてきたカバトンに対して思わずいつものように彼へと聞こえるくらいの声量で渾名を言ってしまう。同時に彼女はやらかしたと感じた。今はかなり疲れているのに加え、あまり面倒な事は起こしたく無かったのだ。

 

だが、それでもらんこは余計な一言が出てしまった。そのためそれを聞いた彼がムキになってその返しが来るはず……なのだが。

 

「はぁ……あんな最大のチャンスを逃してどうやってプリキュアに勝つというのねん!」

 

「……あれ?」

 

しかし、カバトンをいつものように罵っても彼はまるで無反応だった。加えていつものカバトンなら自分の姿が目に入っただけでも目の敵にしてくるような反応を見せてくるため、“豚男”とらんこが言った上に自分の姿も視界に入ったはずなのに彼が全くの無反応であったために逆に唖然としてしまう。

 

「あの豚男が、私を見ても突っかかって来ないなんて……」

 

やはりらんこはカバトンの様子さえもおかしい事を踏まえ、この世界が元いた世界とは違うという事。それにそこでの事情が色々と違う事に気がつき始める。

 

「ぐぬぬ、最近思い通りに事が進まないからイライラしてきたのねん。……こうなったら八つ当たりなのねん!カモン!アンダーグエナジー!」

 

「……はぁ?」

 

カバトンは自分の思い通りに事が運ばないためにいきなり八つ当たりと言い出すとアンダーグエナジーを召喚。それが近くの家の屋外にあった物置へと吸い込まれるとそれがランボーグとして降臨する。

 

「ランボーグ!」

 

らんこはまさかのカバトンが起こした通りすがりの八つ当たりのせいでランボーグと出くわしてしまうという最悪の事態に陥ってしまった。

 

「嘘でしょ……何でこうなるのよ……」

 

「ん?そういや、さっきの明らかに弱そうなフードの奴がいたのねん!丁度良い。アイツを人質にしてプリキュアを誘き寄せて、そのままプリンセスと交換させるのねん!いひひっ、俺様って頭良い!」

 

それを聞いてらんこは硬直。そして、今カバトンが言った言葉を一字一句思い出すと自分がターゲットにされた事を認識する。

 

「ランボーグ……」

 

するとカバトンの意思に準ずるようにランボーグの視線がらんこの方へと向く。これにより、彼等の狙いが自分であるとハッキリと理解したらんこ。その影響か、彼女は半ば自棄になったかのように声を荒げた。

 

「ああもう!人が落ち込んでる時くらい空気を読んでそっとしておきなさいよ!だからアンタはいつまで経っても豚男呼びなんでしょーが!」

 

「なっ!?あの豚男って呼び名。俺様の事だったのねん!?」

 

「アンタ以外に豚男らしい人いなかったでしょ!」

 

どうやら豚男という単語自体はカバトンに聞こえていたものの、それがまさか自分を罵っている言葉だとは思っておらず。その事実を知ったカバトンは怒りに震える。

 

「ぐぬぬぬ……如何にもYOEEE脇役のフード娘のくせに生意気なのねん!というか、何で俺様の事を知って……」

 

「やっぱり事情は違ってもその呼び方は変わらないのね、この豚男!」

 

「むっかーっ!懲りもせずまた豚男と……もう我慢ならないのねん!ランボーグ、一捻りに潰してやれ!」

 

カバトンは先程から自分を知っているような言い回しをしてくるらんこの事を身の程を知らない馬鹿な一般人だと思ったためにムキになるとさっさと攻撃を指示。

 

ここでらんこがただの一般人であればカバトンからランボーグをけしかけられた時点で逃げ惑うしか無いだろう。……そう、彼女がただの一般人ならだ。

 

「結局ランボーグに攻撃させて面倒な奴ね。けど、丁度私も色々とモヤモヤしてた所なのよ。アンタがやる気ならとことんやってあげるわ!」

 

らんこはカバトンがやる気なのを見て体力に多少不安があるものの、ここまで来たらやるしか無いためにその手にミラージュペンを持つ。

 

「……ヒーローの出番よ!」

 

そして、らんこはミラージュペンをスカイミラージュに変化させるとスカイトーンを装填して変身を開始。尚、変身の際に邪魔になるであろうフードは変身の際に服装が強制的にそれ専用の服になるので問題は無い。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!ツイスター!」

 

するとらんこのその言葉と共にマイク部分にTWISTERと表示され、宇宙空間のようなエフェクトに包まれるステージへと彼女は降り立つ。そしてその髪がライトグリーンへ発光すると伸びていく。その後、髪型は旋風をイメージするサイドテールへと変化。それかららんこが前髪を撫でると白のメッシュが入る。そしてらんこは一度ステージの上に降り立ってからジャンプすると両脚に旋風が発生し、緑色のブーツが形成され装着された。

 

「煌めきホップ!」

 

その言葉と共にステージ部分にHOPの文字が浮かぶ。頭部には旋風の形を模した髪飾りがつけられてから右耳にのみイヤリングが付けられる。

 

「爽やかステップ!」

 

続けてステージがSTEPに変わると緑と白を強調した半袖のセーラー服及びミニスカート、スパッツが装着されていく。

 

「晴れ晴れジャンプ!」

 

更にステージがJUMPに切り替わり、両手にも旋風が発生。そのまま手に穴あきグローブが装着された。最後にスカイミラージュを振るうと其処から緑色のマフラーが出現して勢い良く首に巻きつき、それによって口元まで覆われた。ただ、その直後に自分でそのマフラーを少し緩めると口元が露わになる。

 

加えてマフラー緩めと同時にらんこは無愛想ながらも右目でのウインクはしっかりとした。

 

「大空に広がる一陣の風!キュアツイスター!」

 

こうして、変身を完了したらんこは最後にプリキュアとしての名乗りを言い放つとそこに風が吹き抜ける。そして、彼女はその場に降り立つ。名はキュアツイスター。旋風や竜巻の名を持つプリキュアがここに現れるのだった。




今回はひかる初登場回でしたが、イメージCVは下記に載せておきます。

雷田ひかる……CV 梶 裕貴さん

また次回もお楽しみに。
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