熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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虹ヶ丘家で働く二人 ヨヨとの話

場面を少し遡り、アサヒとましろの二人が校舎の中に入った頃。アサヒの前から逃げ出してしまったユキにソラが追いつくと声をかける。

 

「ユキさん、急に走り出してどうしちゃったんですか?」

 

「……何でも無いよ……」

 

「そんなわけないじゃないですか。ユキさんがそういう事を言う時って大体何かを我慢してる時ってわかってるんですからね?」

 

「……うん」

 

ユキもソラ相手に嘘を吐いてるという事自体はバレても仕方ないと思っていた。それでもこの気持ちを口に出すなんてダメだと考える。

 

「私だってしょうもない誤魔化しをしてると思う。……だけど、やっぱりこれは言っちゃダメ。少なくとも、今の私が口にして良い事じゃ無い」

 

「……ユキさんがそう言うのなら……私もこれ以上は言いませんけど、でしたらこれ以上気になるような事はしないでくださいね?」

 

「あはは……うん。そうする」

 

ユキはソラの優しさのおかげでこれ以上この事を言わないようにしようと考えた。確かに逆の立場だったら同じような事をされて気にならないわけが無い。先程のアサヒや今のソラが気になっても仕方のない事だ。

 

それから二人は元来た道を戻る形で虹ヶ丘家に到着。早速ユキとソラは家に入るとこの後について話す事になる。

 

「それでこの後はどうしますか?」

 

「うーん。二人が帰ってくるのは確かお昼過ぎてからだったはず」

 

今日は学校の初日である始業式の日。そのため授業自体は控えめで帰りは昼ご飯を食べて少し後だったはずだ。ただし、明日以降はそこから更にお昼の授業やら部活やらがあってもう少し遅い時間である。

 

「それだったら、えっと……私やる事を思いついてて」

 

「あっ、奇遇です!私もやる事の候補を思いついてますよ!」

 

それから二人は同時に意見を言うのも面白そうと思ったためにこの事を一緒に提案することになる。

 

「「この家での仕事を(しよう)(しましょう)!……あっ」」

 

まさかのお互いに提案した事が全く同じだった事に驚きつつも思わず二人共微笑んでしまう。そして、そうとなれば話は早い。

 

「ふふっ、考える事は一緒でしたね!」

 

「うん。だったら、この家でお世話になってる分、私達二人でやる事を頑張ろ!」

 

そんなわけで二人は早速掃除用の服装と言わんばかりに頭にはバンダナ、体にはエプロンを着けると手分けをしてまずは家の掃除を開始する。

 

ただ、掃除をするとは言っても虹ヶ丘家は凄まじく広い。それこそ二人でやるには気が遠くなるくらいに。

 

「ユキさん、廊下の方の雑巾掛けお願いします!私はこれを使ってお掃除しますので!」

 

「うん、任せて。あ、だけどソラちゃん。その掃除機……だっけ。使える?」

 

ユキが廊下の雑巾掛けをしている間にソラはリビングの掃除機がけをしようとする。ただ、掃除機なんて物はスカイランドには無い。そのため使い勝手のわからない道具をそんないきなり使えるのかとユキは気になったのだ。

 

「大丈夫です!……きっと」

 

「そこは言い切って欲しかったな……」

 

それから早速二人は掃除の持ち場に行く……のだが、ソラはやはり掃除機の使い方がわからず。その中で色々と触っているとゴミを吸引するためのブラシの先端を自分に向けた状態で電源を入れてしまう。

 

「うわぁあっ!?」

 

その後、色々と弄る間にソラは使い勝手をわかったらしく。どうにか普通の使い方で掃除をできるようになった。

 

「これ、腰に来る……。けど、トレーニングだと思えばこのくらい!」

 

虹ヶ丘家の廊下の広さを前にユキは雑巾掛けをしつつも腰に多少の痛みを感じる。だが、トレーニングだと考える事や無理しないように少しだけ休み休みかける事でどうにかやり切る事になった。

