熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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ヒョウの過去 ユキへの憧れ 旧・ヒョウの過去 ユキへの憧れ(パート4)

ユキ、ソラの2人とツバサが虹ヶ丘家で仲直りしてから暫くして。ソラシド学園の方でも春休みに突入しており、アサヒ達いつものメンバーは弁当を食べるために机を囲む。

 

「「いただきます!」」

 

「それでさ、今日は……って、虹ヶ丘!?ましろさん!?食べるの速くない!?」

 

「本当だ。ましろんも虹ヶ丘君も今日食べるスピード速いよね」

 

今現在、アサヒもましろもいつもより速めのペースで食べている。理由は簡単。ここでのんびりご飯を食べてしまうと午前中は聞けなかったヒョウの話が聞けなくなってしまうからだ。

 

一応午前中の間、ヒョウは比較的大人しくしてくれていた。恐らく彼としても変に目立ってクラス中が大騒ぎになるよりは大人しくした方が比較的安全なのだと思っているのだろう。

 

「「ごちそうさまでした!」」

 

「息ピッタリだな2人共」

 

「何をそんなに急いでるの?」

 

流石にここまで慌てた昼ご飯の食べ方をすれば当然クラスの友達も気になってしまう。そのため2人へと問いかけるとましろは急にそれを言われたせいで焦ってしまった。

 

「え?あ、えーっと……」

 

「ちょっと約束があるんだ。昼休み中じゃないとできない事で」

 

「そうそう!」

 

するとそこでアサヒがあくまで冷静に答えを返すと友達であるひかる達は納得し、それ以上2人の行動が怪しまれる事は無かった。

 

「それじゃあ用事の方を済ませてくるね!」

 

「折角一緒に食べる事になってるのに話に参加できなくてすまん。この埋め合わせはまたするから!」

 

それから2人はヒョウが入っているアサヒの机にある鞄(ただし、取り違えにつきユキの鞄)を手にすると屋上まで急いで移動。そこに誰もいない事を確認すると安堵の顔を浮かべる。

 

「良かったぁ……。まだ誰も来てなくて」

 

「ましろ、もうちょっと言い訳くらい考えていてくれよ」

 

「ごめんってば。あ、ヒョウ君もお待たせ」

 

それからましろがアサヒが持ってきた鞄を開けるとそこには午前中の間、ずっとプニバード形態でぬいぐるみとして入っていたヒョウが出てくる。

 

「はぁ……はぁ……暑さで死ぬかと思ったぁ……」

 

「暑さ……ああ、鞄の中ってずっと空気が閉じ込められてるし密閉空間だから……」

 

ヒョウも大人しくしてくれたが、一歩間違えたら大惨事になっていたかもしれないという事でそういった点においても2人はホッとした気持ちになる。

 

「それじゃあ、時間も惜しいし……ヒョウ。話してくれるな?」

 

「ッ……」

 

アサヒとましろの2人はようやくまともに話ができる時間となったためにヒョウへと問いかける。……しかし、彼はどういうわけか少し言いづらそうな顔つきのまま話そうとしなかった。

 

「おいヒョウ。約束が違うぞ。お前の事を話してくれるんじゃないのか?」

 

「………別に、アサヒにこんな事話したって……」

 

「お前なぁ……」

 

どうやらヒョウはアサヒ相手に自分の過去を話すのには抵抗感があるらしい。あれだけ散々アサヒへと悪口やら煽りの言葉を言っただけにやはり彼は過去を明かすのをこの期に及んで嫌になりつつあったのだ。

 

「ヒョウ君。それじゃあ、ヒョウ君はずっとユキちゃんと気不味いままだよ?」

 

「ッ……」

 

するとアサヒが話したのではキリがないと感じたのか。ましろがアサヒの代わりにヒョウへと真剣な顔つきで話しかける。

 

「ユキちゃんから聞いたけど、ヒョウ君はアサヒの悪口を沢山言ったから話しづらくなったんだよね」

 

「そ、それは……」

 

「ユキちゃん、怒ってたでしょ」

 

「うん……」

 

「ヒョウ君の事情を話してくれないともう私もアサヒもヒョウ君がユキちゃんに執着する理由に納得できないし、もし話してくれないのならいつまで経ってもユキちゃんはヒョウ君を嫌ったままだよ?」

 

ヒョウはそれを聞いて俯いてしまう。彼としてもできる事ならユキを頼りたかったが、生憎彼女は目の前にはいない。そのため、彼は自分1人で過去の事を話す事にした。

 

「わかった……。俺の過去の事、ちゃんと話すよ」

 

「やっとその気になってくれたか。それとましろ、ありがと」

 

ヒョウがその気になったのを受けてアサヒはそうなるように促してくれたましろへとお礼を言う。彼女が働きかけてくれなかったら恐らくこの昼休みの時間も無駄にしていただろう。

 

「うん……それじゃあ早速だけど、ヒョウ君はどうしてこの世界に?」

 

「……今の現状に嫌気がさしたんだ」

 

「「……えっ?」

 

