スノーへの侮辱の言葉を発し、サンライズの怒りを煽ったシャドー。その影響でシャドーの狙い通りに激昂したサンライズは彼に馬乗りになった状態のまま顔面を殴る事になる。
「謝れ!スノーに、ユキに謝れよ!このクソ野郎!!」
「(これが、キュアサンライズの本気か……。なるほど、それにアイツはやはりキュアスノーを馬鹿にされた時が一番激昂するらしい)」
サンライズの逆鱗に自ら触れたシャドー。それによりサンライズからの怒りの連打を顔に受けつつも内心ではご機嫌だった。そしていきなり怒りを見せたサンライズを見ればスノーも慌てるわけで。
「サンライズ!?どうしちゃったの!?」
「シャドーの奴何のつもりなのねん?」
「サンライズ……どうして……」
「スカイ、今はランボーグの方に集中しないと!」
また、この光景を少し離れた所で見たスカイ、プリズム、カバトンもそれぞれが反応を示す。勿論その間もサンライズからの怒りの殴打は止まないわけで。
「うぁあああっ!ユキをコケにして、ユキを傷つけてそんなに楽しいか!!」
「ふふっ、それだけでお前が本気で来てくれるようになるのだから楽しいかな」
「潰す!」
サンライズはシャドーへの怒りからか完全に周りが見えなくなってしまう。
「そろそろ良いか」
「ッ!?」
するとシャドーはある程度やられた直後にサンライズが拳を上に振り上げたタイミングを狙ってショートワープを発動。いきなりサンライズの前から姿を消す。
「あの野郎何処に……」
「ここだよ」
「サンライズ、上!」
シャドーが一瞬にしてサンライズの真上に回り込むとすかさず手にした刀を振り下ろし、サンライズの背中を斬りつける。
「ぐうっ!?」
「ふん、そんな物か。お前の真の力は!」
シャドーはサンライズを挑発するように言い放ち、一旦サンライズの真後ろから少し離れた場所に着地。そのまま踏み込んで再度サンライズを斬りつけようとした。
「煩い!黙れ!」
「むっ!?」
だが、サンライズは今のダメージを受け切った上でシャドーのいる後ろを振り向くとシャドーからの刀を白刃取り。それに動揺したシャドーを自らの方へと引き寄せるとそのまま全身でタックルをぶつけた。
「ぐあっ!!」
サンライズに吹き飛ばされたシャドーは地面に背中を打ち付け、同時にサンライズがシャドーへと走り出すと倒されたシャドーもすかさず起き上がる。
「お前の気持ちなんか知るか、ユキを傷つけた分。お前の体で払わせてやる!」
「良いぞ、本当の強さを見せてみろ!」
サンライズが我を失ったかのようにシャドーへと連続攻撃。それは普段以上に大雑把で荒い攻撃だったものの、一撃一撃はこれまでよりも更に重かった。ただし冷静さはもうとっくに失われており、ただ怒りの感情のままに暴れる様は怒りによる暴走その物だった。
そして、それを見たスノーはどうするべきか迷ってしまう。このまま暴走した際の力で攻撃すればいつかはシャドーに届くかもしれない。しかし、怒りで攻撃が雑になってる以上はその前に対応されてしまう。そう考えたスノーの動きは早かった。それと同時にサンライズがシャドーを思い切り蹴り飛ばして隙を作ると右腕に浄化の力を高め、全力でそれを振おうとする。
「これで終わりだ!ひろがる!サンライズ……」
「ッ……お願い止めて!」
スノーは一瞬やるのを躊躇ったが、それでも自分を助けてくれた恩を返すために勇気を出してサンライズへと後ろから抱きつく。
「は……?」
「私のためにそんな風にならないで……。私は……私は、そんな顔したサンライズは嫌なの!」
サンライズはいきなりスノーに抱きつかれて震える声色でそう訴えられたのを聞き、最初は唖然としていた。しかし、少しだけ間を置いてから我に帰るとそっとスノーを見下ろす。
「ッ……」
そこには恐怖心を我慢しながら抱きついているスノーがおり、彼女が何故こうなっているのかを遡ると自分が何をしていたのかを理解。同時に顔を青ざめさせた。
「スノー……俺……」
「戦いの中でそんな事をしたら隙だらけだぞ?」
そして、二人がそんな風にしていればシャドーはあっという間に立て直してしまうわけで。シャドーが隙だらけとなってしまったスノーとサンライズの二人へと斬撃波を放ち、二人は成す術なくその攻撃の餌食に。
「「うわあっ!?」」
「二人の時間を過ごすのは構わないが今は戦いの最中だと思い出してもらおう」
