熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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戦いの後始末 逃げようとするらんこ

ランボーグを撃退したプリキュア達。そして、戦いが終わると早速彼女達はツイスターと彼女が抱えている少年……ひかるを心配してプリキュア達は駆け寄る。

 

「ツイスター、その子は大丈夫そうですか?」

 

「ツイスターも体の方、辛くない?」

 

ツイスターはスカイやプリズムの言葉を聞くと自分が抱えているひかるの方を見ると彼は気絶しているだけのか、息はある様子だった。

 

「良かった……無事で……」

 

「……あれ?もしかしてこの子、ひかる君!?」

 

スカイが安堵の顔つきを浮かべているとふとプリズムがある事に気がつく。それは、目の前で気絶しているのが自分の知り合いだという事だった。

 

「そっか……私やましろと同学年って言ってたし、同じ学校で知っててもおかしく無いのよね……」

 

らんこはやはり自分の事はわからないのにこの場にいる他の人の事は全員知っているソラやましろを見てどうしても複雑な気持ちが勝ってしまう。

 

「言われてみれば、確かにひかるだな。……何でキメラングの奴、ひかるを……」

 

「……あのマッドサイエンティストが言うには彼自身に何かの素質があるらしいわ」

 

それを聞いて四人は息を呑む。ひかるは今の時点ではまだプリキュアに変身できない一般人。だから戦う力なんて物は持ち合わせていない。しかし、それでもキメラングは彼をターゲットとして選んだ。彼の潜在能力に興味を持ったのである。

 

「でも、安心して。あのマッドサイエンティストはきっと私の世界にしかいない敵。だから私が元の世界に帰る時にアイツを道連れにして行けば良いだけの話よ」

 

「えっ、その……ツイスター。元の世界とかってどういう事?」

 

ツイスターは元の世界とかいう訳のわからない単語を言い出したためにスノー達は困惑。そもそも自分達はツイスターと初対面。そのためツイスターの事についてだけでも知りたい所だ。

 

「……ひとまず、この子はお願い。私は……どうにかしてマッドサイエンティストを道連れにして私の世界に帰る方法を探すから」

 

「いやいやいや、待てって。その体で歩かせられるかよ」

 

ツイスターはひかるをさっさとスノー達に引き渡してその場から逃げ出したかった。何しろ、先程からスカイやプリズムが自分に対して他人行儀な対応を取る度に二人が自分の知っている二人では無いと嫌でも思い知らされてしまう。

 

そのため、ツイスターにとっては精神的にもかなりキツいのだ。そんな思いをするくらいなら多少嫌われていたとしても自分の元いた世界にいたスカイやプリズムの所に……そしてこの世界には無い自分の家に帰った方がマシなのである。

 

「このくらい平気よ。ちょっとその辺で休んだらすぐに回復するから。それに、私よりもこの子はマッドサイエンティストがこの世界にいる限りはずっと狙われる。……私にかかればマッドサイエンティストなんてすぐに連れて帰れるから」

 

そう言って話を無理矢理切り、ひかるの身柄を押し付けて帰ろうとするツイスター。しかし、スノー達は納得がいかない。

 

「ちょっと待ってよ。キメラングを連れて帰るって言っても方法は何かあるの?」

 

「そうだぞ。それに、ツイスターにそのつもりが無くても俺達はツイスターに聞きたい事が沢山ある。だからもっとちゃんと話を……」

 

ツイスターが突き放そうとする度に他のプリキュア達はツイスターを引き止めようとする。そのため、ツイスターもそろそろ問答をするのが面倒になりつつあった。

 

「帰る方法ならマッドサイエンティストから聞けば良いわよ。それに、このままじゃこの子が……」

 

ツイスターは何かを恐れているような様子なのか焦っていた。しかし、そのせいでスノー達他のプリキュアとの考えが一致しない。このままでは双方の問答が更にヒートアップしてしまう。……そんな時だった。気を失っていたひかるの意識が戻ったのか彼が薄らと目を開け始める。

 

「あれ……ここは……」

 

「……あっ」

 

ツイスターはスノー達とのやり取りをしていた影響でひかるの目が覚めてしまったため、更に面倒な事態になると考えた。ただ、それを彼に悟られてはいけないのでまずは普通に彼を心配する事に。

 

「目が覚めたみたいね。大丈夫?」

 

「あれ……俺、確かいきなり変な科学者みたいな女の子から何かを被らされて……」

 

ひかるは自分が何故気絶していたかわからない様子であり、必死に記憶を辿るとキメラングのせいでドローンを頭部に被せられた所まで思い出す。

 

「あっ、そっか。そのせいで気絶してたん……あれ?」

 

ひかるがそこまで話をした所でいきなり顔が凍りついてしまう。ツイスターは何故いきなり彼が話を止めたのかがわからずに困惑。ひかるへと話しかける。

 

「いきなり黙ってどうしたのよ。何か不味い物でも……」

 

「あの……何で俺ずっとこの状態なんだ?」

 

