ユキとソラが学校に向かって走り出した頃。学校の方では昼休みが終わり長めのホームルームが挟まるという特殊日程が終わって帰れるようになるとアサヒは一目散に机の中にあっま教科書とノートを鞄へと入れ始める。
「ちょっ、アサヒ早くない!?」
「そんな事言ってもやっと学校終わったんだ。早くユキやソラに会いたい」
「ええっ!?」
それからアサヒはパパッと片付けを済ませてしまうとましろの片付けを待たずに先に教室から出て行ってしまう。
「虹ヶ丘君!?」
「お、おい……」
「ごめんね、アサヒにも色々あって。それと私も今日は早く行かないとだから!」
ましろが友達の仲田達へとアサヒ共々先に行くという意思を伝えると彼女も素早く教室からいなくなってしまう。それから二人が去った後に軽井沢とひかるは今日の様子がおかしいアサヒの事について話し始めた。
「虹ヶ丘、本当に今日一日どうしたんだろ?ボーッとしてる事が多かったし……授業とかあまり聞けてなかったんじゃね?」
「うーん。まぁ、明日には直るだろ。何だかんだでアイツはちゃんとしてるからさ」
ひかるはアサヒの心境の正体に勘づいている事や家に帰ればそれが解決する事もわかっていた。翌日以降どうするかについてという問題があるが、これも彼ならどうにかするという根拠の無い信頼があったためにひかるは特に気にしていない。
「それにしてもひかる。知らない間に随分虹ヶ丘やましろさんと仲良くなったよな」
「それ、私も思ったわ」
「うん。ましろんや虹ヶ丘君の方もひかる君に接する距離感が少しだけ縮まってたし……」
すると軽井沢だけで無く仲田や吉井もひかるがアサヒやましろと仲良くなった事が気になったのか問いかける。そのためひかるは三人から問い詰められており、彼は少しだけ考えてから笑みを浮かべる。
「へへっ、それはな……」
「「「それは?」」」
ひかるは勿体ぶるように溜めてから他の三人の反応を楽しむとプリキュアの事は言えないので結局それらしい理由を言うの事になる。
「春休み中にアニメの専門店で会って仲良くなっただけだよ」
「えぇ……」
「それ、別に勿体ぶる必要無かっただろ」
「本当に……アンタは……」
だが、ひかるが約束した通りに誤魔化したおかげでプリキュアの秘密は守られる事になる。
その頃、再度学校に向かって走るユキとソラの場面へ。二人はアサヒやましろに会うべく学校に向けて暫く走っていた。
「ッ、あれは……」
「何これ!?」
すると学校のすぐ手前。あと少しで着くというタイミングで工事現場のような巨大な通行禁止のバリケードが現れると更にその奥にある立て看板にはご丁寧にも“通せんぼ中 通っちゃダメよ☆”とかいう注意書き。そしてその近くには工事現場の際に交通整理の警備員もいた。
その警備員は何故か肥満体の体つきをした豚男である。そして、それを見たユキは困惑した。
「(何でこんな時に……しかも通せんぼ中って何!?絶対カバトンだよねこれ!!)」
「(中々面倒な嫌がらせですね……しかも迂回したらそれだけ時間がかかる。それなら!)」
ユキやソラの予想通り、目の前で通せんぼをしているのは警備員に化けたカバトンである。何故彼が通せんぼなんてしょうもない嫌がらせをしているかはわからないが、何にせよこのままだとアサヒやましろのいる学校には到着できない。そのためソラがユキに声をかける。
「ユキさん」
「うん」
「このまま突破しますよ!」
「オッ……えっ、無理矢理突破するの!?」
ユキはソラの強行突破案に了承しかけてから意味を理解して唖然とする。確かに目の前のカバトンは邪魔でしか無いが、だからって強行突破なんてすればどうなるかわからないために困惑。しかし、ソラはもう行くつもりだったためにユキも仕方なく従う事になった。
「こんな通せんぼ、何のそのです!」
「ごめんなさい、私達止まるわけにはいかないんです!」
二人はアッサリと通せんぼのバリケードの下側を潜り抜ける形で突破するとそのまま立て看板も跳び越えてしまう。カバトンもバリケードが大き過ぎて下側を潜り抜けられるとは思っておらず、唖然とすると苛立ちを露わにする。
「ああっ……くうっ……」
カバトンを放置してユキとソラの二人は学校の校門が見える場所にまでやってきた。そして、ユキはもう少しでアサヒに会えるという気持ちと話したい気持ちで胸がいっぱいになった。
「(アサヒ君……アサヒ君……アサヒ君!!)」
その瞬間、自分でも無意識だったものの地面を強く踏み込むと一気に加速。まさかの先に走っていたソラを追い抜いてしまう。