 

「この家でお世話になってる恩義です!」

 

「もっと頑張らないと!」

 

ユキもソラも責任感が強い。そのためこの家を一通りピカピカにする勢いで掃除を進めていった。勿論大掃除でやる時程細かくは無いが、それでも掃除をする以上は適当にやるなんて話にならない。

 

そのため二人はやる気全開で次から次へと家の中を綺麗にしていく。それこそ学校から戻ってきた二人に驚いてもらえるようにだ。

 

「そういえばユキさん、昨日の脚は大丈夫なんですか?」

 

「えっ、ああ。多分最後に先代のプリキュア達に回復してもらった時にかな……ちゃんと治してもらえて」

 

ユキがそう言って左脚を見せるとそこには怪我していた際にできていた青い痣は綺麗さっぱり無くなっていた。

 

「先代のプリキュア……どれだけ凄い力を持っているのでしょうか」

 

「う、うん……私の事をプリキュアにした時も夢の中に出てきたし、ダークネスの事をたった二人で押し返してましたし……もしかするととんでもない力を持ってるのかもしれません」

 

二人はそんな風に多少のやり取りこそはしたものの、それ以外は基本的に自分のやる事に集中しておりどんどん掃除を終えていく。

 

「「終わったぁ……」」

 

二人は揃って居間にあるソファーに背中を預けるような形で座っており、疲れを癒していた。

 

「次はどうします?」

 

「それなら勉強とエルちゃんのお世話を時間で区切って交互にするっていうのは?」

 

「なるほど、それが良さそうですね!」

 

続けて二人が取り掛かったのは勉強やエルのお世話だ。勿論、二人で同じ事をやるわけでは無い。何しろエルは寝ている時以外は誰かの見える範囲にいた方が良いわけで。そう考えると二人が交代で勉強と彼女のお世話をする形の方が合理的だ。

 

「まずは私が勉強ですね」

 

ソラは机に向き合って座るとまずは日課となっているこの世界の文字の書き写しである。

 

「この世界の言葉は大体理解できるようになってきました。次は……え、えっと。これは何て読むのでしょうか……」

 

続けてソラが手を付けたのはこの世界の漢字である。勿論今のソラのように平仮名か片仮名を理解していれば最低限のやり取りや文章の理解はできるだろう。しかし、この世界の大抵の本には漢字の読み方の振り仮名なんて物は書いてない。

 

そのため、漢字を覚えておく事は結果的にこの世界で過ごす上で大きな意味を持ってくれるだろう。

 

「ましろさんが幼い頃使っていた“漢字ドリル”ですかね?それをこうして使えるなんて感激です!」

 

ソラはましろが昔使っていて偶々残っていた漢字ドリルを使用。漢字の勉強を行っていく。同時刻、ユキはエルを抱っこすると優しく声をかけていた。

 

「エルちゃん、抱かれてみてどう?変な感じしない?」

 

「える?……えるぅ!」

 

エルはユキが何で自分を心配しているのかわからないと言わんばかりに心地良さそうな声を上げる。それを見て安心して貰えているとホッとした顔を浮かべた。

 

「それにしても私やアサヒ君が抱くとソラちゃん達が抱くよりも何でリラックスしてるのかな。誰が抱いてもそんなに変わらない気がするんだけど……」

 

ユキは正直な所、エルが自分やアサヒに抱かれると安心する理由がわからなかった。ユキは今よりも少し幼い頃にソラの弟を抱いた事があるのだが、その際はむしろソラに抱かれた時の方が弟は安心していたらしく。自分なんかよりもソラの方が上手だと思っていたわけで。

 

「うーん、その人の技量にもよるけどその人その人で安心する相手が違うのかな」

 

「える?える!」

 

だが、一人で考えていても仕方がない。今は目の前にいるエルをお世話する事に集中するべきと考えたユキは彼女としっかり向き合う事になるのだった。

 

