カバトンとシャドーが撤退した後。夕焼けの帰り道を歩くユキ達四人。そんな時、四人は同時に声を上げた。
「「「「あ、あの!……あっ!」」」」
四人はまるで示し合わせたかのようなタイミングで言葉が重なってしまい気不味くなる。それから少しだけ間が空いてから沈黙を破るようにユキが声を上げた。
「え、えと……」
「ましろさん達、どうぞ……」
「いやいや、私も後からで良いよ……」
女子三人組は自分から言い出すのが恥ずかしいのか上手く言い出す事ができず。そして一人だけまだ何も言ってなかったアサヒが後から声を上げる。
「……だったら、俺の方から話しても良いか?」
それを聞いた三人は揃って頷く。三人共まだ心の準備が終わって無かったらしい。また、アサヒもこういう話を持ち出すのは男である自分の役目だと自負していた。そして、他の三人が頷いたのを見て彼は自分の話したかった事を言う事にした。
「あのさ、ソラやユキがこっちに来てから凄い賑やかになって。でも、今日学校に行ったら心がモヤモヤして……物足りない気持ちになったんだ。だから、俺はもっと皆と一緒にいたい!」
アサヒの気持ちを聞いてユキやソラは同時にあげはからしてもらったメイクの事を思い出す。先程一度プリキュアになってから変身解除したせいか先程してもらったメイクは無くなってしまったものの、ユキもソラも折角出した勇気をこのまま見せずに終わるなんてできなかった。
「アサヒ君……私も、皆がいないなんて……そんなの寂しくて嫌です!出来ることなら学校でも一緒に過ごしたい!」
「私も……この世界に来て、皆に沢山助けてもらって。受け入れてくれて。この温かい場所にもっといたい!折角できた私の大切な場所だから……」
ユキとソラがそう言って自分の想いを二人に伝える事ができた。そして、ましろは“クスリ”と小さく笑う。三人の気持ちはこれからももっと長い時間一緒にいたい。三人がこんな気持ちになってるのにましろだけそれに当てはまらないわけが無い。
「皆揃って気持ちは一緒だね。……私も今日、皆と同じ事考えてたよ!」
「ほんと、時間が過ぎるのがゆっくり過ぎるんだよなぁ」
「あっ、私も同じです!お家で掃除とかお手伝いを頑張ったりしたけど、早くましろさんやアサヒ君が帰ってこないかな〜って……ずっと思ってて」
「私、私を受け入れてくれたこの場所が大好きで……皆も同じ気持ちでいてくれて……。凄く嬉しい」
四人の意見は一致した。春休みの頭くらいからのこの僅かな間に四人は全員が揃わない日常が寂しいと思える程に絆を深めていたのだ。そして、全員が同じ気持ちだと確認した所で四人は一緒に虹ヶ丘家へと歩いて帰る事になる。
そして、ユキとアサヒは二人揃って心の中であげはへの感謝の気持ちでいっぱいだった。
「「(あげはさん、私達……言えました!」」
恐らく二人共あげはがしてくれたメイクの力無しではこの気持ちを伝えられてない。メイクによる力が自分達にくれた勇気に二人はまた一つ新しく学ぶ事になった。それから四人で帰っているとふとソラとましろが何かを思い出すとそれぞれユキとアサヒへ耳打ちした。
「そうだ、アサヒ。ユキちゃんに個別に何か伝えなくて大丈夫?」
「……いや、まだ俺はこの気持ちに整理がついてない。それに、焦って伝えてもユキに迷惑だ。……だからゆっくり考えるよ」
「そっか……」
ましろはアサヒの気持ちの整理にまだ時間がかかってしまうと感じると今はこれ以上問わない方が良いと考えて話を終わる事にした。そして、ユキもアサヒと似たような心境らしく……。
「ユキさん、アサヒ君にあの事を言わなくても大丈夫ですか?」
「うん……私、まだこの気持ちが上手く言い表せない。そんな中でアサヒ君に言ったって迷惑になっちゃう。……だから伝えるのはちゃんとこの気持ちの正体がわかってからにする」
ユキもアサヒに変に気持ちを伝えても結局有耶無耶になって気不味くなるのなら安全圏を取った。お互いに相手の事を考えて今回は双方何も言わずにとなる。
そして、ユキとアサヒのそんな様子を見てソラとましろは微笑む。まだまだ時間はある。今すぐ四人がお別れするわけでは無い。その時までにゆっくり決めれば良いとアサヒもユキも考えるとその気持ちを胸にしまうのであった。
その頃、車を運転して自分の住んでいる街に帰っている途中のあげははいきなりクシャミをしてしまう。そのため彼女は自分が噂されてると思い至る。
「クシュン!……うぅ、誰か私の事噂してるな……」
だが、あげはが自分の事を噂するような人達に心当たりがあるとすればもう彼女達だけだとわかっていた。
