熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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それぞれが抱えるモヤモヤとした気持ち

ユキとソラの二人がヨヨからお願いされておつかいへと向かってから暫くして。アサヒやましろの通う私立ソラシド学園は昼休みに突入していた。そうなった直後、二人の元に仲田が近づいてくる。

 

「ましろん、虹ヶ丘君、一緒にご飯食べよ!」

 

「うん、良いよ!」

 

「すぐに机ごとそっち行く」

 

アサヒとましろは早速呼びに来てくれた仲田や一緒に食べる吉井、軽井沢の元に行くために机ごと移動しようとした。すると二人はいつもの調子でユキやソラにも声をかけようとする。

 

「そうだ、ソラちゃんも一緒に……」

 

「折角だから友達を作るためにもユキも……」

 

アサヒやましろがそう言いつつ振り向くが、そこには当然二人はおらず。ただ壁や校庭が見える窓があるだけ。つまり、二人はこの場にはいないのだ。そしてそれを自覚するとましろは寂しい気持ちになってしまう。

 

同時に仲田は聞き慣れない名前を聞いて首を傾げる。そのため二人は慌てて取り繕った。

 

「ユキに……ソラちゃん?」

 

「え?あ!ごめんごめん!何でも無いよ〜」

 

「悪い、俺も変な事言ったよな。あはは……」

 

しかし、二人が何か悩みでも抱えているのかもしれないと考えた仲田は更に問いかける。

 

「ましろんに虹ヶ丘君。もしかして何か悩んでる?」

 

「だ、大丈夫だよ!!」

 

「平気だって!」

 

「う、うん……」

 

仲田が心配する中、アサヒもましろも大丈夫だと言い切る事で彼女の心配を押し切るのだった。

 

「お、虹ヶ丘もましろさんも来たな」

 

「折角なら俺も入れてくれ」

 

「げっ、ひかる君も来るの?」

 

すると先に集まっていた吉井や軽井沢の所にひかるが参戦するように入り込んできた。吉井は嫌そうな顔をしたが、これはあくまで騒がしくなるという意味でである。勿論彼を生理的に無理とかそういうわけでは無いのは留意していただこう。

 

こうして、アサヒ、ましろ、ひかる、仲田、吉井、軽井沢の計六人は机を囲む形でご飯を食べる事になる。

 

「虹ヶ丘、そのウインナーとこの唐揚げ交換しないか?」

 

そして食事中、軽井沢は物々交換のために声をかけるとアサヒはユキのいない寂しさで多少ボーッとしているのか返事ができなかった。そして、軽井沢がそれを不審に思ってもう一度アサヒへと声をかける。

 

「虹ヶ丘?」

 

「ッ!あ、ごめん。交換だったよな?良いよ」

 

それからアサヒは軽井沢の交換に応じたものの、やはり彼は自分の中でモヤモヤとした気持ちが湧き立つのを感じた。

 

「……ご馳走様。ごめん、ちょっと外の空気吸ってくる」

 

「えっ、虹ヶ丘君!?」

 

「ッ!ごめん私も!」

 

「ちょっ、ましろんまで!?」

 

外の空気を吸いたいと言って教室から出て行くアサヒに彼を追うために慌てて立ち上がるましろを見てひかる達は唖然とする。

 

「ほんと、さっきからましろんも虹ヶ丘君もどうしたんだろ……」

 

「うん。今日の授業も何だか集中できて無さそうだったし……」

 

仲田や吉井が二人を心配する中、ひかるの脳裏にはある事が浮かんでいた。それは昨日出会ったユキとソラの存在である。見た所二人はアサヒやましろと親しかった。そのため彼はある事実に辿り着く。

 

「(もしかして、あの二人がいなくて寂しい……とか?俺も一人だとジッとしてられなくてクラスメイトに絡みに行くし。多分それと一緒なのかも……)」

 

これはひかるにしては珍しく冴えた予想だった。そこに事情を知らない軽井沢が声をかける。

 

「もしかして二人共お互いと喧嘩……は無いとして、何か気不味い事でもあったのかな?」

 

「いや、それだったらあの二人は互いに話しづらいだろ。でも会話は普通にしてたし、多分違う」

 

「そっか……」

 

そんな風に残されたメンバーがそれぞれアサヒやましろを心配したり邪推したりしているが、それはさておき。アサヒが一人で向かったのは学校の屋上。ここであれば誰もいないため大丈夫と考えて深呼吸。気持ちを落ち着ける。

 

「スゥーッ……ふぅ……」

 

しかし、アサヒがどれだけ深呼吸して心を落ち着けても頭の中にユキの事が浮かんでしまう。そして、彼女の名前を小さく呟いた。

 

「ユキ……」

 

