プリキュア達の新技で浄化されたランボーグ。ただ、その場にはシャドー、キメラングが残っている。対してプリキュア側はもうこれ以上の継戦は不可能に近い。
「くくく……あははははっ!だから君達の研究はやめられない。よくあのランボーグを倒せたと褒めてあげよう。……だけど、君達にもう戦えるだけの力なんて無いよね?」
キメラングの言葉にプリキュア達は何も言い返せない。まだ先程の技の発動に絡んで無いスカイとプリズムなら戦えるだろうが、この二人はキメラングが対策できてしまう相手。どちらにせよ勝ち目は薄い。
「さーてと。シャドー君。後は君が好きなように……」
「断る」
「……ん?」
キメラングは息を吹き返し、新たな力を使ったプリキュアももっと見ようと思ったのかシャドーへと再度相手するように言う。しかしこの時は何故かキメラングの言葉を拒否してしまったのだ。
「あまり俺を便利に使える駒と思われるのは困る。当然拒否する時は拒否するし、今やり合ったとしても良い勝負ができるとは思えない」
「プリキュアを倒すのなら今がチャンスなのに良いのかい?」
「……プリキュアを倒すのならな。だが俺はこんな勝ち方をしても良い気はしない。だからこの辺でお暇させてもらおう。……それと勘違いしてもらっては困るが、キメラング。お前との時間が楽しいと思えたのは事実だ。またこちらの世界と縁があればまた会おう」
そう言ってシャドーはキメラングからの返事をもらう事無く勝手に撤退。それを見て彼女は唖然とした顔をしていた。
「あーあ。シャドー君帰っちゃったか。なら仕方ない。私がトドメを……」
キメラングがいなくなってしまったシャドーの代わりにプリキュアへとトドメを刺すことを考える。だが、その手は途中で何故か止まった。
「……っと、そうしたいのはヤマヤマだけどこっちもこっちでシャドー君無しだと限界ギリギリなんだよね。それにスカイやプリズムにさっきの三人みたいな力を発揮されたら困るし、今日はこの辺にするしか無いかな」
この反応から見るに、どうやらキメラングもキメラングで色々と物資が尽き掛けているらしい。前にも言及したが、何しろここは自分の世界とは違う。物資が尽きたとしても補給ができない所。
加えてここで無理に戦闘継続した場合、何かの拍子で元の世界に帰れなくなる危険もあった。
「それに、この世界での実験はもう十分。データは沢山貰えたし、反映すればもっと面白い事ができそうだ。丁度キリも良いし、私はそろそろ元の世界に戻るとするよ」
「それは……もうツイスターの事を狙わないという事ですか?」
「それは無理かな〜。それだけ君達に興味があるのは確かだし。あ、でもモルモット君はもう良いかな。彼には十分頑張ってもらったし、何かしら需要が出ない限りは狙わないって言っておくよ」
「需要って……それってまだ狙うつもりがあるって事でしょ!」
「あ、そうかな?でも今すぐには要らないって事だからよろしく。それにキュアスノー、キュアサンライズ。君達にも沢山可能性を感じられた。もしまたこっちに来る機会があったら会う事になるかもね。それじゃあそろそろ、キメランラン♪」
キメラングはそんな風に別れの挨拶を済ませると撤退。それからプリキュア達は少しだけ周囲を警戒。これはキメラングが移動以外にも攻撃のためにワープを使うという事を知った上での行動だ。もし仮にここで残留されていて不意打ちされたらプリキュア側はたまったものでは無いだろう。
「もう……いないな?」
「うん、気配は無さそう」
「ふぅ……どうにか追い払えた……」
ただ、正直ギリギリだったのは間違い無い。もしあのままキメラングが自分達を狙ってきた場合、とてもではないが凌げる気がしなかったのだから。すると、ツイスターはその場に尻餅を付く形で崩れると変身解除。その体に重い疲れがのしかかってきた。
「あ……れ……」
「らんこちゃん!?」
「大丈夫よ……ただ、もう本当に動けない……かも」
