ツイスター達がひかるの救出に成功し、移動を開始した頃。シャドーと交戦するスノー、サンライズの方は窮地を迎えてしまっていた。
「どうした!動きが落ちてるぞ!」
「ッ……そんなのわかってるんだよ!」
スノー、サンライズのコンビは二対一という数的有利にも関わらず、シャドーを押し切れていなかった。一応シャドーは二刀流状態を常時継続している事から重い一太刀を受ける事は無いものの、それでも二人のコンディションは先程から低下の一途を辿っている。
「「はあっ!」」
「遅い!」
するとシャドーを左右から挟んで拳をぶつけようとした二人。しかし、シャドーはそれを見切ったかのようにギリギリまで引きつけてから後ろに下がると二人は真正面からぶつかってしまう。
「「うわっ!?」」
「ご、ごめん……」
「ああ、そんな事よりも……」
スノーは連携力不足を謝るが、今はそんな事言ってる場合では無い。しかも二人の攻撃を見切って回避したシャドーは既に二人に向けて大技を構えていた。
「ひろがる!」
シャドーは素早く二本の太刀を一本に戻しつつ、紅く染まった月をバックに円月殺法を行うと彼の大技が飛んでくるという事で二人は目を見開く。
「しまっ……」
「シャドーブラッドムーン!」
シャドーは踏み込んで前に出ながらその技を使うとスノーとサンライズは纏めてその一撃を受けてしまう。
「「うわぁああああああ!?」」
二人はシャドーからの太刀をまともに受けてしまうとその場に崩れ落ちてしまう。
「二人共頑張ってるみたいだけどそろそろ終わりかな?データ的にも少しずつコンディションが落ちてるようにも見える。これは二人もさっきのツイスターと似たような状態になりつつあるね」
二人のコンディションが落ちてる理由。それは割と単純で体力の低下だ。流石にここまで連戦続きで、尚且つ先程のエレメントスクリューでシャドーを仕留めきれなかった事が精神的にも肉体的にも重くのしかかってきているのだろう。
「…-楽しい時間が過ぎるのはあっという間。だが、これも仕方の無い事か」
シャドーがそう呟いて刀の先端を二人に向ける。キメラングもこれ以上取れるデータは無さそうだったためにシャドーへと待ったはかけない。するとキメラングが何かの気配を感じて振り向く。
「あれ?何でここにアンダーグエナジーが……」
そこにあったのは多量のアンダーグエナジーだった。そして、それが何も無い場所に固着すると巨大な人型ランボーグへと変わる。ただし、先程とは違って武装は特に無く。本当にただの巨人と言った感じだ。
「ランボーグ」
「あー……もしかして」
キメラングは何故か中身の無い抜け殻状態のランボーグがいるという事で何かを察するとシャドーへと声をかける。
「シャドー君、まだ君のお楽しみ時間は終わらないかもしれないよ!」
「む?」
キメラングからの声がシャドーに届くと彼は振り向く。そんな時にシャドーに向かって三つの影が同時にキックを放っていた。
「「「はぁああっ!」」」
「チッ……」
シャドーは咄嗟に長くなった太刀で三人分のキックを同時に受け止めるが、流石にその重さには耐えきれずに横に吹き飛ばされる。
「スノー、サンライズ。大丈夫ですか?」
「待たせちゃってごめん!」
そこに降り立ったのはスカイ、プリズム、ツイスターの三人である。彼女達はひかるのランボーグがいた場所からここにまですぐに急行。駆けつけてくれたのだ。
「ほら、二人共」
そしてツイスターが少し恥ずかしがりつつも二人に手を差し出すと二人は微笑んで頷き、その手を取って立ち上がる。
こうしてプリキュア達が全員揃うと吹き飛ばされたシャドーはもう体勢を立て直しており、そこにキメラングや彼女のランボーグも揃っていた。
「その感じだともしかしてモルモット君助け出しちゃったかな?」
「ええ、そうよ。あとはマッドサイエンティスト。アンタが大人しく私のいた世界に帰るだけ!」
ツイスターから宣告を受けたキメラング。ただ、彼女の顔つきはまだ余裕そうな物のままである。そして彼女はツイスターへと答えを返した。
「帰る?残念だけどそれは無理かな。一度だけじゃなく二度もモルモットを解放した事は賞賛するよ?しかも今回は転移装置も外してくれてさ。だけどあくまで人質を解放されただけ。それに忘れてない?私が一番欲しい素材は君だって事」
キメラングの狙いはツイスターことらんこだという事は結局の所変わってない。だから仮にひかるを解放されたとしても最終的にツイスターが確保できるのならそれで何の問題も無いわけだ。しかも、戦力であるランボーグやシャドーは健在。
また、プリキュア側は酷く消耗している。そう考えるとキメラングには撤退する理由が何一つ存在しない事になるだろう。
「だけど、ランボーグの方はもう抜け殻だし。大した戦力にはならないだろ」
「うん。それにあなたはシャドーに戦闘を任せてるだけ。シャドーとの五対一になれば流石に勝てるよ!」
「ほう。五人がかりか。それもまた面白そうだが、勝てると思われてるのは舐められた物だな」
シャドーが刀に手を置くと笑みを浮かべてその五人がかりを受けようとする。するとキメラングが手を横に出してシャドーを止めた。
「まぁまぁ、確かにそれも良いんだけどさ。またこっちもこっちでデータが欲しいからさ。私にも奥の手を使わせてほしいかな」
「はぁ、さっきは当て馬にしたくせに今度は戦うなと。随分と自分勝手な協力者だな」
「いや〜。そうなんだけどね?それはあくまでさっきはそうするのが合理的だったからだよ。勿論状況が変わればそれも変化するのは当然なわけで」
