熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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ドキドキの初登校 転入の挨拶

アサヒとましろが新学期を迎えたの日から約一週間。この日はユキとソラの転入日である。この1週間の空きは学校に行くために必要な手続きを済ませるための準備期間であり、同時に必要な物も買い揃えた。後は準備を済ませて学校行くだけである。

 

「わぁあああっ……」

 

ここはソラが借りている一室。ソラはこの時、ましろの着ているような学校の制服を着ていた。そして、鏡の前でポーズを取りまくると嬉しさを爆発させている。

 

「似合ってるよ」

 

「うわっ!?」

 

するとましろに声をかけられてソラは恥ずかしい所を見られたとばかりに思わず赤面してしまう。

 

「う……そ、そうですか?」

 

「うん!」

 

ソラは親友であるましろから褒められて照れくさかったものの、同時に嬉しさもあって喜びを噛み締めていた。

 

「ソラちゃんと学校に行くの、凄っごく楽しみ!」

 

「ッ!私もです!」

 

ソラとましろがやり取りをしていた頃。同じようにユキも制服を着ており、鏡の前で姿を確認中だった。

 

「ふわぁああ……」

 

ユキは自室で初めて着るこの世界の制服や鏡に映った自分の姿を見てとても嬉しそうな顔になる。それから少しの間、鏡に映ったその姿をまじまじと見つめていた。

 

ただ、やはり問題もある。ユキの脳裏に浮かんだのはスカイランドでの虐めの記憶。

 

「(大丈夫かな……私が変な人って思われたらまた……)」

 

だが、悩んでもこの問題は解決しない。それに先日ソラ達から可愛いと言ってもらえた事やメイクで勇気を出せた事、それらの事からまだ関係構築前の今なら最初のイメージが大丈夫ならきっと仲良くなれるはずだと信じていた。

 

「スゥー……ふぅ……」

 

ユキは胸に手を当てると深呼吸。その行動をする事で不安な気持ちを消し去ろうとしていた。そんな時、ユキの部屋へとアサヒが入ってくると同時に彼女へと声をかける。

 

「制服、似合ってるぞ。ユキ」

 

「ふぇえっ!?」

 

ユキはいきなり声をかけられたせいで折角落ち着けたはずの気持ちがまた高鳴ってしまうと同時に慌てて振り向いた。そして、自分の近くにアサヒがいる事をようやく認識する。

 

「な、な、何でアサヒ君がここに!?いつも声をかけてから入ってくるよね?」

 

「あー、それなんだけど。さっきから扉をノックして声をかけてたんだが一向に返事が返ってこなくてさ。だから何かあったのかなって……」

 

「ッ、それは……ご、ごめん……。だけど、私も制服の確認してたし……その……着替え中とかだったら困るし」

 

「……あっ」

 

アサヒはそこまで言われてユキに悪い事をしてしまったと自覚。二人はまた若干顔を背けると気不味くなってしまう。するとユキはアサヒへと自信無さそうに小さい声ながら問いかけた。

 

「ね、ねぇアサヒ君。もしかして私が制服を見て色々考えてる所、見てた?」

 

「え?まぁ、一応。でも普通に制服着たユキが可愛くて似合ってるくらいしか……」

 

「ちょっ!?」

 

ユキはまた普通の顔をした状態のアサヒに褒められて恥ずかしさで顔がどんどん赤くなると思わず俯きながら呟く。

 

「うぅ……あ、アサヒ君。そうやって普通に褒めてくるの反則だよ……」

 

「でも事実だろ」

 

「事実かもだけどさ……でも、やっぱりアサヒ君達が褒めてくれてもまだ不安な所はあるよ。私、クラスメイトと仲良くできるかな。また前みたいになったら……」

 

ユキはどれだけアサヒ達との記憶を上書きしてもその脳裏には虐めの記憶がどうしても抜けきらない。

 

それ程までにユキの中には虐められた時の嫌な思い出が深く爪痕を残しているという事だ。そして、現にそれが原因で今もまだ少し怖がってしまっている。このままでは学校生活を楽しむのは難しいだろう。

 

「……だったらさ……」

 

「えっ、ちょっとアサヒ君!?」

 

そんな時、アサヒはユキの気持ちを別の物で上書きするかのように彼女の手をそっと取って優しく握る。

 

「その時は俺がフォローする。ましろだっているし、隣にいるソラも同じ気持ちで転入するんだ。だからまずは踏み出さないと」

 

「踏み出す……私から話しかけるって事?」

 

「話しかけるはハードルが高いだろうから……そうだな。まずはユキに話しかけてくれた人達と怖がらずに普通に話す所からかな」

 

それを聞いてユキは少し不安な気持ちになってしまう。ユキは割と他人からの目線を心配する所がある。そのため好意をもって接してくる相手にさえも警戒心を持ってしまうのだ。

 

