熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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苦しくなる戦況 シャドーからの提案

スノーがキメラングと戦うツイスター。ただ、プリズムが危惧した通りにツイスターは終始キメラングに圧倒されてしまっていた。

 

「もうそろそろギブアップしたら?気持ちに対して体が全然付いてきて無いじゃないか」

 

「煩いわね……余計なお世話……あぐっ!?」

 

今もツイスターはキメラングに対して反撃するどころか防戦一方。キメラングの攻撃を捌くので手一杯。しかも何発かはまともに体に命中してしまっている。今のツイスターはキメラングの言う通り、気持ちに対して肉体が付いていけて無かった。

 

「はぁ……はぁ……やぁあっ!」

 

「遅いなぁ」

 

ツイスターは何とかキメラング相手に拳を繰り出すがその速度は鈍く。簡単にジャンプで回避されるとその上にキメラングは着地。そして踏み越える形でツイスターの後ろに空中で一回転しつつ降り立った。

 

「よっ……と」

 

「あうっ」

 

対してツイスターはたったそれだけでバランスを崩して倒れ込んでしまう。それから彼女が立とうとすると体に力が入らず。瞳に涙を浮かべつつ悔しそうな顔をする。

 

「ここまで……なの……」

 

「だからギブアップした方が良いって言ったじゃないか。長々と無駄な時間だったし」

 

キメラングはここまで一方的な勝負だと参考になるデータですら無いと言わんばかりに途中からデータを取っていなかった。そして倒れているツイスターの前に丁寧にも回り込むとしゃがんだ。

 

「で、君はもう動けなさそうだけど……どうするの?」

 

「く……ううっ……」

 

「じゃあ何も返せなさそうだし、捕まえるね〜」

 

キメラングの合図と共にドローンがバチバチとスタンガンのような物を展開しながら迫る。ツイスターが悔しそうにそのドローンが迫るのをただ黙って見ているだけだった……そんな時。

 

「ああああああっ!?」

 

ツイスターの目の前から女の子の悲鳴のような物が聞こえると慌ててツイスターがそちらを向く。そこには体にドローンのスタンガンを当てられたせいで電撃を流されてしまったスノーが体から電撃による煙を立ち上らせながら立っていた。

 

「あ、あなた何で……」

 

「あはは、友達が……危険だったからつい」

 

スノーが苦笑いしながらツイスターへと手を差し出す。ツイスターが手を取ると彼女に支えられて立ち上がった。

 

「どういう事……作戦ではあなた達三人が……」

 

「プリズムが危険を知らせてくれたから。……私、友達を失うのが怖いの……。私は昔の事が原因で軽く人間不信になってたくらいだし……」

 

尚、スノーはそう言ってはいるが彼女にとっての軽くは他人から見たら軽くとは言わないくらい重い。この辺りはユキ本人の性格の問題と言えば良いのだろうか、こういう面でも他人に心配をかけたく無い気持ちが強く出ているのである。

 

「(これ、スノーは軽くって言ってるけど絶対重めの人間不信状態ね……。でも、私を心配してくれてる気持ちは本当だし……あまり言わない方が良さそうだわ)」

 

ツイスターはそんなスノーの話を受け止めた上で少し考える。そもそも今回の作戦にはそれぞれに適した役割が当てがわれている。自分とスノーが交代した事で作戦に支障が出るか考えた。

 

「……ツイスター、もうキメラング相手に保たないでしょ。キメラングもわかってるからさっき電気を流す攻撃を使ったと思うし……」

 

スノーもキメラングはツイスターの体が限界に達している事をわかっていると見越しており、このままではツイスターが負けて連れ去られてしまうと考えている。そのため役割的に負担が小さめで尚且つ変えが効く自分の役と交代するべきだと思っていた。

 

「……でも良いの?キメラングは強い。脚を怪我してるスノーがやっても……」

 

「うん。多分最終的な結果は変わらない……。だけどさ、ツイスターだって本当はひかる君の事を自分の手で救いたいんでしょ?」

 

「……そりゃ、できるならそうしたいわよ……」

 

ツイスターは僅かに顔を赤くしつつ話す。ただ、作戦を立てる段階ではキメラングの手の内をある程度知っている自分が対応した方が楽だと思ったという事もあってわざと自分を助けるメンバーから外していた。

 

「じゃあ、ツイスターのやりたい事。やってほしいかな」

 

「でも……」

 

ツイスターはもう体力切れ目前の状態。このままではランボーグと交戦するスカイとプリズムの元に移動する分の体力すら残っていないのである。そのためツイスターは自分では無理だとさえ思っていた。

 

「だったら……私が連れて行ってあげる!」

 

「え!?」

 

「何を言ってるのかよくわからないけど、私がそんな事させると思ってるのかい?」

 

そんな時、キメラングがドローンと共に攻撃態勢に入っていた。そのためツイスターがどうにか対応するために構えようとするとスノーは意を決する。

 

「ツイスター、ごめんね!」

 

その瞬間、スノーはいきなりツイスターの体を抱き抱えるとそのまま痛めていない右脚を軸にして高速回転し始めた。

 

