熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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ようやく起きたヒョウ エルの成長観察 旧・ヒョウの過去 ユキへの憧れ(パート2)

学校を休むことになったユキとソラを家に残していつも通りに学校へと登校するアサヒとましろ。そんな中で登校中にヒョウを間違えて連れて来てしまった事に気がついた二人。そのため、学校に到着後すぐに二人は学校の屋上へと彼を鞄の中に入れたまま連れて行くとアサヒがヒョウの体を掴んで取り出す。

 

「おーい、ヒョウ。お前良い加減起きろって」

 

「う、ううーん」

 

「ヒョウ?今何時だと思ってるんだ?良い加減起きないとユキが着替えとかできないだろうが」

 

「ユキ姉……着替え……はっ!?」

 

ヒョウはユキが着替える姿を夢見心地の状態で想像してしまったのか……このタイミングでようやく目を覚まして起きる。

 

「ユキ姉ごめん!!俺、寝過ごし……て?」

 

ヒョウは目を開けるとそこにはジト目を向けるアサヒと苦笑いを浮かべたましろを視界に捉えた。それから少しだけボーッとしていたが、状況が飲み込めてくるとようやく目がパッチリと開いて慌てる。

 

「あ、あれ……俺は一体……あれ!?俺、ユキ姉の部屋で寝てたはずじゃ……あっ」

 

「ヒョ〜ウ?お前男なのにユキ姉の部屋で寝るとか良い度胸してるよなぁ」

 

ヒョウがアサヒにいきなり詰められた焦りからか、思わず口を滑らせてしまうと自分がユキの部屋で寝ていたと自白してしまった。そして、それを聞いてアサヒが黙っているはずが無い。

 

アサヒはただでさえ疑っているヒョウへと更なる疑惑の視線を向けてしまうが、アサヒが変に詰め寄るよりも早くましろが確認の意味を込めて改めてヒョウへと質問をする。

 

「ヒョウ君。確認だけど、ヒョウ君が自分からこの鞄に入ってたわけじゃ無いんだよね?」

 

「えっ?あ、ああ。気がついたらここに入ってて」

 

「アサヒ、やっぱりヒョウ君じゃなくてうっかりユキちゃんがこの鞄の中に入れちゃったみたいだよ」

 

「ぐ……まぁ、それだったら俺も取り違えたし……仕方ないか」

 

ましろからの話もあってどうにかヒョウへの疑惑を一時的に抑えたアサヒ。それでもユキの部屋で寝た件や自分を罵倒した件があるために100%信じたわけでは無いが。

 

「ヒョウ、言っておくけど俺はお前を信じたわけじゃないからな?取り敢えず、今日はこのユキの鞄の中で大人しくしとけ。言い訳はその後で聞く」

 

「そんなのお前に言われるまでも無い!」

 

アサヒからの高圧的な態度にヒョウも反発。やはりこのままだと険悪な空気感を拭えないと思ったましろは二人へと話しかける。

 

「待って、二人共。このまま喧嘩したままなのはダメだと思う」

 

「そりゃあ……そうだろうけど、だけど俺はコイツに……」

 

「だからさ、昼休みにまたここで話をしよ」

 

ましろとしては正直賭けだった。自分がいるとはいえ、今のアサヒとヒョウが仲良くできるかと言えば絶対に無理だと言い切れる。そのため、今はお互いの事をもっと知る必要があると考えていた。

 

勿論、知った所で仲良くできるかはまた別問題。……下手をしたら今以上に喧嘩をする危険もあるし、そうなったらもっと距離が離れてしまうだろう。

 

「(それでも、二人が仲良くなるには傷がまだ浅めの今しか無い。私が上手く二人の間に入られれば)」

 

「……わかった。ヒョウ、お前も良いか?」

 

「ッ……わかったよ。丁度俺の話もできてなかったし」

 

アサヒは複雑そうな気持ちだったが、ましろのお願いという事でひとまずは了承する事にした。そして、ヒョウもアサヒの相手をするのは気不味く。そのせいでまた強気な態度を見せてしまったがこちらも了承。

 

相変わらず二人は一触即発の空気を醸し出していたものの、ましろが間に入った事で今は一時休戦的な形となった。それから少ししてホームルームの時間。まずは出席を取られる事になるのだが……。

 

「ソラ・ハレワタールさん!……ソラ・ハレワタールさん?」

 

「あ、すみません!ソラさんは今日は体調を崩してしまって……どうしても出てこれないからお休みです!」

 

普段あんなに元気なソラが体調不良で休んだなんて事になったため、クラス中がザワザワと騒いでしまう。

 

「ええっ!?」

 

「あの最強の健康優良児が!?」

 

「マジかよ!!」

 

そして名前が近いという事でユキも一緒に呼ばれるものの、やはり彼女もいないとなると当然担任の雑木林は訝しむ。

 

「そうか……じゃあユキ・ハレワタールさん!……うん?」

 

