ツバサやヒョウとの邂逅をした夜が明けて次の日。ユキが目を覚ますとユキの部屋の机の上にチョコンとヒョウが座って寝ていた。
「ヒョウ……着替えるから一度部屋から出て……」
そうやってユキが眠たさを出しつつヒョウへと言った。しかし、ヒョウもグッスリ寝ているのか起きる気配がしない。
「うーん。どうしよう。このままじゃ着替えられない……」
ユキは仕方なく通学鞄の中に起こさないようにヒョウを突っ込むとそのまま部屋で着替える事になる。
それからユキは部屋を出るとましろやアサヒと居間で合流。しかし、そこにはソラの姿のみがいなかった。
「……あれ?ソラちゃんは?」
「そういえばいないね……」
「今日は学校を休むって。寝ないでエルちゃんの側にいたみたい」
「おいおい、そんなの絶対に途中で寝落ちるだろ」
アサヒはそう言ってソラの身を案ずる。しかし、アサヒ達も休むわけにはいかないのでそのまま準備をして学校に行くことになった。三人が通学路を歩いているとアサヒが口を開くことに。
「ヒョウはともかく、ツバサは悪い子には見えないんだけど」
「おばあちゃんが言うにはソラちゃんもそれはわかってるんだって。でも、もしツバサ君がカバトンの仲間ならエルちゃんが連れ去られてるって思うと怖くなったって」
それを聞いて三人とも納得の顔つきになる。するとユキは何かを忘れたような気がし始めた。とても大切な何かをやるのを忘れたようなと思っていると……。
「そういえば、ヒョウの奴は?」
「え?確かユキちゃんの部屋で寝てたよね?」
「確かそうだったけど……ん?」
するとユキは何かの違和感に気がつくと慌てて鞄を開く。そこにはヒョウがスヤスヤと可愛らしく寝ていた。ヒョウが起きて暴れなかったのを見るとどうやら周りが暗かったためにまだ朝じゃないと勘違いしたようだ。
「!?」
それを見たユキは慌てて鞄を閉じる。そして、それを見た二人は疑問を浮かべた。
「ユキちゃん?」
「どうしたんだよ?」
「あはは……ちょっと緊急事態かも……」
それから三人が学校に着くと三人だけで授業前に屋上へと行く。すると鞄を再度開いてヒョウを見せた。
「なっ!?テメェ!何でここにいやがる!」
「いやいや、今回は完全な濡れ衣だからな?というか、気がついたらここにいたんだよ!」
「ごめん、私が間違えて鞄の中に突っ込んでそのまま連れて来ちゃった」
ユキが手を合わせて謝る中、アサヒは溜息を吐く。それなら仕方ないと言わんばかりだ。
「仕方ないなぁ。取り敢えず、今日は鞄の中で大人しくしとけよ」
「お前に言われるまでも無いからな!」
相変わらず二人は一触即発の空気を醸し出す。それを見たましろは二人を宥める事でその場を沈めた。
そして、ホームルームの時間になったのだが、まずは出席を取られる事に。
「ソラ・ハレワタールさん!……ソラ・ハレワタールさん?」
「あ、すみません!ソラさんは今日は体調を崩してしまって……どうしても出てこれないからお休みです!」
「ええっ!?」
「あの最強の健康優良児が!?」
「マジかよ!!」
尚、クラスどころか学年中がソラの休みに動揺の色を隠せなかったのは余談である。そして、授業に入る。ひとまずヒョウは授業中は大人しくしており、クラスメイトに怪しまれる事は無かった。そして、昼休みに入るとお弁当を食べてからアサヒ、ましろ、ユキ、ヒョウが揃うと誰もいない事を確認してヒョウの話を聞く事になる。
「ヒョウ君はどうしてこの世界に?」
「……嫌気がさしたんだ」
「……え?」
「スカイランドにはプニバード族の村があるのはユキ姉は知ってると思う。俺はエリートばかりを排出する家に生まれて……その中で俺は落ちこぼれだった」
「え!?」
「これは本当の話だよ……私と初めて会った時もそう言ってた」
ユキにそう言われて二人はその話を信じる事に。そして、ヒョウは話を続けていく。
ヒョウは元々プニバード族の中でも才能のある家系……名家に生まれた。ヒョウの周りは才能が溢れる肉親が多かったのだ。才能がある家族の中で一人だけ才能が無いとなるとそこだけ浮くのは必然である。そのため、家族からは才能の無い落ちこぼれだと罵倒されてきた。