傷の方はランボーグ浄化の際にある程度回復こそしたが、減った体力までは戻らないわけで。そしてそれはらんこだけでは無い。他の四人も今から虹ヶ丘家に戻るには体力が残ってなかった。
「どうしよ。仮にひかるを預けたあげは姉が戻ってくるにしてもそれまで結構時間がかかるんだよな」
「じゃあここで体力が戻るのを待つしか……」
このまま五人は体力が戻るまで待機しようと考えていた。するとその時ユキとアサヒのスカイトーンがチカチカと光るとその瞬間に五人の体に薄らと赤、白のオーラが出てくる。
「うええっ!?何これ!」
「これ……多分ブリザードとバーニングサンの」
「ブリザード?バーニングサン?」
「私達にプリキュアになる力をくれた人達の事。でもどうしてだろ」
スノー達が何故かいきなり先代プリキュアの反応があった事に疑問符を抱いているとその体に残されていた傷が完全に消失するのと失われていた体力がある程度戻り始めるのを感じた。
「ッ、これは……」
「体が少しだけ軽くなった?」
「でも疲労感はそのまま……この感じは多分、体力ゼロからある程度動けるっていう状態に戻しただけだと思う」
らんこの予想通り、先代プリキュアの二人がやったのはあくまで体力回復と怪我の回復だけ。これは疲労感を残す事でこれからもっと厳しくなる戦いに備えて肉体の成長を促しているという事だ。
わかりやすく言うと運動し始めた頃は体がついて行けずに筋肉痛になるのに対し、ある程度慣れてくると同じだけやってもへっちゃらになるという現象に近いだろう。
「これでひとまず家までは帰れそうだね」
「ッ!そうだ、ひかる!」
するとらんこはひかるの事を思い出して慌てて再変身。キュアツイスターとなると急いだ様子で虹ヶ丘家へと駆け出した。
「ちょっ!らんこちゃん!?」
「える!?」
「俺達も追いかけるよ!」
ユキ達もそんなツイスターを見てプリキュアに変身。すかさず行ってしまったツイスターを追いかけるように駆け出すのだった。それから少しして。一同は無事に虹ヶ丘家に到着。五人揃って変身解除してらんこは焦ったような顔のまま家の中に入った。
「ひかる!大丈夫!?」
らんこが居間に繋がる扉を慌てて開くとそんな彼女の心配に対し、それを出迎えるようにひかるが元気そうな顔で待っていた。
「あっ、らんこさん!って事は無事にアイツらに……」
「この馬鹿ぁ……」
「え?ば、馬鹿!?」
「心配したのよ馬鹿!馬鹿!」
ひかるは初っ端かららんこに馬鹿馬鹿言われて唖然とするが、それがらんこの安心した気持ちの表れだという事はわかっていたために一同は安心したような顔になる。
「ひかる、元気そうだな」
「うん。あげはさん、こんなに元気って事はひかる君は大丈夫だったって事ですよね?」
ユキはひかると一緒に虹ヶ丘家に戻っていたあげはへと質問すると彼女はニッコリと笑って答えを返した。
「そうだね!今度はヨヨさんの対応がさっきより早くなったし、ひかる君自身もランボーグに取り込まれている間もその中で必死に抵抗していて。おかげで逆に前よりも侵食は遅くなってたみたい」
「そっか……やっぱりひかる君。中で抵抗してくれてたんだね……」
一同はそれを聞いてひかるが変身したランボーグが自分達相手に本気で攻撃してこなかった事を思い出し、やはり彼自身がランボーグの意識を抑制していたからなのだと改めて感じる。
「その感じだと後遺症も……」
「うん。心配しなくて良いって」
「良かった……」
「そういえば、ひかる君を狙ってたキメラングって奴は?」
「キメラングはひかる君の事は一旦諦めて自分の世界に帰るって言ってました。なので一時的にですけど脅威は去ったと思います」
それを聞いてあげはが“うんうん”と頷いているとある考えが頭に過ってしまう。それはキメラングがいなくなってしまったからこその疑問だ。
「ひかる君への脅威が無くなったのは良かったけど……キメラング無しでらんこちゃんはどうやって元の世界に戻るんだろ……」
「「「「あ……」」」」