「やっぱりここにいた!アサヒ!」

 

そのタイミングで教室から追いかけてきたましろがやってくる。ましろはアサヒへと声をかけつつ近寄った。

 

「もしかして、ユキちゃんの事を考えてたりする?」

 

「ああ。ユキの事考えてた」

 

「そっか」

 

ましろがアサヒからの答えに少し考えるような仕草を見せる。そんな時、アサヒは自分から呟いた。

 

「……なんか俺、変なんだ」

 

「えっと、変って?」

 

「……どれだけ他のクラスメイトと話したり授業を受けて新しい話題を頭の中に放り込んでもさ、さっきからずっとユキの事ばかり考えるんだ。朝別れた時はそんな事無かったんだけどさ……」

 

アサヒは時間が経つごとにユキの事を脳裏に浮かべて仕方ないらしい。ユキを一人にするのが危なっかしい……そういう心理もあるのだろうが、そうだとしても家にはソラやヨヨがいるので厳密には一人では無い。だから心配の必要は無い……はずなのだが、これがまたなかなか頭から離れてくれないのだ。

 

「多分だけど、昨日ユキをもう一回背負った時くらいから……余計にユキの事を心配するって言うか」

 

「それって、寂しいって事?」

 

「わからない……。ただ、これだけ確かなのが……どれだけ忘れようとしてもユキの可愛らしい顔や白い綺麗な髪を思い浮かべて……ユキが脳裏にずっといるような気がする」

 

それを聞いたましろはアサヒのその気持ちにどこか心当たりがあった。ましろはそれから少し考える。その理由をアサヒに伝えるのは簡単。でもそれはアサヒが自分で気がつくべき感情だ。そのためわざとその事には触れずに自分の事を話す。

 

「けどそれなら私もだよ。私もソラちゃんやユキちゃんがいなくて物足りないって思ってたんだ。できれば一緒に学校に行きたいななんて考えもあるよ」

 

「ましろもか……。でも、俺のは多分それとは少し違うんだよな……。さっき軽井沢がユキを保護してあげたいって言った時何だかモヤって気持ちと苛立ちが出てきて……。他の人、特に男に取られたく無くて。これって何なんだろ」

 

そこまで聞いてアサヒがユキに向けてる感情の正体を完全に確信した。アサヒの抱いている感情。それは……。

 

「(やっぱり……アサヒ、ユキちゃんに恋してる……)」

 

先程までのアサヒの言動。更に言えばアサヒは出会って以降ユキの近くにいる事が多かった。そしてユキはハッキリ言って同年代の女子の中では頭二つは抜けて美少女である。

 

ましろはユキの可愛さに関しては隣に立っていて逆に自分の自信を無くす程だと思っており、女子の自分も見惚れそうになってしまうような容姿を持ってるのに男子のアサヒが釣られないはずが無く。

 

「(ユキちゃんって本当にズルいくらい可愛いんだよね……。本人は自信無いみたいだけど……。それにアサヒはそんなユキちゃんと近くで接してて。惚れないわけが無いよ)」

 

ましろはそう考えつつちゃんとアサヒにモヤモヤの正体をそのまま伝えるべきか、それか自分で気がつくのを待つべきか少し悩む。しかし、それでもましろの出した結論は変わらなかった。

 

「そっか。多分だけど、その気持ちがわかる時はきっとすぐに来るよ」

 

「え……。待てよましろ。それってどういう意味……」

 

「ほら、皆心配してるよ?」

 

「ちょっ、待てって!」

 

そう言ってましろは戻って行ってしまう。だが、アサヒはましろの言った言葉の意味がわからない。そのため頭の中に疑問符を幾つも浮かべてしまう。しかもましろを追いかけるために結局気持ちの整理ができず。

 

「(何なんだよましろ……ちょっとユキの事を強く考えてただけなのに……)」

 

だが、アサヒの心臓は普段よりも少し鼓動が早くなってしまっていた。そしてそれは運動が原因では無いというのは言うまでもない。

 

「(この気持ちは……何なんだ……)」

 

結局アサヒはこの日、全く授業に集中する事ができなかった。ただ、ユキに対して特別な何かを感じ始めた……という事だけは彼の中で理解する事になる。

 

場面はまた変わり、今度はユキとソラの二人の方だ。二人が揃って買い物のために山道を降りて街へと到着すると前にアサヒとましろがユキやソラへとプレゼントとして送った手帳やシュシュが売っているコスメショップ…… “Pretty Holic”の前に到着した。

 

「ソラちゃん、ヨヨさんから頼まれた物って何?」

 

「あ、すみません。私もまだ見てませんでした」

 

どうやら二人共まだヨヨから頼まれた物を見てなかったらしく。慌ててソラがメモ用紙を開くとその中を見た。

 