「へ!?ちょっと、何するのスノ……あばばばばっ!?」

 

ツイスターはいきなり視界がぐるんぐるんと回り出したせいで混乱してしまう。そしてその光景を見ていたキメラングも唖然とした。

 

「な、何なんだいこれは……」

 

そして、ある程度高速回転して勢いを付けるとスノーは一気にツイスターを抱っこした状態から発射するかのように放り投げる。

 

「せーのっ!」

 

「うわぁああああああ!?」

 

ツイスターはそのまま投げられたせいで成す術なく一気に飛んでいく。ただ、スノーはちゃんと狙いは定めていたのか。投げられた勢いで少しだけ空を飛ぶとその視線の先にランボーグが見えてきた。

 

「ッ、ちゃんとここに来れた……って、これ着地はどうすれば良いのよぉおおおっ! ?」

 

ツイスターは着地をどうすれば良いのかスノーに聞く前に問答無用で投げられたせいで脳内が混乱。そして無情にも空中にいられる時間が限界なのか、彼女はランボーグのいる場所に向かって落下し始めるのだった。

 

そしてスノーが投げ終わった後、それを見ていたキメラングはまさかのやり方に唖然とした顔をする。

 

「き、君。大人しそうなフリして意外な事するんだね」

 

「え?あー……ちょっと私も今のはやり過ぎ……かもしれません」

 

スノーは少しだけ考えてから今の自分の行動は咄嗟だったとはいえツイスターに悪い事をしてしまったという罪悪感も残っている様子だった。

 

「だ、だけどこれでツイスターの避難は完了。後はあなたを止めるだけです」

 

スノーは多少目を回してフラフラしていたものの、どうにか持ち堪えている様子からキメラングは警戒心を上げる。何しろ先程までのツイスターやプリズムとは違い、スノーのデータは少ない。片脚が負傷しているというのはキメラングにとって有利に働く要素だが、慎重になる必要はあるだろう。

 

「さっきまでサンライズにフォローしてもらって戦ってた君が一人で……しかも手負いでまともに戦えると思ってるのかな?」

 

「戦うよ。それが私のやるべき事だし。それに……」

 

「はぁああっ!」

 

その瞬間、何かの影が空中から落下するとそこにはシャドーを自慢のパワーで押し込みつつ落下してきたキュアサンライズがいた。

 

「く……サポート無しでも攻撃が当たるようになってきたか」

 

「おう、良い加減俺も戦いに慣れ始めてきたからな」

 

サンライズは煙から出てくるとスノーの隣に降り立ち、シャドーもサンライズからの拳を刀で防御していたからかあまり大きなダメージは受けていなかった。

 

「シャドー君、もしかしてサンライズに押されてたのかな?」

 

「ああ、そんな所だ。だが、案外この方がスリルがあって面白い。一方的な蹂躙などつまらないだけだからな」

 

シャドーはサンライズにやられている現状にそこまで悲観的にはなっておらず。むしろ強い相手とやり合えて嬉しそうにも見て取れた。

 

「本当に君も変わった奴だね。相手に負けてるって普通悔しいものでしょ」

 

キメラングはシャドーに対して変な人認定するような目線を向ける。正直マッドサイエンティストであるキメラングが言える事では無い事ではあるが。

 

「だろうな。だが、むしろこのくらいが丁度良い。この程度、超えてもらわないと俺も楽しみが無いからな」

 

「結局君は根からの武人体質ってわけか」

 

キメラングはシャドーのこの考えを止められないと感じると一旦彼に対してこれ以上言うのはやめる事にした。ただ、これで戦況は二対二という事である。

 

「……シャドー君。君は前まであの二人を同時に相手してたんだよね?」

 

「む。そうだが……それがどうかしたのか?」

 

シャドーはキメラングからの質問に対して答えを返し、それを受けて質問したキメラングが邪悪な笑みを浮かべる。

 

「そっかそっかぁ。……じゃあ二人の相手を纏めてお願いしても良いかな?」

 

「「ッ!?」」

 

キメラングの提案を受けて驚いたような顔を見せたのはシャドーでは無くプリキュアである二人だ。何しろ今ここでキメラングに逃げられた上でランボーグのいる方向にでも向かわれたらかなり厄介な事態に陥ってしまう。

 

「嘘だろ!?」

 

「ッ、それだけは止めないと……」

 

「あー、ごめんごめん。勘違いしてるなら悪いけど、君達を置いてどこかに行くわけじゃ無いんだ」

 

するとキメラングはその手に鏡のようなアイテムを取り出すとまるでデータを取るための準備を始めているかのようだった。

 

「……なるほど、そこにいる二人のデータが欲しいから俺が代わりに戦ってくれと?」

 

「う〜ん、物分かりが良くて助かるねぇ〜」

 

「お前、どういうつもりだよ!」

 

キメラングの話を聞いてサンライズが声を上げる。そもそも先程までキメラングの目的はツイスターことらんこを連れ帰る事、そしてひかるを実験台としてこの世界から連れ出す事だった。

 