シャドーが二人を見下ろしていると倒れてしまっていた二人はピクリと体を動かして立ち上がる。勿論二人揃ってダメージを受けてるために動きはどこか鈍くなっているが。だが、それでも闘志は失っていないためにシャドーは笑みを浮かべると手にした刀を構える。
そんな時、立ち上がった二人。するとサンライズがシャドーへの警戒をしながらスノーに申し訳なさそうに話しかけた。
「ごめんスノー……あんな所を見せて……」
「ううん。私こそサンライズの事をちゃんと止めるべきだったのに……サンライズのあの姿を見てたら怖くなっちゃって……。すぐに動けなくてごめん」
二人はシャドーを警戒しながらお互いに謝ると今は先程の事を悔やむべき時では無いという事を再確認した。
「お互いに悪いと思ってるんだったらこれ以上はまた後にしよう」
「うん、今はシャドーの相手……だよね!」
「ふふっ、それで良い。もっと俺を楽しませろ」
シャドーは二人が自分と戦うつもりになってくれてる事に喜ぶが、二人からしたらたまった物では無いわけで。
「私達が戦うのは……あなたを楽しませるためじゃない!」
「ああ、この気持ちを少しでも早く伝えたいんだ。邪魔をするな!」
こうして、二人は目の前にいるシャドーをどうにかするために戦いを続ける事になる。
そして場面は戻り、スカイとプリズムへ。二人はランボーグやカバトンに傷がある事を悟られないように闇雲な攻撃を仕掛けているように見せていた。
「たぁああっ!」
「無駄なのね〜ん!どれだけばら撒いたって痛くも痒くも無いのねん!」
プリズムが気弾を連射するとランボーグを正面から崩そうとするが、ヘルメットの装甲は崩せない。そのためカバトンは気持ちに余裕ができてプリキュアを煽り始めた。
「だったらこっちです!だぁああっ!」
スカイは先程の反省を活かしてどうしてもランボーグを素手で殴らないといけないパンチでは無く、靴という緩衝材を挟める蹴りを主体にしてランボーグへと攻撃を当てて注意を引く。
「ランボーグ!」
「うわっ!?」
しかし、ランボーグ側もただ黙ってやられるわけじゃ無い。回転する事によってスカイのキックやプリズムの気弾を弾いてしまう。
「どうにか動きを止めたいですね……」
「だったら、スカイ!」
「ッ……わかりました」
プリズムが声を上げると同時にスカイの元へと走り出したのを見てスカイも彼女の意図を察知。すかさず構えるとカバトンもその動きに気がつく。
「何をしようと無駄な事だ!ランボーグ!」
「ランボーグ!」
その瞬間、ランボーグが再度高速で回転。プリキュアの攻撃を弾こうとする。ただ、プリキュアもそれに対してしっかりと対応。スカイがバレーのアンダーパスのような構えを取るとすかさずプリズムがそこに脚をかける形で飛び乗る。
「せーのっ!」
スカイはそれを受けてプリズムを一気に押し上げる。そしてスカイのアシストで跳び上がったプリズムはランボーグの真上にまで来るとすかさず浄化技を発動させた。
「ヒーローガール!プリズムショット!」
「へーん。それだろうがランボーグの硬さには効かないのねん!」
カバトンは浄化技を使われても平気そうだった。恐らく彼の余裕から電車ランボーグの時と同じ。個人技は通用しない可能性が高いだろう。しかし、プリズムは構わずに使う。
「はぁああっ!」
「ラン!?」
その瞬間、ランボーグは回転の真上からいきなり高威力の技をぶつけられたせいか回転を止めてしまう。だが、カバトンの余裕通り技その物は通用していなかった。
「ほ〜ら、言った通りなのねん!」
「いいえ、狙い通りです!ヒーローガール!スカイパンチ!」
カバトンが得意げな顔を浮かべたのも束の間。今度はスカイによるスカイパンチが放たれる。スカイの体が青い拳として変化するとそのまま最初に傷を付けた場所へとピンポイントで攻撃をぶつけた。
「だーかーら、効かないって言ってるの……」
「ラン!?」
カバトンが調子に乗っているとその直後。突如としてランボーグの体に付いていた小さな傷が今のスカイパンチで拡大。大きな亀裂へと変化するとランボーグが苦しみ始めた。
「ラァアアッ!?」
「へ!?どういう事なのねん!?」
「……あなたは見落としたんですよ。ランボーグの硬さに油断して、ランボーグの弱点を晒し続けていたんです!」
「これ以上あなた達に構っている暇は無いの!私達の時間をこれ以上邪魔しないで!」
そのまま二人は亀裂が入ってダメージが通りやすくなったランボーグを合体技で倒そうとする。