「……だとしたら、ソラちゃんとユキちゃんがちゃんと伝えられたって事かな〜。あ、でも流石にユキちゃんの恋心の方はまだな気がする。良いなぁ、皆青春してて。私ももっと大学生としての青春を謳歌したいよ〜……」
ちなみにここでのあげはの青春というのは誰かに対する恋心みたいな物である。ユキの愛情に当てられたせいであげはにも誰かと恋したい気持ちが多少湧きつつあった。
「(まぁ、それっぽい人はいないんだけどね……)」
こうして、あげははまだ今の自分にはユキのように誰かへと向ける恋心というのは浮かばない事を内心で嘆きつつ自宅のある隣町に帰るのだった。
そして、場面が戻り虹ヶ丘家。四人が家に帰ると早速ユキとソラはヨヨの元に学校に通えるようにお願いをしに行った。
「「あ、あの!ヨヨさん!」」
「……何かしら?」
「えと、私達を学校通えるようにできませんか?」
「私達……アサヒ君やましろちゃんと一緒に学校に行きたいって気持ちになって」
ちなみに買い物の件に関しては結局何も買ってくる事はできず。普通なら何かしら言われそうだったが、ヨヨからのお咎めは無しだった。
「ふふっ、それならもう手続きは済んでるわよ」
「「……へ?」」
「じゃあ一緒の学校に通えるって事!?」
「ヨヨさん用意良過ぎ……まさか二人を買い物に行かせたのって最初から……」
アサヒの指摘する通り、今回ヨヨが二人を買い物と称して外に行かせたのはユキやソラなら過程はどうあれ最終的にアサヒやましろと学校に行くという結論に落ち着くと予想していたからだった。そして、最初からそれが目的であれば二人が買い物を完遂できなかったとしても問題は無い事になる。
「だから後で必要な物を揃えなくっちゃね!」
「えるぅ!」
「本当に……良いんですか?」
「えぇ」
「えるぅ!」
まだこれから二人は学校に通うための物を揃える必要はあるものの、それが終わり次第学校に通う事ができるという事実にまだ信じられない様子だった。
「やったね!」
「はい!ましろさんとの学校……凄っごく楽しみです!」
「私も!」
こうして、ユキとソラはアサヒやましろと学校に通えるその時を楽しみに笑い合う事になる。
時間が経ってその日の夜だった。ユキは一人部屋の中で頬を赤くしながら何かを考え中である。
「……アサヒ君があんなに近くに……」
彼女の脳裏に浮かんだのは先程アサヒやましろのいる学校に到着する際に校門でアサヒと激突。そのままアサヒを下にして距離感が物理的に縮まった二人の場面だ。
「ッ……」
ユキはあの時のアサヒに触れた際の感触を思い出すと胸の辺りがドクンドクンと高鳴り始める。
「やっぱり、アサヒ君といると……」
ユキはどうにか気持ちを落ち着けるために深呼吸をする。そうしなければ自分の気持ちをまるで抑える事ができなかったのだ。
「……そういえば、アサヒ君の感触と言えば何か忘れてるような……あっ」
ユキはある程度落ち着いたタイミングで考えるとある事実を思い出す。……それはこの世界に来たばかりの頃とこの前のらんこの件の時。ユキは二度アサヒに背負われたという物だった。
「あ……あぁ……」
ユキはそれを思い出すだけで顔から湯気が出るくらいに赤くなるとその場にへたり込む。
「(あ、あの時はつい自分の事で頭いっぱいで忘れてたけど……。アサヒ君にずっとベタベタと……)」
こうなったらもうダメだ。アサヒの事を考え過ぎて何も手に付かなくなってしまう。
「うぅ……ひとまずこういう時はましろちゃんに……」
ユキはどうにか気を紛らわせる必要があると考えてましろの元に行こうとする。理由は単純。ソラだと素直過ぎるために後で色々口を滑らせてしまいそうだったのとヨヨは話しても良いが年齢的に離れ過ぎてるためにこういう気持ちの相談相手には選びにくかったからだ。
その頃、アサヒも丁度ましろに用事があって彼女のいる部屋に行くべく廊下へと出た所だった。
「(ユキもソラもこっちの世界で学校に行くのは初めて。……そう考えたら予め色々話しておいた方が良いかな)」
スカイランド組の二人は学校に通う上でこちらの世界の学校と向こうの世界の学校の違いで色々と戸惑う事があるだろう。そのため予め対策を立てておけば対処もしやすい。そして何より……。
「(ユキは特にスカイランドの学校で酷い目に遭ってるし、こういう時にちゃんとリードしてあげないとまた嫌な思いで記憶が塗り潰されてほしくない)」
アサヒはユキが折角の学校生活なのにまた前のトラウマが蘇ってしまうという事態にならないようにするために彼女のためにできる事をしたかった。こうやってユキの事ばかりを考える辺り彼もユキに脳を焼かれてきているのかもしれない。