「ごめんなさい、ユキさんもソラさんと同じように体調を崩しちゃって……多分昨日のランニングのやり過ぎで……」

 

そのため慌ててましろが二人がやらかしそうな休みの言い訳であるランニングのやり過ぎによる体調不良だと誤魔化すとどうにか凌ぐ事ができた。ただ、雑木林もそうなると担任という立場上指摘しないといけないために注意をする事になる。

 

「そうか、二人には虹ヶ丘ましろさんと虹ヶ丘アサヒ君の方から走り過ぎには気をつけるように伝えるようにね」

 

「「は、はい!」」

 

「嘘……ユキちゃんも走り過ぎなんてやるんだ」

 

「でもあの子偶に無茶しそうな所があるし、そういう所が出ちゃったのかも」

 

「うう、今日こそユキさんに話しかけようと思ったのに!!」

 

ユキがいない事に関してもクラスメイトとしては残念がる声が多く。中にはクラスメイトの男子がユキと仲良くするために声をかけたかったという物もあったためにアサヒはどうしても苛立ちが募ってしまう。

 

「ぐぐぐ……」

 

「アサヒ、ユキちゃんの事で神経質になるのはわかるけど少しは抑えてよ?」

 

「わかってる……わかってるんだけど……ユキの人気具合を見てるとどうしてもな……」

 

そして、ましろはユキの事で気持ちが揺れているアサヒへと再び釘を刺して制する。そんな彼の様子を鞄のチャックの隙間からそっと見上げていたヒョウもヒョウで呆れた目線を向けていた。

 

「(アサヒの奴、やっぱりユキ姉にデレデレしてるじゃん。……だけどユキ姉はアサヒの事を好意的に見てるんだよな)」

 

ヒョウはアサヒに呆れつつもユキの気持ちを考えたら自分はあまり強く言えない立場であるという事を思い知る事になる。

 

そんなわけで朝のホームルームが終わる事になるのだが……。その後、わ僅か一時間程も経たないうちにユキやソラの休みの噂は瞬く間に彼女達の学年に拡散。学年中がソラの休みに動揺の色を隠せない事態になってしまうのだった。

 

一方で、虹ヶ丘家ではユキがそろそろソラの様子を見に行った方が良いと感じて彼女の元に向かおうとする。

 

「ソラちゃん、あんまり一人で……」

 

「える?」

 

「ッ、エルちゃん……」

 

するとそっとソラの部屋の扉を開けたタイミングで足元にエルがはいはい中なのか四つん這いの状態でいるのを見つける。

 

「ソラちゃんは……」

 

「すぅ……すぅ……」

 

そして、ユキがソラの方を向くとやはりと言うべきか……一晩中寝ずに耐えて来たソラの気力がとうとう限界に達して寝てしまっていた。

 

「あはは……やっぱりそうなっちゃったか」

 

「えるぅ!」

 

そしてユキの足元で四つん這いになってるエルの方は部屋から出ようとしていたのか、ずっとユキに前に立たれていたためにキョトンとした顔のままでここを通りたいと言わんばかりに声を上げる。

 

「あっ、ごめん。ずっと前に立ってたら邪魔だよね……」

 

「える!」

 

ユキはエルが外に出ようとしているのを邪魔するのは申し訳ないという事で彼女が外に出られるように道を開けた。

 

「えるえる」

 

エルがはいはいをしながらどんどん廊下を進んでいくのをユキは見届けつつソラの方をチラッと見るが、まだ起きる様子は無い。

 

「(起こしちゃったらきっとまたエルちゃんの側にいるって言って無理しちゃうし……そっとしておこっか)」

 

ユキはソラが無理をしないように敢えてその場に放置する事を選ぶと部屋の外に出たエルの方を見守るようにそっと追いかけると丁度そのタイミングでヨヨの部屋から出てきた人間態のツバサと出会う。

 

「あっ……」

 

「ツバサ君、あの……私はそんなにツバサ君の事をそこまで嫌ってる訳じゃ無いっていうか……えっと……」

 

「そんなに焦って弁明しなくても大丈夫ですよ……。それどころか、ボクはユキさんにお礼を言うべき立場ですし」

 

ツバサはユキがいきなり弁明し始めたのを見てあくまで冷静に話す。ツバサとしても今言った通り、ユキには感謝の気持ちがあった。

 

「昨日のあの時……ユキさんが間に入ってくれなかったら……きっとエルちゃんを泣かせてしまいました。それに、真っ先にボクの事を信用するって気持ちを口に出してくれた人を……どうして疑うんですか」

 

「そっか……」

 

ツバサがそう言うのを聞いてユキは少しホッとしたのか二人で揃ってエルの様子をそっと見守る。するとエルはまた廊下の壁を使って掴まり立ちをしようとし始めた。

 

そのため、ユキは昨日聞いたソラの部屋での事からある想像が浮かんでくるとエルの邪魔をしないようにそっと話しかける。

 

