ツイスターは先程シャドーに叩き伏せられた事を思い出すと胸の辺りに苦しさを感じる。それは今の自分一人ではどうにもできない差だった。
〜回想〜
ツイスターは連続で拳を振るい、シャドーを攻め立てる。しかし、彼は涼しい顔のまま両手に構えた刀で全て防御。防いでいた。
こうなると焦るのはツイスター自身。彼女はひかるを一刻も早く助けるためにムキになってしまう。
「このっ!このっ!」
「どれだけお前は俺を失望させるつもりだ?真面目にやれ」
ツイスターの動きは単純化しており、シャドーはそれを当然のように防ぐ。ただ、楽しい勝負を期待するシャドーにとってこの戦いはつまらない物になってきていた。
「真面目に……やってるわよ!」
ツイスターがシャドーからの言葉を聞いて小さな竜巻のような風を纏わせた状態で蹴りを放つ。しかし、これはシャドーに二本の刀をクロスさせる形で的確に防御されて止められた。
「ふん」
「誰がこれで終わりですって?」
その瞬間、ツイスターが脚に予め纏わせていた小さな竜巻を放出。その威力でシャドーを吹き飛ばすと近くの建物の壁に激突させた。
「良し、どうにかシャドーを切り崩せた。今の内にひかるを」
ツイスターはシャドーを風の威力で吹き飛ばし、壁にぶつける事で彼を無理矢理引き剥がしてからひかるを助けようと考えたのだ。
「……ここまでお前が俺とやり合うつもりが無いと逆に苛立ってくるな。だが、俺の事をそうやっていつまでも過小評価するのなら」
シャドーは吹き飛ばれた壁から出てくるとひかるを探しているツイスターを睨む。
それから彼は走り出すと真横から迫り、問答無用で正面を向いている間は死角の位置になる右横から迫ると同じく死角である腹の辺りに膝蹴りを叩き込む。
「が……ああ……」
「情けない戦いをする者にはそれ相応の報いを与えてやる」
シャドーはツイスターがよろけた瞬間を狙ってすかさず両手の刀で彼女を斬りつけると彼女の体は痛みで悲鳴を上げる。
「ああああっ!?」
「こんな物で済むと思うな。俺の事を侮った罪はまだ消えてないぞ」
シャドーは痛みで動けないツイスターを連続で斬りつける。しかも長さが短い影響でそれだけ刀を振るうスピードが早い二刀流による連続斬撃は彼女の体を容赦無く痛ぶっていく。
「くっ、ううっ……ああっ!?」
加えてツイスターは回復したとはいえ万全な状態からは程遠い。そのせいで彼女の体力はあっという間に削られていく。
「……終わりだ」
ツイスターはシャドーに対して大した抵抗すらできずにただ攻撃を受け続けるのみ。そして、シャドーは良い加減トドメと言わんばかりに円月殺法で構えるとエフェクトとして紅い月が出現。
「……ッ」
「ひろがる!シャドーブラッドムーン!」
ツイスターはそれを見て心の中にやられる事への恐怖が湧くものの、それを強く自覚する前にシャドーからの刀は容赦無く振り下ろされた。
「か……ああ……」
刀による一撃を受けたツイスター。彼女の肉体に凄まじい痛みが走るとそのまま叫び声を上げる事すら叶わずに倒れ伏してしまった。
「……結局、最後の抵抗も碌な物じゃ無かったな」
シャドーはそう言ってダメージの影響で半ば放心状態の顔になっているツイスターを見下ろす。
「……む、キメラングの奴……ドローンを止められたか」
ただ、シャドーはツイスター相手にトドメを刺す事は無かった。何しろそのタイミングでキメラングの方に気がつくとそちらを助けに行ったからである。
「ヒーローガール!スノーインパクト!」
「はぁ、仕方ない」
そこからの流れはキメラングや彼女のドローンの方で戦闘をしていたスノー、サンライズの方と同じ。シャドーはキメラングへと助けに入り、それと入れ違いでスノー、サンライズがツイスターを連れて一度撤退したといった所である。
〜現在〜
ツイスターは自分の力ではシャドー相手に手も足も出せなかった事が悔しかった。そして勝つためには仲間の協力が不可欠である事も。ただ、今ここにはツイスターが100%信頼できる友達である自分の世界のスカイやプリズムがいない。つまり、実質的に勝てないのと同じだ。
そしてキメラングやシャドーに勝てないという事はひかるを助けるのは無理であると突きつけられているような物。そのためツイスターの心は折れかけてしまっていた。
「私は……どうしてこう無力なの。折角プリキュアの力を得られたのに、友達の助けになれると思ってたのに。この世界で孤独だと感じた私の心を開いてくれたあの子のために……私は頑張りたかったのに……」
ツイスターはこちらの世界に放り出されて、自分の世界の友達と同じ人物であるはずなのに他人のような接し方を受けて。疎外感を受けると共に相当気持ちの面で弱っていた。
そんな彼女は心を閉ざしてしまうと前までのように素っ気ない対応を取って一人の殻に籠ってしまう。そうしたって状況が好転するどころか悪化するとわかっていながら。