シャドーはこの勝手過ぎるマッドサイエンティストに今すぐにでも溜め息を吐きたい気持ちになってしまう。ただ、それでもキメラングと協力者になる以上は多少の不満くらいは我慢するべきと感じるとキメラングの意見に了承した。
「わかった。……ただ、面白い物を見せてくれるのだろうな?」
「勿論それは保証するよ。少なくとも退屈にはならないだろうからさ」
シャドーはキメラングへとそう念を押して彼女から言質を取るが、この時には既にシャドーからキメラングへの信頼は揺らぎ出しているような状態になっていた。
それはさておき、キメラングはとあるカプセル状の薬品を取り出すとそれを見てツイスターは声を上げる。
「マッドサイエンティスト、アンタ何するつもり?」
「言ったじゃないか。奥の手を使うって。君達プリキュアと戦う上でいつかこのカプセルの試運転もしたいって思ってたし、丁度良かったんだよ」
「くっ……」
「それじゃあ説明はこの辺にして、早速行ってみよう!」
キメラングはこうしてカプセルを近くに立っているランボーグ目掛けて投げつけた。するとランボーグはそれを取り込んでいく。
「ラン……ボ……」
その瞬間、ランボーグは少しだけ苦しそうにしつつも直後に体中に凄まじいパワーが湧いてくると体を一回り巨大化させる。
「ッ!大きくなった!?」
「いいえ、それだけじゃ無さそうですよ!!」
スカイの言う通り、ランボーグの纏う空気感が鋭くなると目が一瞬だけ光ってから凶暴化してしまう。
「ラン……ボォオオグ!」
ランボーグからは凄まじい衝撃波が発生するとプリキュア達はどうにかその威力に耐え、キメラングとシャドーは距離を取った。
「マッドサイエンティスト!アンタ何をしたの!」
ツイスターがランボーグから感じる威圧感を押し除けるようにキメラングへと問いかけると彼女はそれに対して得意げに解説をする。
「あははっ!これは私がアンダーグエナジーを絶妙な割合で調合した薬品でね。ランボーグに投与するだけでその力を強化できる。あ、ついでに性格も凶暴化するかな。わかりやすく言うならこちらの世界で言うドーピング薬とでも思ってくれたまえ」
「ドー……ピング?」
「要するにヤバい方の薬って事。スカイランドとかにも何かしらはあるだろ?」
「あー……」
スノーやスカイは最初の方はイメージが上手く行っていなかったが、スカイランドにもドーピング薬のような薬があるのか納得した顔になる。
「ランボーグ!」
そんな時だった。ランボーグは突然叫び声を上げると口の辺りから巨大ななエネルギー砲を生成。
「「「「「ッ!?」」」」」
プリキュア達は不意を突かれてしまったのか、エネルギー砲に対して反応する前にランボーグが攻撃を放ってしまう。
そしてそのエネルギー砲は容赦無く五人へと直撃。体力が僅かの彼女達を纏めて吹き飛ばす。
「「「「「うわぁああああっ!!」」」」」
「ぷっ……くく……あーっはっはっはー!流石私!素晴らしい威力だねぇ!」
キメラングはこのドーピングカプセルによる強化力にご満悦なのか高笑いを浮かべており、シャドーはこの状況に内心でプリキュアへと語りかけていた。
「(さて、これを見たプリキュアはどうする……。まさかこのまま終わるなんて事は無いだろうな?)」
そして、ランボーグからのエネルギー砲をまともに受けてしまった五人はあまりのダメージに倒れ込むと痛みに苦しそうな顔を浮かべている。
「まさか……こんな奥の手を隠しているなんて」
「でも……まだやれるよね……皆」
「はい、私達……もっとツイスターと沢山お話をしたいです」
「だな。ツイスター、一応聞いておくけどまだやれるよね?」
「当たり前よ……私、悪運だけは強いから!」
そう言って五人はどうにか立ち上がった。ただ、全員肉弾戦ができるだけの力は残っていない。次の一撃で決めないと本格的に危険だった。
「へぇ、立ったかぁ。よくあの攻撃に耐えられたねぇ。だけど、良い加減諦めたらどうかな?見てわかるでしょ。あの攻撃の威力。アレを超えられる威力の技を今の君達が放てるかな?」
それは実際の所そうだ。万全な状態であれば五人が協力して技を打ち込んで上回る事もできただろう。しかし、今の自分達は万全どころか殆ど虫の息状態。つまり、ここから逆転できるだけの体力なんて無いのだ。
「……それでもやるわ。私には居場所がある。私の世界にも、この世界にも!だから、大切な友達とこの居場所を守りたいの!」
「ああ。そのためなら俺達はまだやるよ」
「それこそ、私達の力尽きるその時まで」
ツイスター、スノー、サンライズが胸の覚悟を口にすると突如としてサンライズとスノーのスカイトーン。更にエルの胸が光を放ち始める。そして、彼女達の起こすその現象にその場の一同は見覚えがあった。
「える!?」
「これってもしかして……」
「うん、きっとそうだよ!」
「おやおやぁ。これは何だか見覚えのある現象だねぇ」
キメラングもこの現象を見て以前スカイとプリズムが起こした新たな力を手にするという事を思い出した。
そして、その間に三つの光が三角形で繋がると新たなるスカイトーンが三つ生成。それは赤白をベースとした物に中心には緑の竜巻の絵が描かれたデザインとなっている。それから新たなスカイトーンはスノー、サンライズ、ツイスターの元に移動した。その名もスカイトーンT(トリニティ)ツイスターズだ。
「新しいスカイトーン……」
「って、私もなの!?」.