さて、そんなわけで二人揃って同じタイミングでましろの元に向かおうとしたユキとアサヒ。しかし、同じタイミングという事はどこかで必ずバッティングしてしまうわけで。
「ましろちゃん、ましろちゃん……」
「早くましろの所に行かないと……」
「「うわっ!?」」
タイミングが良いのか悪いのか……部屋から出ようとしたユキと廊下を歩いていたアサヒはユキの部屋の出入り口付近でデジャブを感じる二度目の正面衝突をしてしまうと今度は二人揃って尻餅を付く形で倒れてしまう。
「痛たたっ……あっ!ごめん、だいじょ……えっ?」
「俺の方こそ悪い、怪我……は?」
そして、二人共相手に対して申し訳ない気持ちになると謝ろうと顔を上げる。……しかしその瞬間。二人の目線が合ってしまった。
「ッ、ユキ……ご、ごめん……」
「い、良いよ。私だって前が見えてなくて……」
それから二人は気不味くぎこちないやり取りながらもお互いに立ち上がって怪我が無いかを確認。しかし、会話はそれ以上続く事は無く。二人共恥ずかしさからか顔がほんのり赤い状態だった。
「え、えと……そろそろ寝るね」
「あ、ああ……お休みユキ」
「お休み……アサヒ君」
それからユキは恥ずかしさを隠すように部屋の中に引っ込むユキ。そしてアサヒの方もユキが帰るのを見送ってからボーッとした顔のまま自室に戻ると二人揃って今の出来事を振り返って頭が真っ白になる。
「「(や、や……やっちゃったぁあああっ!)」」
「(ど、どうしよう!?私ってば動揺し過ぎてアサヒ君にちょっと冷たい対応しちゃった!?そ、それにアサヒ君があんな近くに……は、は、反則だもあんなの!!)」
「(ヤバい……ユキの表情とか俺の心に刺さり過ぎる。何であんなに可愛い反応見せるんだよ!?あんなの他人相手にやったら絶対勘違いするぞ!?)」
それから二人は揃ってましろの元に話をしに行くという元々の予定が吹き飛んでしまう程に動揺してしまうのだった。
尚、二人はこの翌日。誤解自体は解いてまた元通りに話せる状態には戻ったのだが……それでもお互いを更に意識する結果に終わったのは言うまでも無いだろう。
ユキとアサヒの気不味い出来事が起きてから約一時間。月が照らされて光り輝く中、戦いを終えたシャドーが一人で建物の屋上に立っていた。ちなみにカバトンは既に高カロリーを得るために購入したパフェが無駄に終わった事で失ったカロリー……というよりはお金の重さに唖然としてしまっている。
「………」
彼は一人ボーッと月を見上げていると頭の中にプリキュアとの戦いの事が浮かんできた。
「……プリキュア、俺はお前達と出会えて幸せだ。こうして共に高みを目指せる者がいて……お前達となら俺はどこまでも……」
“……その先に何があるの?私なんかが強くなったって”
その瞬間、突如としてシャドーの脳裏に一人の女性の声が響く。そのためシャドーが僅かに驚いたように目を見開いた。
「ッ、誰だ!?」
シャドーがいきなり脳裏に響いた声に振り向くが、そこには誰もいない。そのためシャドーはいきなり聞こえた謎の声に困惑してしまう。
「何だったんだ……今のは」
シャドーはそれから謎の声がもう一度聞こえるかどうか試す為に暫く警戒していた。……しかし、結局その声が響く事は無く。シャドーの警戒は無駄に終わってしまうのだった。
そして同時刻。虹ヶ丘家の屋根の上。そこには一人の白い髪をした少年がいた。月を見て小さく呟く。
「……ユキ姉。ユキ姉があんなに頑張ってるのに俺は黙って見てるだけなんて嫌だよ。それにあのアサヒ……。ユキ姉の弱みに漬け込んでユキ姉の好意を独り占めにして……」
彼は以前アサヒ相手に喧嘩を売るような口調で話していた子その人だった。何故かアサヒを目の敵にしている様子だが……それはさておこう。
「ユキ姉……早く俺も姿を見せられるようになってユキ姉の力になりたいよ」
少年は自分が慕うユキの前に姿を見せられない事を悔やんでいた。それから彼は自分の首から下げられているのはスカイトーンよりも少し大きめなミントグリーンの色合いをした鮮やかな石のカケラのような物である。
この謎の少年の正体は誰なのか。そして何故ユキを姉として慕っているのか。……それを知る事になる日はあと少しだけ先の話。
今回でアニメ6話が終わりました。
そんなわけでここでまたイメージCV解禁とします。とは言ってもこれはリメイクなので大分遅い解禁ですけどね。そして解禁するのは先代プリキュアの二人と最後にシャドーに話しかけた謎の声です。
キュアバーニングサン……若山詩音さん
キュアブリザード……花澤香菜さん
シャドーに話しかけた謎の声……会沢紗弥さん
以上三人分です。それではまた次回も楽しみにしてください。