「ひかるはこの世界で一人ぼっちになっていた私の事を受け入れてくれた。だから……」
ツイスターの顔には焦りが見えていた。このままではひかるを助けられない。そうなれば折角できた心の拠り所はまた消え去ってしまう。その気持ちが彼女を焦らせていた。そして、それを受けたプリズムはツイスターの正面に回り込む。
「……だったら、私達と一緒に助けよ」
「ッ、でも……私は……」
「連携が上手くできないのは当たり前だよ。私達、まだ会ったばかりだし」
「もし私達が信頼できないのだとしたらツイスターが元いた世界の私達を信じてください。……世界が違ったとしても、私達はきっと同じ動き方をします。いえ、してみせますから!」
スカイも自信満々な顔つきでツイスターを安心させようとする。その中でツイスターは困惑したような顔を浮かべていた。何しろ、先程まで自分はひかる以外の人間に冷たい対応を取り続けてきたのだ。それなのに、何故二人は自分の力になろうとしてくれるのかがわからない。
「俺達も忘れるなよ」
「もしツイスターが何かしらミスしたら四人でカバーする。そうすればきっと勝てるよ」
ツイスターはスノーやサンライズまで自分に合わせてくれると言われてどう返せば良いのかわからずに何とか声を絞り出し、二人へと問いかけるように言葉を返す。
「どう……して?私は……あなた達に冷たい対応を取ってきたのよ。なのに何で……」
「何でって、友達だからに決まってるじゃありませんか!」
「ッ……友達って……」
ツイスターはいきなりスカイが自分達は友達だと言い出した事に困惑。何しろ今のツイスターからすれば自分と目の前にいる四人のプリキュア達との仲はそこまで深いとは思ってない。そのため友達という言葉は当てはまらないと感じている。
「うーん、じゃあなんて言えば良いかな……」
「待って待って、私はあなた達にとっては赤の他人よ。そんなに無理に友達だって定義しなくたって」
ツイスターの反論に対してプリズムは少しだけ考える仕草から戻すとツイスターに向き合い、真剣に話す。
「じゃあ聞くけどツイスターはどうしたいの?」
「私がどうしたいか……」
「正直ね、今のツイスターは見てられないよ」
それを聞いてツイスターは罪悪感を抱く。ただ、それでも何かを言い出す事はできなかった。そこにスカイが話を続ける。
「私やプリズムは確かにツイスターの知ってる私達じゃありません。ですが、世界は違ってもこうして私達は同じプリキュアとして繋がっています」
「………」
「ツイスター、今のあなたは少し前のユキさんにそっくりですよ。助けを求めてるのに周りに迷惑をかけるのが嫌で一人で悩んでいる」
ツイスターはそれを聞いて思わずスノーの方を向くと彼女は僅かに苦笑いした。
「そんなあなたを……私達は見捨てられません!」
スカイはツイスターへと己の気持ちを真っ直ぐに伝える。それを見てツイスターはどう答えれば良いのかわからないと言わんばかりだった。いや……答えはとっくに出ている。それでも言えないのは、まだツイスターの中に覚悟の気持ちが出てこないからだ。
すると覚悟が決まらないツイスターに対して今度はスノーが彼女の前に出てくる。
「ツイスター……ううん。らんこちゃん……さっきはごめんなさい」
スノーは突如としてツイスターへと謝る。それを受けてツイスターは驚いてしまう。何しろスノーは自分に対して謝る必要がある事を何もしていない。それなのに何故わざわざ謝るのかがわからないのだ。
「えっと……それはどういう意味で?」
「さっきの家での事。私……ツイスターの被ってたフードを取ろうとしちゃったでしょ?……私、まだツイスターの事をよく知らなくて。悪気が無くても嫌がる事をしてしまった。……多分だけど、ツイスターは怖いんだよね。他人から嫌われて……拒絶されてしまうのが」
それを聞いてツイスターは昔自分が受けた虐めを思い出すと顔を僅かに歪んでしまう。実は彼女、過去にとある事が原因で虐めを受けた事があった。その影響でフードを被り、今のような自分が信頼した相手以外には心を開かないような彼女になってしまったのだがその詳しい説明はさておこう。
そんな事情もあって、先程スノーことユキに自分の髪を見られるのを嫌がった。そして、スノーはそんなツイスターの気持ちを理解しつつ自分の事を話す。
「私も同じだよ」
「え……」
「私……昔、酷い虐めを受けてた。そのせいでスカイやプリズム、サンライズに沢山の迷惑をかけてしまった。皆に酷い接し方をして……一人で悩んでしまったの」
ツイスターはそれを受けて頭の中が一瞬だけ真っ白になる。もしそうだとしたら先程自分がフードを触られて拒絶反応を示した際に自分もスノーの事を傷つけた事になってしまうのだから。
「だけどね……それでも皆は私の友達でいてくれる。私の事を大切に思ってくれてるの。だから私はツイスターと友達でいたい。もしツイスターが辛いと思った時に支えられるように。お願い……ツイスター……らんこちゃん」