ましろからの質問に対してヒョウは言いづらそうにしつつもどうにか絞りだすような形で話を始める。

 

「スカイランドには俺やツバサ達が生まれるプニバード族の村があるんだ。多分ユキ姉やソラさんは知ってると思うからまた聞いておけば頷いてくれると思うけど……そこで俺は落ちこぼれてしまったんだよ」

 

「落ちこぼれたって……何から?」

 

「……俺が生まれた家は……プニバード族の中でも優秀な人ばかりがいたんだ。所謂エリート?名家?って言えば良いのかな」

 

2人はそれを聞いて驚くと共に顔を見合わせる。ヒョウが自分がエリートの家出身と言ってもそこまで彼からはその名家特有のオーラみたいなのは感じなかった。

 

「やっぱり、俺からそういう雰囲気は感じないよな」

 

「あっ、ごめんヒョウ君……」

 

「良いよ。俺なんかどうせダメな奴だし……」

 

「………」

 

ヒョウがまるで自分はどうしようもない無能であると最初から諦めたような顔つきで自嘲。そんな彼を見たアサヒは何かを言いたそうだったがまずは続きを聞く事に。

 

 

「……俺には兄さんや姉さんがいてさ。皆才能に溢れてて優秀なんだ。だから俺一人だけ兄さんや姉さんに出来ることが全然出来なくて」

 

ヒョウはそう言いつつ苦い記憶を思い出す。それは約5年程前。ヒョウが幼く、スカイランドにいた頃の話だ。

 

〜回想〜

 

彼が思い出した記憶の中。そこで自分はテーブルを挟んで両親と向かい合っていた。目の前にテーブルに置かれているのは数枚の紙であり、それは成績表なのか……。ヒョウの両親は彼へと厳しい視線を向けていた。

 

「ヒョウ、何だこのザマは」

 

「……ごめんなさい」

 

「お前の兄さんも姉さんもこの程度の課題。100点を取ってるんだぞ」

 

「はい……」

 

そこに書かれているテストの点は76点であった。ただ、試験の中身はかなり難しく。小学1〜2年生が解くようなレベルを遥かに上回っていた。

 

「あなたのために講師を雇って、習い事を沢山させているだからこのくらい100点を取って当たり前なの」

 

「はい……」

 

ヒョウは両親相手に一切逆らう事は無く。ただ二人からの叱責を受け止めていた。

 

「本当、お前は不出来な奴だな」

 

「少しはあなたの兄や姉を見習って死ぬ気で勉強しなさいよ」

 

ヒョウは両親からそう言われて悔しそうに唇を噛み締める。今母親から死ぬ気で勉強しろと言われたが……その死ぬ気での勉強なんてとっくにやっていた。

 

死ぬ気でやっても自分は優秀な兄や姉には遠く及ばないのだ。ただ、両親相手にそんな事を言った所で今の発言が覆るわけでは無い。むしろ、更なる罵倒が待ってるだけだ。

 

「………ッ」

 

ヒョウはそれからも必死に努力して少しでも良い成績を取ろうとした。しかし、どんなに頑張っても無意味と言わんばかりに一向に成績は良くならず。その度にヒョウは両親から使えない子供だと言われた。

 

〜現在〜

 

「俺の家族は皆優秀で……優秀過ぎるくらいで。そのせいで俺はいつまで経っても、どれだけ頑張ってもダメな子供扱いだったんだ」

 

ヒョウはその家庭環境上、恵まれている所は多かった。勉強はさせてもらえるし、実家は貧乏どころかプニバード族のなかでも有名な家の生まれ。今でいう富豪や資産家の子供と思えば良いだろう。

 

しかし、そういう恵まれた環境だからこそ……自分の能力の無さにずっと苦しめられてきた。何しろ、周囲の人間は皆ヒョウにできない事を当たり前にできてしまう。勿論、ヒョウと同じ年齢の頃からだ。

 

「本当、自分のダメさが嫌になるよ。皆が当たり前にできる事が全然できないんだからさ」

 

「確かに、私も自分だけ出来ないこととかがあったら焦るけど……」

 

「多分ヒョウの場合は一つや二つってレベルじゃないんだろうな。それに、両親から罵倒されてきたって事は」

 

「うん……最後に俺が褒めてもらえたの……いつぶりかなってくらいには昔の話」

 

ヒョウとしてもかなり辛い話だろう。幼い頃から何をやる時も優秀な兄妹と比べられて。できなければ当たり前のように両親からの叱責が待っている。そしてその叱責は日を追うごとに冷たい言葉に変わっていった。

 

「段々両親は俺に期待すらしなくなって。最後の方なんてただ一方的に俺の事を無能だとか一族の恥晒しだとか。そういう言葉ばかりが飛ぶようになった。……俺はそんな生活に嫌気が指して五年前ぐらいに一度家出をしたんだ」

 

ヒョウはこれ以上実家にいたって辛いだけだと考えると家出を決意。彼はこっそりと家を抜け出すと旅行用のバッグを背負ってプニバード族の村から出ていき、人間達の里へと向かった。彼は一人だとしても生活するのは楽勝だと考えたのだ。

