ランボーグに捕まって締め上げられるユキ。彼女が痛みに悶える中で、そこにやってきたソラは傷だらけで満身創痍ながらもユキを助けるべくカバトン達に立ち向かおうとしていたのだ。
「ソラ……ちゃん……ダメ、逃げて……ゔっ!?」
ユキはこの間にもランボーグに締め付けられていた。ユキの体の骨が軋んで悲鳴を上げ始めていた。
「ユキさんに手を出すくらいなら私が相手します……」
「ふん。ランボーグ、その脇役はもう動けまい。ソラを潰すぞ」
カバトンがそう言ってようやくユキはランボーグから解放されると地面にドサリと落とされて体を打ちつける。ユキの意識は朦朧としており、目は虚ろになる中でどうにかソラへと声を上げる。
「ソラ……ちゃん」
「ユキさんをこんな目に……絶対に許しません……くっ」
「ソラちゃん、無茶だよ!」
ソラはどうにか戦おうとするものの、ソラの体も限界に来ていたせいでその場に倒れてしまう。ましろがそんなソラを心配する中、ソラの胸ポケットに入っていた手帳が落ちるとそのままカバトンの近くに行ってしまった。
「あん?これは……」
カバトンが自分の近くに落ちた手帳が何なのか気になってそれを拾う。そして、表紙を見た。
「何々?“私のヒーロー手帳”?何だこりゃ」
カバトンは首を傾げつつ、手にした手帳のページを開くと中身を読み始める。
「んん?“空の上を怖がっていたらヒーローは務まらない”、“ヒーローは泣いている子供を絶対に見捨てない”……ぶふっ!」
カバトンが中身を見るとそれはソラにとっては自分がヒーローを目指す上で必要となるであろう心構えが幾つも書かれていた。ただ、カバトンからしてみればソラのヒーローとしての心構えなど弱者の戯言にしか思えなかった。
「“絶対ヒーローになるぞ”ヒーロー……ぎゃははははっ!」
カバトンはソラの心構えを馬鹿にすると嘲笑い始め、手帳のページを掴む。ユキはそれを見て弱りきった目線を向けつつ、掠れそうな声で叫んだ。
「ダメ……やめてぇええ!」
その瞬間、カバトンは無情にもページを思い切り破く。そのままソラにとって大切な手帳のページは全て破り捨てられてしまった。
「ああっ!!」
「力の無い奴はガタガタ震えて、メソメソ泣いてれば良いのねん!」
そんな中、壁にめり込んでいたアサヒがそこから出てくるとカバトンの行動に憤って声を上げる。しかし、もう先程のようなオーラは出てこない。今のアサヒではカバトンやランボーグ相手に太刀打ちすらできないだろう。
「テメェ……ソラさんの大切な物をよくも……」
「ふん。そんな事言った所で俺様に勝てないような弱い奴が悪いのねん!せいぜいそこで勝手に怒ってるのねん!」
「ぐ……」
アサヒは悔しさを滲ませる。そんな中で地面に倒れているユキは痛みに耐えながら立とうとした。だが、もう体は立つ事すら叶わないくらいの傷を負っている。二度程立とうとして崩れ落ちたタイミングで彼女の顔は絶望感で染まっていた。
「嫌だよ……。ソラちゃんに助けてもらってばかりなのに……、肝心な時に私は役立たずで……」
ユキの脳裏に嫌な光景が浮かぶ。そんな中でもソラは歯を食いしばり、立ち上がろうとして足掻いていた。
「く……うぅ……」
「酷いよ、もう止めて!」
「あん?」
ましろがカバトンの非道な行いに声を上げるが、彼に睨まれて思わず後退りをしてしまう。すると、ソラが傷ついた体でフラフラとしつつも立ち上がりかける。
「ヒーロー気取りが」
そこにカバトンがページを破いて表紙と裏表紙だけになった手帳をソラに軽く弾く形で返すとそれがソラの頭に当たり、彼女は膝を付いてしまう。
「ッ……」
ましろはもう見ていられないとばかりに目を背け、エルの方も恐怖で涙目になった。それでもソラはめげずに赤ちゃんの方を向いて微笑む。
「……大丈夫。パパとママの所に……お家に帰ろう」
それからソラは声を上げながら体に力を入れて必死に立ち上がる。流石のカバトンもこのソラの根性を見てドン引き。
「お前、まだ立てるとかヒーローを通り越してゾンビなのねん!?」
そんなカバトンの言葉を他所にソラはランボーグと向き合う。その姿は先程破られたソラのヒーロー手帳の一ページに書かれていた文や絵と全く同じ情景だったのだ。
「相手がどんなに強くても……正しい事を最後までやり抜く。それが……ヒーロー!」
「ソラちゃん……」
その瞬間だった。ソラの覚悟が具現化するかのように胸の中から突如として青い光が生成されて飛び出す。その光は羽の付いたピンクのペン……ミラージュペンとしてその姿を見せた。
それと同時にエルの体が紫に光ると彼女は叫ぶ。まるで自分の力をソラへと届けるように。
「ぷいきゅあああ!」
エルから飛び出した眩い光はソラへと一直線に飛ぶとソラはそれをしっかりと掴む。それはユキやアサヒが持っているようなくすんだ色の丸いアクセサリーだった。ただし、くすんでいた色はすぐに変化すると水色をベースに太陽のようなマークが描かれた物へと色付いた。