スノーはそう言いつつ手を差し伸べる。それに対してツイスターは気がつく。彼女の手が僅かに震えている事に。
「(スノー……手が震えて……あっ、もしかして……)」
ツイスターはこれを見て気がついてしまった。スノーも自分と話をするために自分が拒絶される事に対する怖さを抑えているのだと。
そして、彼女以外の三人。サンライズ、スカイ、プリズムを順番に見ると三人もツイスターと友達になりたいというのが雰囲気から伝わってくる。
「(そっか……怖いのはきっと皆一緒なんだ……)」
そして同時に他人と話す事に対して怖さを持っているのは自分だけじゃ無いと感じ取る。勿論、スノー以外の三人はあくまで普通に話そうとしており、スノーだって手が震えている以外は普通だ。
だが、それはあくまで表面だけの話。心の中にはツイスターみたいに大きかったりサンライズ達みたいに小さかったりこそするものの、相手と接する事への怖い気持ちは誰もが持っているのである。
スノー達四人は自分とは住む世界が違う。それでも友達になりたいと彼女達は多少の拒絶される事への怖い気持ちを承知の上で歩み寄ってきた。だとしたら、ツイスターが今やらないといけないのは……それに応える事である。
「私は皆に冷たい態度を取ってきたのよ?それでも……良いの?」
「そんなの関係無いよ……それに、冷たい態度を取ってしまった事が友達でいられない理由になるの?」
スノーからの言葉を聞いてツイスターは目を見開く。そして、スノーはツイスターへと改めて自分の気持ちを話した。
「私はツイスターと友達でいたい。これは嘘偽りの無い私の本心だよ。他の皆だってそう。だから、ツイスターの気持ちを聞かせて欲しい」
それを聞いてツイスターはクスリと笑う。思えばこの世界に来てから自分は元気付けられてばかり。その理由は自分がこの世界では独りぼっちだとずっと決めつけていたからだ。そして、相手が歩み寄ってくれているのに自分の気持ちに覚悟を持てなかった。
だからもう……意地を張るのも、一人の殻に閉じこもるのも……ツイスターは止めようと決める。
「ほんと、今まで悩んでばかりだったのが馬鹿みたいに思えてきた……。スノー。私こそずっと意地張っててごめん。私は……皆と友達になりたい!」
それを聞いてスノーの顔は笑顔になるとサンライズ達も頷く。ツイスターのその言葉は彼等も待ち望んでいた物だったのだから。
「うん!皆も良いよね?」
「勿論です!」
「そう言ってくれるのを待ってたよ」
「ま、色々と話すのはこれを終わらせてからだな」
それから五人が出て行こうとするとその路地の中に拡声器のような音で声が聞こえる。
『やっとお話しは終わったかな?』
その直後、プリキュア達はドローンが二機程自分達の近くに飛んでいるのを確認。キメラング達に場所がバレているとわかるとすぐに路地から出てくる。そこにはキメラング、シャドー、ランボーグがしっかりと顔を揃えていた。
その中でキメラングの方は拍手すると共に先程のプリキュア達のやり取りを褒め始める。
「美しい……美しい友情だよ。まさか世界を越えてでも友達になりたいだなんて。その気持ちを研究するの面白そうかな〜」
「何、わざわざ終わるのを待ってたわけ?」
「ああ、別に私は攻撃しても良かったんだよ?だけどシャドー君がどうしてもって言うからさ」
「………」
キメラングにそう言われてシャドーは無言のままだった。それからキメラングは改めて告げる。
「君達の気持ちの強さは認めてあげるよ。だけど残念。その気持ちの強さだけで私達に勝つのは無理かな」
「ううん。今の私達ならきっと勝てるよ!」
「ぷいきゅあああっ!」
「エル……」
するといつの間にか小舟で応援するためにやってきたエルがプリキュア達に向けて頑張れと言わんばかりに叫ぶ。そして彼女の隣にはあげはもいた。
「エルちゃん……じゃあ私も!頑張れー!プリキュア!」
エルやあげはと言った戦えない人もプリキュアの勝利を信じており、その応援が五人に確かな力を与えていった。
「ふふっ……エルやあげは姉さんにあそこまで応援されたら……頑張るしか無いじゃない!」
「やっとその気になってくれたな。ツイスター」
サンライズがやる気を出してくれたツイスターへと笑みを浮かべる。そして、そのツイスターは冷静になると考えが浮かんできた。そして、それを四人へと伝える。
「皆聞いて。この状況を打開する手立てがあるわ」
「本当ですか!?」
「えぇ、でもこれは皆の協力が無いとできない。だから……お願い。力を貸して欲しい」
「わかった。俺達にできる事ならやるよ」
「うん。ツイスターの作戦、絶対成功させよ!」
サンライズやスノーが最初に賛成し、そのままスカイやプリズムも頷く。そして、ほんの少しだけ話し合う時間を作ってからキメラング達に向き合ってツイスターの作戦を開始するのだった
また次回もお楽しみに。