Pretty Holicお店の二階に存在するカフェスペースやってきたユキ、ソラ、あげはの三人。それから早速三人は席に座ってメニューを見る。
「わぁ……どれもスカイランドでは見た事の無い物ばかり……」
「ふふっ、どれでも好きな物頼んで良いよ!」
「えっ、でも良いんですか?あげはさんだって……」
「大丈夫。こういう時くらい頼ってくれた方が私も嬉しいから」
ソラはあげはに奢ってもらう事に躊躇を感じたが、あげは本人が大丈夫と言うので結局その好意に甘える事にした。そんな中でユキは未だにボーッとしたような顔をしてしまう。
「ソラちゃんはそれだね。次はユキちゃんだけど……ユキちゃん?」
「へ?あ、ふぁい!」
「あはは、何その声」
「す、しゅみません!」
「大丈夫だよ。ゆっくり決めて良いからね」
ユキはあげは相手に情けない姿を見せたからか顔を赤くしつつ注文したいメニューを決める事にした。
そして、三人はお昼を食べた後に最後にデザートとして運ばれてきたパフェを見るとスカイランド出身の二人は驚いたような声を上げる。
「凄いオシャレですねこれ!」
「可愛い……」
「ふふっ、新発売のパフェなんだ。正にアゲアゲって感じ!」
それは青空や雲のような色をしたようなクリームの上に四角に切られた色とりどりな寒天。更にオレンジと言ったフルーツ。そして真ん中にデカデカと乗っているクリームやイチゴのアイスにさくらんぼ。そしてクリーム部分にはグミのような物もある。
「これ、食べるの凄い勿体無い……」
「でも食べないとアイスとかは溶けちゃうよ」
「うえっ!?じゃあいただきます!」
あげはは折角頼んだという事で写メだけ撮るとそれから三人でパフェを食べ、ユキもソラも満足した顔になったのを見計らってから改めて質問をした。
「元気出た?」
「はい!……あ。でも……」
「……」
「それはまだ悩みが解決してないって顔だね。それに、ユキちゃんの方なんて特に口数が減ってる。ましろんから聞いた話だけど、最近元気になったんじゃないの?」
あげはにそう言われてソラはユキの事を話すか少し迷った。目の前に本人がいるため、勝手に話しづらいのだろう。するとユキが思い切ったのか、自分の心の中にある気持ちを話し始めた。
「……あの、あげはさんは先程私が最近明るくなったって話をましろちゃんから聞いたって話しましたよね」
「うん」
「……それはきっとアサヒ君がいてくれたという所が大きくて。アサヒ君の側にいると安心感があると言えば良いのでしょうか……逆にアサヒ君がいないと私……自分に自信を持てない気がして」
ユキはこの世界に来て、アサヒと出会えたお陰で周りの人を信じられるようになった。それと同時に明るく変われたのである。ユキにとってアサヒが隣にいるという事実があるだけで前向きになれるのだ。
そして、あげはもその意見には納得の顔つきだった。幼い頃の引っ越しの時に自分がそうだったように、安心できる存在が隣にいないだけで心が寂しくなるのもよくわかる。
「そっか。ユキちゃんが暗くなってる理由はわかったとして、ソラちゃんも似たような感じかな?」
「は、はい……私も今日からましろさんが学校でいなくて……それで、私もユキさんもヨヨさんに頼まれておつかいとして来ていて」
「ふふっ、なるほどね。じゃあ二人共、ましろんやアサヒがいなくて寂しいって事だよね?」
「「寂しい……」」
あげはからの言葉に二人はキョトンとした顔を浮かべるとそのまま考え込んでしまう。そこにあげはが微笑みつつ話を続けた。
「ふふっ、その気持ちわかるよ〜。ましろんもアサヒも優しくて。それはまるでお日様のポカポカ陽気みたいでさ。側に二人がいないと途端に寂しくなる……」
「そうなんです!今日はなんかいつもと違うって思ってたんですけど、それはズバリ……ましろさん達が側にいないからだったんです!
