熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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ソラの悩み 受け入れようとする心

50m走が終わり、スポーツテストは次の種目である立ち幅跳びへ。ソラはユキだけが目立ってクラスメイトにチヤホヤされている現状に苦しさを抱きつつも、それでも尚クラスに溶け込むには目立たない方が良いという方針を崩さなかった。

 

「(次こそ、真ん中の記録を……)」

 

そのため、また真ん中の成績を狙おうと考える。ただ、丁度ソラの後ろの順番に並んでいた軽井沢は花粉のせいかはわからないが鼻がムズムズしてしまう。

 

「ふぁああ……」

 

「ちょっ、軽井沢。今クシャミしたら……」

 

アサヒが慌てて軽井沢のクシャミを止めようとするが、言葉だけで止まるはずが無く。彼はクシャミをしてしまう。

 

「くしゅん!」

 

「うわぁあっ!?」

 

ソラは軽井沢がいきなりクシャミをしたせいで驚いてしまうとその拍子で立ち幅跳びのジャンプを思いっ切りやってしまう。

 

「嘘ぉ!?」

 

そしてそれは空中で一回転するという中学生では出来ないような離れ技をやりつつ立ち幅跳び用の砂場を丸々飛び越えてしまう。

 

「凄っ!?」

 

「空中で回転してたよ!?」

 

「あああっ……」

 

ソラはそんな風にまた先程同様にやらかした事を自覚するがもう遅い。そのため内心慌ててしまう事になる。

 

そして、次はユキの番。勿論彼女の中に手加減をするつもりなんて無い。早速彼女は気合い十分な顔でスタートの合図を貰うと構える。

 

「(確か両脚で同時に前に跳べば良いんだよね。それじゃあ、せーのっ!)」

 

ユキは両足で踏み切ってジャンプするとそのまま空中で体を捻るようにして回転。当然それを見た周りの子達の視線はユキの美しさもあって彼女へと釘付けになった。

 

「なっ!?」

 

「まさかアレ……床競技でやるムーンサルト!?」

 

まさかのユキは普通なら助走がいるはずのムーンサルトを立ち幅跳びという事で助走無しでやってしまう。更に着地点もソラより半歩分程遠い。つまり、空中でも飛距離としても完璧な形でソラを超えたことになる。

 

『おぉーっ!!』

 

ユキが最後に体操選手がやるようなポーズまでしっかりと済ませると周囲から拍手が起きる。

 

「(ああ……またユキさんが……)」

 

ソラはユキがまたもや周囲の目を惹きつけている事に嫉妬心を抱き、アサヒもアサヒで胸の辺りにチクリとした何かを感じてしまう。

 

「ッ……今のは……」

 

「アサヒ、どうしたんだ?」

 

「いや、何でもねぇよ。次は俺だよな」

 

そして、そんなアサヒを見たひかるにも心配されてしまったためにアサヒはどうにか気持ちを切り替えて自分の番に臨むことになる。

 

そして、続けての競技としてボール投げへと移行。ソラは三度目の正直とばかりに手加減と胸の中で念じつつ構えていた。

 

「(次はボール投げです……今度こそ……手加減、手加減!)」

 

ここまで来ればソラも良い加減ユキのように本気を出した方が皆に注目してもらえるというのはわかっているはずなのだが……。どちらかと言えば目立つ事のせいでスカイランドの事がクラスメイトにバレる方が不味いと感じているのか。未だに本気を出そうとしない。

 

「ソラちゃん、折角のスポーツテストなのに……」

 

「まぁ、ソラにもソラなりの考えがあるんだ。あまり気にするなって」

 

「うん……でも、ソラちゃん。何だか辛そうに見えるから」

 

ユキもソラが手加減する際に我慢しているような雰囲気は感じていたために彼女を心配するが、アサヒに止められる形で一旦考えない事にした。

 

「(アサヒ、ありがと。多分今ユキちゃんが行っちゃったら……ソラちゃんもきっと気不味いだろうし……)」

 

ましろもましろで今のユキがソラへと変に本気を出さない事を追求したら余計に話がややこしくなるとわかっていたため、今の時点ではそっとしておく方針にしていた。それはさておき。ソラはボールを構えると同時に目を閉じる。

 

「(手加減……そっと、軽〜くです……)」

 

ソラは手加減をするために目を閉じると軽く投げるという事を念じるように繰り返す。こうする事で自分の中に軽く投げるというのを刷り込ませようとする。……しかし、周りから見たらソラの目を閉じるという行為は気合を入れるための仕草と誤認されてしまっていた。

 

「あっ、ソラちゃん凄く気合い入ってる!頑張れ!」

 

「「「頑張れ!頑張れ!」」」

 

そのため、クラスメイト達はそんなソラの事を皆で揃って応援し始めてしまう。

 

「はい、頑張ります!!」

 

結局ソラは周囲からの応援に応えるようにボールをいつも通りの強い力で投げてしまう。そして、そのまま投げたボールは空の彼方に消えていった。

 

「あー……」

 

「これ、取りには……行けないな」

 