そして、アサヒの提案はそうやって警戒心から入ってしまうユキの気持ちをまず変えていこうという物だった。そうしないと全てを疑うあまり、学校生活の中でどんどん孤立してしまうと感じたからである。

 

「……私だってクラスの皆とも仲良くなりたいよ。だけど、こんな自分を見せたら……」

 

「だったら、ユキの事を虐めたりする奴がいたら俺が許さないから。それに、ソラもましろもユキの味方になってくれる。だから……変わるのなら今だぞ」

 

「う、うん……やってみる」

 

アサヒにそう言われてユキは改めて気持ちを落ち着けると頷く。そして、それから二人は時間を確認。出発時刻が迫りつつあるのを見る。

 

「あ、そろそろ行かないとだな」

 

「そうだね。……アサヒ君」

 

アサヒがユキの部屋から先に出て行こうとするとユキがそんな彼へと声をかける。

 

「何?」

 

「私……できる限り楽しんでみる」

 

「おう」

 

ユキが微笑んでそう言うとアサヒはその笑顔にドキッとするが、それでもあくまで自然に答えを返した。

 

二人がその流れで部屋を出ると丁度そのタイミングで部屋でのやり取りを終えたソラやましろとタイミング良く会う。

 

「お、ソラも制服凄い似合ってるな!」

 

「ありがとうございます!あ……ユキさん、可愛いです!とっても似合ってますよ!

 

「ありがと、ソラちゃん。ソラちゃんも似合ってる」

 

「二人共着こなしはバッチリだね!」

 

そんな風にお互いを褒めているとヨヨの声が下の階から聞こえてくる。それは学校への登校時間を心配する物だった。

 

「そろそろ時間よ!」

 

「遅刻したら大変です!」

 

「うん、行こう!」

 

四人は学校が始まる時間に遅れてはいけないという気持ちから慌てて玄関へと移動。するとそこでも四人がやり取りをしていた。

 

「ソラちゃん、それ……私の靴」

 

「ああっ!?すみません……そっちは私のです」

 

「ええっ!?ご、ごめん……」

 

「二人共仲良いな」

 

ソラとましろが物を取り違えるやり取りにアサヒが微笑ましい目線を向けているとソラもソラでアサヒやユキへとジト目を向けつつある事を言い出す。

 

「仲良いと言えばここ最近ユキさんとアサヒ君。何だか距離感が近くなってませんか?」

 

「うえっ!?べ、べ、別に気のせいだよ!」

 

ユキはソラからのまさかの返しが自分に飛び火してあからさまに動揺してしまっており、ましろはそんなユキに苦笑いを向けていた。

 

そして、四人がやり取りをしているとそこにエルがヨヨに見守られながらはいはいしつつやってくる。

 

「あら、はいはい早くなったわね」

 

「えるぅ〜」

 

エルは四人の前に来ると四人が学校に行っていなくなってしまうために寂しいという事を言いたそうに声かけた。そして、そんなエルを見た四人はどこか申し訳なさそうな顔つきになる。

 

「エルちゃん。私と遊びましょうか。楽しいお話なら沢山知ってるわよ」

 

「える?えるぅ!」

 

そしてエルへとどう声をかけるか迷ってしまったユキとソラを他所に、ヨヨがエルへと彼女の興味のありそうな物語をミラーパッドに映し出す。ヨヨからの提案にエルは楽しいお話と聞くと興味が湧いたのか、泣き出す事も無くヨヨの元へと行った。

 

「ヨヨさん、すみません」

 

「ふふっ、良いの良いの」

 

ユキやソラは今回もヨヨに頼りっぱなしな事を受けてやはり申し訳ない気持ちが浮かんできてしまう。

 

「ヨヨさんには何から何までお世話になってしまって……」

 

「それに私達は異世界人……もし学校でスカイランドから来た事がバレたら大騒ぎになってしまいますし」

 

ユキとソラはそう言ってまたまた不安な気持ちになる。これについては二人が学校に行く上でどうしても消せない不安要素だ。そもそも異世界から来たという時点で二人の存在はこの世界視点だと異物になってしまう。受け入れられなければ最後、またかつてのユキのように虐めに遭うリスクだって跳ね上がるわけだ。ただ、そんな二人の不安に対して、ヨヨは普段と変わらない様子であることを伝えた。

 

「ふふっ。案ずるより産むが易し。まずはやってみないと」

 

「そうだな。二人共きっとすぐに馴染めるよ!」

 

「うん!私やアサヒもフォローするから!」

 

「ヨヨさん、ましろさん……アサヒ君……はい!」

 

「そうだ……折角楽しむって決めたし……楽しまないとだよね!」

 

ユキもソラも改めて学校を楽しむという事が大事だと考える。こうして、四人はヨヨとエルに見送られる形で学校へと向かう事になるのだった。

 

「行ってらっしゃい。学校楽しんできてね!」

 

「えるぅ!」

 

「「「「行ってきます!」」」」

 