「ユキさん、そろそろ」

 

「うん、じゃあ交代だね」

 

「える!?えるぅ……」

 

ユキがエルをソラに渡そうとすると彼女が少し不安そうな声を上げる。これもいつもの流れだ。エルはユキやアサヒの手元から離れるのを少し不安がってるようで。本当に理由はわからないが、エル視点で見るとユキとアサヒは特別に感じるらしい。

 

「はぅう……やっぱり私はユキさんの安心感には及ばないみたいです」

 

「そんな事無いはずなのに……何でだろ」

 

それでもユキにも勉強が必要なため、結局そのままエルをソラに引き渡すと時間帯的にソラがミルクを上げる事になった。

 

それからユキも勉強が終わり、今度は二人で揃ってトレーニングをする事になる。二人が隣り合わせで腕立て伏せをする中、ソラの方は背中にエルを乗せながらやっている。

 

「ソラちゃん、次は私が乗せてやるから」

 

「はい、お願いします!」

 

「え〜る!」

 

ただ、ソラばかりがこういう鍛え方をするわけでは無い。勿論ユキのターンもあるわけで。二人はこちらに来てからのルーティンとなりつつあるトレーニングを一緒に進めていった。

 

「やる事がいっぱい。これならお二人が帰ってくるまで保ちそうですね!」

 

「そうだね……って言いたいけど。このトレーニングの後って何かある?」

 

「トレーニングの後?……えっと……何しましょうか」

 

「あはは……」

 

結局、ユキの問いにソラは答える事はできず。一応そのままトレーニングを続行。トレーニング終了後は結局皿を一通り洗う事にしたが、それでも長くは続かない。そのためユキの危惧は現実になってしまう。二人で効率よく作業をやったためにやることが何も無くなってしまったのだ。

 

「やる事……無くなってしまいました」

 

「あはは……やっぱり最後にはこうなるよね……」

 

まだ時間は11時半。お昼前なのでお腹が空いてくる所だったが、それについては料理を作れば満たす事ができる。しかし、肝心の二人はすぐには帰ってこない。

 

「……どうする?ご飯、作る?」

 

「……それはちょっと置いておきましょう。その前にやる事を見つけませんと」

 

このままでは二人が帰る時間まで空き時間となってしまう。ふとユキはソラが抱き、その状態で寝ているエルを見ると彼女の頭を起こさないように優しく撫でる。

 

「ユキさん?」

 

「こうやって寝ているエルちゃんを見ているとさ。癒されるって言えば良いのかな。私、可愛いものが好きみたい。アサヒ君にも一緒にこの顔を見てもらいたいなぁ」

 

しかし、ユキがそう言ってもアサヒは今学校。そのため、どうすることもできないのだ。

 

「………アサヒ君」

 

ユキはそれから一瞬寂しそうな顔つきになると少しだけ間を置いてソラへとある提案をする事にした。

 

「ソラちゃん、今時間があるのなら二人でヨヨさんの所に行かない?」

 

「ッ、その手がありましたね。行きましょう!」

 

ユキの提案で二人はエルを専用のベッドに寝かせると早速ヨヨの元に行く事に。彼女なら前にましろに買い物をお願いした時のように何かしらやる事を提示してくれるはずと考えたのだ。

 

その頃、アサヒやましろが通っている学校は授業中であった。しかし、アサヒとましろもまた二人の事を考えたせいで中々集中できず。

 

「(ユキ、何してるんだろ……)」

 

「(ソラちゃん……)」

 

どうしてもアサヒはユキを、ましろはソラの事を考えてしまうのをやめられない。それ程までに二人の中にはソラやユキといる毎日が深く刻まれてしまっていた。

 

尚、この後二人の事を考え過ぎてアサヒもましろも教師に当てられてクラスメイトに笑われてしまったのだが……それは余談である。

 

