熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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ユキのモヤモヤ 学校への登校

らんことの出来事のあった日から一夜明けた朝。ユキ、ソラ、エルが虹ヶ丘家に来てから既にそれなりの時間が経ち、前日まで続いていた春休みが終わりを告げた。つまり、この日から新学期……学校が始まるという事である。

 

「「「「ごちそうさまでした!」」」」

 

四人はいつものように朝ご飯を食べると今日は朝の皿洗い当番が偶々ユキとソラの二人だったので片付けをして皿を洗う。その間にアサヒとましろは自分の部屋へと戻っていった。

 

「あれ?そういえばアサヒ君とましろさんは?」

 

「確か今日から学校だったはず……だから準備しに行ったと思うよ」

 

「ああ……」

 

学校。ユキにとってのそれはあまり良い思い出の無い場所だったが、スカイランドとこちらでは色々と勝手が違うはず。そう思う事で一応安全であると二人は考えていた。

 

「ここの使い方やらにもやっと慣れてきたよ」

 

「はい。最初はスカイランドと勝手が違い過ぎて困ってしまいましたもんね」

 

二人はここに来た当初、どうしてもスカイランドとの違いがある影響で色々と苦戦。ようやくここ最近になってやり方を覚えてきたのである。すると突然ソラがソワソワしているような様子を見せた。それを見たユキは彼女へと問いかける。

 

「ソラちゃん?」

 

「へ!?な、何ですか?」

 

「さっきから凄いソワソワしてるように見えるけど、何か嬉しい事があったの?」

 

「え、えっとですね。改めて私達とこの世界で初めて友達になってくれたアサヒさんやましろさんがいてくれるのが幸せだな〜って」

 

それを聞いてユキは納得したのか小さく頷く。今実際にそれを口にしたソラは勿論なのだが、ユキもユキでソラやその家族以外に心を許せる人がいなかった事もあってアサヒやましろの存在は救いになっていたために彼女もその意見には同意見なのだ。

 

「ヒーローになる訓練ばかり私にできたこの世界での初めての友達……友達……ふふっ、何だかドキドキしちゃって!」

 

「ドキドキ……」

 

ユキはソラから出てきたドキドキという単語を聞いて口に出す形で繰り返す。どうやらその気持ちに彼女もどこか心当たりがあるらしい。

 

「……ユキさん?」

 

「えっ!?あっ、ご、ごめん……何でも無いよ……」

 

ユキが僅かに心の中にモヤモヤした気持ちを抱えているとソラに逆に問われてしまったために彼女は慌てて取り繕う。そのためソラは僅かに頬を膨らませる。

 

「ユキさん、また一人で悩んでませんか?」

 

「え、えっと……正直悩んでる気がする」

 

「気がする?」

 

ユキはソラに聞かれると珍しく正直に答えを返した。ただ、ユキ自身にもそれがわからないような答え方であったためにソラは首を傾げる。

 

「うん……悩んではいるんだけどね。気持ちが上手く言えないのかな。自分の中でさえ整理ができてなくて」

 

「そうですか……でも、整理できたらちゃんと話してくださいよ?」

 

「そ、それは大丈夫。それに、多分これは本当に話さなくても良い事かもしれないし」

 

ソラはその言葉にまたユキが周りに心配をかけないように痩せ我慢をしているという可能性が頭を過ぎる。ただ、彼女を見るとその気持ちは不思議と消えていた。そしてそれは本当にいつもの彼女が抱えている深刻そうな悩みとは違うモヤモヤだと一目でわかったからだろう。

 

スカイランド組の話はこの辺にして、時間を少し遡り二人が二階に上がった頃。アサヒとましろはこれから始まる学校に向けて着替えを開始していた。服装は勿論学校で指定された制服である。そして、場面はましろの部屋へ。

 

「ふんふふふーん……」

 

ましろは新学期の始まりが楽しみであるのかご機嫌な様子であった。そして鼻歌を歌いながら制服を着る上で一番最後に残っていたリボンを結ぶ。彼女達の通う中学校は青を基調とした制服であり、一通り服を着たましろは服装が整っているかを鏡で確認。

 

「……っと、いけない」

 

服装が大丈夫だと考えたましろはそのまま鞄を持って行こうとするが、その直前に机の上に置いてあったミラージュペンに気がついて手に取る。

 

「これで良し!……もしこれを忘れたらカバトンやシャドーが来た時に大変な事になっちゃうよ」

 

このミラージュペンが無ければ仮にスカイトーンを持っていたとしてもプリキュアへの変身ができず、この前のソラみたいに逃げなければいけなくなってしまう。そのためましろはしっかりとペンを鞄に付けることでいつ出てきたとしても対応できるようにした。

 

「時間もまだ大丈夫そうだね」

 