「もしかして、ツバサ君……。昨日の昼間にソラちゃんの部屋に入ったのって……エルちゃんの掴まり立ちが関係してたりする?」

 

「ッ……はい。見ての通りエルちゃんの掴まり立ちがまだ不安定なのでその……」

 

ツバサは不法侵入した事もあって申し訳なさそうな声で話をしたが、ユキはそれを聞いてツバサがエルの掴まり立ちのフォローをしてくれたのだと何となく考えつく。

 

「そっか……。それじゃあやっぱり……お礼を言わないといけないのは私達の方だよ。倒れそうになったエルちゃんを助けてくれて……ありがと」

 

「いえ、ボクはエルちゃんの騎士(ナイト)として当たり前の事をしただけで……」

 

「エルちゃんの騎士(ナイト)?」

 

ユキがエルの騎士というツバサの言葉を聞いて疑問符を浮かべているとそのタイミングで慌てたような顔つきのソラが部屋から飛び出して来た。

 

「エルちゃ……」

 

「「シッ!」」

 

そして、ソラが寝てしまった間にいつの間にかいなくなってしまったエルの事を探そうとするとそれを見てユキとツバサが二人同時に静かにするように指を口元に当てる。

 

「えっ……」

 

「「シーッ」」

 

改めて二人がソラへと静かにするようなジェスチャーをしてから指差すとその先にはあと少しで掴まり立ちができるという状態のエルがいた。

 

「えるぅう……」

 

「あなた……」

 

「静かに。ユキさんも」

 

「うん」

 

これ以上喋るのは不味いという事で3人がそっと遠目にエルが掴まり立ちをするのを見守っているとエルはどうにかして掴まり立ちをするために手を廊下の柱に当てる形で丁度良いバランスの場所を探っていた。

 

「えるぅううっ……える!?」

 

「ッ!?」

 

すると一瞬だけバランスを崩しそうになってソラが慌てたような顔つきになるが、今回はまだ取り返しが付く程度だったために再度手を当てて丁度良い位置を探る。そして、エルは少しだけ手の位置を上に上げると先程まで曲がっていた脚が伸びきるのを感じ取った。

 

そんな彼女の様子をユキ達3人は固唾を飲んで見守っていると遂にエルは立てる場所を見つけたのか、両手を柱から離す事に成功する。

 

「える!」

 

「「「わぁ!」」」

 

その光景に3人の顔が明るくなるとエルはそれから少しだけバランスの微調整をしてここまで自分を見守ってくれた3人の方を向くと“出来たよ”と言わんばかりの嬉しそうな声を上げた。

 

「え〜るぅ!」

 

「「「わぁ!」」」

 

だが、まだエルは掴まり立ちが出来ても両手を離して長時間バランスの維持まではできないためにまたバランスを崩して後ろに倒れそうになってしまう。そのため、ソラとツバサの二人はそんなエルのバランスの変化をいち早く察知すると二人揃って飛び込む形で倒れ込むエルの背中を支えた。

 

「える!?」

 

「「あっ!?」」

 

「ッ……」

 

そして位置的に二人の真ん中……エルの真正面にいたユキは反応すらできなかったが、全く同じタイミングでエルを助けようと動いた二人の姿を見て微笑ましい物を感じていた。

 

「(凄い。二人共……息ピッタリだ……)」

 

「えるぅ!」

 

それからエルが嬉しそうに笑うのを見てツバサはホッとした顔になったのに対し、ソラはエルを抱きしめると彼女ができなかった掴まり立ちを頑張って克服したという事を涙を流しつつ褒め称える。

 

「ッ……」

 

「頑張ったね……諦めなかったね……偉いね……」

 

「えるぅ!」

 

そして、そんな風にエルの事を大事にしているソラを見たツバサは驚いたような顔を見せていた。恐らく、ツバサの中にもソラに対して信用できない部分があったのだろう。そのため、昨日は彼の中の秘密を隠さないといけなかった。

 

だが、エルのためにここまでするソラを見てツバサの中にもソラ達を信じたいという気持ちが浮かんできたのである。

 

「ツバサ君」

 

「ッ、ユキさん」

 

「……これ見てもまだソラちゃんの事を信用したいって気持ちにならない?」

 

ユキからの問いにツバサは少し申し訳無さそうな顔を浮かべているとそこに同じく部屋から出てきたヨヨがやってきた。

 

「ヨヨさん……」

 

「ふふっ」

 

するとヨヨがツバサへと信じてあげてほしいと言わんばかりに頷くとツバサもようやく決心が着いたのか……。小さく頷き返し、目の前でエルを抱きしめるソラと自分の後ろにいるユキへと話しかけた。

 

「ソラさん……ユキさん」

 

「「えっ?」」

 

「える?」

 

「……お二人共、一緒に来てもらえませんか?」

 

こうして、ツバサはユキとソラの二人を連れてとある場所に案内する事になる。今のこの二人なら……案内しても大丈夫であると信じて。




また次回もお楽しみに。
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