「えっ、ユキさん!?」
同時刻。学校が終わって先に教室を飛び出したアサヒが急いで家に帰るために校舎から出ると走っていた。その後を少しだけ出遅れたましろが追いかけるものの、ましろのスピードではアサヒにどう頑張っても追いつく事はできない。
「もう、アサヒ速すぎだよ……って、アサヒ前!」
「前って……え!?」
そして、アサヒが校門を潜ろうとした時だった。当然アサヒに会うために加速しているユキも校門の横から勢い良く出てくる形になるために二人揃って正面からぶつかってしまう。
「ッ!?」
「きゃあっ!?」
「くっ!」
そのまま二人は倒れ込む瞬間、アサヒは咄嗟にユキを庇うように自分を下にして倒れ込む。それからアサヒがぶつかった痛みを我慢しつつ目を開けた。するとそこには自分に覆い被さるように倒れていたユキが目を開けて不安そうに見つめており、その視線がピッタリと合ってしまう。
「「ッ……!!」」
今の二人はユキに押し倒されたアサヒのような甘い状況だったものの、その下側にいるアサヒ自身はそんな事は一瞬でどうでも良くなった。
何故なら今目の前にいるユキは綺麗な白い髪にパウダーフレグランスと思われる良い香り。元々色白な肌に薄めのメイクをして前よりもとても美しく様変わりしたユキがいたのだ。しかも顔が恥ずかしさや運動でで少し赤くなってた事。そして運動した事と緊張で彼女の息遣いが少し荒くなってる事もアサヒの目を虜にするには十分過ぎる効果があった。
「ユ……キ?」
「アサヒ……君……?」
すると目の前にいるユキをボーッと見ていたアサヒの心臓は何故かドクンドクンと強い鼓動を刻む。その理由がアサヒにはまだよくわからなかったが、一つだけ確かだったのはユキのあまりの美しさと可愛らしさに身惚れてしまったという事だ。
「ユキさん!?大丈夫ですか?」
「あっ、ユキちゃんだけじゃなくてソラちゃんも来てたんだ……」
そこに遅れていたソラやましろがやってくると倒れていた二人と合流。その際にユキもアサヒも自分達がこうやって倒れてしまったのを見られて恥ずかしかったのか……。特にユキは顔を真っ赤になってしまう。
「ユキ、ひとまず立とうか」
「えっ、あ……うん」
それからアサヒに促されてユキが立ち上がるとアサヒもその後を追うように立つ。するとアサヒの視線はやっぱりメイクで可愛くなったユキに釘付けなようで。彼からポロッとユキへの褒めの言葉が溢れる。
「そういや、ユキ。メイクして凄い綺麗になったけど、何があったんだ?」
「ふ、ふぇ!?え、えと……き、気がつくのが早いね」
「え……そんなの綺麗なユキがもっと綺麗になったら気がつくでしょ」
「はうっ!?」
ユキは顔から湯気が出てしまうくらいに容量オーバー。どうにかアサヒからの質問に答えようとするが、こうなってしまうとまともに話す事すらできない。
「え、え、えと……そ……その……」
「あはは、ユキさんは少し混乱してるみたいなので私から説明しますね」
顔が真っ赤になって混乱するユキの代わりにソラが今日あった出来事を説明。あげはのお陰で二人共珍しくメイクをしているのだと知った。
「なるほどな。つまり、二人は俺達に言いたい事があってここまでやってきたと」
「はい。私達二人共……アサヒさんやましろさんに言いたい事があって来ました!」
ちなみに正直者で隠し事ができないソラだが、今回は二人の言いたい事は後で伝えるという言い回しをする事でユキが自分の口で言いたい事を言えるようにしていた。
「それにしてもプリホリから学校までって結構距離あるよ?それを走ってきたなんて」
「それだけ私も、ソラちゃんも……この気持ちを少しでも早く伝えたかったの」
ユキはソラが事情説明している間にどうにか気持ちを落ち着けたのか、ようやく普通に会話に参加できるようになった。
そして、ユキからの気持ちを聞いてアサヒとましろはソラやユキが言いたい事はとても大切な事だと改めて理解。すぐに真剣な顔つきへと変わる。
「ましろさん、アサヒ君。私、今日一日を過ごす中で……何か変な感じがしたんです。……でもやっと、その気持ちの正体がやっとわかりました」
「私も……アサヒ君やましろちゃんがいなくてとても寂しい気持ちでいっぱいだった。と、特にアサヒ君がいないと気持ちがモヤモヤして……」
ユキとソラが自分の気持ちを伝えるために前置きに当たる話を進めていく。尚、ユキの一番最後の部分は恥ずかしさのあまりボソボソと聴き取りにくい声でアサヒにもましろにも隣のソラにさえも届いていなかった。