それからましろは時間がまだ急ぐタイミングでは無い事を確認してから部屋の外に出るとタイミングピッタリなのかアサヒが出てきていた。

 

「あ、アサヒ」

 

「このくらいならちゃんと時間にも余裕あるだろ?」

 

その姿は男子用とはいえましろと同じ学校の制服であり、彼もまた着替えを完了させたという事である。

 

「それはそうと、アサヒ。ちゃんと忘れ物無いか確認したよね?」

 

「え?そりゃあ確認したし、大丈夫だろ」

 

するとましろは少しだけ彼の鞄を見ると自分にはあって彼には無い物に気がつく。

 

「……アサヒ、ミラージュペンは?」

 

「え?……あっ」

 

どうやら素で忘れかけたらしい。そのため慌ててペンを取りに戻るアサヒ。その様子にましろは心配そうに溜め息を吐いた。

 

「はぁ、朝からこれじゃあ先が思いやられちゃうよ」

 

「そんな事言っても忘れた物は忘れたんだ。仕方ないだろ」

 

どうやら今の一瞬で取ってきたのかアサヒは改めて自分のミラージュペンを鞄に付けていた。何にせよこれで彼も注意するようになっただろう。

 

「じゃあ今度こそ大丈夫かな?」

 

「お前は俺の母親か。うっかりしたのはペンだけだしもう大丈夫だろ」

 

アサヒがジト目をましろに向けるとそれから二人揃って移動しようとする。すると丁度タイミング良くユキとソラが片付けを終えてから自分の部屋に戻り出かける準備を済ませていた。

 

「ましろさん、アサヒ君!準備万端ですね!」

 

「その服装。やっぱり二人共今日から学校……だったよね?」

 

ユキは予想通り二人が制服を着ている事からやはり今日から学校が始まるのだと察して質問する。

 

「うん!これが私達の学校の制服だよ!」

 

「可愛い……」

 

「えへへ……」

 

ユキに褒められて照れくさそうにするましろ。そしてアサヒはそのやり取りに思わずある事を呟いた。

 

「そんな事言ったらユキだって……」

 

「アサヒ君?」

 

「いや、何でもない」

 

それを僅かにソラに聞かれたアサヒはすぐに訂正する形で首を横に振る。ユキはアサヒが何かを呟いたと思うとその方を向くが、アサヒは平然とした顔なのを見て首を傾げた。

 

「……?」

 

「お二人共とっても素敵ですよ!」

 

「ありがと、ソラ」

 

「前から言ってるけど、今日から学校なんだよね」

 

ましろは学校に行く以上、立ち止まるのは良くないという事で一旦玄関にまで移動するべく歩き始める。そしてその隣をユキ達も着いて行った。

 

「そういえば、スカイランドにも学校はあるんだったよね?」

 

「そうですね。私達も通ってました」

 

「……二人は……二人は虐められたりしてない?酷い目に遭わされたりとか」

 

ユキは僅かに気不味そうな顔つきで心配するように問いかける。これは学校で嫌な思いをしてきた彼女だからこそ出てくる言葉だろう。

 

「それなら大丈夫だよ。俺達の学校でそういう事は無い」

 

「うん。だから安心してて」

 

「そっか、良かった……」

 

ユキは不安が解消されたかのように胸を撫で下ろすとアサヒ達三人はユキの心配も無事に解けて良かったと考える。

 

そんなわけで早速アサヒ達はスカイランドでの学校について聞くのと同時にこちらの世界の学校についても話題にする事にした。

 

「気を取り直して。それで、スカイランドの学校はどんな感じなのかな?」

 

「えっと、スカイランドでは生徒以外のどんな人でも入れるよ。あ、でも流石に不審な人とかだったら警備員さんが見つけたり、警備鳥さんに突っつかれるからそこは安心して」

 

「だよな……そうしないと不審者とか入りたい放題だし」

 

どうやらスカイランドでは基本的に校舎内にどんな人でも入る事ができるようだ。感覚としては江戸時代の寺子屋に近いのかもしれない。

 

「それとましろさん達の反応からして、こっちの世界では色々違ったりするんですか?」

 

「そうだね……私達の世界にある学校は生徒とかの関係者しか基本的には入れなくなってるんだ」

 

「……えっ?じゃあもしかして、私達は……」

 

「当然入れないだろうし、無理に入ろうとしたらそれこそ不審者扱いされるだろうな……」

 

「そう……なんだ」

 

ユキは自分達が学校に入れないと聞いて愕然としたような顔つきになる。そしてそれは学校に入れない。その意味をユキが心の中で思い至ったというのも大きいだろう。

 

ここでスカイランド組とソラシド市組の間で認識に差がある事から学校という概念はスカイランドとこちらの世界で共通でああるものの、それでも明確な違いという物は残念ながらあるのだ。

 