「ソラさんが持ってるアレ……まさか」
「私達の持ってるアクセサリーと同じ形……」
ソラはエルから受け取ったアクセサリー……スカイトーンを手にすると脳裏にそれの使い方も一緒に頭の中に浮かんでくる。同時にソラは己の覚悟を宣言として叫ぶ。
「……ヒーローの出番です!」
ソラの言葉と共にミラージュペンはマイク型の変身アイテムであるスカイミラージュに変化。それからスカイミラージュを手に掴みつつ叫ぶ。
「スカイミラージュ!トーンコネクト!」
ソラはスカイトーンをスカイミラージュのスロット部分に装填。それと同時にスカイミラージュの上部に付いている部分が携帯扇風機のように回転を開始。
「ひろがるチェンジ!スカイ!」
ソラの言葉と同時に回転部分にSKYと文字が浮かび上がる。するとソラは宇宙空間にも似た謎の場所に移動。それからサイドテールが一度解かれてから髪が伸び、スカイブルーのツインテールへと変化。その先端はピンクになっていた。ソラは髪の変化と同時にディスク型のステージに降り立ち、ジャンプ。直後に両足に青のブーツを装着する。
「煌めきホップ!」
その言葉と共にディスク型ステージ部分にHOPの文字が浮かぶ。それから頭に翼を模した髪飾りが、左耳にはイヤーカフ。右耳には月を模したイヤリングが装着。
「爽やかステップ!」
続けてステージがSTEPに変わるとソラの体に青と白を基調としたドレスが次々と纏われていく。色合い的に青空をモチーフとしているのだろう。それから両脚の足元から白のハイソックスが出てくる形で履かれた。
「晴れ晴れジャンプ!」
更にステージがJUMPに切り替わり、ソラがジャンプしつつ手を叩くと同時に両手にハートマークのオープンフィンガーグローブが装着。それから左手で肩をなぞるように動かすとヒーローの象徴とも言える青く豪華なたなびくマントが生えてくる。
衣装の変化を終えると左目を閉じてウインク。それから空間が青を基調とした物になるとそこに画面を五分割するように線が入り、髪のアップ、正面からの脚、右側からの体、左斜め後ろからの体、正面の顔が映される。そして、そのまま顔の画面が全体に広がる形で映されてその状態でソラが自らの名を名乗った。
「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」
ソラが名乗りを終えると下から青い沢山の羽が舞い踊る形でエフェクトとなり、変身を完了。そこに一人の戦士が現れる。名前はキュアスカイ……ソラが戦士として覚醒した瞬間であった。
「私……どうしちゃったんですか!?」
ただ、やっぱりソラことスカイは自らの変化に驚いており、それを見たアサヒやユキ、ましろも目を疑った。先程までそこにいたソラと比べてあまりにも衣装や髪型が違いすぎるからである。
「何あれ……」
「ソラさんの姿がいきなり変わって……」
「えるぅ!」
「私、どうしちゃったんですか!?」
スカイが自分の体をマジマジと見つめる中でカバトンの方も動揺が隠しきれなかったのか、焦ったように声を上げた。
「あ、アイツをやっつけろ!ランボーグ!」
「ランボーグ!」
「ッ、ソラちゃん!」
カバトンに指示されたランボーグはキュアスカイを倒すために前に出てくる。それから巨大な腕を振り下ろそうとするとユキはソラがまた痛めつけられると思って声を上げた。
だが、その直後に彼女の姿はそこにおらず。一同はいきなり消えたソラを探した。
「あれ!?ソラちゃん!?」
「にゃーっはっはっは!いきなり姿が変わってビックリこそしたが、所詮はただの脇役……」
「いや。上だ、上!」
アサヒの言葉にその場の全員が上を見上げると空高くに見える小さな人影。そしてそれはランボーグからの攻撃を回避するために思いっきり上に跳んだスカイだった。
「はわわわっ!?この力は……」
そのジャンプ力は半端では無く、ジャンプをやったスカイ自身も驚いていた。勿論下にいる面々も驚くわけで。
「嘘!?」
「あんなに跳べるの!?」
「スッゲェ……」
「あいあーい!」
そんな中でもスカイはどうにか力をコントロール。近くにあった建物の屋上に華麗に着地すると自分の体に力が漲る事を確かめる。
「くっ、少し高く跳べるからって調子に乗るな!ランボーグ!」
カバトンはスカイの力をこけおどしと判断するとランボーグへと指示し、ランボーグも同じくジャンプするとスカイのいる屋上に降り立つ。
「ランボーグ!」
そんな中、スカイは恐れる事なくランボーグへと拳を突き出すと戦意十分とばかりに宣言する。
「おいでなさい!」
ランボーグはスカイからの行動に乗ると早速右腕でパンチを繰り出す。ランボーグがショベルカーモチーフという事もあってその重量を活かした攻撃と見て取れる。しかし、そのパンチをスカイは左手一本で受け止めてしまう。
