キメラングの強さを何となく感じ取った二人。そして、キメラングは早速ドローンを使って二人へとレーザービームを浴びせようとする。
「さぁこの弾幕から逃げられるかな?」
ドローンは動き回るスノーとサンライズを追うようにレーザーを継続して放ってくる。それに対して二人はレーザーを回避しながらキメラングの動きを注意深く見ていた。
「キメラングは動かないね」
「多分俺達が隙を晒すなり大きく崩れるのを待ってるんだろ」
「そっか、ドローンが狩りをするための鳥さんの役目をしてるんだ」
「……あー、スカイランドでは鳥が猟犬みたいな役割してるのか……。敢えて名付けるなら猟鳥って所か?」
サンライズはスノーと住んでる世界が違う事によるジェネレーションギャップを感じて苦笑い。そしてそれはキメラングも感じたようで。
「ああなるほど、キュアスノーの方はスカイランド人。キュアサンライズの方はこっちの世界の人ってわけか」
「いや、多分俺もスカイランド人。だけど物心つく前にはこっちにいたからこっち育ちってだけ」
キメラングはそんなサンライズの生い立ちに興味深そうな顔を見せるとサンライズへと話しかけた。
「へぇ。それは随分と気になる話だね。その感じだと君を連れてきた親はスカイランドからこっちの世界に来た事になるのかい?」
「多分な。っと、お前とのお喋りするのもここまでだ!」
スノーとサンライズはキメラングの使役する六機のドローンに背中合わせの状態で取り囲まれる。それは先程二人が例えた通りに獲物を追い詰めた状態の猟犬達だった。ただ、二人の顔に焦りは見えない。むしろ、逆にこの状態を誘ったような雰囲気である。
「……さて、袋小路になった君達だけど。一応聞いておこうか。投降するつもりは?」
「「無い!」」
「それは残念」
二人に断られて僅かに残念そうにするキメラング。ただ、彼女はすぐに攻撃指示を出さなかった。何しろ、先程一度ドローンを全機無力化に追い込んだ程のコンビである。しかも今の二人の動きはこの状況を誘っているようにも見えた。
「(妙に二人がやられてるのがこの状況になるのを誘っているように見えるねぇ。できるならさっさと一斉攻撃したいんだけどなぁ……)」
キメラングはもし逆の立場なら絶対にこの状況にするのは何かしら作戦を練った上での事だと考える。むしろ、作戦も何も無しにここまでアッサリと包囲されるなんて間抜けが過ぎるからだ。
「(さぁ、何かあるんだろ?この状況を打開する一手。やってみせなよ)」
キメラングがそう考えるとスノーが地面に手を当てていた。やはりキメラングの予想通り何かの打開策があると思った通りだ。
「はあっ!」
その瞬間、スノーが地面へと自らの力を送り込むとサンライズも構える。直後にサンライズの足元に氷の塊が勢い良く飛び出すとそれが発射台のようにサンライズを一気に前に飛ばす。
「ッ!?」
そして、サンライズが飛び出した先にいるのはキメラングである。彼女は先にドローンをどうにかすると思っていたために僅かに困惑。対応するために呪文を言う。
「私にそう簡単に当てられると思わない事だね。キメランラン」
同時にキメラングは呪文でワープして消える。同時に無防備になってしまった加えてスノーへと包囲射撃を放つようにサインを送っていたキメラング。
「(孤立したスノーを狙って)」
そして、キメラングのサインを受けたドローン達。ドローン達はそれを受けてすかさずスノーへとレーザーの銃口を構えると全方位からの一斉斉射を放つ。するとレーザービームがスノーに命中した瞬間。いきなりスノーの姿が薄く溶けて消えてしまう。
「えっ!?」
キメラングもいきなり消えたスノーに困惑。そして六機いるドローン達も同じようにいきなり消えたスノーに混乱したのか慌てたようにスノーのいた場所にその全てが集まっていく。
「どういう……」
「氷雪拳……雪ノ型だよ」
その声がしてキメラングが目を移すとそれは少し離れた位置にスノーがいた。そして彼女はこの状況を説明する。
氷雪拳・雪ノ型。それは自分の今いる場所に姿が全く同じ幻影を作り出して自らはそこから気が付かれずに別の場所に移動することができる技だ。
この技のおかげでスノーはレーザービームによる全方位からの集中砲火を回避したのである。
「ドローンの位置を一箇所に集めてくれてありがとよ!」