「ソラちゃん、ユキちゃん……」
「それで、言いたい事って?」
アサヒとましろは前置きを終えてようやく本題である伝えたい事に入る二人の言葉を今か今かと待ち望む。
「「私は……私達は……皆で一緒に……」」
それからようやく二人がアサヒとましろに気持ちを伝えようと口を開いたその瞬間だった。
「だーっ!ストップストップ〜!!」
突如として何者かの声が大きく響き渡るとそのに一つの影が猛スピードで走ってくる。そして、その影が無理矢理入り込んできたせいでユキやソラは大事な事を言う事ができずに止められてしまった。
「うええっ!?」
「おいおい嘘だろ……」
ユキはその存在の登場に驚き、アサヒは呆れ果ててしまう。
そこにいたのは先程警備員に化けていたカバトンであり、彼はここに来る際の急ブレーキの影響で被っていたヘルメットが外れていた。どうやら先程自分を無視して走り去ったユキやソラに物を申したいらしい。ちなみにここに来るまでにタイムラグがあったのは先程出していた大きなバリケードとアッサリ突破された看板を片付けていたからだろう。
「あなたは……」
「また現れましたね、カバトン!」
「毎回毎回タイミング悪すぎるんだよグラビトン。空気読めや」
「そうだよ!大切な話の邪魔をするなんて!」
四人からしてみたら大事な話をしようとしたタイミングで邪魔された事になるために彼へと言いたい放題に文句を言う。しかもしれっとアサヒにはいつもの呼び間違えをされたわけで。
「お前はいつまでそのくだりを続けるつもりなのねん!?カバトンだっつーの!それよりも俺の話を聞けぃ!」
どうやら先程ユキとソラを止めようとしたのも話をしたいがためであり、四人は同時にカバトンの事を“構ってちゃん”だと思ったがこれ以上言及すると面倒なために一旦話を聞く事にした。
「前回の俺!実はおでんは低カロリーでパワー不足!あえなく失敗に終わった」
前回というのはあの電車ランボーグの事だろう。そして、前にシャドーに指摘された通りおでんはやはり低カロリーの食べ物であった。そのため強いランボーグを作る上ではしっかりとエネルギー不足だったようである。
「しかーし、今回はメチャ高カロリーをテイクアウトで!」
そう言いつつ出したのはクリームやアイス、チョコにイチゴのシロップと言った見るからに超高カロリーな巨大パフェを取り出すカバトン。流石にこれなら前のおでんと良い勝負ができるのではないのかと考えたらしい。
ただ、前回のおでんで散財したはずなのにここまで大きさに加えていかにも高そうなパフェをテイクアウトするだけのお金をよく出せたものだが……。そこは大人の都合という物だろう。
しかし、これを見せつけられている四人からして見ればただの無駄な時間になるわけで……。
「尺の無駄です!というか、あなたが出る幕は1秒だってもありません!」
「そうだそうだ!それ以前にそんな事のためにわざわざ貴重な時間を割いてやったと思うと本当に虚しくなるんだよ!」
「もうこれ以上私達の邪魔をしないで!」
「あはは……皆辛辣すぎ」
アサヒ、ソラ、ましろの三人は容赦無くカバトンへの文句を口々に言っているとユキは三人からの言葉があまりにも辛辣だったために思わず苦笑い。そしてここまで自分を蔑ろにされたカバトンは苛立った様子で声を上げる。
「ムカーッ!じゃあお望み通りさっさとやってやるのねん!」
するとカバトンは巨大なパフェをそのままドカ食いし始める。その食べ方はあまりにも汚く、まさかの超高速で頬張るのみであった。勿論そんな物を目の前で見せられるユキ達は反応に困るわけで。
「ちょっ、ちょっとここで食べないでよ」
「しかも顔を突っ込みながら食べないでください!」
「これもう収拾付かないくらいにメチャクチャだし」
「もうコイツ放っておいてさっさと行こうぜ」
「「「それだ(ね)(です)(よ)!」」」
アサヒのカバトンが食べてる間にその場からいなくなるという提案に珍しく全員が乗る。そのくらいこの状況が面倒だったらしい。
しかし、そんな時にまたタイミング悪くどこからともなくシャドーが降り立ってしまう。
「よっ、プリキュア。戦いに来てやったぞ」
「嘘だろ、こんな時にシャドーまで……」
アサヒは一番面倒な時にやってきたと言わんばかりに嫌な顔をするとシャドーが来た事で逃げる手段が使えなくなってしまうのだった。
また次回もお楽しみに。