「うん、学校の備品だけど仕方ないよね……」

 

普通ならボール投げの後、投げたボールは学校のボールを使っているために回収する必要がある。しかし、今のは明らかに学校のフェンスを越えてボールが飛んでいってしまっており……。どう見ても取りに行って回収するというのは不可能であった。

 

「そんなぁあああ……」

 

そしてそれはまたソラがボール投げを手加減できなかった事を意味するわけで。彼女はガックリと項垂れるとどうする事もできない現実を受け止めざるを得ないのだった。

 

同時刻。ソラシド市内に存在する近くに森がある斜面の原っぱにて。そこでは心地良い陽気の天気でカバトンが日向ぼっこと言わんばかりに一人横になって寝転がっていた。

 

「はーあ……」

 

「おいカバトン。何を溜め息吐いてるんだ」

 

するとその近くにシャドーが立っており、彼の事を横目に見つつカバトンは呟く。

 

「腹減ったな〜と思ったのねん」

 

「はぁ、お前は何かとつけては食べる事ばかりだな」

 

「別に良いだろそのくらい!」

 

シャドーは食べる事にばかり頭の中の思考が行っているカバトンへと呆れたような目線を向ける。ただ、シャドーもシャドーでプリキュア等の強い敵と戦う事ばかり考えているのである意味この二人は同じ穴の狢だったりするが。

 

するとそんな時、カバトンの視線の先には二つの雲が移映ると彼はお腹が空いているせいかその雲が食べ物の形に見え始める。

 

「ん?うん?おぉ……あの雲は甘いドーナッツ。あっちはたこ焼きに見えるのねん!」

 

「おめでたい奴だな。そんな事言っても余計にお腹が空くだけだろう?」

 

シャドーが指摘すると同時に彼は何かの気配を察知する。そしてそれは小さいながらも高速で接近していた。

 

「おい、カバトン」

 

「……うん?」

 

「すぐに移動しろ。じゃないと……」

 

シャドーがそう言った瞬間。突如として横になっていたカバトンの後頭部に高速で飛んできた何かが激突。カバトンの頭に激痛が走る。

 

「ぐはああっ!?」

 

カバトンはそのまま吹き飛ばされると更に追い討ちとばかりに彼が吹き飛んだ先の場所。しかも丁度頭の所にその物体が落下。彼は再度の悲鳴を上げる。

 

「ぶひっ!?」

 

「……大丈夫か?」

 

「くぅうう……何なのねん」

 

シャドーは流石にカバトンが気の毒になったのか心配するように話しかけると彼はいきなり何かがぶつかって痛い思いをしたために苛立ったような顔になる。

 

「ッ……これは……ボールか?」

 

そして、シャドーが近くに転がったその物体を拾うとそれは先程ソラが投げたボール投げ用のボールだった。

 

「ぐぬぬぬ、この俺様に向かってボールを当てるなんて良い度胸してるのねん。シャドー、このボールが飛んできた方に行くのねん!」

 

「まぁ別に構わないが……うん?またこっちに来たな」

 

するとシャドーはボールがもう一度飛んでくるのを気配で察する。これはソラの後に投げたユキのボールだ。尚、先程のソラが投げたボールより落下位置はほんの僅かに遠い場所だった。そしてシャドーはこのボールが今度は自分の方に来ることも察する。

 

「ふん!」

 

シャドーはすかさず飛んできたボールに対し、刀を鞘ごと手にするとそれで自分の方に来たボールを受け流す形で弾く。ただ、偶々か必然か……。シャドーがボールを弾いた先にカバトンがおり、彼はボールを顔面に喰らってしまう事になる。

 

「ぐはあっ!?何でまた俺様が……ガクッ」

 

そしてカバトンはそのまま気絶。シャドーはそんな彼を呆れたような顔で見下ろすと無言のまま担ぎ上げた。

 

「はぁ、ひとまずボールの来た方に向かうとするか」

 

そのままシャドーはカバトンを担いだ状態でボールが飛んできた方へとスタスタと歩き去る事になる。

 

それから少し時間が経ち、昼休み。今現在、ユキ達四人はスポーツテストを終えて制服を着ており廊下を歩いていた。そして、そんな中でユキは割と上機嫌で鼻歌を歌っていたくらいである。

 

「ふんふふふ〜ん」

 

「ユキ、上機嫌だな」

 

「うん!だってスポーツテスト、凄く楽しかったから!」

 

「あー、そういやユキは楽しみ過ぎて最高新記録立てまくってたしな」

 

あれ以降、握力、長座体前屈、腹筋、反復横跳びと色々と種目をやっていったが……ユキは全ての種目で堂々の一位となると学年……どころかこの学校における三年さえも追い抜いて二年生ながらも新記録を達成。勿論ソラも同じような状態だったが、ユキよりは一歩劣る結果となっていた。

 

理由は単純で、ソラは先程からユキがクラスメイトからの注目の的になっているのが羨ましかったのだ。その影響でソラはモヤモヤとした気持ちを抱えたままテストに臨む事になっており、余計にいつもの力が出せない。