 

「でも、現実はそう上手くは行かなくて。お金は持ってなくて、ご飯も買えなくて。働こうにも俺くらいの年齢の子が働けるわけ無くて。それに、なまじ家の使用人に家事関連の色んな事を任せてたからあっという間に生活できなくなっちゃった」

 

「使用人……あ、そっか。家がお金持ちだから」

 

「そこはこっちの世界と同じだし、いても特に驚きはしないよな」

 

それから彼女はお腹を空かせた状態で方々を彷徨ったせいで傷だらけになり、力尽きて倒れてしまった。

 

「それから、偶然近くを通りかかったユキ姉に助けてもらってさ。……その時知り合ったんだけど、ユキ姉……こんな俺と優しく接してくれて」

 

〜回想〜

 

当時、プニバード族の村の近くに旅行に来ていたユキ達。ただ、何故かその時ユキは一人だけで。ソラ達とヒョウが会う事は無かった。

 

「落ち着いた?」

 

「うん……。それとご飯……ありがとう」

 

そんなわけでお腹を空かせたヒョウにご飯を食べさせたユキは彼の頭を優しく撫でる。

 

「それで、どうしてあなたは一人でいたの?」

 

「……別に……。ちょっとお父さんお母さんと喧嘩しただけで」

 

「そっか」

 

それからユキは無理にヒョウの事情を聞く事は無く。あくまでヒョウから話すのを待つ形で優しく接した。

 

「あの、ユキさん……」

 

「何?」

 

「えっと……ユキさんの事……ユキ姉って呼んでも良い?」

 

「ッ……うん!!」

 

ヒョウは恥ずかしそうにしつつもそう問いかけるとユキは嬉しそうに頷く。名前の由来はヒョウにとって実の姉のように優しく接してくれる彼女への親しみを込めるためである。

 

〜現在〜

 

「それからユキ姉と夕方になるまで遊んで……。そんな時にユキ姉のお母さん?と合流して。俺はプニバードの村にある実家に送り返された。その時、ユキ姉もちょっと怒られてて」

 

「あー……。その感じだとユキ、軽く迷子になってたのか」

 

「ま、まぁ旅行先で一人だったらそりゃあ迷子になってたとは思うけど」

 

どうやらユキがソラ達家族と一緒じゃなかったのは彼女自身も迷子になってしまっていたかららしい。何にせよ、その際にユキはヒョウの両親と会ったのだが……。

 

「ユキ姉、必死に俺の両親の事を説得しようと頑張ってくれた。だけど、全然ダメで。それからユキ姉とは別れたんだけど、結局俺に対する対応が良くなる事は無かった」

 

ヒョウは正直諦めていた。自分の無能さにも、そのせいで一生自分は両親と和解するなんてできないのだと。

 

「そんな事があったんだね」

 

「ユキ姉と出会ってから数年後。今から一年前くらい。今度はちゃんと準備した上で家出した。俺の事を助けてくれたユキ姉みたいに優しくて強い人になりたいと思って」

 

ヒョウはユキに助けられた時、彼女の優しさと自分の両親を説得しようとしてくれた時の気持ちの強さを見て憧れの気持ちを抱いた。

 

「でも、結局俺は道に迷って。気がついた時にはスカイランドの島の端っこに出て。そんな時に嵐が襲って来て飛ばされちゃって……プニバード族は空を飛べないから」

 

「そのままこっちの世界に落ちちゃったんだね」

 

ましろからの質問にヒョウは頷く。改めてだが、プニバード族は飛べない。そのため島から落ちてしまうと島に自力で戻るのはほぼ不可能になっまうのだ。すると、ましろが何かに気がつく。

 

「あれ?でも五年前って……」

 

「ユキにとって辛いあの事件があった後だな」

 

「うん……。ユキ姉、自分が辛い時に俺なんかの事を助けてくれて。本当に、ユキ姉は強いよ。それに比べて俺は……」

 

すると、アサヒはヒョウの話がある程度終わった所で彼へと詰め寄ると話しかけた。

 

「それで、ヒョウがスカイランドに戻らないのは強くなってその毒親達を見返すためか?」

 

「それは……そうだけど……。でも、今のままじゃ無理だよ。どうせ俺なんか……」

 

ヒョウが俯いてそう呟くとアサヒは彼を見て少し考える。するとヒョウが半ば諦めたような顔になっているのを見た。

 

「……アサヒ、罵倒したかったらしても良いよ。俺なんて元々その程度の価値しか無いし。それに、先にアサヒに嫉妬から悪口を言ったのは俺の方だし」

 

「………わかった。それじゃあヒョウの事情を知った上で一言言わせてもらうわ」

 

ヒョウから罵倒して良いという発言を受けたアサヒ。彼は今までヒョウに好き放題悪口を言われた件もあり、一言言わないと気が済まない状態になっていた。そして、改めてヒョウへと自分の気持ちをぶつける事になる。

 




また次回もお楽しみに。
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