「えっと、マシュマロが2kg(けーじー)にたこぶつ200g(じー)。フクロウの羽根にチタン電池えっと……CR2032?ノート2……2……これなんて読むんですかね?」

 

「え?2……2……もしかして2つかな」

 

「あっ、確かにこの感じだと2つですね……」

 

このように二人はメモ用紙の中身を確認したのは良かったものの、冊という漢字を知らなかったせいで読めなかった。ただ、数自体は理解したので結果的に大丈夫ではある。尚、kgとgに関しては完全に間違った読み方をしてしまっているが……。

 

「それにしても、これらもトンネルを繋ぐための物……なんですかね?」

 

「多分そうだと思う」

 

そんな風にメモの中身に関して二人で話をしているとそこにPretty Holicから出てきたばかりと思われる若い女性2人組の会話が聞こえてきた。

 

「遂にパウダーフレグランス買っちゃったね!」

 

「パフパフしよーよ!」

 

そう言って店の前から去っていく女性達。そして、二人がお店の方を見るとその場所には店のショーケースがあった。中にはお店に売られている商品のレプリカが飾られている。

 

「可愛い!こういうのましろさんが好きそう!」

 

「うん……。私もこれを使ったら綺麗になって……そしたら……ッ」

 

しかし、そこまで言ったところでユキは口籠ってしまう。そのためソラがユキの方を向くと彼女はフレグランスから目を背けてしまう。

 

「……」

 

「ユキさん……どうしたんですか?」

 

ユキがいきなり口籠ってしまったのを見てソラは彼女を心配そうな目で見ると彼女は僅かに自嘲するように呟いた。

 

「私なんかには無理だよね……。そもそもまず元が可愛くないし」

 

「ッ、そんな事無いですよ!少なくとも……ユキさんは私よりも凄く可愛いです……」

 

ユキはソラより可愛いと言われてもどうしても気持ちが落ち着かない。ソラ一人に言われただけではやっぱり自分に自信なんて持てないわけで。

 

「ソラちゃんだけに言われても……」

 

「うーん……でしたら他の人にも意見を貰えば良いんですよね?」

 

「えっ……それはそうだけど」

 

ユキから一人だけで無く複数人が可愛いと言う状況なら納得してくれると言質を取ったソラ。そのため彼女は早速近くにいるであろうアサヒやましろへと声を上げる。

 

「でしたら、ユキさんは凄く可愛いですよね!ましろさん、アサヒ君!」

 

ソラがアサヒやましろにユキは可愛いということを同意してもらえば彼女も少しは元気になってくれると考えた。しかし、残念ながらその場に二人の姿は見えない。

 

「あ……」

 

「ソラちゃん、今二人は学校だよ。……それと私のためにごめんね。私の方こそ、変に気を使わせちゃった」

 

アサヒもましろも今の時間は中学の方にいる。そのため、ここにはいないのだ。ユキはソラに気を使わせてしまったと申し訳ない気持ちになり、ソラもまた同様に親しい人が近くにいない影響で落ち込んでしまう。するとその瞬間、突如として後ろから一人の女性が二人へと抱きついてきた。

 

「ソラちゃん、ユキちゃん!」

 

「は、はいいっ!?」

 

「ひゃ、ひゃあっ!?」

 

「「あ、あげはさん!?」」

 

二人が慌てて振り向くと構えてしまう。ただ、そこにいたのは平日なのに何故かここにいる聖あげはであった。あげはいつも通りの明るい雰囲気で手をキツネの形にしながら二人に挨拶する。

 

「コンちゃ!」

 

「どうしてここに?」

 

「ん?学校帰りだからだよ」

 

あげはの通う専門大学も始業式や入学式の日は中学とそこまで変わらない。もしかするとあげはの方が早い可能性はあるが、専門大学の学生であるあげはは授業の時間割を自分で決められない可能性が高い。

 

そう考えるとやはり彼女も今日が入学式だという事だろう。そんな話はさておき、彼女はユキやソラの顔が暗いのに気がつくと指摘した。

 

「それよりさ、二人共どうかしたの?なんか浮かない顔をしてたけど」

 

「あ……えっと……」

 

「それは……」

 

すると二人が上手く答えられないのを見てあげはは笑みを浮かべると同時にある事を提案する事になる。

 

「……オッケー。じゃあ取り敢えず、気分アゲてこ!」

 

「それって……」

 

「ここの二階にカフェスペースがあるんだ。丁度お昼だし、腹ごしらえもしないとね〜」

 

実際二人共昼を食べずに来てしまったため、お腹はペコペコだ。そのため、あげはの提案に乗るとそれから三人は店の二階にあるカフェスペースに移動。あげはの奢りでまずはご飯を食べる事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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