「……俺はそんな生活に嫌気が指して五年前ぐらいに一度家出をした」
ヒョウは一人でも生活なんて楽勝だと考えたのだ。しかし、現実はそう上手く行くはずもなくヒョウはプニバードの村から出ていき、人間達の里にまでやってきたのは良かったのだがその間に色々とあって傷だらけになり、お腹を空かせて力尽きて倒れてしまった。
「それから、偶然近くを通りかかったユキ姉に助けてもらって……それからは年齢がユキ姉の方が年上だったからユキ姉さんって呼ぶようになったんだ」
「そうだったんだね」
「……アサヒ、罵倒したかったらしても良いよ。俺なんて元々その程度の価値しか無いから」
ヒョウがそう言った途端、アサヒがヒョウの頬を両手で摘むと引っ張った。
「
「お前な、悔しく無いのかよ」
「………」
「自分に才能が無いからって諦めて……それで家出した?そんなの目の前の障害から逃げてるだけだ。それじゃあ何も変わらない」
「そんなのわかってる……だから俺は一年前にまた同じように家出をした。今度はユキ姉みたいに優しく、強くなって帰ってくるために」
ヒョウはユキに助けられた後、ユキに連れてもらってプニバードの里に戻った。その時にヒョウの家族とユキとの間でひと頓着あったのだがその事には今は触れないでおこう。何にせよ、ヒョウはユキの優しさや心の中に秘めた強さに魅了された。自分も同じようになりたいという憧れの気持ちを抱いたのだ。
「でも、運の悪い事に家出したその日の夜は嵐が吹いていて……その風に飛ばされてしまって……プニバード族は空を飛べないから……」
「そのまま落ちちゃったんだね」
ましろからの質問にヒョウは頷く。プニバード族は遥か大昔に飛ぶ能力と引き換えに人間になれるようになったのだ。そんな事を話しているとましろがある事を思う。
「あれ?でも五年前って……」
「ユキにとって辛いあの事件があった後だな」
「その頃は少しずつ心の傷も癒えていたから……それに、あの時は傷ついたヒョウを見捨てるなんてできなかったし。それに可哀想だよ。家の人から愛情を注いでもらえず、半ば見捨てられるなんて……。そんなの間違ってる」
ユキは当時、自分が辛い思いをしていたにも関わらず、ヒョウのために必死に人と関わる怖さを隠してヒョウを助けたのだ。
「ユキ姉、あの時はごめんなさい……ユキ姉があんな辛い思いをしているなんて知らなくて……」
「良いよ良いよ。むしろ気にしないでほしいな。私にとってあれはただの人助け。むしろ幼い頃からの夢に一歩歩み出せた瞬間だったから」
ユキさヒョウが頭を下げる中、笑ってそれを許す。するとアサヒはヒョウへと詰め寄った。
「ヒョウ、お前の気持ちはわかった。……だったら俺達と一緒に過ごそう」
「……え?」
「それって……」
「俺達と一緒に過ごす事でヒョウは優しく、強くなれるかもしれない。勿論、無理にとは言わないしそれに一緒にいるからって成長できるとも限らない。それでも、それでもヒョウは俺達と強くなりたいか?」
アサヒがそう言って手を差し出す。それを見たヒョウは力強い眼差しで頷くとその手を握った。
「良し、じゃあこれから俺達は友達だ」
「よ、よろしく」
するとそこに軽井沢やひかるが屋上のドアを開けると慌てて三人はヒョウを隠す。バレたら色々と面倒だからだ。
「おーい、虹ヶ丘、ユキさん、ましろさん」
「早く戻らないと休み時間終わっちゃうぞ!」
それを聞いて三人は慌てて教室へと戻る事になるのであった。それから三人は授業を終えると家へと走って帰っていく。これはソラとツバサの関係が大丈夫かの確認と学校での事を言うためだ。
その頃、ひかるは一人帰り道を歩いているとふと鞄の中に入れていたスカイトーンを手にする。それは並行世界の友達、らんことの絆の証だった。
「らんこさん……上手くやれてるのかな……。らんこさん、フードを外したら可愛くて……だとしたらもう彼氏とか作ってるのかな?……もしそうだったら嫌だな……」