「ぐぬぬぬ……だったらランボーグ!プランBなのねん!」
「「プランB?」」
二人がプランBと聞いて唖然としてしまうとランボーグはカバトンからの指示を受けて立ち上がり、突如としてヘルメットとそれによって覆われた体部分の隙間から黒煙を放出。ランボーグの足元付近の視界を根こそぎ奪ってしまう。
勿論ランボーグは顔がヘルメット側にあるため問題無いが、プリキュアはその高さ的に黒煙をまともに喰らってしまう。
「ううっ!?」
「ッ!?ゲホッ、ゴホッ……」
「どこにいるの!?」
二人は咳き込んでしまうと視界が奪われたためにランボーグを視認できなくなってしまう。そして、同じく黒煙の影響を受けるはずのカバトンは竹馬に乗って回避。そして高みの見物と言わんばかりに高所から見ていた。
「にゃ〜っはっはっは!これぞ俺様が考えた作戦、プランBだ。さぁ、ジ・エンドだぜ!俺TUEEE!」
「「はぁああっ!」」
だがカバトンが高笑いするのも束の間。スカイとプリズムは煙の中から跳び上がると空中に姿を現し、黒煙の効果範囲の外に出てしまう。
「……あ、あれ?」
カバトンは失念していた。あくまで黒煙で奪えるのは視界だけ。少しだけ呼吸も阻害できるが、この場所に天井は無いためジャンプして抜けられてしまえばそこまで大きな意味は無いという事に。
「例え邪魔をされたって……」
「そんなの、乗り越えてしまうだけです!」
「ちょちょっ、嘘だろ……」
カバトンは取っておいたプランBが割とあっさり破られて唖然としているとスカイとプリズムは容赦無く浄化技を使用する。そして、二人は手にしたスカイトーンをスカイミラージュに装填して手を繋ぐ。
「スカイブルー!」
「プリズムホワイト!」
「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」
スカイとプリズムが召喚した円盤からのトラクタービームがランボーグを吸い込むと比較的ダメージの大きい先程の亀裂部分に浄化の光が適用されてランボーグは浄化される。
「スミキッタァ〜」
「ランボーグが……こんなに簡単に。高カロリー摂ったのに無駄だった……カバトントン!」
カバトンは悔しそうな言葉を言い残すと撤退。そして、シャドーも二人と戦いつつそれを確認する。
「「はぁああっ!!」」
「ぬん!」
シャドーが突撃してきた二人を切り裂く形で迎撃。纏めて吹き飛ばしてしまう。
「「うわぁああっ!?」」
「……カバトンが撤退したか。それに薄々気づいていたがプリンセス・エルもいない。潮時だな」
シャドーはこれ以上やってもスカイとプリズムが来てしまうだけで戦いを続けられるという事以外に自分に対するメリットが無いために撤退を決意。ただ、その前にサンライズへと言う事があると思い口を開く。
「キュアサンライズ」
「……うん?」
「……先程はスノーを悪く言って済まなかった」
「は?」
シャドーがあっさりと自分へと謝罪をした事にサンライズは唖然としてしまう。そんな中で彼は更に話を続けた。
「俺は戦いながらお前達が強くなったのを感じていた。その中でお前なら更なる力を出せると思ってキュアスノーを罵る事にしたんだ」
「けど、だからってスノーを罵って良い理由には……」
「そうだ。その理由にはならない。……だから今度は俺が罵らずともあれだけの力を出せるようになってほしい」
サンライズはそう言われて困惑。先程の力はあくまで怒ったからこそ使えた力だ。それをいきなり怒らずに使えと言われても厳しいだろう。
「さて、俺はそろそろ帰るとしよう。じゃあな」
そして、シャドーは言うだけ言って撤退。勿論サンライズは先程の力を怒らずに常時引き出せるのか。まだそのビジョンが見えなくて悩んでしまう。
「あんな力……スノーを罵られずにどうやって使えば……」
するとスノーはそんなサンライズの隣に来るとそっと手を繋ぐ。そのためサンライズはスノーの方を向いた。
「大丈夫。きっとサンライズならできるようになる。もしどうしてもダメだったら……私も一緒に強くなるから」
「スノー……ありがと」
「うん!」
スノーは照れくさそうに少し赤くなりつつもサンライズへと笑顔を見せる。そして彼はその笑顔に僅かに見惚れていた。
こうして戦いは終了し、四人は変身解除。学校も終わっているために虹ヶ丘家への帰路へと着く事になるのだった。
また次回もお楽しみに。