それなのに今の彼女の発言と行動はその可能性を潰す事だってあり得るだろう。何しろそのひかるの元に三人もプリキュアが行ったのだ。呑気にデータ収集をしている間にひかるが解放される危険だってあり得る。

 

そのためスノーやサンライズは段々と彼女の目的や真意がわからなくなってきたのだ。

 

「ふぅ、なるほど。君達はこの私の目的の根元にある考えがわからないようだねぇ。……さっきも言ったけど、私にとっては全ての人間が実験のための存在。そこにいるシャドーも利害が一致してるから組んでるだけに過ぎない。そしてそれを彼は承知している」

 

「とは言っても、言いなりの操り人形になるのは了承してないけどな?」

 

あくまでシャドーがプリキュアの相手役になっているのは自分のため。なのでまだキメラングからこうやって当て馬にされても文句一つ言わないのである。

 

「話が脱線したけど、私は興味を持った事は順番は前後しても全部やりたいと思う派なんだ。今回の場合、君達二人のデータが欲しい。勿論可能ならモルモット君を連れて行きたいし、キュアツイスターを連れ帰りたい。私は強欲だからね〜。目的を三つ纏めて達成できる状況ならそうするのが性なのさ」

 

つまり、ツイスターが仮にひかるのランボーグの所に行ったとしてもキメラング的には目的達成にそこまで大きな影響を及ぼさないと考えていたのだ。理由は単純……。

 

「だってあの体力すっからかんのお荷物状態のツイスターがキュアスカイやキュアプリズムと戦ってるランボーグの所に行ったって何かできる?私は無理だと思うな〜」

 

それを聞いて僅かにスノーの顔が歪む。それは先程までの彼女がどれだけ追い詰められたかを見ているだけにどうしてもそこは不安点として残っているからだろう。

 

「スノー、大丈夫だ。ツイスターの事を信じよう」

 

「サンライズ……うん。私だって信じるって決めたんだから最後まで信じたい!」

 

二人がツイスターを信じるという意見で一致したためにキメラングは僅かに溜め息を吐く。

 

「ふぅ……。やれやれ、毎回見てて思うけど君達は諦める事を知らないよね。じゃ、シャドー君。後はよろしく」

 

「俺はお前の使いっ走りになった覚えは無いんだけどな」

 

シャドーが刀を構えるとスノー、サンライズも同じように構える。するとシャドーは突如としてある事を言い出した。

 

「さてと、早速で悪いんだがお前ら。あの合体技を使え」

 

「「……え?」」

 

二人はシャドーからリクエストされた事に疑問を抱く。何故わざわざこのような事をするのかと考えた。

 

「お前達とて余裕は無いはずだ。俺と真正面からやり合って体力を使えばこの後のキメラングがキツくなる事くらいわかるだろう?」

 

「それは……そうだけど」

 

「けど、お前の言う通りにするのもな」

 

「だろうな。だがお前らにはそれ以外の選択肢なんて無い。そうしなきゃお前ら二人は俺とキメラングの二連戦。向こうに行った三人はランボーグとキメラングの二連戦。最悪の場合キメラングに全員ワンパンされて終わるぞ?」

 

実際の所その通りだ。今の二人に強敵相手に二連戦する余裕なんて無い。むしろ一撃で終われるのなら好都合である。……しかし、相手はシャドー。甘い餌をぶら下げて食いついてくるのを待っているかもしれない。

 

「お前らの本気とやらを見せてみろ。それとも何だ?前とは違って使えなかったりするのか?」

 

シャドーは明らかに二人を挑発。技を使うように仕向けている。そのためスノーは迷ったような顔つきを見せた。

 

「どうしよ……もしかして何か罠があるのかな……」

 

「その可能性は高いだろうな。だけど、アイツの言う通りで双方手負いの俺達に戦い抜く余裕なんて無い」

 

「だけど……とても嫌な予感がする」

 

スノーはランボーグにやられた左脚、サンライズは先程の熱線放出での負担をそれぞれ背負っている。技を発動してシャドーを倒せれば有利な流れに持っていけるのは間違い無い。

 

「……サンライズ、私……やる」

 

「!!良いのか?嫌な予感がするんだろ?」

 

「だけど、迷ってても仕方ないよ。それに……この嫌な予感を上回るくらい力を出せば良いだけだから!」

 

「わかった……俺もできる限りの事はするよ」

 

スノーの覚悟を聞いたサンライズは彼女と一緒にやる事を決め、シャドーは期待通りの二人に笑みを浮かべる。

 

そのまま二人はスカイミラージュとスカイトーンを出すと合体技を発動させた。

 

「サンライズフレイム!」

 

「スノーアイス!」

 

「二つのプリキュアの魂が!」

 

「闇の僕達を打ち砕く!」

 

「「プリキュア!エレメントスクリュー!」」

 

二人から繰り出される炎と氷のエネルギーは合わさると巨大なエネルギー波となってシャドーへと向かっていく。対してシャドーはそのエネルギー波を見て心を躍らせながらぶつかるのだった。




また次回もお楽しみに。
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