更にスノーがいきなりいなくなった事で困惑したドローン達がスノーの元いた場所……つまり同じ場所に固まるように集まってしまった事で今度は二人の次の手が刺さる事になる。
そして、キメラングに対して先程蹴りを放とうとして攻撃を透かされたサンライズは着地した場所ですかさず体の向きを反転。集まったドローンの方を向くと浄化技を使う。
「ひろがる!サンライズブレイク!」
サンライズが生成した強力な炎の拳が一箇所に集まった六機のドローンを粉砕するために振り下ろされる。
「甘いよ!バリア展開!」
対してドローンはキメラングの指示によりドローン達の力を結集して大きめなバリアを展開。攻撃を防ごうとする。
「構わない!このままバリアごと砕く!だぁああっ!」
バリアの上から鉄槌として振り下ろす。その一撃がバリアに命中すると六機のドローンは出力を上げていく。勿論六機分のバリアが集中している事もあってこれだけならバリアを破る事は叶わない。
そのためサンライズが更に力を込めるとバリアへとかかる熱量が増大していく。ただ、それでもやはり破壊するにはいまいち力不足。それを見たキメラングは先程のシャドーの攻撃が異常だった事、普通はバリアなんて壊されなくて当たり前だと感じる。
「確かに凄いパワーなのは認める。だけど、君達の力じゃバリアを壊すのは無理だよ」
「ああ、残念だけどその通りみたいだな。……ただ、俺の狙いはバリアの破壊じゃ無い!」
サンライズが自身の持てる力をどんどん増大していく。その炎の持つ熱は高まる一方だった。それを受けてキメラングは何かに気がついた。
「はぁあああっ!」
サンライズブレイクの熱量が増幅していくとそれに負けまいとドローン達もバリアにかけるエネルギーを増やす。だが、そうなるとドローン側に一つ問題が起きる。その問題と言うのが……。
「ッ、まさかドローンのオーバーヒート狙いか!?」
キメラングが気がついた瞬間、ドローンの機体から少しずつ火花が出始めると出力が一気に低下。バリアが強制解除されてしまう。同時にサンライズブレイクも消えてしまった。
「ッ、はぁ……はぁ……良し、止めたぞ。ドローンのバリア機能!」
何故ドローンがオーバーヒートを起こしたのか。その理由はサンライズブレイクに込められた熱量とそれによって発生する熱線だった。サンライズブレイクは文字通り炎で生成された拳。熱量の塊のような物だ。
「チッ……私のドローンの数少ない欠点を見つけて突くなんてやってくれるねぇ」
「へっ、幾らお前が天才って言っても精密機械は精密機械。ずっと熱い状態なら当然オーバーヒートすると思ったよ」
そして、キメラングのドローンはバリアでそれを防いでいる間、バリアを伝ってその熱量はドローンを襲い続けた。当然キメラングもオーバーヒート対策のための冷却装置をしっかり仕込んでいる。ただ、サンライズブレイクの熱量が爆発的に増えた影響でその冷却を圧倒的に上回る程の熱量に晒されたドローン達。
更に言えばスノーへの攻撃やバリアを展開するためにドローンが一箇所に集まったのも災いした。そのおかげで熱を一点集中させるだけで全てのドローンをオーバーヒートの対象内にできたという事である。
「だけど君はさっきのフルパワーで満身創痍、ドローンを倒すには至らないかな」
「ああそれな。悪いけど一人分だけじゃ無い」
その瞬間、キメラングの足元にいきなり冷たい感覚がすると両脚が凍結。それによって彼女の動きを止めてしまった。
「あっ……」
「二人分の力だよ!ヒーローガール!スノーインパクト!」
スノーはサンライズと話しているキメラングが見せた大きな隙を利用して彼女の動きを一瞬だけ止める。そして、すかさず跳び上がるとドローンの真上から氷のエネルギーを両脚に集約したドロップキックを放つ。
「はぁあああっ!」
「ッ!止めろ!」
キメラングはドローンが壊されると思って声を上げるがもう遅い。スノーから放たれたドロップキックがドローンへと迫っていった。
「はぁ、仕方ない」
そんな時だった。シャドーが小さく呟くといきなり彼がスノーのドロップキックの前に割って入った。
「えっ!?」
「くっ……」
シャドーは手にした長い刀でスノーインパクトを真正面から受け止めるとどうにか押さえ込もうと耐える。
「ッ……はあっ!」
その瞬間、シャドーはこのままでは勝てないと判断して自らの力を前回の二人の合体技とぶつかり合った時と同じくらいの解放。そこまでしてスノーの攻撃と相打ちになるとお互いに距離を取る。