 

勿論常人から見ればとてつもない記録が出ているが、自分を解放してクラスメイトと仲良くなったユキは

 

 

いつもの120%の力が出せているユキと比べるとどうしても劣ってしまうのだ。

 

 

「(うぅ、全然楽しめませんでした……。手加減しようとしたら呪われてるって思うくらいに何かがあって手加減できなくて。かと思えばユキさんが私の記録を更新する度にクラスの皆さんから声をかけられて……)」

 

ソラはユキが嬉しそうにしているのを黙って見ていると彼女へと嫉妬の目線を送る。ただ、それでもユキへと直接八つ当たりなどという行為は絶対にしない。何だかんだでソラもユキが幸せそうな学校生活をしているのが嬉しかった。

 

こうして実際に通うまで幼い頃のトラウマのせいでユキはこちらの世界でも学校に馴染めない可能性をソラは心配しており、今はもうその心配の必要が無くなったというだけでもソラにとっては安心できる事だろう。するとそのタイミングでましろがソラにそっと声をかけた。

 

「ソラちゃん、どうしてそんなに目立ちたくないの?ユキちゃんみたいに目立つようにすれば……少なくともユキちゃんに嫉妬しなくても済むんだよ?」

 

「それは……そうなんですけど……」

 

ソラも自分をもっと曝け出せれば今のユキのようにクラスメイトに馴染めるというのは目に見えてわかる事。実際今のユキがその状態なのだ。しかし、それなのに何故か未だに目立たないに拘るソラを見てましろは彼女へと直接質問する。

 

「何か、目立ったら不味い何かがあるの?」

 

ソラは少しだけ迷ったような顔になってからましろにだけ聞こえるようにそっと話す。

 

「……私もユキさんも他の皆さんと比べて運動神経が良いと思うんです」

 

「そうだね。少なくとも同じ学年で二人と同じくらい動ける子って殆どいないと思う」

 

「もしそれで目立ってしまったら周りから変な子だって思われてしまうのかなって不安で……」

 

しかし、ましろはキョトンとする。それだけでは不十分な答えだ。何しろユキは人間離れした身体能力をクラスメイトの前で見せまくっている。それで彼女はクラスメイトから褒められているのだから尚更見せれば良いという話だ。

 

「……それに、私は聞かれた事を正直に言っちゃうので……その……ついスカイランドの事を言ってクラスの皆さんに色々とバレるのが怖くて。そんな事になってしまったらきっと……皆さんと友達には……」

 

それを聞いてましろはやはりソラのこの対応は友達が欲しいからなのだと察する。

 

「そっか、ソラちゃんが目立たないのを選んだのは友達を作りたいからなんだね」

 

するとユキ達四人の前に仲田、吉井、軽井沢の三人が来ると軽井沢は興奮した様子でユキへと話しかけた。

 

「あっ、ユキちゃん、ソラちゃん!凄くカッコ良かったよ!」

 

「ソラさん、今度俺にもさっきやってた宙返りのやり方を教えてくれ!」

 

「えっ……」

 

それを聞いてソラは唖然とする。先程までユキばかりが持ち上げられていたのに何故そんな話になるのかわからなかったのだ。

 

「あんた、グイグイ行き過ぎ。ソラちゃんだっていきなりそんな事言われたら困っちゃうでしょ」

 

するとユキはソラへと近寄ると話しかける。それはソラが知らない話だった。

 

「実はね、さっき私の所に話しかけてくれた子達の中にはソラちゃんの事も凄いって言ってくれる人がいて。てっきりもうソラちゃんには直接言ったのかなって思ってたから……」

 

「そうだったんですか?」

 

「他の皆もユキさんやソラさんに宙返りを教わりたいって言ってくれてるんだ」

 

ソラは自分の事を見てくれる人がちゃんといたという事実に胸が温かくなる。そしてそれはクラスメイトはソラの事も歓迎しようとしてくれている事を意味していた。

 

「え、えっと……」

 

ソラはどう返事をすれば良いか迷って一瞬だけましろの方に視線を送ると彼女は微笑みつつ頷く。そんなましろに促される形でソラは頷く事になる。

 

「はい!私でよろしければ!」

 

「ユキちゃんもお願いね!」

 

「うん、任せて」

 

ソラはクラスメイトに頼られるという事実が嬉しくて先程までユキに向けていた嫉妬はもうどこかに飛んでいってしまっていた。

 

「やった!」

 

「じゃあ皆、後でね」

 

「さぁ!飯だ飯!」

 

それから三人はお昼ご飯を食べるために教室に戻っていく。それをソラは手を振って見送るとアサヒはある事を提案する。

 

「そうだましろ。ユキやソラにいつものあの場所を紹介したら?」

 

「あ!そうだね!ソラちゃん、ユキちゃん。私達と一緒に来てくれる?」

 

「「……え?」」

 

二人はましろからそう言われてキョトンとするとましろに着いていく形でユキとソラ、そしてアサヒがついていくのだった。




また次回もお楽しみに。
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