ソラはあげはからの言葉を聞くと今まで言語化できてなかった自分の気持ちがわかったような気がしてその場で立ち上がって声を上げる。ただ、ここは店内であるために急に大声を出すのは御法度なわけで。
「ッ、ソラちゃん……」
「え?ああっ!す、すみません!」
ユキがソラへと小声で指摘するとソラも自分が何をしたのか自覚して慌てて謝る。そして、ユキの方もソラと同じように改めて言葉にしつつ話す事に。
「私もソラちゃんと同じ。アサヒ君がいないと寂しいって気持ちになって。胸が寂しさで締め付けられるような感じがして。でも、アサヒ君と会えたら途端に心がポカポカして嬉しくて……」
そう話すユキの頬はほんのり赤く、あげははそんなユキの姿を見て少し考えた。恐らくだが、ソラの言う寂しいとユキの言う寂しいは意味合いが少し違う。あげはは何となくそんな事を感じつつまだ二人にその事は言わずに答えを返した。
「あはは。二人とも見えてなかった自分の気持ちがわかってきたね。でも、それを伝える相手が違うんじゃない?ましろんやアサヒに直接言ってみたら?」
「そ、それは……直接言うのなんて……恥ずかしい」
「私も……そんな事言えませんよ。ましろさんに言うのは何だか照れくさいですし」
二人共、他人相手に言う分には問題無いが、本人に直接言うのには勇気がいるらしく。そのため、中々踏み出す事ができない様子だった。そのため、あげははある事を思いつきつつ二人へと頼み込んだ。
「それじゃあさ、二人共もう少し付き合って。二人の足りない勇気の出し方を知ってるから」
「「勇気の……出し方?」」
二人がキョトンとした顔をあげはへと向けると彼女は早速二人を一階へと連れていく。そこにあったのはPretty Holicで売られているメイク道具のお試しコーナーであった。
「すみません。こっちで試してみても良いですか?」
「はい、どうぞ!」
あげはの案内で二人は予め用意されている鏡の前にある椅子に座るとあげははお試し用のメイク道具をチョイス。ただ、ソラはメイクに消極的なのか不安そうに話す。
「あげはさん。私、メイクは……」
「まぁまぁ、まずはチャレンジしないとだからさ」
あげははひとまずソラの方から先にやるために座らせると彼女へとメイクをしながら話を進める。
「少しだけジッとしててね」
「ソラちゃん……」
ソラはユキに見守られながらあげはからのメイクを黙って受け入れる事に。それからあげはの手によってチークやリップが付けられていく。
「……メイクはさ、ただ美しくなれるだけじゃない。ちょっとの勇気が足りない時に力を貸してくれるんだ」
「ちょっとの勇気……」
「なんちゃってね!」
あげははソラのメイクをしていくと最後にパウダーフレグランスで首を仕上げていく。そして、ソラは鏡を見ると先程までの自分とは見違える程の変わりっぷりに驚いていた。
「仕上げにもっとキラキラ〜!」
「凄い……キラキラです。それに、良い香り」
ソラは基本的にメイクをしない。それはメイクを知るという女の子としての嗜みよりもヒーローとして悪い敵を倒すために強くなるという事を優先してきたからだ。そのため、自分がメイクをすれば変わる事ができるというのを知らなかった側面が大きい。
「キラキラって、アガるよね!」
「はい!今なら何だってできそうな気がします!」
ソラがあげはによってメイクを施されると胸の中にやる気パワーが溢れていく。ただ、ユキはそれを見て先程以上に自信を無くし始めてしまっていた。
「じゃあ次はユキちゃんに……」
「私は……私はいいです……」
「え……」
ユキの返事を聞いて一瞬固まってしまうあげは。それからまたいつものネガティブモードに突入してしまったのか……。ユキは暗い空気感を出しながら続けてしまう。
「私なんかにメイクしたって無駄ですよ……。私なんか綺麗になるなんて無理ですし……」
「ちょ、ちょっとユキちゃ……」
「そんなの絶対にダメですよ!」
「って、速っ!?」
あげはが折角ユキを元気づけるチャンスだと思っていたのにこのままじゃ無駄に終わってしまうと考えたその瞬間。ソラは目にも止まらぬ速さでユキの前に移動すると肩を両手で掴む。そのためあげははあまりのスピードに驚くが、ソラはそんなのお構い無しに話しかける。
「ユキさん、あなたは自分が思ってる程魅力が無いなんて事はありませんよ。寧ろ、私はユキさんにこそメイクをして欲しいと思ってます」
「で、でも私……昔ブスだって言われて……それ以降自分は可愛くないって……」
「大丈夫。私から見てもユキちゃんは可愛いよ。それに、ましろんからだけど……“ユキちゃんが隣だと逆に自分が自信を無くすくらいだよ”ってさ。だから、少なくともユキちゃんの事を可愛いって思う人が三人もいる。その人達のためにもメイクしたいって気にならない?」
「うぅ……でも……」
するとソラは未だにウジウジと悩んで動こうとしないユキの背中を無理にでも押し始める。
「もう、ユキさん。ひとまず座ってください!そしてあげはさんからのメイクを受けてくださいよ!私一人だけメイクするなんてユキさんを仲間外れにしてるみたいで嫌ですから!」