「……は?」

 

ひかるは半ば困惑したような声色でそう話す。そして、彼のその声色を聞いてツイスターも今自分が何をしているのかを自覚。そして、頭の中が混乱し始めた。何故なら今、ひかるはツイスターにお姫様抱っこをされている状態だったのだ。

 

その原因は先程のひかる救出の事である。ランボーグからひかるを救出してその際に彼が被っていたドローン型ヘルメットを破壊したのは良いものの、ヘルメットを破壊した後に彼をそのまま地面に横倒しにしたままにする……というのは流石に可哀想と思ったツイスター。

 

そのためツイスターにとって一番抱えやすい体勢で支えていた方が良いという事でお姫様抱っこを無意識の内に選択してしまっていた。

 

「(確かにこれ……よく見たらお姫様抱っこじゃない!?何で!?)」

 

ツイスターは何故自分が無意識でお姫様抱っこを選んだのかが分からずに困惑。これは彼女が元いた世界での話なのでひかるは無関係なのだが、ツイスターことらんこは元の世界でランボーグ関連で無茶する度に自分の世界のスカイにお姫様抱っこをしょっちゅうされてきた。

 

そのため、緊急時になったら取り敢えず相手をお姫様抱っこすれば良いみたいな感じの謎の理論が完成。それを体が覚えてしまったのである。そして、本来ならお姫様抱っこというのは男が女に対してやる物。そのため余計に彼女の中に恥ずかしさが込み上げてくる。

 

「あ……ああ……」

 

「あの……つ、ツイスター……可能ならそろそろ下ろしてもらえないか?」

 

ツイスターはこれ以上ひかるをお姫様抱っこしていても恥ずかしさが増すばかりなので慌てて彼を地面に立たせる形で下す。そして、自分がやってしまった事を悔やむ。

 

「(しまった……やっちゃったわね……。これじゃあ、私の世界のソラの事言えないわ……)」

 

ツイスターは今回の件の影響で今にも頭を抱えたかったが、何故か体はあまり言うことを聞いてくれなかった。……それどころか彼女の視界がぼやけ始めてしまう。

 

「あ、あれ……力が……抜け……」

 

そのままツイスターの体は本人もわけがわからないくらいに無意識に崩れ落ちると変身解除。同時に肉体に凄まじい疲労感が襲いかかってきた。

 

「ツイスター!?」

 

プリズムが慌てて倒れてしまったツイスター……いや、変身解除してしまったためにらんこに肩を貸す形で支える。ただ、変身解除するという事は素顔を晒すという事で。

 

「えっ!?君はさっきの……らんこさん!?」

 

「ッ、ば、馬鹿……私の名前……ううっ……」

 

ひかるはらんこを見ると思わず彼女の名前を言ってしまう。そのため彼女は慌てるがもう遅い。完全に下の名前は他のプリキュア達に割れてしまった。そして、らんこは疲れが原因とは言えやってしまったと思う。他人の目の前で変身解除して正体を晒してしまったのである。

 

「らんこちゃんって言うんだね……」

 

するとその直後、スノーはツイスターことらんこの名前を聞いたために自分も変身解除。同時にサンライズ、スカイ、プリズムも次々と変身解除する。

 

「はぁ!?ちょっ、ちょっとアンタ達。何でここで……」

 

「だってらんこちゃんだってプリキュアなのにあなただけ正体を晒すなんて不公平だよ」

 

「ユキの言う通りだ。それにらんこさん、あなたの事情は知らないけど……今の現状でらんこさんを心配しないなんて薄情者がする事だろ」

 

ユキとアサヒが変身解除した理由を言うとソラやましろも同じ気持ちなのか微笑んで頷く。ただ、らんこは未だにギョッとしていた。それはユキ達の理由に賛同できなかったからでは無い。その理由はすぐ近くにいた。

 

「は?は?……何で……虹ヶ丘に……ましろさん!?そっちの子二人は初めてだけど……え?」

 

一同が声のする方を向くとそこには自分の知り合いであるアサヒやましろがプリキュアに変身していたとは思っていなかったひかるである。そう……アサヒとましろはらんこを助けたいあまり、自分を知っている一般人の前で変身解除して正体を晒すというやらかしをしてしまったのだ。

 

「「……あっ!し、しまったぁあっ!?」」

 

「ましろさん……私の時はあんなにあげはさん相手にバラしたりするのを咎めたのに!!」

 

「あー……やっぱりこっちの世界でもソラはあげは姉さん相手に隠し事できなかったのね」

 

ソラは以前あげはが久しぶりに虹ヶ丘家へと訪れた際にプリキュアの事に関して色々と口を滑らせそうになってましろに静止させられていた。らんこも丁度その件に関して見ていたため、それと似たような事がこちらの世界でもあったのだと察する。

 

「本当に虹ヶ丘の姉弟が変身してたんだな……流石謎に包まれた虹ヶ丘のお婆さんの孫だ……」

 