「ラン!?」
ただ、ランボーグは先程までなら自分が攻撃したら簡単に吹き飛ばせていた相手にパンチを受け止められるとは思っておらず。混乱したような声を上げる。
「ランボーグ!」
だったら様子見から一転。本気の拳をランボーグが放つと今度こそスカイを叩きのめそうとした。
「たあっ!」
スカイはランボーグの拳に合わせて踏み込むと、すかさず繰り出した右手の掌底によってランボーグを吹き飛ばす。ランボーグはこれを受けて呆気なく屋上から落下していく。その先にはカバトンがおり、いきなり落ちてきたランボーグに慌て始めた。
「あわわわっ!?」
カバトンは間一髪で下敷きにされるのを避けるが、場面への激突の衝撃で吹き飛ばされてひっくり返る。
「つ、TUEEE……」
そして、スカイは吹っ飛ばされたランボーグを追いかける形で屋上から飛び出すと建物の壁を走りつつ地上のランボーグとの距離を縮めていく。そのまま跳び上がって射程内に捉えると脳裏に浮かんだ自分の必殺技とも呼べる持ち技を使う。
それは自身の後ろに存在する大きな雲をその場所に向かう形で吹き飛ばし、広がる青空をバックに一気に加速しつつ全身。拳を放つために右腕を後ろに下げて構えたポーズを取ると思い切り踏み込む。それと同時にその体が水色の拳のオーラに包まれ、流星の如く突っ込むキュアスカイからの拳の一撃。
「ヒーローガール!スカイパンチ!」
スカイが突撃すると青い拳がランボーグへと命中。その体が浄化されたようにキラキラと輝いていく。
「スミキッタァ〜」
ランボーグは青い羽が下から舞い上がるようなエフェクトと共に消滅。元のショベルカーへと戻るのだった。同時にランボーグに破壊された地面等は修復されていく。
そして、戦いを終えたスカイがカバトンの方を向くとカバトンの方はそんなスカイに自分もやられる事への恐怖を感じたのか、呪文を口にして撤退していく事に。
「ヒッ!カバトントン!」
カバトンもいなくなり、危険が無くなった所でスカイが一息つくと変身が解けて元のソラの姿に戻った。その際にいきなり空中に出てきたミラージュペンを慌ててキャッチする。
「はわわっ!……これは一体……」
ソラはミラージュペンの力によって与えられた不思議な力、プリキュアとしての能力に困惑するばかりだった。
「える!」
そんな中、ソラはエルを抱えたましろの方を向くと彼女の安否を問いかける。
「怪我はありませんか?」
「……へ?わ、私は大丈夫だけど……」
ましろは大丈夫そうであり、そこにアサヒも歩いてくる。彼もダメージを受けてこそいたが、先程のキラキラの影響で多少は回復しているらしい。
「俺も何とか動ける。ちょっと体は痛いけど……」
「ほっ……。アサヒ君も無事で良かった……はっ!?ユキさんは!!」
ソラは慌ててユキの方を向く。彼女はカバトンやランボーグに立て続けに痛めつけられていたので一番怪我が酷い状態だと思い出したのだ。
「私も平気だよ……このくらいの怪我なんて……うっ!?」
ユキはどうにか立つとソラへと声をかける。……ただ、アサヒと同じようにダメージが多少回復しても多少で済まない程のダメージを受けていたユキは体中がまた悲鳴を上げる。
「ユキさん!?」
「大丈夫……歩くくらいならできるから」
しかし、ユキがこの時点でかなり痩せ我慢しているのは明らかであった。足元はガクガクと震えているし、服の袖から見えている肌の部分の怪我もまだ残っているからだ。
「ユキ、ちょっと無理し過ぎだぞ」
「うん……今度から気をつける」
アサヒからの指摘にユキは落ち込んだように小さく頷く。そんな中でましろがソラに改めて問いかけた。
「そうだ、そういえばソラちゃん。私からの質問だけど……ソラちゃんってヒーローなの?」
ましろはソラの活躍っぷりにヒーローなのかと問いかける。それを受けて首を傾げるソラ。それから彼女が返した答えは……。
「あはは、私にもわかりません……」
ソラからのその言葉にましろは思わず苦笑い。彼女が抱くエルは笑っていた。
そして、同時刻。その様子を遠くから見る一人の影。それはスカイランドでユキを足止めした仮面の男だった。
「……まさか俺の力と共鳴した奴以外にもあんな力を使える奴がいたのか……?いや、新しく生み出したの間違いか。それに、もう一つ見つけた。俺の力に共鳴する力」
そう言って仮面の男はアサヒの方を向く。どうやら彼が先程力を使った時にユキの時と同じく共鳴したらしい。
「もう少し様子を見てやろう。俺が行くのはそれからだ」
仮面の男はそう言って去っていく。果たして、男の目的とは何なのか。また、この戦いがまだこれから繰り広げられる長い戦いのほんの始まりである事をこの時の四人は知らない。
また次回もお楽しみに。