「ええっ!?そんな事言ったらあげはさんだって……」
「あー、ごめんね?私も薄らとだけどしてるんだ。だからこのままだとユキちゃんだけ仲間外れになるよ」
「うええっ!?」
結局、ユキはあげはからのメイクを受け入れる事になった。むしろ、そうしないと二人が逃してくれなさそうだったからである。ただ、結論から言うとこのメイクは大成功だった。
ユキの色白で綺麗な肌や整った顔立ちはメイクによって更に引き立てられ
、ただでさえ白くて美しかった髪に負けない顔の清潔感になった事で余計に全体の美しさが増す事に。リップも敢えて薄く塗ることで彼女の着飾らない美しさに拍車をかける事で後押し。パウダーフレグランスの香りも相まってユキは今まで以上に可愛い美少女に早替わりした。
「嘘……こ、これが……私?」
「ほら、
ユキもあまりの可愛さに信じられないと言った顔つきになっている。それを見たあげははユキに言う。
「ユキちゃん。ユキちゃんは出会った頃よりも明るくはなったけど、まだ自分に自信を持ててないよね?」
「……はい」
「そっか。でもこうやってメイクして。いつも以上に可愛くなる事ができた自分に自信が湧いてきた?」
「はい!」
ユキからの元気な返事を聞いてあげははニッと笑う。出会った当初よりも明るくなったユキ。しかし、まだそれはアサヒありきの明るさだ。それではまだ本当の意味で明るくなったとは言えない。彼が側にいなかったとしても、明るい振る舞いができてこそ彼女が殻を破ったと言えるのである。
「良〜し。じゃあユキちゃん、ソラちゃん。さっき私に言ってくれた気持ち。今ならましろんやアサヒに言えるかな?」
「「はい、行ってきます!」」
「行ってらっしゃい」
二人の返事を聞いてあげははもう大丈夫だと考える。そして、二人は店を出て行こうとするが、その前に言い残した事があるために一度あげはの元に戻ってきた。
「「っと……あげはさん、ありがとうございました!」」
ユキとソラは同時にあげはへと頭を下げるとそのまま自分の気持ちが冷めない内に早く二人に伝えたいとばかりに店から出ていく。それをあげはは笑顔で見送った。
「ふふっ。青春だね〜!……それと、頑張ってね。ユキちゃん」
あげはは気がついていた。ユキがアサヒに向けている感情の正体に。ならば全力でサポートをしようと思い、ソラに勇気を与えるのもかねて今回の行動に踏み切った。恐らく、ユキの気持ちをアサヒが知ったら真摯に受け止めてくれる。そう信じているからこそユキに自信を持たせた。後は彼女の行動次第である。
一方であげはと別れた二人はましろやアサヒのいる学校へと走る。その途中、二人に気持ちを伝えることだけに集中し過ぎて二人の視界はモノクロに染まったようにそれ以外の余計な情報をシャットアウトする。
「(二人に伝える……。私の気持ちを!)」
「(待ってて……すぐに行くから!)」
ただ、Pretty Holicから学校までの道のりはそれなりに遠い。それだけの距離を走れば色々と障害が発生するわけで。見過ごせない事態が二人の視界に映ったからか、視界に色が戻ると歩道橋を大きな荷物を背負ったお婆ちゃんが歩道橋の前にいるのを見つけてしまう。
「ユキさん」
「うん」
当然二人はそれを見過ごせないために助けに入る。二人は特に示し合わせ無かったものの、ソラが荷物を。ユキがお婆ちゃん本人を背負う形を取った。
「手伝います!」
「助かるわ〜」
「お安い御用です!」
二人はお婆ちゃんを助けた後、すぐに学校へと行くためにまた歩道橋を引き返して走り出す。
すると今度は堤防を走っている最中に河原の方で喧嘩しようと既に険悪化した空気感の不良二人を見つけた。
「っ、あれは……ひとまず無視しても……」
「勿論止めますよ!」
「ええっ!?ちょっ、ちょっとソラちゃん!」
ユキは不良同士の喧嘩というあまり関わりたくない場面に遭遇して無視しようと考えるが、それよりも早くソラが飛び出してしまったために慌てて追いかける羽目に。
「うぉおおおっ!」
「はぁあああっ!」
「うぉおおおっ!」
「はぁあああっ!」
「うぉおおおっ!」
「はぁあああっ!」
そして、そのまま不良同士の喧嘩が始まってしまう瞬間。ソラとユキが片方ずつ放たれた拳を掌で受け止める形で喧嘩を未然に防いでしまう。
「「なっ!?」」
「喧嘩はいけません!」
「急に割り込んじゃってすみません」
そのまま喧嘩しようとした不良二人は歳下ながら自分の拳を受け止めたユキやソラを見て何かを感じたのか唖然としていた。
「では!」
「ソラちゃんが勝手にすみません……私達急いでますので!」
ユキとソラは喧嘩を止めるという最低限の行為を済ませたという事でさっさと先に進んでいく。そして止められた二人はと言うと。
「「さーせん!」」
何故かユキとソラの強さに感銘を受けたのか、不良の上司と部下のように謝罪の言葉を二人へと言う事になる。
こうして、ユキとソラは立ち塞がる障害を解決しながら学校へと着々と近づいていくのだった。
また次回もお楽しみに。