「……嘘、何でシャドーが……ッ!」
スノーはツイスターと戦っているはずのシャドーが何故ここにいるのか考えて周りを見渡すと何かに気がつく。同時にサンライズもそれを視界に捉えた。……そこではシャドーと戦っていたはずのツイスターが地面に倒れ伏していたのである。
「「ツイスター!?」」
「く……ううっ……何よ、あのサムライソードマン……強すぎるわ……」
ツイスターは酷く消耗した様子で倒れており、二人は何故ここまで彼女がやられたのかわからずに困惑した。
「……キメラング、大丈夫か?」
そして、シャドーは二人がツイスターの方に行ったのを見てキメラングの元に向かうと彼女を拘束する氷を斬って破壊した。
「ああ、すまない。……君、ドローンのバリアを単独で壊しかけたの見た時から思ってたけど……強いんだね」
「別に。そういうお前こそ油断しなければ強いんだろう?……あまりあの二人を侮るな」
「……確かにそのようだね。認識を改める必要があるのは認めるよ。それにしても、何で君が私を助けるんだい?さっき私がこの世界を実験台にするって言った時怒っただろう」
キメラングはシャドーに対して何故自分を助けたのか疑問符に感じると質問する。それに対してシャドーはキメラングに背中を向けつつ呟いた。
「さぁな……。俺だって何故お前を助けようと思ったのかはわからん。普段だったら見捨ててる所だ」
「どうやら君も故郷と生き別れたキュアサンライズ同様に色々と訳ありって所だろうね」
キメラングはそう言うと早速オーバーヒートしたせいでフラフラとした飛行をしているドローンの元に行く。
「……どうするんだ?」
「あちゃー……さっきの熱気で冷却装置の水分全部持ってかれたみたいだね。ここも要改善かな。追加の冷却装置の水分はあるけど、全部復活させたら稼働時間は三分の一って所か」
「……だったらどうする?今のままでも使い物にならないのだろう?」
「ああ。だから二機だけ半分くらいの稼働時間で復活させる。そうすれば残り四機分は節約できるし、サポートくらいならやれそうだからね」
それからシャドーがランボーグの方を見るとそこではまだスカイとプリズムが交戦中と言った所だった。そのためその様子を見ようとするといきなりそちらの方から光が放たれる。
「ッ……む、プリキュア二人がいなくなったか」.
どうやらこの光でスカイとプリズムが撤退した様子であり、ランボーグがターゲットを見失ってキョロキョロとしていた。
そして改めて三人の方を見るとそちらもプリキュア三人が撤退。誰もいなくなっていた。
「スノー、サンライズ、ツイスターもいない。諦めた……というわけでも無さそうだな」
「あー、多分だけど向こうもツイスターとのお話し合いをする感じだろうね。足並みが揃って無さそうだったから」
キメラングは先程までツイスター一人だけ先走っていた事から五人の心はまだ一つでは無いと予想。今の撤退はその心を一つにするために話し合い目的だと睨んでいた。
「なるほど、どうする?今なら追撃できるが」
「残念だけどそれは無理かな。動かさないドローン君達も冷却装置以外に壊れてる所があるからその応急処置はいる。それをしないと私自身がドローンを直接持って帰らないといけなくなるし。あと、さっき君自身が言っただろう?プリキュアを侮るなと」
キメラングの言葉を聞いてシャドーは納得して頷く。彼女達も無理な追撃をして逆襲されるとシャドーは兎も角、キメラング側は何度も言っている通り補給ができない。それにシャドーに助けてもらったから無事だったものの、先程キメラングはドローンを壊される事だって覚悟したのだ。
ドローンが破壊されたら復帰にそれなりに時間がかかるのでできればそれはしたくないのである。
「ランボーグ!」
「……待て、ランボーグ」
ただ、ランボーグは未だに暴れたいのかプリキュアを追おうと動こうとする。それに対してシャドーが声をかけると正面に移動して刀を突きつけた。
「ラン!?」
「少しだけ待ってろ。お前一人が突っ込んでも負けるだけだ」
「ラ、ラン」
ランボーグはシャドーからの圧に負けたのか大人しくなる。こうしてプリキュア側は一時的に退いたものの、敵からの追撃は無しで済んだ。これにより、現場は一時的に静寂に包まれることになる。
また次回もお楽しみに。