ひかるはらんこの事を考えていると寂しさがどんどん募っていく。ひかるは何となくらんこの事を異性として意識していると自覚があった。それでも今のこの状況では諦めるしか無い無謀な恋である。
「会いたい……会いたいよ。ああ、もしここにらんこさんの所に行ける穴でもあればなぁ……」
するとその時、突如としてひかるの持つスカイトーンがチカチカと光るとそれが何かに共鳴。ひかるの前に緑の空間の穴が空く。
「え!?な、何だよこれ……まさか、これを潜ったららんこさんの所に行けるのか?」
ひかるはそれができるならと強く願いながらその穴へと飛び込むとそのまま世界のどこからも姿を消してしまうのであった。
場面は虹ヶ丘家へ。アサヒ、ましろ、ユキの三人が家に着くとそこでは既に仲良くなったソラとツバサがそこにはいたのだ。
ソラからの話によるとツバサがスカイランドに戻らなかった理由はかつて自分が遊覧鳥から落ちて空に投げ出された時に自分の父親が命の危険も顧みずに自分を助け、プニバード族にも関わらず空を飛んだ事に起因していた。その時からツバサは空を飛ぶという夢のためにソラシド市で航空力学を勉強するようになる。
そして、その夢を聞いたソラは感激し、二人は意気投合して晴れて友達となったのだ。
「そうだったんだ……」
「ツバサ、凄く大きな夢を持ってるんだな」
「うん。そして夢の達成のために頑張ってる。そんなの、応援するしかないよ」
こうしてユキ達三人もツバサと友達になる事になり、そしてソラもヒョウの過去を聞いて友達になるのであった。
それから六人でワイワイと楽しんでいると突如として外から何かの音が鳴り響く。
「何!?」
それから六人とエル、ヨヨは外に出るとそこには街を襲う巨大なUFO型のランボーグがいた。
「あんな形の物が空を飛ぶなんて……デタラメだ!航空力学的にあり得ません!」
「今はそんな事を言ってる場合かな……」
「あ、ごめんなさい。つい……」
「ツバサ君、エルちゃんをお願いします」
「ヒョウも任せたぞ」
ソラ、ましろ、ユキ、アサヒの四人はミラージュペンをそれぞれ構える中、エルは不安そうな声を上げる。
「える!?」
「危ないからここにいて!」
「はい、気をつけてください」
「ユキ姉、アサヒ、お願い」
「うん!」
それから四人はミラージュペンをスカイミラージュへ。スカイトーンを装填して変身する。
「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」
「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」
「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」
「静かにひろがる白い雪景色!キュアスノー!」
「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」
「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」
四人は変身を完了するとランボーグを止めるために街へと飛び出していく。それを見たエルはどうにかして行こうとしてジタバタする。
「中に」
「はい!」
「えるぅ〜!!」
するとエルの意思に呼応したのか小舟の形に変化したスリングが飛んでくるとびっくりして思わずツバサはエルから手を離してしまった。
「いけない!」
「しまった!」
そのままエルは小舟に乗って行ってしまう。するとヨヨの携帯に電話が入る。電話相手はあげはだ。ヨヨはあげはとの電話を終えるとツバサとヒョウと共に家へと行こうとする。しかし、二人は顔を見合わせて頷くと街の方へ向かうためにプニバードの姿に変わった。
「ヒョウ、風を読むんだ」
「ぶっつけ本番だけどやるしかないか」
そして、二人はそのまま駆け出して丘から空へと飛び出す。そして、小さな翼をパタパタと動かして進もうとするのであった。
また次回もお楽しみに。