「あ、そろそろ時間だし行かないと」

 

ましろは時計を見ると登校しないといけない時間になっている事に気がつく。そのため四人は玄関にまで到着した。

 

「それで、二人はどうする?」

 

「えーっと、学校の外までなら別に着いて行っても良いんですよね?」

 

「そうだな。敷地内に入らなければ」

 

「じゃあ、学校までお見送りします!」

 

ソラはもう学校の敷地外までなら見送る気満々であり、その様子に三人は苦笑いを浮かべる。

 

「ユキちゃんはどうする?」

 

「それじゃあ折角だし、一緒に良いかな?」

 

「わかった。じゃあ行こうか」

 

こうして、ましろとアサヒの二人の事を学校の敷地外にまで見送るべくユキとソラは着いていく事になった。また、その事が決まった事で四人は玄関から出る。

 

「「「「行ってきまーす」」」」

 

「行ってらっしゃい」

 

四人が出かける挨拶をするとヨヨからの返事が聞こえ、早速外に出た。そのまま雑談しながら学校へと歩いていく事になる。

 

「………」

 

ただ、その光景を虹ヶ丘家の屋根の上から白い鳥がジト目で見ていた。そしてその視線はたった一人。アサヒへと注がれている。

 

それはまるで彼を呪ってるようにも見えたのだが……そんな白い鳥を見たオレンジの鳥は慌ててそれ以上アサヒへとジト目を向けないように苦労しながら物理的に引き剥がす事になるのだった。

 

一方、虹ヶ丘家の屋根で起きている事など梅雨知らずの四人。彼女達は学校までの道を歩きつつ話を継続していた。

 

「昨日のテレビ、面白かったですよね!今夜はどんな番組をやるのでしょうか?」

 

「スカイランドではテレビとかも無さそうだもんな。ちなみにどういう物が良かったりする?」

 

「そうですね、例えば様々な個性を持ったヒーローが世界を救うために悪役と戦う物とか!」

 

「あー、○ロアカの事か。確かにソラは好きそうな番組だな」

 

ソラがテレビ番組の事について上機嫌で話をしている一方でユキは少しだけ寂しそうな顔をしつつ歩く。それに気がついたましろがそっと話しかけた。

 

「ユキちゃん、大丈夫?」

 

「えっ、あっ……えっと……大丈夫。心配しないで」

 

しかし、やはりユキはこういう時の誤魔化しが苦手なのか……ましろにはユキが何か不安要素を隠していると思ってしまう。ただ、これ以上変に深入りはしない方が良いと思ったのか一旦放置する事にした。

 

「そっか」

 

「うん、心配かけてごめんね」

 

ユキもましろに心配をかけたのを察したのか申し訳なさそうな声色で話すと暗い話はお互いに終わりにすべきと考えて一旦この話を止める事にした。

 

「この前私、逆立ちをしたままの状態でどれだけ歩けるか挑戦してみたんです!」

 

「あー、それ私も付き合わされたなぁ……」

 

「それ、なかなか大変そうだけど俺もできるかな?」

 

「いやいや、普通はやったらダメだからね?」

 

そして、ソラが中心になって話す雑談の内容は彼女が挑戦した事についての話へ。ユキとソラがやった逆立ちしながらの歩行にアサヒは挑戦意欲を示すが、ましろはそんな事やるのは流石に危険すぎるという事で止めに入る事に。

 

「そういえば、エルちゃんって眠ってる時偶に一人でお喋りしてるよね」

 

「あっ、それ私も聞いた事あります!可愛いですよね!」

 

「お喋りか。どんな事言ってた?」

 

「うーん、多分まだ“える”しか言えないから解読するのは厳しいと思うよ」

 

「「「あー……」」」

 

更に四人は続けて寝ている際のエルの話へ。どうやらエルも寝言を言うらしい。尚、ましろの言う通り何を話しているかを解読するのは厳しそうだったが。

 

それからも暫く四人が楽しい会話をしながら移動。ただ、楽しい時間というものはどうしてもあっという間に過ぎてしまうのが相場なのか……とうとう学校が見える位置に来てしまった。

 

「あ、そろそろ学校が見えてきたね」

 

「ここがお二人の通ってる学校ですか!」

 

「学校に着くという事はもう別れないとだな」

 

「ッ……」

 

アサヒがそう呟いたのを聞いてユキの心の中のモヤモヤが大きくなる。それから一瞬だけアサヒを見るが、彼は止まろうとしてくれない。当然だろう、彼にも学校があるのだ。こればかりは仕方ない。

 

そして、ユキの気持ちとは裏腹に四人は学校の校門付近に到着してしまう。それからアサヒとましろはこれ以上は大丈夫と言わんばかりに少しだけ前に出てからユキやソラの方を見るのだった。




また次回もお楽しみに。
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