一同があげはからの指摘に唖然としてしまう。そんな彼女達の会話も梅雨知らずのらんこはひかるへと申し訳無さそうに話す。
「ひかる。さっきはごめん……。私がもっと早く気がついてたらこんな目には……」
「らんこさん……ううん。むしろ俺はお礼が言いたいよ。
「えっ?」
らんこがひかるからの答えに困惑していると彼はらんこの手を両手で握り、少しだけ持ち上げる。勿論こんな事をされればらんこは恥ずかしいわけで。
「ちょっ!?ひ、ひかる!?」
「俺、ランボーグとかいう怪物に取り込まれて。あの中でもがいてはいたけど、結局出る事はできなくて。そのままじゃきっと俺は助からなかったんだろ?」
「そりゃ、そうだと思うけど……」
「だったら、俺はらんこさんのおかげで今ここに戻って来れたんだ。だからお礼が言いたい。らんこさん、ありがとう!」
ひかるが興奮したような顔つきでらんこへとお礼を言うと彼女は先程からずっと手を握られている上にまた先程のようにグイグイと来るひかるに焦るらんこ。
「やめなさいよ!……あっ」
「ッ、ご……ごめん」
らんこはひかるに詰められて焦り過ぎると思わず握られた手を振り払ってしまう。そしてひかるも流石に自分の行動が友達にしては行き過ぎたと思い至り申し訳なさそうだった。らんこは流石にそのままではいられないのか、ひかるへと改めて話す。
「……べ、別に怒ってないわ。ただその……できれば今度からあまり詰め過ぎないでほしいって言えば良いのかしら。逆に対応に困る……」
「えっ、ああ……。俺も自分で近づき過ぎたのはわかる。今度から気をつける」
ただ、らんこの言葉は逆効果だったのかひかるはわかりやすく落ち込んでしまう。そんな風にシュンとした雰囲気のひかるにらんこは余計に気不味いようで。
「もう!そんな雰囲気のあなたと接してると本当に調子狂う!別に私はひかるの事……嫌いになんかなってないから、その……普通に友達として接して!」
「ッ……ああ。じゃあ今度は距離感を考えた上で普通に接するよ」
「わ、わかれば良いのよ……」
それを聞いてらんこは少し照れくさそうな顔つきをする。するとましろとユキがコソコソと話し始めた。
「ね、ねぇ。まさかと思うけど……」
「いや、まだ断定には早いよ。ましろちゃん」
「何を話しているんですか?」
「うーん。まだソラは知らなくても良い事……かな」
「えーっ!?そんなの気になるじゃないですか!」
アサヒはらんことひかるの仲について、ユキやましろが話している事に察しが付いたがもしこれを下手にソラに話せば彼女はそのままその場で言ってしまうだろう。
そのため、事態がややこしくならないようにするためにも一旦誤魔化す事にした。
「ふふっ、二人共青春だね。……ユキちゃんとアサヒがそうなるのももうそんなにかからないかもだけど」
あげははそんな中学生組の会話を微笑ましい顔で見つつも、最後の方を小声で言うと同時にその二人の方を向く。
「それで、らんこちゃんはどうやって元の世界に帰るの?」
「え?……あっ、どうしよ。それだけ未解決だったわね……」
らんこが慌てた顔になっているとその瞬間、突然彼女の持つスカイトーンが光り始める。すると直後にスカイトーンがもう一つ生成されるとそれは全く同じ柄のペアルックのスカイトーンが生成。ただし、新しく出来た方は若干縁に黄色いグラデーションがあったが。
「ええっ!?」
「今の、エルの力じゃないよね?」
「えるるぅ!」
「じゃあ何で……」
一同が混乱する中、その新しい方がひかるの元に飛んで行く。彼は自分の元にやってきたスカイトーンを手にするとニッと笑い、声を上げる。
「まぁ良いじゃねーか。俺とらんこさんの絆の証って事でさ」
「「「「「ぷっ……あははっ!」」」」」
それを聞いたプリキュア組の五人は吹き出すと笑い始めた。ひかるの話には根拠が無いが、実際の所そうなのかもしれない。そう一同は感じられたからだろう。