「これは多分俺達とツイスターの絆の力だ」
「える!ぷいきゅああっ!」
更にエルがいつもの紫では無く緑の光を纏うとそれがツイスターへと照射。ツイスターの体に命中すると彼女の前に緑と白を基調として差し色に更に水色が入ったハート型のアイテムが生み出される。
「これ……何?」
ツイスターがそのアイテムを手にするとハート型のアイテムに風の力が加わっていき、ハートの形を作っていた曲線の棒の部分が左右に展開。バトン型へと変わる。
「何これ!?」
「あっ確かそれ、ルミナスも使ってたバトンだよね?」
「ルミナス?誰よそれ」
ツイスターはルミナスの事を知らないため困惑するが、他のプリキュアは前日出会ったばかりの彼女の事を思い出す。
「でも色が違いませんか?ルミナスのはピンクで、これはツイスターと同じ緑ですよ」
「うーん。ならさしずめツイスターバトン……いや、テンペストバトンって名付けるか」
「ちょっと、勝手に名前付けないでよ!」
ツイスターがサンライズから勝手に名前を付けられたことに抗議するが、ひとまずそれは置いておき。ツイスターが新たに手にしたアイテム、テンペストバトン。今はこれに賭けるしか無いだろう。
「はぁ……こっちの作者もテンペストバトンって名前にしちゃったし。とにかくやってみるしか無いわね」
ツイスターがメタ発言をしてからすかさずランボーグと向き合う。するとランボーグはすぐに二発目のエネルギー砲の準備をしていた。
「行くわよ、二人共!」
「おう!」
「うん!」
サンライズとスノーは新しくスカイトーンをスカイミラージュに。ツイスターはテンペストバトンの中心部にある丸い部分に装填。そして曲線のような形をした棒の部分を戻す事でハート型へと再度変形させる。
そして、ツイスターがテンペストバトンを胸の辺りに持ってくるとそれを両手で支えるように持つ。その瞬間、そのバトンからとてつもないほどの緑色の竜巻が放出された。
「くうっ……」
ツイスターは放出された竜巻の凄まじい威力に吹き飛ばされそうになるが、どうにか踏ん張る形で飛ばされずに堪える。そのままテンペストバトンから放出された竜巻はサンライズとスノーへと照射されるとその体を包み込んでいく。
「「ッ!?」」
二人はその竜巻を身に受けると体が緑色に光り輝くものの、割とすぐに赤い炎と白い氷のオーラへと変化。そして、二人はポーズを取りつつ叫ぶ。
「燃え立つ勇気!」
「凍てつく希望!」
「嵐を起こす絆と共に!」
そこにツイスターが更にエネルギーを照射する。そして、サンライズとスノーが内側の手を繋ぐと三人で技名を叫んだ。
「「エクストリーム!」」
「ツイスターズ!」
サンライズとスノーが空いている手を突き出すと目の前に三つのリングが出現し、それが重なると赤、緑、白のエネルギーが放出。それが絡み合うと凄まじい威力を叩き出した。
「ランボーグ!」
ランボーグはそれに対抗するようにエネルギー砲を放つものの、二つの技がぶつかり合うとランボーグの方はあっという間に押され始める。
「ラン!?」
「「「はぁあああっ!」」」
そのままランボーグのエネルギー砲は押し切られてしまうと光のエネルギーの奔流がランボーグを一瞬にして呑み込む。そして浄化の光に包まれたランボーグは浄化されて消失してくのだった。
「スミキッタァ〜」
こうして、ランボーグを撃退したプリキュア達。彼女達はそれからキメラングやシャドーの方を向くと構える。ただ、もう全員が限界ギリギリ状態。
対してキメラングの方は呆然とこの一連の出来事を見ていたが、状況を受け止めると笑みを浮かべるのだった。
また次回もお楽しみに。