四人が玄関の扉を開けて外に出ると早速学校への道のりを歩き始める。そんな時、四人の様子を玄関の屋根の上からオレンジと白の二羽の小さな鳥がジッと見つめていた。するとその中の白い方から何かの禍々しいオーラが立ち上り始める。

 

「ッ!?」

 

すると隣のオレンジの鳥がそれに気がついて慌てて白い鳥を取り押さえると白い鳥はジタバタしながら抵抗。だが、どうにか二人のこの行動は学校へと歩きながらお喋りをするのに夢中になっている四人には気が付かれずに済むのだった。

 

それから四人は暫く歩き、学校に到着。その後、アサヒ、ましろの案内で転入生扱いのユキとソラは担任の先生からの説明を受けるために一度職員室の方へ。二人を送り届けてからアサヒとましろは自分の教室へと向かっていく。

 

「それにしても二人揃って俺達のクラスに入るのか……こういうのってクラスはバラバラになるんじゃないのか?」

 

「え?ああ。言われてみたらそうだけど……でも私達のクラスって他のクラスより人数が一人少ないし……」

 

「そういう所ご都合主義だよなぁ」

 

「あはは……」

 

アサヒとましろはそんなメタ話を挟みつつ教室へ。そして、二人が話した通りにこの日のホームルームのタイミングでユキとソラが挨拶をする流れとなった。

 

まずは担任の雑木林によって転入生が来る事をクラスに通達されると早速二人が雑木林に促される形で教室に入ってくる。

 

すると、その瞬間に教室内がざわめく。その原因はユキの容姿だ。ユキの顔はメイク無しでも美少女と呼べる程に可愛らしい。色白な肌に白く美しい髪。本人の中では虐めの事が原因で容姿には自信を持てないと思っているのだが、やはり他の人からすればその顔面偏差値は高過ぎた。

 

「何あの子、可愛い……」

 

「え?あの子本当に私達と同じ学年なの?」

 

「自信無くしちゃう……」

 

「可愛すぎるだろあれ……」

 

「マジかよ。これからこんな美少女と一緒に授業を受けれるなんてラッキー過ぎる」

 

そんな風な会話がクラス内からボソボソと上がる中、当のユキはその周囲の声が聞こえないくらいに緊張感でガチガチになってしまう。

 

「ユキ、リラックスだぞ……」

 

「ユキさん……大丈夫ですよ」

 

「う、うん……平気だから……」

 

アサヒがそう小声で言うがユキにそれが届くはずもない。隣にいるソラが優しく大丈夫だと言ってもまるで生まれたての子鹿のように脚がガクガクと震えてしまっている。

 

「えー、ソラ・ハレワタールさんとユキ・ハレワタールさんは海外からの転校生だ。外国生活が長いので不慣れな事もあると思うが、そこは皆でサポートして欲しい」

 

「そ、ソラ・ハレワタールです!ましろさんとアサヒ君の家でお世話になっています!よろしくお願いします!」

 

そう言って頭を下げるソラ。教室内は拍手に包まれた。そのまま続けてユキの番になるわけだが彼女は先程から言及するように緊張している。そのせいで頭が真っ白なのか、自分の番になっても動こうとすらしない。

 

「ユキさん?自己紹介ですよ」

 

「ひゃっ!?ひゃあっ!!」

 

ソラに肩を触られてようやく自分の番だと自覚する程だ。そして、その様子を見てクラスメイトの男子が内心可愛いと思ったのは余談である。

 

「ゆ、ゆ、ユキ・ハレワタールです!ソラちゃんとお、同じでましろちゃんやアサヒ君の家にお世話にな、なってます!よ、よろしくお願いしましゅ!!……あっ」

 

ユキは緊張のために最後の最後で噛むという失態を晒してしまう。そして、そのまま恥ずかしさで顔を真っ赤にすると俯いた。クラスメイト達はそんなユキの仕草を見て保護欲が掻き立てられる事になる。

 

「じゃあ席だけど……ソラさんは虹ヶ丘ましろさんの隣。ユキさんは虹ヶ丘アサヒ君の隣。丁度それでソラさんとユキさんは隣り合わせになる感じかな」

 

「はい!」

 

「は、はいぃ……」

 

それから二人は雑木林から指定された自分の席へと移動。するとユキは席に座ったタイミングで席が比較的近いアサヒやひかる。更に逆サイドのソラからも慰められる事に。

 

「ユキはよく頑張ったよ」

 

「ドンマイドンマイ」

 

「ユキさん、まだまだこれからです。めげずに頑張りましょう」

 

「うぅ……」

 

しかし、それでもユキは最初の挨拶で盛大にやらかしてしまったと思うと恥ずかしさで悶絶。そのまま項垂れてしまう。こうして、ユキのこの世界での学校デビューはいきなりの挨拶大失敗に幕を上げるのだった。




また次回もお楽しみに。
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