そして、この時らんこはこの世界に来て初めて心の底からの笑顔を見せた。そんな彼女の笑顔が一つの鍵だったのか……直後にらんこのスカイトーンとひかるのスカイトーンが共鳴。二つのスカイトーンの力が空間に歪みを生じさせると緑色の空間が広がる穴が生成。そしてそれが何なのか一同は察した。
「あっ……これって」
「私がこっちに来た時と同じ……って事は」
「これでらんこさんは無事に元の世界に戻れますね!」
待ちに待ったらんこが自らの世界に帰るために必要となる空間の穴。これを逃せば帰られなくなる可能性が高いだろう。ただ、帰るという事は当然別れないといけなくなるわけで。
「……そっか、もうお別れなのね」
「うん。でもいつかは戻らないといけないし仕方ないよ……」
らんこがこちらの世界に来た以上、いつかは来るとわかっていたことである。ただ、それでもいざその時が来るとなると寂しいものがある。特にユキはそれが人一倍強いようで。彼女はらんこに話しかけた。
「……らんこちゃん。また会えるよね?」
「勿論よ……ユキ」
「ッ……」
その瞬間、ユキはらんこへと抱きつくとポロポロと涙を流す。それを見たらんこは思わず釣られて泣いてしまう。
「らんこちゃん……絶対に忘れないよ」
「私もよ、ユキ」
二人が別れを惜しんでいると今度はアサヒがひかると共に出てきて話しかけた。
「らんこさん、短い間だったけど話せて楽しかった。この宝石、大事にするよ」
「えぇ……そうしてくれると嬉しいわ」
「……もしひかるがこっちの世界でプリキュア関連の事件に巻き込まれたらその時は俺達が責任を持って守る。だから安心していてくれ」
「うん、お願い」
そして、それが済むとソラやましろ達他の面々もらんこがいなくなってしまう前に自分の伝えたい事を話していく。
「元気でね、らんこちゃん」
「向こうの私達によろしくとお伝えください!」
「らんこちゃん、向こうに戻ってもきっと辛い事とか悲しい事とか沢山あると思う。だけど、そんな時こそ前向きな気分でいればきっと上手くいくから」
「うん……」
そして、とうとう時間なのからんこの体は少しずつ穴の中に吸い込まれ始める。本来いるべき場所に戻るかのように。
「いつか会おうね」
「今度会ったらこっちの世界をしっかりと案内するからな!」
「ふふっ。楽しみにしてるわ」
その時、らんこは一同の前で被っていたフードを外した。そこにあったのは緑色のボブカットをした可愛らしい一人の少女の姿である。
「これを見せれるのは私の世界のソラ達以外じゃユキ達が初めてだよ。またね!」
そう言ってらんこの姿は穴の中に消えていくと同時にワームホールは閉じてしまった。
「らんこちゃん……元気でいてね」
「ま、大丈夫だろ。らんこさんはだいぶ明るく変わってくれたし」
「そうそう。明るくいれば、らんこさんもきっと元気でいてくれるさ」
二人は自分達以外にも別の世界にプリキュアがいて頑張っている。それだけでも今後頑張る励みになれると笑い合うのだった。こうして、ダークネス事件及びらんことの出会いがあった激動の二日間は終わりを告げる。そして翌日からは新学期だ。
「……あ。そういや、明日から学校だったな」
「そうだね。遊ぶって話ももう今からじゃ無理かも」
一同が空を見上げるともう日が沈みそうであり、周囲は暗くなり始めていた。そんな時、ひかるが我に帰ったように声を上げる。
「やべぇっ!春休みの宿題終わってねぇ!!」
「はぁ!?ちょっ、お前早く家帰ってやれ!明日提出だからな?」
「わかってるって!じゃあなましろさん、虹ヶ丘!」
そう言って慌ててひかるは家に帰っていく。それをユキ達は苦笑いしつつも彼が元気になった事を見届けてからまた一歩、明日への道を歩むのであった。
今回でコラボストーリーは終了となります。獅子河馬ブウさん、今回はコラボをしていただきありがとうございました。次回からはまた本編の話に戻っていきます。
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