「あー……そういえばヨヨさんって周りから見たら色々と不思議な人に思っちゃいますよね」

 

尚、ヨヨの事に関してはましろの両親が仕事で海外にいるために二人の授業参観やら三者懇談やらで時折り学校に姿を現すため、それを見た生徒達の中でも一種の噂になるくらいは不思議な人扱いされているらしい。

 

「ち、ち、ち、違うから。私は虹ヶ丘ましろじゃないよ。他人の空似だよ?」

 

「ましろ、今更取り繕っても多分遅い……もう腹括ろう……」

 

「うぅ……」

 

ましろはどうにか訂正しようとするがハッキリ言ってもう遅い。これにより、二人は学校の知り合い相手に完全に正体バレしてしまう事になる。

 

「ごめん……私が変身解除しちゃったから……」

 

「ユキさんは気にしないで良いですよ!もうバレてしまったのは仕方ありませんから……」

 

そして、そんな中でもユキが自分を責めてしまうのはいつもの光景である。とは言え、今回はユキもそこまで深くは悩まなかった。彼女もある程度成長したという事だろう。

 

それはさておき、この後の事だ。まずはキメラングの被害に遭ったらんことひかるの二人をどうするかである。ただ、答えはもう最初からほぼ決まっていた。

 

「取り敢えず、ひかるは一度俺達の家に戻ってヨヨさんに治療してもらおうか」

 

「え?別に俺は何とも無いんだけどなぁ」

 

「それでもだよ」

 

ひかるはキメラングの手によって先程まで洗脳……つまり、頭やその中の脳に大きな負荷をかけさせられている。そのため、外面上のダメージが無くても危険は残っているかもしれない。

 

「うーん、診てもらうにしてもこういう時はお医者さんの方に行った方が良いんじゃないんですか?」

 

「……いえ、彼を洗脳してたのはあのマッドサイエンティスト。前に私はランボーグの中に入れられた事があったけど、その時も普通の治療じゃ無理だったわ」

 

「お、おう。しれっとらんこさんヤバい状況を経験してたんだな。……兎に角、普通の治療をして下手に後遺症とか残ったら色々とヤバイ。だから俺達と来てくれ」

 

アサヒはらんこがランボーグの中に入るという地味にかなり危険な事をしでかしたのだと知るとそれはさておき、ひかるは虹ヶ丘家に行く事が決定した。

 

「それと……」

 

そのままその場の全員がらんこを見るとらんこは先程よりはマシになったが、かなり疲弊し切った顔で意識も朦朧としている状態だった。むしろ、今こうしてちゃんと話せているのが奇跡なくらいである。

 

「らんこちゃん……で良いよね?らんこちゃんも私の家に来て休んで」

 

「……だからさっきも言ったけど私はそんな事しなくて良い。さっさとキメラング連れて自分の世界に……うっ……」

 

らんこが最低限の体力が回復したと考えて震える脚を手で支える形で立ちあがろうとするが、やはりまだ脚は疲れ切っているせいで体を支えられずに震えていた。

 

「そんな体で街中を歩かせられないよ」

 

「それにだけどらんこさん。……家、こっちの世界には無いんだろ?」

 

「ッ……」

 

らんこはひかるから指摘されて唇を噛み締める。そう、今のらんこは家無しになっているために行くアテも無い。しかも世界が違うからお金を下ろそうにも自分の銀行口座も無いだろう。つまり、宿も取れないわけだ。

 

「それに体だって回復してない。このままじゃその内道端で倒れて警察のお世話になるだろ。……だから一度虹ヶ丘さんの家で休んだ方が良いと思う」

 

「お願い、私達はらんこちゃんからしたら赤の他人で信用できないかもだけど……。皆はらんこちゃんを見捨てるような人達じゃ無いよ」

 

ユキからの真剣な眼差しを向けられたらんこ。そして、他の四人からも虹ヶ丘家にお世話になって欲しいと言わんばかりの目線を向けられるとこれ以上は意地を張れなかった。

 

「ああもう!わかった、わかったから……」

 

「ホッ、良かった……」

 

らんこは正直、虹ヶ丘家にお世話になるの申し訳ない気持ちもあった。自分はこの世界のソラやましろからしてみたら素性がよく分からない他人でしか無い。そのため、どうしても接し方が余所余所しくなってしまう。らんこはそんな二人にあまり気を使わせたくなかった。

 

しかし、今の現状。らんこは自分の家は無く、この世界についてよく知らない事ばかり。少なくとも帰り方が分からない以上は結局虹ヶ丘家にお世話になるしか手が無かった。

 

「えるぅ!」

 

「あ、エルちゃんもホッとしてるみたいですよ」

 

「えぇ、そうね……」

 

この様子をずっと見ていたエルもらんこがこの場に残ってくれて良かったと言わんばかりの顔を向ける。そして、同時にそこに一台の見覚えのある車……ハマーが到着するのだった。




また次回もお楽しみに。
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