そして、場面は戻り虹ヶ丘家。ヨヨに何かできることは無いか聞くために彼女の部屋に移動した二人。まずはその部屋の戸をノックする。

 

「どうぞ!」

 

「急にすみません……」

 

「あの……何かお手伝いできる事はありますか?」

 

「ええ、丁度良かったわ」

 

二人からの言葉にヨヨは嬉しそうに微笑むと早速彼女は二人にスカイランドのトンネルを開くための手伝いを頼む事になる。

 

「結構力要りますね、これ……」

 

「さっき私もやってみたけど、ヨヨさん今までよく一人でこんな力のいる事を……」

 

今は材料をすり潰す工程を二人で交代しながらやっていた。もう一人は先程起きたエルと一緒に遊ぶ形となっている。ちなみに今はソラがすり潰す番だ。

 

「トンネルの完成までは沢山の手順がいるからとっても助かるわ」

 

「お役に立てて良かったです!」

 

「それにしても、本当に色んな作業をしてるって事は……時間がかかるのも納得かも」

 

「ッ……」

 

その瞬間、ソラはある事を思い出してしまうとその拍子にすり鉢の中に入っていた硬い木の実のような物が飛び出してしまう。

 

「えるぅ!」

 

エルがそれを見て興奮したように手をパチパチと拍手するが、同時にソラの脳裏には前にヨヨに対してやってしまった失礼な態度が浮かんでしまう。そのため、彼女はヨヨの元に移動した。

 

「ヨヨさん。この間はごめんなさい。私、自分の事ばかり。ヨヨさんに嫌な態度をとってしまいました」

 

「良いのよ、気にしないで。それよりどう?二人共こっちの世界には慣れた?」

 

ヨヨは気にしていない様子であり、逆に二人へとこちらの世界に住んでみての感想を聞く事に。

 

「はい!けど、私。お世話になりっぱなしで皆さんにも迷惑をかけてばかりです」

 

「私も、自分が情けないせいで沢山……」

 

ユキも申し訳なさそうな顔つきでそう話す。彼女も彼女で色々と迷惑をかけた自覚があるからだ。

 

「ふふっ、そんな事無いわ。ソラさんの何事にも一生懸命な所、それにユキさんは来たばかりの頃より明るくなってくれた事。とっても良いと思ってるわよ」

 

だが、ヨヨからしてみればソラの性格もユキが変わってくれた事もどちらも喜ばしい事である。そして、初めてこの世界に来たばかりの頃を思い出すと今の二人が同じような状況になっているという事から続けて二人へと問いかけた。

 

「戸惑う事も多いけど、こっちの世界は興味深い物ばかり。そうでしょう?」

 

「はい!今日見たましろさんにアサヒ君の学校もとっても楽しそうでした!」

 

「学校……」

 

ソラはこの世界の学校を見て興味を示しており、ユキも学校という単語自体に恐怖こそ感じていたが……その顔つきは通いたいと言わんばかりの雰囲気だった。そんな二人の心境をヨヨは見透かしている様子で。

 

「二人はましろさんやアサヒさんと一緒に学校に行って楽しい時間を過ごしたいのかしら?」

 

「い、いえ……私達はこの家でやらなければならない事がありますし……」

 

「そうですよ。私達、二人共この家でお世話になっている身なので……」

 

「そう?」

 

だが、そう言う二人の声はどこか寂しそうな物に変わってしまっている。ヨヨはそんな二人の寂しさを感じ取った。

 

「ユキさん、ソラさん」

 

「「は、はい!」」

 

「ちょっとまた、買い物を頼める?」

 

ヨヨは二人が迷っているのを見てひとまず買い物を頼むと二人は早速着ていた掃除用の服を脱ぎ、出かけていく事になる。

 

「「行ってきます!」」

 

「お願いね!」

 

「えるぅ!」

 

それからヨヨは二人がいなくなったのを見計らうと早速スマホを取り出してとある場所へと電話をかけるのだった。




また次回もお楽しみに。
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